軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

121話 レイドに向けて

休日を利用して、俺とリンドバーグはグリーンウィングのギルドホームへと向かっていた。

「今日は休養日だというのに、付き合って貰って悪いな。だけど今日はレイドの打合せだけだから俺一人でも良かったんだぞ」

「それほど疲れていませんので、私は大丈夫です。それに一人で仕事を抱え込むのはマスターの悪い癖ですよ。そんな事をしていたら、いつか過労で死んでしまいます! それに一人で話を進めていて、マスターの身に何かあった時、どうするんですか? 誰も解らないじゃないですか!?」

「うっ、そうだな」

全く反論が出来なかった。

自分は仲間に休めと言っているので、リンドバーグの言葉は耳が痛い。

それにリンドバーグが幾つかの仕事を引き受けてくれているので、俺の負担もかなり少なくなっていた。

正直に言えば、ギルド立ち上げ当初よりも、疲れは貯まっていないと思う。

しかし今それを言ったとしても反論されてしまうから、ここは黙っている方が良い。

グリーンウィングのギルドホームは市街地の端にあった。

ギルド会館から少し距離はあるが、静かで居心地が良く住みやすい場所だ。

俺達は市場の近くで、部屋を借りてギルドホームにしているのだが、こんな場所なら一軒家を買い取ってもいいかもしれない。

そして出入口のドアにはグリーンウィングのシンボルマークが刻まれていた。

「一軒家もいいな。部屋数も多いし、大きな備蓄倉庫も作れそうだ」

「そうですね。我々もいずれは手に入れたいですね」

「あぁ、その為にはもっと頑張らないとな」

立派なギルドホームを前にして、俺達は明るい未来を語る。

今のメンバーとならば、必ず明るい未来を作る事が出来ると思う。

コン、コン

俺はドアをノックした。

フランカさんには昨日の内にアポイントを取っているので、ホームの中にはいる筈だ。

すぐにバタバタとした足音が聴こえた後ドアが開く。

「お待ちしていました。どうぞ中に入って下さい」

礼儀正しく俺達を出迎えてくれたのは、ハンネルだ。

今思えば、ダンジョンで双子のハンネルとエリーナと出会ったのが切っ掛けだった。

その出会いが無ければ、グリーンウィングは消え去っていた運命で、今回のレイドも実現していないだろう。

俺達にとっては、古巣の【オールグランド】以外で、初めて出来た友好ギルドである。

それに彼等は攻略組の俺達と違って反対の捜索組。

お互いの足りない所を補填しあうのに最良の相手だ。

ハンネルに案内された部屋には大きなテーブルがセットされていた。

既にグリーンウィングのメンバー数名がテーブルに着席している。

「ようこそ。お出で下さいました。仰って頂いたら私達の方がそちらのホームにお伺いさせて頂くのに」

ギルドマスターのフランカは申し訳なさそうに頭を下げてきた。

フランカはグリーンウィングのギルドマスターで美しいエルフの女性だ。

友好関係を結んだ後は何度も意見交換などを行っている。

今回はフランカの提案で合同で捜索をやる事となった。

今日はその為の打合せである。

「いえ、今回の目的は捜索活動なので、ハッキリ言って我々は専門外です。指導して頂く側として、お伺いするのは当たり前です」

「お気づかいありがとうございます。立ち話もなんですから座ってください」

フランカさんに案内され、俺達は空いている席に座る。

俺達が着席すると、エリーナが飲み物を運んできた。

「リオンちゃんは元気にしていますか?」

俺の前に飲み物を置きながら、リオンの事を聞いてきた。

そう言えば、彼女とリオンは友人関係で、最近は一緒に買い物とかに行っているらしい。

「今日は休養日で家で休んでいるけど、怪我無く元気だよ。リオンとこれからも仲良くしてやってくれ」

「当然です。リオンちゃんとは親友なんですから」

俺はエリーナにリオンの事をお願いする。

エリーナの仕草を見ると、本当に仲がいいのだろう。

「それではレイドについて話し合って行きましょう」

フランカが司会者となり、話し合いが開始された。

「まず最初に役割はどうしますか? 我々は攻略組ですので戦闘は得意です。グリーンウィングの護衛役として立ち回るのはどうでしょうか?」

今回は合同作業となる為、それぞれの役割を決めておく必要があった。

俺達は攻略組で戦闘が得意である。

一方、グリーンウィングは捜索組なので、得意分野で仕事を分けるのはごく自然な提案だ。

「今回は初めてのレイドです。だからこそお互いに実のあるレイドとなればと私は考えています」

「そうですね。それは俺も同じです」

「確か【オラトリオ】は捜索活動になれていないと仰っていましたよね?」

「はい。一通りのサイクルを体験させただけです。なのでグリーンウィングの皆様と比べると足手まといになるのは確実だと思います」

「ですが戦闘面に置いては私達が足手まといになるので、それはお互いに同じ事です」

最初からこの流れを予想していたのか?

