軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16話 ギルド【オラトリオ】の結成

ギルド会館に向かう前に用意しておかなければならない物がある。

「それじゃ、今から家屋を扱っている商人の所によって、手ごろな家が空いていないか探してみよう」

「家を探すの?」

「あぁ、ギルドを新設するにはギルドホームを事前に用意しておく必要があるんだ」

「そうなんだ」

俺が懇意にしていた商人に声をかけると、格安の料金で手ごろな物件を紹介してくれた。

俺が築き上げてきた商人達との信頼関係がこんな所で生かされるとは思っておらず。

今日までの数十年間は無駄ではなかったのだと嬉しく思った。

ギルドホームが用意できた俺達はさっそく冒険者組合があるギルド会館に向かう。

ギルド会館に入った俺はいつもと雰囲気が違う事に気付いた。

多くの冒険者達がガヤガヤと大声で噂話に花を咲かせている。

「何か騒がしいな?」

「ラベルさん、どうしたの?」

「いや、いつもより冒険者達が何かざわついているみたいだぞ。どうやら何かあったようだ。聞き耳を立ててみよう」

俺は一番近くにいた五人組の冒険者パーティーの傍に立つと聞き耳を立ててみた。

「おい。【オールグランド】が十日前から挑んでいたレイドに失敗したみたいだぜ」

「マジかよ!? 挑む前はギルドマスター代理の奴が偉そうな演説をしていたよな? あのアタック失敗したのかよ。だっせぇぇぇー」

「挑んでいたダンジョンってSS級ダンジョンだろ? 今回のレイドにはS級冒険者パーティーが二つで残りが全てA級冒険者パーティーで編成されていたって聞いたぜ。それで攻略出来ないとなると誰にも攻略出来ないんじゃないのか?」

「かも知れないな。なんにしてもだ、これで【オールグランド】の名声は地に落ちたな」

「メンバー達もボロボロの状態だったらしいから、少しの間は大人しくしているだろうさ。アイツら自分達がこの国で一番大きなギルドって事でいつも偉そうにしていたからよ。ほんっと清々したぜ」

(ハンスの奴、SS級ダンジョンにレイドで挑んでいたのか? レイドの利点は連携による攻撃の多様性と疲労を分散できる事だ。どんな敵に対しても陣形を入れ替える事で即座に対応できる。更にS級冒険者パーティーが二つも投入されたのに失敗したとなると…… ハンスの奴はそうとう油断したんだな)

俺はハンスが行った愚行を知る。

「ねぇ、ラベルさん。さっきの人たちが話していたのって、もしかして……」

聞き耳を立てていた俺の様子でリオンも何か気付いたのだろう。

特に隠している必要もないので、俺はリオンに正直に話した。

「俺が元居たギルドがSS級ダンジョンにレイドを仕掛けて失敗したみたいだな」

「やっぱりそうなんだ。きっとラベルさんを追放したから失敗したんだよ」

「俺は関係ない。たかがポーターの俺にそこ迄の力はないよ」

「ううん。戦う事だけが力じゃない。確かにラベルさんは戦う力はないかもしれないけど、それ以外は全部持っている。もしラベルさんが戦う力も身に着けたら、一人でダンジョン攻略も出来ると思う」

