軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

68話 極み

取り残された3次試験、受験生たち。

俺もその一人で、イレイザー3次試験官がここから逃げ出すように消えてからは、何をしてよいのかわからずただ座り込んでいた。

となりの271番の顔色がどんどん良くなっていき、たまに俺の顔をチラッと伺っては目を逸らす。

ガーリックパンを食べ過ぎたか? こりゃ。

職員からは事態を把握するまで座っていて欲しいと伝えられているが、そんな指示に従うような生徒ばかりではない。2万人から絞られた300人。いや、おそらく100人いる2年生を除けば200人か。

くせ者揃いの連中が大人しく待っていられるはずもない。ポルカは既に鳥を追いかけ始めている。……追いかけているのは、もしかしてカイネル試験官の鳥か?

3次試験まで見守っているとは、あの人残業大好きじゃん。ワーカーホリックだよ。

「……もしかして俺たちってこのまま合格なのか?」

誰かがポツリとそうつぶやいた。

みんな薄々そんなことを思っていたらしい、会場中に沸々と湧き上がるくすくすとした笑い。

2年生たちと思われる人たちも笑っていた。

先ほどまでの緊張感からのギャップだろう。何人かは笑いを堪えきれない程ツボっていた。

殺伐としてた雰囲気が嘘みたいだ。会場中を支配する弛緩した楽しい雰囲気。

また1人生徒が立ち上がって、俺の前へと歩いて来る。

「ハチと言ったな」

「うん」

少し怖い顔でこちらを見てくる。王子にだけガーリックパンを差し出したことを怒っているのか? こ、小物は大物にしか接待はしないぞ!

「もしも合格になったとしても、礼は言わんぞ! どうせ俺は実力で受かっていた。むしろ優秀さをアピールできるチャンスを奪われて俺は不快に思いっている!」

「ご、ごめん」

俺も試験を潰す気は無くて。

ただ、気になった部分を指摘してしまって……。

本当にこんなことで合格になるのだろうか?

言いたいことを言って、彼は去って行った。ガーリックパンのことじゃなくて良かったとも言えなくもない。

「あの……ハチさん」

「俺?」

さんづけだなんて初めて呼ばれたから、少し戸惑う。

右隣に座る271番から声をかけられる。

「さっきの人、同郷なんだ。領内でもいつもあんな尖った感じ」

「へぇー。そうなんだ」

さっきの人よりも、すっかり顔色の良くなった271番の方が気になった。吐出しそうだったもんな。元気になって良かったよ。

「でも気にしないで。彼、気に入った人としか話をしないタイプの人で、本当はハチさんと話したかっただけなんだと思う。こう……普通に接する方法とか、話し方が分からないだけなんだ」

「なるほど。ツンデレだな」

「ツンデレ?」

俺が的確に言い返せてたら、ちゃんとデレてくれていたのか。そりゃすまん。俺のコミュニケーション能力ももっと磨かなければ。

「とにかく、もしもこのまま合格するなんてことに……いや、やめておこう。たぶん試験は差し替えだろうから」

「差し替えか。たぶんそうだよな」

「うん。でも笑ってすっかり緊張感が取れた。みんなもそんな感じだ。しかもあの裏切り前提みたいな試験から差し替えられるなら、それも良いことだ」

たしかに。意地悪な試験だったよなぁ。こうして仲良く話している271番や、楽しそうに鳥を追っているポルカと争うことになっていたかもしれないんだ。イェラや実力の判明していないシアンや他の連中もいるし、血生臭い最終試験になっていた可能性だってあった。

イライラしてイレイザーにあたってしまったが、結果オーライなのでは? しばらく271番と会話しながら待っていると、あの声が聞こえてくる。

えっほ、えっほ、えっほ、えっほ、えっほ、えっほ

大きなバッグを背負った運び屋と呼ばれる女性。カイネルから聞いたのだが、使いぱっしりっぽいこの女性、れっきとした王立魔法学園の教師であり、担当の専門科目をもったエキスパートである。

