軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

102話 ブロッケンの正体

アリス達を見送った俺とリンドバーグは互いに顔を見合わせた。

「マスター、それでは私達も聞き込みに行きますか?」

「いや、それは後にしよう。実は別にやりたい事があるんだ」

「やりたい事…… ですか?」

リンドバーグは意表を突かれた様で、俺の言葉が理解が出来ないでいた。

なので俺は自分の考えを説明する。

「数日前までは伯爵の家にいたから気を抜く事ができなかったが、今はやっと自分の居場所に戻ってこれて安心して油断している」

「それって、どういう事ですか?」

リンドバーグが聞き返してきた。

「簡単に言えば自分の家に帰ってきた事で気が緩んで、尻尾を出してこないか期待しているって事だよ」

「言いたい事は理解しましたが、それでマスターはどうやってその尻尾を掴むつもりですか?」

「普通に部屋の外から部屋の中の会話を聞くだけだよ」

「それって盗み聞きって事でしょ? でもどうやって盗み聞きするんですか?」

「【魔石喰らい】を使う」

「ずっと思ってたんですけど、マスターのスキルって規格外すぎませんか?」

リンドバーグが呆れ顔を浮かべた。

「どんなスキルだって普通に使うだけじゃなくて、使い方次第じゃないのか? まっ、アイテムと一緒だな」

「アイテムの使い方でマスターに勝てる人なんていませんからね」

納得した様子でリンドバーグの困惑していた表情は消えていた。

「それじゃ行動開始だ。まずはブロッケン様に用事があるって嘘をついて、関係者からブロッケン様の部屋を聞き出そう」

「わかりました」

俺達は屋敷の中に入って適当に歩いて使用人を見つけると声をかける。

ありがたい事に使用人は俺達がミシェル様の荷物を部屋に運び込んでいる姿を見ていたので、俺達がミシェル様が連れて来た護衛だとわかっていた。

そのまま使用人にブロッケン様に用があると伝えると、簡単にブロッケン様の部屋を説明してくれる。

その部屋に訪れてみると部屋の前には二人の冒険者が入り口の前に立っていた。

「誰だお前達は!!」

俺達の姿が冒険者に見つかり声をかけられた。

「俺達はミシェル様の護衛の者だ。今はミシェル様の護衛の為に屋敷の間取りを確認している所だ」

俺は辻褄が合う様に適当な嘘を言って誤魔化してみる。

「ここはブロッケン様の屋敷だぞ。来たばかりの部外者が屋敷の中をうろつくんじゃない。ミシェル様の護衛なら部屋の周辺だけを警戒していろ。それ以外は俺達が受け持ってやる」

「確かにその方が良さそうだな。ちなみにその部屋がブロッケン様の部屋なのか?」

「そうだ! だが今は来客中だからお前達を通す事はできない。用があるなら後で取り次いでやるぞ」

「いや、今は大丈夫だ。ミシェル様から何か伝言を貰った場合は声をかけさせて貰うとするよ」

そんなやり取りを交わした後、俺とリンドバーグはその場から離れた。

「リンドバーグ、見つけたぞ。ブロッケン様の部屋は三階の最奥だ」

「部屋は見つかりましたが、ですが部屋の前に冒険者がいるのに盗み聞き何てできるんですか? 三階なので外からは難しいですよ。忍び込むってのも危険が大きいと思いますし」

「まぁ俺に任せてくれ」

俺はそう告げるとリンドバーグを引き連れて、屋敷の外へと出ていく。

外に出た後、ブロッケン様の部屋が見える場所に向かうと俺は周囲を見渡してみる。

少し離れた場所にブロッケン様が雇ったと思われる者達が集まっているが、この場所の周辺には誰もいない。

場所としては最適だろう。

「今から部屋の中の会話を聞いてみるから、リンドバーグは誰かが近づいて来たら声をかけてくれ」

「わかりました。それで今から何をやる気なんですか? 魔石の力で壁を登ったりしたら絶対に目立ちますよ」

「安心してくれ、そんな馬鹿な事はしないから!」

俺はそう言うと、魔石を飲み込むと指先から糸を作り出し、ブロッケン様の部屋の窓ガラスに張り付けた。

創り出した糸の強度は限界まで上げている。

俺は糸を出ている手を自分の耳に当てた状態で、糸をピンと張った。

窓から伸びる糸は細いので、少し離れただけで誰にも認識される事はない。

目をつぶり神経を糸に集中させると、部屋の中で発生した音が窓ガラスに響きその振動が糸を伝って俺まで届いてくる。

俺の耳には部屋の中の音がハッキリと聞こえていた。

これは 拡声魔具(マイク) の技術の応用であり、本来の使い方で言えば伝えた声を更に別の魔道具で大音量に変化させたりして使う。

音は振動によって遠くに運べるという事を知っていれば【スパイダー】を応用する事は容易に思いつく。

俺もスキルの使い方を色々試している時に思いつき、実証はしていたので出来る事はわかっていた。

「よし聞こえた!」

音量として大きくはないが、集中して聞けば十分に聞き取れる。

そのまま俺は部屋の中の声に耳を傾けた。

◇ ◇ ◇

「それで兄の行方は分かったのか?」

これはブロッケン様の声だろう。

「いえ、捜索部隊は出しているのですが発見は出来ておりません」

この声は聞き覚えがあった。

たぶんさっき俺達に声をかけてきたソドムの声だろう。

「馬鹿者!! お前は何をやっているんだ。あれから何日が経過していると思っている!! もう別の町に逃げているんじゃないのか!?」

「もっ申し訳ございません。しかし街道は全て押さえていますが、突破されたという情報はまだ入っておりません。なので何処かに潜んでいる可能性が高いです」

「なら俺の町に潜んでいるっていう可能性は?」

「町に住む者の殆どが鉱山の関係者です。なので鉱山を管理するブロッケン様に歯向かう者はいません。町の有力者達にも声をかけておりますが連絡は入っていませんので、町に潜んでいる可能性は低い筈です」

「そうか。なら後はどこに隠れているかだな?」

「はい」

「折角お膳立てしてあげたのに逃がすなんて大失態ですね。もし伯爵に逃げられたら貴方は終わりですよ」

三人目の男の声が聴こえてくる。

この男の声は聞いた事がなかった。

「そんな事はわかってる。だから切り札として一人娘のミシェルを連れて来たんじゃないか。娘さえ手に入れれば後はこっちのものだ。兄はミシェルを溺愛しているからな。居場所さえ判明すれば、ミシェルをおとりに使って兄をおびき出すだけだ」

ブロッケン様の笑い声が響く。

「もし事が上手く行けば、ブロッケン様は晴れて伯爵となり、鉱山の利益は全て貴方の物となります。その時は我々との取引もよろしくお願いしますよ」

「あぁわかっている。お前達の話に乗った時点で俺は覚悟をきめたからな。後は進むしかない」

(これで黒幕がブロッケン様だと判明したな。後はどう立ち回るかだけだ)

「リンドバーグ、やはりブロッケン様が裏で糸を引いていたぞ!!」

「本当ですか!!」

「とにかく今からは時間との勝負だ」

俺は糸を切り離すと、リンドバーグを連れてミシェル様の部屋へと向かった。

今の話を元にこれからの動きを話し合うつもりだ。