軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1話 ラベルの追放

「おい、おっさん。お前は追放だ。今すぐギルドから出て行け!!」

ギルドマスターの執務室に呼び出された俺は、唐突に追放を言い渡された。

そう言い放ったのは豪華な椅子にふんぞり返り、薄ら笑いを浮かべているパーティーメンバーのハンスだ。

ハンスの両脇にも残りの仲間が三名並んでいる。

今の状況が全く理解出来ずに俺は困惑していた。

「おい。ハンスどういう事なんだ? これは何かの冗談か? 突然ギルドから出ていけって……」

「おっさん、お前の事が最初から気に入らなかったんだよ。荷物を運ぶ以外は何の役にも立たない 荷物持ち(ポーター) の分際で、偉そうに俺達冒険者に指示ばかり出しやがって、ウザすぎるんだよ。お前さえ居なければ俺達のパーティーはとっくにSS級になっている筈だ」

「そうよ、ハンスの言う通りだわ。簡単な魔法一つも発動出来ない分際で、魔法の天才と呼ばれている私に対して状況に応じた魔法を使えですって!? 今思い出しても腹が立つわ」

肌が触れ合うほど密着していたハンスと魔法使いのレミリアが罵倒してくる。

(誰か一人ぐらい俺を擁護してくれる奴は…… 居そうもないか)

ハンスの言葉に両脇の仲間も無言で頷いているのが見えた。

その瞬間、俺に味方がいない事だけは理解した。

「気に入らなかったんなら謝る。しかしだ、俺が口を出していたのはギルドマスターに頼まれたからだ。それはお前達も知っているだろう?」

「あぁ、だから今日まで我慢してきたんだ。だが今は俺がギルドマスター代理!! ギルドの人事は俺に決定権がある。だからおっさん、俺はアンタをギルドから追放する!!」

ハンスは口角を吊り上げながら、再度言い放つ。

ハンスの俺を見下す視線は、ざまーみろとあざ笑っていた。

俺は何故こうなったのかを思い返してみた。

★ ★ ★

俺達が所属しているギルド【オールグランド】のギルドマスターは、隣国で開かれているギルドの合同会議に出席する為、現在出張中である。

マスター不在時の代役として選ばれたのが、俺に追放だと言い放ったこのハンスだ。

俺と執務室にいるメンバーは同じパーティーの仲間だ。

そして俺の職業は 荷物持ち(ポーター) だ。

荷物持ち(ポーター) とはダンジョンアタック中に必要なアイテムの運搬、取得アイテムの保管、適時アイテムの配布、マップ作成などと言ったサポート業務を行う者の名称で、非戦闘職である。

俺は非戦闘職なので魔物と戦う能力は無いが、ダンジョンに潜った年数だけで言えば、ギルド内で最も長い。

ちなみに年齢はもうすぐ三十八歳を迎える。

その経験を見込まれ、ギルドマスターから有望な若者がいるので育てて欲しいと頼まれたのが、彼等とパーティーを組んだ切っ掛けだった。

それから一年間、ハンス達のパーティーに 荷物持ち(ポーター) として加入している。

本当は 荷物持ち(ポーター) ではなく、冒険者として参加したかった。

少年の頃から冒険者に憧れ、今日まで必死に頑張っているのだが、まだ冒険者になる事はできないでいる。

その理由は簡単で、俺が戦闘系のスキルを一つも覚える事が出来なかったからだ。

戦闘系のスキルを持っていない一般人がダンジョンに生息する凶悪な魔物と戦って、勝てる訳がない。

だから一度は冒険者になる事を諦めようとした。

しかし夢は捨てられず、俺は 荷物持ち(ポーター) となり冒険者と共にダンジョンに潜る道を選んだ。

荷物持ち(ポーター) を選んだ理由も現役の冒険者の戦い方を学ぶ為で、自分が冒険者になる為に必要だと判断したからだ。

ポーターとなってダンジョンに潜り始めた俺は、冒険者達の戦い方を必死に頭に叩き込んできた。

戦闘中の位置取り、連携、使用する魔法の選択方法、と覚える事は山ほどあった。

目の前で冒険者が死ぬ場面にも何度も遭遇したし、自分が死にかけた事もあった。

どんなに危険な目にあっても、俺は冒険者になる事を諦められなかった。

来る日も来る日も、俺は我武者羅にダンジョンに潜り続けてきた。

そんなある日、俺が冒険者を求めてギルド会館で待機していると、馴染みのパーティーが声を掛けてきた。

そのパーティーは何度も俺を雇ってくれている若手のパーティーだった。

リーダーはカインと言って、俺より七歳ほど年上だ。

若手の中では一番勢いのあるパーティーだろう。

「ようラベル、時間はあるか? 実は相談があるんだが?」

「カイン、どうした? さては賃金交渉だな? あんたの所にはお世話になっているからなぁ…… ちょっとくらいなら交渉にのってやっても……」

「いや違うって、そうじゃない。実は俺は新しいギルドを作ったんだ。だからお前に俺のギルドに入って貰えないかと思ってな」

「ギルドを作ったって!? それ本当かよ? それに俺にギルドに入ってくれって? 正気なのか? 俺は 荷物持ち(ポーター) なんだぞ!!」

「謙遜するな。お前が有能だと多くの者が分かっている。お前と一度でもダンジョンに潜った事がある冒険者は全員、お前が欲しくて仕方ないんだぜ。だけどよ何処のギルドのギルドマスターも頭が固いジジイばかりで、ポーターを使い捨ての道具の様にしか見ていない。だけど俺は違う。優秀なポーターはパーティーの生存率を大きく上昇させる。俺にはお前が必要なんだ」