「校則第20条『使い魔を通じた恋文のやりとりは禁止。ただし本人が直接渡す場合は認める』って、伝えなきゃ」

皆が見守る中、バッグを地面に置く。

端からファスナーを開けていくと、そこから出てきたのはイレイザー試験官ではなかった。

巨漢の老人、学長グラン・アルデミラン。

まさかの人物の登場に、会場の緩んだ空気が一瞬にして凍り付いた。

「あー、良い。楽にせい。席についていない者もそのままで構わん。全員そのままで」

怖い見た目のせいで、優しい言葉も届かないらしい。隣にいる271番はまた青ざめ始めた。

「結論から先に伝えようと思う。第153期受験生、3次試験に残った300人。ハチが見破った通り、100人は学園在校生たちであり、これを除いた受験生200人。学長グラン・アルデミランの名において、合格を通達する」

わっ。

差し替えは無かった。

271番と顔を見合わせ、また顔色の良くなった彼が抱き着いてきた。

「ハチさん!!!」

「いだだだだっ」

嬉しいけど。俺も嬉しいけど、体痛くて!

戦士長の攻撃がまだまだ残ってて!

1次と2次。これまでは合格者と不合格者に分かれてて、同じ気持ちじゃないときどうしたらいいんだろう、ってずっと思っていた。けれど、3次試験はみんな同じ気持ちだ。

イライラしてイレイザーに八つ当たりしたら、最高の結果になってしまった。体の痛みを我慢して、271番と抱き合う。ついでに2年生たちとも抱き合う。

ああ、終わったんだ。いろいろあった、王立魔法学園の入学試験が今!

「皆の者、今から正式に合格証明書を渡す故しばし待て。ちゃんと手続きもしていくように」

みんな学長の方は向いていないが、耳ではちゃんと聞いているらしい。また一際大きな喜びの声が上がった。

「それとハチ、お前はこっちへ」

……やだー。

最後の最後まで。難癖つけられるのやだー。

「あからさまに嫌そうな顔をするでない。別に不合格にしようって訳ではない。ただ、いくつか話があるだけだ」

そういうことならばと学長の方に歩いていく。

あまり聞かれたくない話らしいので、二人で歩いて試験地から離れた。

「このくらい離れれば良いだろう」

「奨学金をくれるんですか?」

「奨学金? 王立魔法学園は学費無料。全寮制で、着替えや食事のサポートもつく。金はいらんぞ」

なんて素晴らしい教育機関なのでしょう!

「食事はビュッフェスタイルですか? 定食スタイルですか?」

「……気になるの、そこか? まあ、ビュッフェスタイルじゃから、好きに食べるが良い。食事はバランス良くな」

「はい!」

学長、あなたの作った学園は素晴らしいです!!

俺が胸を張って、そう世界に吹聴して回ります!!

「学園のことは追々自分で知るが良い。こういうのは聞くより、自らが味わう方が楽しいものよ。なにせ、お主は正式に認められた153期合格生なのじゃから」

「俺たちはイチゴさんですね! ありがとうございます!」

素晴らしい期だ。ドロドロの裏切りあいも無く、フレッシュスカッシュなイチゴさん期。300名という沢山の仲間が出来て何よりだ。

「イレイザーが戸惑うのも無理はないな。ペースを持っていくでない。なかなか本題に入れんわ」

「すんません」

「話しておきたいのは、まずはあれじゃ。……バルド・フェルマータについて。あれは、権力に近づきすぎた」

バルド・フェルマータ。

俺を襲撃し、危うく殺されかけた学園の教師。その熟達した魔力の使い手は、一生忘れることが無い程俺の記憶に刻まれている。

「学園は今や政治にも口出しできる程、大きくなり過ぎた。今回の件も簡単には事実を公表できず、調査も何重にも行われる。ミスがあってはならんからの」

「あれだけの学園ですしね」

規模の大きさは俺だってなんとなく知っている。毎年国中の才能がこうして集まって試験を受けに来ている時点で、なんとなくわかる。その卒業生たちがまた国の中枢に入っていくのだから、学園の影響力が年々大きくなるのも無理はない。

