軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

106話 反撃

【ブルースター】と別れた後も、俺は変わる事無くリンドバーグと共に毎日酒場巡りを続けていた。

更に数日間が過ぎた頃、酒場でリンドバークと二人で飲んで居ると俺が待っていた男が近づいてくる。

近づいて来たのは、伯爵様の捜索を依頼しているレクサスだ。

酒をたかる為に俺に話しかけてくる者が多いので、よそ者レクサスが俺と話していたとしても、誰も気にする様子もない。

俺が毎日飲み歩いていた目的は二つある。

一つ目は、この町に住む人々から生きた情報を手に入れる事。

二つ目はブロッケンに気付かれる事無く、仲間と自由に連絡を取り合う場所を作る事だ!

「レクサス、何か分かった事はあったか?」

「あんたの読み通りだったよ。伯爵様は街の近くで潜んでたぜ」

「もう、見つけたのか!? 仕事が早いな!」

「あんたに言われた通り、大きな商店で食料品だけを買う冒険者のパーティーに絞って張っていたら、三組目でビンゴだったぜ」

「隠れるにしても食料は必要だからな。伯爵様の護衛は約二十人、その二十人分の食料を一度に買っていたら量が多くなり過ぎて目立つからな。余り目立たない様に回数を分けて確保していると思っていたよ」

俺はコップに入った酒に口を付けて一息をいれた。

「ダンジョンアタックの準備なら、普通は食料品と合わせてポーションなどのアイテムも購入する。しかし資金が限られている伯爵様達は無駄遣いが出来ないから、余計なアイテムは買えない……」

「それにあいつ等、購入役と運搬役と分けてやがった! 気付かれない様に後をつけるのにも苦労したぜ」

レクサスは自分の苦労をここぞとばかりにアピールしてくる。

やはり抜け目のない男だ。

「伯爵様達も命懸けだから当然だ。何をやるにも用心深くもなる。だからこそお前達を呼んだんだろ?」

俺が得意気にそう言うと、レクサスも嬉しそうに笑みを浮かべた。

「前から思っていたけど、アンタだけは敵に回したくはないな」

レクサスはおどけてみせた。

「それで伯爵様とはコンタクトを取ってくれたのか?」

「勿論だ」

レクサスは親指で酒場の隅に置かれているテーブルを示した。

そのテーブルに視線を向けてみると、三名の人物が座っている。

一人はレクサスの相棒のプルートで、残りの二名はフード付きのローブを被って顔は見えない。

コンタクトが取れたと言う事なら、ローブを着ている者は伯爵様の護衛の者だろう。

俺達はレクサスと共にそのテーブルに移動すると、テーブルに座り追加の酒を注文する。

すぐに酒が運ばれて俺達の前に配られた。

店員が下がった後、周囲を見渡して俺達を見張っている者がいないか確認する。

周囲には俺達の様子を窺っている者はいない。

「伯爵様は俺達を信用してくれたって事でいいのか? 伯爵様は無事なんだろうな?」

「伯爵様は無事だ。もちろん、怪我一つしていないから安心しろ」

「ふぅ、それが聞けただけでも良かった…… ミシェル様も喜ぶだろう」

伯爵様が無事だと言う確証が得れたのはデカい。

俺は安堵のため息を吐いた。

「場所は言えないが安全な場所で今も隠れている。俺はお前達の事を完全には信用していないが、伯爵様が決めた事だ。話だけは聞いてやる!」

いくらミシェル様直筆の手紙があったとしても、無理やり書かせている場合もある。

俺達が敵側に付いてい伯爵様を騙そうとしていると考え、警戒するのは普通だろう。

俺の方も手紙だけで信用して貰えるかどうか不安ではあったが、どうやら手紙には伯爵様とミシェル様しか知らない事も書かれていたらしく、それが信用する切っ掛けとなった様だ。