フランカの回答には淀みがない。

「そこで提案ですが、今回はメンバーを混合させて作業を行ってみませんか?」

「合同作業ですか? それだと連携がとれなくなりますよ」

「確かにそうかもしれません。しかし今回挑むのはB級ダンジョン。魔物に奇襲を受けたとしても【オラトリオ】の皆様でしたら、個々の力だけでも充分対応できると思いますが? 」

「確かに、戦闘の方は何とかなるかもしれません。ですが素人をメンバーに加えた時、手に入る素材の量は減ってしまいます。折角のレイドなんですから、効率が良い方が」

「そうかも知れません。しかしお互いの良い所を取り入れていけば、次からは相乗効果が得られるのではないでしょうか? 最初は何でも上手くいかないものですから」

フランカさんは利益度外視して、今回はお互いの経験になるレイドにしようと提案してきたのだ。

俺達は捜索組のノウハウを、そしてグリーンウィングには攻略組である俺達の戦い方を真近で体験させようという魂胆だ。

(確かに、悪くないな)

俺は素直に感心する。

経験に勝る教育は無い。

「その提案は願ってもありませんが。本当によろしいのでしょうか?」

「はい。私達の方も勉強させて頂きたいと思います」

こうして今回のレイドは合同チームで行う事がきまった。

二つのギルドを合わせた人数は十五人、それを二つに分け互いのメンバーを組み合わせる。

俺は二つに分けるメンバーを考えてみる。

もしも女性と男性に分けた場合、女性の方が人数が少なく戦力が偏ってしまう。

なので今回はバランスを考えて、男女混合に別けてみる事にした。

男女を分けるという事は、リオンとアリスを二手に分ける事になる。

なら、まだ若いリオンの補佐として俺が付いてやる方がいいだろう。

そうなるとアリスの補佐としてリンドバーグを付けた方が良い。

そして最後にダンだが……

ぶっちゃけどっちでもいいと思う、アイツは器用な奴なので、何処に入ったとしても上手く立ち回るだろう。

そう考えた俺は、ダンをリンドバーグに面倒を見てもらう事にした。

リンドバーグも特に嫌がってはいなかったので、これで俺達の方は決まる。

グリーンウィングのメンバーは十人いるので、五人ずつ分かれる事になる。

俺達がチームを分けた後、俺達の職種に合わせてメンバーの人数が多いグリーンウィングがメンバーを組み替えていく。

「今回はこれで行きましょう」

その声を共にフランカがメンバー表を完成させた。

俺は手渡されたメンバー表に目を通す。

第一チームには俺とリオンの名前があった。

そしてグリーンウィングのメンバー名の中にフランカさんとエリーナの名前が見えた。

第二チームはダンとアリスとリンドバーグで、グリーンウィングのメンバーにはハンネルや弓が使える遠距離系の職業の者が集められている。

メンバー表を見て俺は一つ疑問を覚えた。

「あの一つ気になる事があるんだが……」

折角、考えてくれたメンバー表に文句を言って、相手の機嫌を損ねる訳には行かない。

最初は低姿勢で確認を取ってみる。

「どうしましたか? メンバー表に何か問題でも?」

フランカが不思議そうな表情を浮かべた。

「俺のチームにフランカさんがいるんですけど、両方の責任者は分かれた方がいいのではないでしょうか?」

「どうしてです?」

フランカさんは問題ないと言った様子で笑顔を崩さない。

「一応、緊急時の指揮系統をしっかりと確立していた方が」

「うふふ。みんな優秀だし、慣れているから大丈夫ですよ。それにギルド運営について色々意見交換とかも出来るじゃないですか」

笑顔を崩さない無言の圧力が凄い。

「はぁ…… そうですね」

圧に負けて俺は押し切られてしまう。

隣に座っているリンドバーグが苦笑を浮かべていた。

「リンドバーグはそれでも大丈夫か?」

「問題ありません。第二チームにはアリスさんもいます。それに今回はB級ダンジョンなので、問題が起きたとしても我々で対処は可能です」

「リンドバーグがそう言うのなら、問題はないか」

リンドバーグが大丈夫だという事で、俺は話を進める。

その後は持っていくアイテムの確認を行う。

「それではこれで打ち合わせは終わります。本日はありがとうございました」

「こちらこそ。明日はよろしくお願いいたします」

玄関まで見送られた俺達はギルドホームに帰る事にする。

「俺もホームに帰ってから、アイテムの整理をやらないとな」

「私も装備の点検をやっておきます」

俺達がホームに帰ってみると、ギルドホームにはアリス達もいた。

明日はレイドだと伝えていたので、自主的に装備の点検をしていたのだ。

「お帰りなさい」

アリスが笑顔で挨拶を掛けてくる。

「ただいま。お前達、今日は休みだろ? 装備の点検なら明日の朝でも出来たのに」

「しっかりとチェックしておかないと、今回はレイドなんだし何かあったらギルドの恥になっちゃうから」

アリスの回答に後ろに居たリオンとダンも頷く。

「わかったよ。だけど今日は日が落ちる前には帰らすからな! 装備の点検も大切だが、体調不良が一番の敵だ。今日は早く寝て貰うからな」

俺はメンバー達が【オラトリオ】の事を一番に考えてくれる、その気持ちが何よりも嬉しかった。

明日はいよいよレイドが開始される。