「調査結果がはっきりしないうちに、学園側から君に正式な謝罪は出来かねる。しかし、あれはバルド先生が私欲に走った結果だと思っておる。故に、まずは個人的に謝罪したい。すまん。バルド・フェルマータの手綱を握れず、君を命の危機に晒した」

あのグラン・アルデミランが俺に頭を下げている。こんな小物に。

慌てて、構わないと言おうとしたが、まだ謝罪は続くらしい。

「君の姉、カトレアとランを危険な目に合わせたことも、併せて謝罪したい」

そっちは受け取ろう。

「……気持ちだけ受け取っておくよ。それと、それは姉さんたちに伝えてあげて」

「もちろん。2人には試験に協力して貰った恩もある。単位を授けるだけでは少し物足りんだろうな」

姉さんたちが負けるはずがないと思っていたが、思い返せば思い返す程、バルド・フェルマータという人は凄かった。俺は王立魔法学園という場所をわかっていたようで、全然わかっていなかった。きっとあのレベル、いや、あれ以上の人だっているんだろうなと思う。

改めて物凄い場所だ。俺がこれがから行く場所ってのは。

「そして、こう評価しては君に失礼だが、バルドは証拠をほとんど残しておらず調査が難航しておる。死んで尚、優秀な男だ」

なんで俺が狙われたのかが分からないって訳か。

「別にいいよー。黒幕とか、理由とか分からなくても。俺、逃げ足が速いから、また狙われても逃げ切れる自信がある」

「君にそう言って貰えるのは助かる。賢老エルダから、君にはしばらく護衛をつけた方が良いのではという案も出たが、堅苦しいであろう?」

「もちろん!」

美女の護衛なら受け付けるが、それ以外はお断りだ。気になって日常を楽しめない。人生は楽しむためにあるので、そんなものは不要だ。

グラン学長があんまり気に止まないように思っていることを伝える。

「俺がこういうのって変かもしれないけど、惜しい人を亡くしたと思ってる」

「それは確かにおかしなことを言う」

困惑する学長。可笑しなことを言っている自覚はある。

「あの人からも学んでみたかった……。引き寄せる磁力、反発する磁力。今思い返しても、恐ろしい域にいる人だった。あんなのどうやったら出来るんだって、ずっと考えてる」

でも答えは出ない。

「……自らを殺そうとした相手からも学ぶか」

「うん! もしも、そんな道があったら良かったなって思うよ」

これは本当に。

あの人がどういう事情で俺を殺そうとしたかは知らない。けれど、今となってはそんなに恨んでいない。むしろ、あの人の力に魅了されたまである。

「『変律』の極みに立つ男、バルド・フェルマータ。実際に戦って見て多くを学んだと聞いている」

「……楽しかった。そして、とんでもなく良い経験だった」

命のやり取りでしか学べない領域のもの。あの人は俺にとって、暗殺者であり、教師でもあると思っている。

「うむ……。ハチ、最後に問いたいことがある」

「何?」

真面目な顔して、なんだろうか?

地面から石を拾い上げ、魔融を使い魔力を込める。変律で魔力を拳の形にし、散華で魔力を切り離す。操糸でその石の入った魔力の拳を俺に飛ばしてきた。

あぶねっ! 何すんだ!?

横に躱すと、同じタイミングで頭上より魔力の拳が降って来た。

いてててっ。なんだよ。もう一個作ってたのか。そしてこっちが本命ね。

「魔力は面白いじゃろ。石を掴んで意識を集中させた。上から降る拳は魔融を使っていない分威力は劣るが、確実に当てられる。戦いの基本じゃ」

「教育方針が乱暴です」

「くくっ、すまん。イレイザーに一発殴ってくれと頼まれていたものでな。これで3次試験の件は許すと言っておったぞ」

3次試験をめちゃくちゃにした分がこれで済むなら安いものか。それに、良いことも学ばせて貰った。確かに、この攻撃はよけられないな。

「王立魔法学園は『紋章の力』を学ぶ場所。一般的にはそう思われているが、ワシは魔力の五つの理『五理』を学ぶ場所だと思っている。生まれの才能に影響されず、自らの力で切り拓ける部分じゃからのぉ」

