軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

余罪が有り余っております☆

ぽつり、呟いた。

リュカは私に答えることなく、対面した男たちに言った。

「これ以上蛮行を働くというのなら、異能騎士として責務を果たさせてもらう」

「なっ……異能騎士!?なんでこんなところに……!!」

兵士でもなく、王族軍所属の騎士でもなく、異能騎士。そんな存在が目の前に現れたことに驚きを隠せないのだろう。唖然とした様子で男が言う。

見れば、リュカは手に 拳銃(ピストル) を持っていた。それをサーコートの内側に仕舞い、彼はなにか──麻紐のようなものを取り出した。

キッチリ、三本。

それをどうするつもりかと見ていれば、おもむろにリュカが男の足首を蹴り──いや、足をひっかけた。

「うわっ!?」

「ギャッ!」

「うわあ!!」

リュカは三人の男たちをそれぞれ転がすと、その手首に麻紐を触れさせる。それはすぐに変質して、頑丈な手錠となった。戒められた男たちの顔色は悪い。

「な、なんだよ……!離してくれ! まだ(・・) 何もしてないだろ!」

「まだ?そうだね。 まだ(・・) 何もしてないね、今回に限っては」

「なら……!」

「だけど、お前たちは既に別件で指名手配されている。大人しくしておくんだな」

リュカの淡々とした声に、うぐ、と男たちは息を呑む。

リュカが手を挙げて、誰かに合図をする。すると、兵士と思わしき男たちが数人、こちらに駆け寄ってきた。

「ツァーベル卿、お手を煩わせてしまい申し訳ありません」

「いえ。管轄外なのに手を出してすまない。私の用件も、今終わったところだ」

そう言って、リュカが白のサーコートを脱いだ。

何をするのだろうと見ていると、それを頭にかけられる。

「あ……」

頭からサーコートですっぽり隠されてしまったために、兵士の彼らから私は見えないだろう。リュカは、意図して私の顔を隠してくれたのだ。

彼らが私の顔を知っているかどうかは分からないけれど、可能性があるなら隠すべきだと考えたのだと思う。

その気遣いと、好き勝手に行動したところを見られた羞恥にじんわりと頬が熱を持つ。

リュカは何言か、兵士たちと言葉を交わすと、私の手首を引いて歩き出した。

見れば、拘束された男たちは兵士に引き立てられている。どうやら、彼らは捕まったようだった。

そのことにホッとした。あの男たちを野放しにしていれば、被害者が出るに違いない。

リュカに手を引かれながら、私は恐る恐る彼に尋ねた。

「どうしてここに?」

「シェーンシュティットの邸に行ったら、シャーロットが不在だと聞いたんだ。きみの侍女……エマと言ったかな。様子がおかしかったから聞いたら、きみが貧民街に行った、と答えたから」

「追ってきてくれたの?」

「……いくらなんでも、無茶だよ、シャーロット。きみは、自分の立場をわかってるの?」

珍しく、リュカは怒っているようだった。

今まで、どんなに私に酷い態度を取られてもら怒らなかった、リュカが。

その反応に目を瞬いていると、彼がため息を吐いた。

「確かに、きみは公標で、強い異能を持っている。でもね、だからといってひとりで無防備に出歩いていいわけじゃない。きみは、公爵家の娘で、若い女性なんだよ。わかってる?」

リュカの言葉はもっともで、正論だ。

気まずさに視線をそらそうとした時、彼のこころの声が飛び込んできた。

《すごく、すごく心配したんだ》

《息が止まるかと思った》

《もうあんな思いは二度としたくない、だから》

「シャーロット。ひとりでどこかに行きたい時は俺に言って。俺も、ついていくから」

「で、でも……リュカを巻き込むことは出来ないわ」

この 問題(こと) はあくまで私のものだし。

異能騎士であり、公爵家嫡男の彼は忙しい。

私の用事に付き合わせるのは申し訳ない。

いくら私だって、『ほんとう!?じゃあ次からは護衛をお願いするわね!』なんて嬉々といえるほど面の皮は厚くない。

逡巡する私に、リュカが言う。

「巻き込んで。俺の知らないところで、きみが怪我をする方が嫌だ」

「……」

沈黙する私に、しかし返事は求めていなかったのだろう。

リュカに手を引かれ、裏路地から大通りへと出た。

「……リュカ」

呼びかけるとリュカが足を止めて、僅かに首を傾げる。私の話を聞くために。

「……ありがとう。あと、ごめんなさい」

心配、かけて。

ちいさな私の声は、しかしこの距離だ。

彼にはしっかりと届いたらしい。

リュカが薄く微笑んだのが、横目に見えた。

そのまま、私はリュカにシェーンシュティットの邸まで送ってもらったのだった。