「その位用心してくれた方がこっちとしても信用できる」

「ふんっ、相変わらず生意気な奴だ。だけどまさかこの街まで乗り込んでくるとは思って無かったぞ」

ローブ姿の一人がフードの一部を捲り、一瞬だけ顔を見せた。

ローブの男は護衛の隊長であるA級冒険者のザクスであった。

「私の事も覚えてる?」

もう一人はミシェル様に気を付けろと忠告してくれた魔法使いの女性だ。

「あぁアンタの忠告通り、お嬢様はとんでもない人だったよ」

「でしょ?」

俺はそう言いながら笑って見せた後、話を進めた。

「伯爵様はどうして隠れているんだ?」

「そうだな。まずは俺達の状況を説明した方がいいだろう」

ザクスは酒に口を付け喉を潤した後、襲われた時の状況から話し出した。

俺達はザクスの話に耳を傾ける。

話は伯爵様がこの街に着いた日の夜。

ブロッケンの計らいで、鉱山の労働者代表と話し合う事になっていた。

話し合いはブロッケンの屋敷内の小ホールで行うとの事で、その部屋で待っていた伯爵様の前に現れたのは武装したブロッケンと部下の冒険者達だった。

話し合いと言う事で、小ホールの室内に居たのは伯爵様とザクスを含めた少数の護衛のみだ。

一方、ブロッケンは護衛の三倍の人数で襲い掛かって来たらしく、本当にヤバかったとの事。

A級冒険者のザクスが必死に抵抗したおかげで、何とか隙を作り出してホールから逃げ出す事に成功。

話し合いの内容を仲間に伝えるつもりだったザクスが、運良く別の部屋に仲間を招集していたので、無事に仲間と合流して屋敷から逃げ出したと言う話だ。

最初は見つからない様に街の周辺に隠れて、隙を見つけてこの地域から逃げ出すつもりでいたのだが、ミシェル様がこの街にやって来たと言う情報が入って来た。

その話を聞いた伯爵様は逃亡する考えを改め、ブロッケンからミシェル様を救い出して一緒に逃げると言い出したらしい。

そして今日まで潜伏を続けていたという事だった。

「まっ簡単に言えば、アンタ達が乗り込んできたおかげで余計な仕事が増えたって訳だよ」

面白くなさそうにザクスが告げた。

「それは悪かったが、こっちも大変だったんだよ。屋敷も襲撃者に襲われてボロボロになったしな」

「屋敷が襲撃されただと!? その話は本当か?」

「襲撃者は俺達が始末したが…… 俺の予想が正しければ【黒い市場】の連中が一枚嚙んでいる可能性が高い」

「【黒い市場】だと…… そんな大組織がどうして……?」

「今はそこまでは解らんが、それで伯爵様はこの後どう動くつもりなんだ?」

「今の伯爵様はブロッケンと決着をつける覚悟を決めている。しかしミシェル様がブロッケンの下にいる間は手出しできん。最初はブロッケンの屋敷に誰かを忍びこませて救出させようかと話していたが……」

ザクスはそこまで言ってから俺を見つめる。

言わなくてもわかるだろ?と言いたいのだろう。

「ミシェル様は責任をもって俺達が逃がすから安心してくれ。 しかし決着をつけると言っても、ブロッケンは多くの冒険者を集めているぞ。 軽く四、五十人はいる筈だ。無策で挑んでも数の差でやられるのが関の山だと思うぞ」

「その件に関しては、伯爵様と相談してこれから決めようとおもう。お前達はミシェル様を逃がす為に動いてくれたらいい」

どうやら伯爵様の方も今後の作戦は、まだ決まっていないみたいだ。

その時俺は一つの作戦を思いついた。

この作戦が上手く行けばブロッケンの戦力を大きく削る事が出来る筈だ。

「なぁ…… もし作戦が決まっていないのなら、俺の作戦を聞いてみないか?」

悪人面を浮かべた俺は全員に向けて、思いついた作戦を告げた。

「そりゃえげつねぇぇな」

レクサスが楽しそうに笑う。

「戦力は敵の方が多いからな。まずはその戦力を削る。ブロッケンも汚い手を使ったんだ文句は言わせない」

「相手がこっちの思惑通りに動いてくれるとは思えないが? 理想だけを言うのは簡単だぞ」

プルートが冷静な意見を述べる。

確かに俺の作戦に敵が乗ってくれる保障は何処にもない。

「確かにプルートの言う通りだが、俺達には強力な切り札があるんだよ」

「切り札だと?」

「そうだ。ブロッケンが最も欲しい物で釣ればきっと喰いついて来る筈だ」

「伯爵様が戦う舞台を俺達が用意してやる。その後はザクス、アンタ達の仕事だ」

「本当にお前が言う通りの状況になったら、俺達も命を掛けて戦わせて貰う」

「この作戦を成功させるには準備も必要だ。レクサス、お前達にはもう少し働いて貰うぞ!」

「仕方ない。乗り掛かった船だ。何でも言ってくれ」

俺達はタイミングを合わせて同時に酒を飲み干した。

それから三日後の夜、ブロッケンの下に伯爵様が見つかったと言う報告が入る。