教育者によっても、その部分の考えは変わりそうだなって思った。学長の考えはそうなのか。少し意外である。

「『魔融』のアグナ。『変律』のバルド。『散華』のワレンジャール姉妹。『操糸』のユラン。いや、操糸はお主が戦った砂の戦士長の方が分かりやすいか。これらが、それぞれの理の極みに立つ者。直に触れ合って、多くを感じたことだろう」

魔融のアグナは知らない。教師にいるのだろうか?

ユランは、たしか山頂にてカイネルと揉めてた……メスガキ!

「ちょっと待って。姉さんたちは散華の極みに立っているの?」

「氷華螺旋樹を見なかったのか?」

「見た」

あっ。あれがそうなのか。いかにもやばいものだったけど、あれが極み……。姉さん……遠いっす! あまりにも高みにいらっしゃる!

「カイネル試験官は? あの人の操糸は極みじゃないの?」

「10が極みだとするならば、カイネルのは9。あやつは散華も8程度に扱うバランス型。教師たちには、自らの紋章に適した、いろんな型がある」

「はえー」

驚きの情報に、啞然とするやら少し笑うやら。

そうだったんだぁっていうすっきり感まである。

「身体強化は?」

五理って身体強化も含まれるはずだ。

「未だ人類で『身体強化』の極みに立ったものはいない。神ならいるがの」

「そうなんだ」

「お主に問いたいのは、このことじゃ。この試験を通して、多くを見て、多くに触れたじゃろう。学園で学べる期間はわずか4年。お主は5つの理のどれを極めたい? それが気になってここまで足を運んだ」

どれか。

そんなの決まっている。

初めてギヨムがこの知識を授けてくれた時から、そんなことは決まっていた。

「全部」

当たり前だ。

貰える物は全部貰っておけ。勿体ないからね!

俺は五理の全てを貰う! 生まれ持った才能が少ないのならば、俺は生きている間に回収させて貰うだけよ! お得は大好きなんだ。

学長が固まってしまった。

あまりにも滑稽な返答に固まってしまったのかもしれない。

そして、少し笑ったようにも見えた。

「わかった。もう行くが良い、ハチよ。改めて、合格おめでとう。……学園にて待つ」

「はい、こちらこそお世話になりました。学園のビュッフェ料理楽しみにしています」

「終始飯のことじゃの……」

んじゃ、と学長に手を振って別れた。

俺はまだ合格手続きもあるし、宿のみんなにもあいさつに行かないと。

書類手続きを済ませて、俺は宿村へと一直線。

そこでは従業員たち一同が表に出て、何やら看板の修理をしていた。随分と古くなっていたものの、こんなタイミングで……?

「あっ、ハチ様! 店主、ハチさんが戻ってきました」

こんなに早く試験が終わると思っていなかったのだろう。

従業員たちが驚いていた。忘れ物でも取りに来たのかと思われたみたいだ。

「ハチ様! どうなさいました?」

「いやいや、それはこっちのセリフだよ」

近づいて気づいた。宿屋の看板に使われている名前に。そこには『宿屋ハチ』と書かれていたからだ。

「すみません! 勝手にこんなことをしてしまい! ハチ様が試験を終えたら事後報告をしようと思っていたのですが……」

いや、ええええ。

こんな小物を宿の名前にしてもいいの?

「この宿屋はハチ様が1次試験を突破していなかったら、今年で多分見納めでした。せめて恩人の名を宿屋の名前にしようとかと思ったのですが、ダメでしょうか?」

ダメなわけないでしょ。

小物の名が広まる機会なんて、人生に何度あるかわからないよ?