俺を気遣ってくれるリオンの心遣いに胸が軽くなった気がした。

「よし。ギルド会館が騒がしかった理由も分かったんだ。さっそく新しいギルドを作りに行こう」

「私たちのギルド…… 楽しみっ!!! 」

リオンは上機嫌だった。

★ ★ ★

各国には冒険者組合が設立されており、その下部組織に支部がある。

その国に存在する全てのギルドは冒険者組合の所属とされ、冒険者組合が発行する強制クエストを受ける義務を負い、もし逆らえばギルドは解散させられる。

最初に設立時には設立費用、金貨二十枚が必要となる。

次に設立費用の外にも保証金を納める必要があった。

保証金は金貨三十枚で普通の冒険者がホイホイと出せる金額ではない。

この保証金はギルドが解散する時に払い戻される。

しかし存続中に規約違反が見つかれば没収される。

最後に設立後にはギルドに所属している人数から計算された年会費を払う事により、冒険者組合のサービスや情報を得る事が出来る。

年会費を簡単に説明すると、ギルドメンバーが十人迄のギルドで年会費が金貨二十枚。

十人以上三十人以内のギルドで金貨四十枚と言った様に人数に比例し、納める金額が増える。

冒険者組合が提供するサービスの一つが、国が管理しているA級ダンジョンに立ち入る権利である。

管理ダンジョンは冒険者組合が発行している冒険者カードでB級冒険者の証明をしなければ入る事が出来ない。

ギルドを作るにはギルドホームの確保の外に、設立費用と保証金を合わせて金貨五十枚という大金を払わなければならない。

高額金銭を必要とする理由はギルドの乱立を防ぐ為で、金貨五十枚を用意できない冒険者にはギルドを作る資格がないという事だ。

結論を言えば、ギルドは金が在れば冒険者でなくとも作る事ができるのだ。

なので商人が冒険者を集めて商人ギルドを作ったりもするが、その多くは長くは続かない。

その理由はダンジョンに潜れない商人は冒険者達を制御しきれないからだった。

★ ★ ★

俺は冒険者組合職員からギルド新設の申請書を受け取り、記載項目を埋めていく。

記載項目と言っても、ギルドの名前とギルドホームの住所、そして代表者の名前と簡単な事ばかりだ。

しかし今回新しく作るギルドがもし問題を起こした場合、その責任は全てギルドマスターである俺が持つというサインをしなければならない。

サインをした後は、冒険者組合と契約を行う。

その契約は冒険者組合が作り上げた専用の契約魔法を使用する。

魔法の力でギルドマスターは問題が起きたとしても逃げ出す事は出来なくなるのだ。

今回の設立費用は全て俺が出す事にした。

俺には貯蓄があるので、金貨五十枚程度なら痛くもない。

書類の項目を全て記載し、最後に魔法による自分自身と契約書を結合させてギルド申請は完了した。

この瞬間、俺はギルドマスターとなりギルドと運命を共にする事となったのである。

「よし。これで俺達のギルドが出来たぞ。新しいギルドの名前は【オラトリオ】だ」

「【オラトリオ】…… どういう意味なの?」

「オラトリオは神にささげる祈りの歌って意味だな。大勢が希望を胸に一緒に心を一つにして歌うんだ。俺にも、リオンにも、そしてダンにも夢があるだろ? これから増える仲間にだって夢がある。それらの夢を実現する為に、心を一つにして頑張ろうって意味で名前を付けてみた。ちょっとクサいかな?」

自分で言っていて恥ずかしくなる。

照れている俺に向かって、リオンはフルフルと首を左右にふる。

「凄い良い名前。私気に入ったよ。私、【オラトリオ】の為に頑張るから!!」

「頑張って貰えるのは嬉しいが、無理は禁物だぞ。俺達はまだ始まったばかりだ。たった一人が欠けただけで前に進めなくなる位に脆い。だからお互いがお互いを助け合いながら少しづつ進んでいこう」

「うん。了解した」

「兎に角、本格的に行動を起こすのはダンが加入してからになる。それまでの間、俺達はギルドホームを形にしたり、今まで通りに二人だけでC級ダンジョンを潜る事に専念しよう」

「残っているもう一つのC級ダンジョンを攻略するの?」

「攻略出来ればそれでもいいが、魔物を倒してギルドの運営資金を貯める感じだな。これからはギルドの運営費もダンジョンアタックの報酬の中から割り振っていかなければならない。リオンには申し訳ないが、収入は以前よりも減ってしまうかもしれんぞ」

「前が貰いすぎていた位だから全然大丈夫だよ。お母さんも良くなってきているし、病気が治ったら逆にお金が要らなくなるから」

「そう言って貰えると助かる。出来る限りのサポートは俺もするつもりだ。よろしく頼む」

「うん。任された!!」

こうして、俺達は新しいギルドを作った。