必要と言われ、うれしい反面、少し落ち込んだ。

優秀と言われるのはうれしいのだが、俺はポーターではなく冒険者になりたかった。

しかしこれはチャンスでもある。

ギルドに所属していれば、スキル獲得のチャンスも増えるかもしれない。

俺は差し出された手を取り、ギルドの加入を決めた。

そしてカインと共にギルドの成長を見守り、【オールグランド】を十大ギルドの一つと呼ばれるまでに育て上げてきたのだ。

ギルドがここまで大きくなる間に、俺は何度も幹部になってくれと懇願された。

しかし俺は決して首を縦には振らず、ポーターとしてダンジョンに潜り続ける事を選んだ。

全ては冒険者になる為だった。

(はぁ…… その結果がこれか…… 参ったな)

俺は大きなため息を吐く。

ハンスは【オールグランド】の中で数少ないS級パーティーの冒険者だ。

俺がハンスのパーティーに加入した時、彼等はA級パーティーだった。

加入した時に気づいたのだが、パーティーメンバー全員が素質の塊だった。

なので俺がパーティーに居なくても、S級になるのは時間の問題だっただろう。

しかし実力がある分、パーティーメンバー内の連携が上手く取れていなかった。

各々のスタンドプレーが目立ち、無駄な動きが大きく、派手な過剰攻撃を躊躇なく選び、無駄な魔力を使い過ぎている。

個人がどんなに強くても、時には数で攻めてくる魔物が相手だ。

些細なきっかけで一瞬で押し潰される事もある。

俺はそんな現状を何度も見てきた。

またダンジョンの下層に下りていくにつれて、魔物は基本強くなっていく、自分より強い魔物と戦う時にちゃんとした連携が取れなくて勝てる訳がない。

俺は何度もその事を伝えてみたのだが、ポーターの俺が有望と周りから期待され続けた彼等に意見する事自体が気に喰わなかったみたいだ。

ギルドマスターの睨みもあり、ハンス達は嫌な顔を浮かべながらも俺の指示や注意を聞いてくれていたので、まさかギルドを追放したい程嫌われていたとは気づかなかった。

今回、ハンスにギルドマスター代理を任せた理由だって、マスターが未来を背負って立つであろうハンスに、上に立つ者の経験を積ませようと言う親心があっての事だったのに……

マスターの意図を事前に聞かされて知っていた俺は、もう一度大きなため息を吐いた。

★ ★ ★

「いきなりギルドを去れと言われても俺も困るんだ。マスターのカインに直接言われない限りは従うつもりはない」

カインが帰ってくれば、きっとハンス達を戒めてくれるだろう。

それまでは事を荒立てずに、距離を置いた方がいいと判断した。

「チッ。相変わらずしゃくに障るおっさんだな。今、俺がギルドマスターだって言ってるだろう。俺が追放だと言ったら、追放なんだよ」

「一週間もすれば本当のマスターが帰ってくるのが分かっているのに、そんな横暴に従える訳がないだろう」

「じゃあ好きにしやがれ、だけどギルドとして、おっさんには一切の仕事を振らないからな。クックック。戦えないポーターがどんなに足掻いたって何もできねぇぞ。おっさん、お前はもう終わりなんだよ」

俺は反論もせずに、ギルドマスターの部屋から出て行った。

その後、ハンスから俺の謹慎処分がギルド内に通達された。

古参として俺もそれなりに名が通っていたので、小さな騒動が起こっていた。

昔から馴染みのある数名の冒険者がハンスの元に抗議に行ってくれたみたいだが、ハンスが取り合う事はなかった。

「ラベル。気にするなって!! マスターが帰ってきたらすぐにダンジョンに潜れる様になるからな。今回はいい休養だと思ってゆっくりやすみなよ」

「そうだな。そうさせて貰うよ」

歳の近い熟年冒険者は俺とギルドマスターの関係をよく知っているので、励ましてくれた。

俺もカインが戻ってくれたら、こんな馬鹿げた状況は直ぐに収束すると思っていた。

しかし数日後、俺の元に驚愕なニュースが飛び込んでくる。

「カインが参加しているギルドの会合が何者かに襲われただと!!!」

「あぁ、詳細は不明だが、大混乱しているみたいだぞ」

「それでマスターは? カインはどうなったんだ?」

「生死は不明だって、付き添いの幹部も負傷したみたいだ。その件で今から緊急会議があるらしいぞ」

俺は混乱したまま、伝えに来てくれたギルドの冒険者と共に緊急会議の場所に向かった。