「全然OK!」

そして、俺は懐からあれを出す。

みんなが喜ぶあれを。

書類には王立魔法学園の正式合格を告げる内容が書かれていた。学長のサイン付きである。

それを見て、固まる主人。従業員たちも見て、固まる。

まさか、こんな小物が合格を齎すなんて思っていなかったよな。宿にとっての初の合格者。俺も驚きだ。

うおおおおおおお。直後湧き上がる大歓声。

皆で抱き合って、自分のことのように喜んでくれた。

「皆の者、急げ! 宴会場を開き、今すぐハチ様の踊り場を確保するのだ!」

「おっ。わかってるー!」

よーし。こうなったらもう踊るしかねー。

新生、『宿屋ハチ』にて俺の全てを解放する。腹踊りにどじょうすくい、タコ踊りにサンバまで! 今日は全部を出すぜー!

そうしてこの日は夜通し踊った。

後に聞いたことなのだが、今年は宿村の坂上に位置する宿から大量に合格者が出たらしい。

上は格が低いというこの宿村の伝統が、今年を期に変わったそうな。『宿屋ハチ』大盛況運営中。今年は繫盛間違いなしなので、ご予約はお早めに!

――。

ハチが立ち去ってより、1時間もその場に立ち尽くした。

『五理』全てを極めるか……。

それも、即答で。

未だ五理全てを極めた者はいない。身体強化に至っては、人で極めた者すらいない。

ハチがどういう答えを寄こすか気になって訪ねた問答。これはかつて、ワシの師匠が若き日に聞いたものと同じものだ。

師匠が亡くなって以降、ワシも弟子を取るようになり、将来の気になる若者には毎度聞いて来た。

……初めてだった。

五理全てを極めると答えた生徒は。

そんな返答、予想すらしていなかった。

彼がどういう未来を思い描いているのか、どの理へ進むのか。少し気になっただけのこと。それなのに……。

ワシは発想の時点で既に小物であったらしい。師匠がこの質問をしたとき、真意は器の大きさを測るためだったのでは? と今更に思う。

あの時、全てを極めたいと思いつつも、身体強化を除く4つと答えた。少しがっかりした師匠の顔が今でも思い起こされる。

ワシの才能を認め、ワシを育ててくれた伝説の存在。師匠はもしかして、今日ハチが即答した内容をワシに期待していたのではないか……。

100と14年。これだけ長く生きて、本日初めて真の《《魔法》》使いになる可能性を持つ者に出会ったかもしれない。

ハチは、あなたの言う《《魔法》》の領域に足を突っ込む存在になるのでしょうか?

……この歳にして、未だわからないことだらけ。ハチをどう導けばいいかもわからぬ。お師匠様、あなたの言葉ばかりが思い起こされるが、答えは出てこない。

『五理を究めし者は、生まれ持った紋章、魔臓才能値をも凌駕する。紋章の覚醒者であろうと、及ばないだろう。そしてその者はいずれスキルを超越した《《魔法》》の域に達する。グラン、よく覚えておくように。お主はいずれその領域に達するものだと思っている。期待しているぞ、愛する弟子よ』

……すみません、お師匠様。

数値で言うと、五理全てで9割といった状態。全てに手が届きそうで、全てに手が届かなかった者。

未熟者のグランをお許しください。

しかし、師匠。私はあなたの夢見た《《魔法》》の領域に達する者を見つけたやもしれませぬ。

この者を育て上げることによって、この無能な弟子をどうかお許しください。

もう直2理に手が届きそうなカトレアとラン。バランス型でありながら、2理を極めたリュミエール。そして3理を極めた、天壊旅団団長ゼルヴァン。

「ふふっ……あははははははっ」

これが笑わずにいられようか。

「学長? どうなさいました?」

「大丈夫じゃ」

職員が駆け寄って来てくれたが、大丈夫だと知らせた。まだボケてはおらんよ。ボケるわけにも死ぬわけにもいかぬ。

お師匠様の願い、五理を極めた者、《《魔法》》の域に足を踏み入れる者をこの目で見るまでは。