軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23話 教師はやばいやつばかり

神の眼、その黄金色の眼が鋭くこちらを見つめる。

昔どこかで聞いたことがある。

この世界には神がいるのだが、その神の寵愛を受けた一族には、神に近い力を持つスキルタイプが発現することがあると。

田舎貴族の俺には関係なさすぎる話なので完全に頭から消えていたが、大昔から神やら土地の精霊に守られている一族がいるんだとか。一体どれほどの徳を積めばそんな寵愛に預かるのか。俺だって昨日腰を痛めて困ってる爺さんを助けたぞ。そういうのじゃダメなのか?神に尻でも見せたら良いですか?

しかも神の眼だと。

一番格好いいやつ。

神の歯、とかなら全然嫉妬しないけど、流石に目はずるい。格好良いなんてもんじゃない。一番異世界風をやってるわ。俺がそんな目を持っていたなら片方に眼帯をつけて、定期的に「う゛っ」とか人前でやっちゃう。

修理スキルは物を修理しまくったために発現したスキルだ。神の眼を発現させたきっかけはきっと、沢山スケベな覗きをしていた少年だったのだろうと勝手に貶めておく。

「王立魔法学園の学長が俺に用?そんな訳ない。姉さんたちに関わることを見て来いってことに決まってるでしょ」

無限身体強化を見破られたこと、それと嘘を見透かされているようなあの目から逃れるように、俺は話を逸らす。

実際、人類最強とか言われているそんな大物が俺に用事があるはずもない。

「そりゃワレンジャール姉妹にも当然興味はあるだろうさ。でも今回学園の関係者は俺以外にも来ている。それでもグラン先生は”神の眼”を持つ俺を寄こしたんだ。今なら確信できるね。あの爺さん、どこかで少年の情報を得て、俺に詳しく調べさせるために寄こしたのさ」

「裏口入学させてくれるってんなら協力的にもなるけど、そうじゃないならもう行かせて貰います。その目、なんだか見つめられててあまり心地の良いものじゃないから」

相手は服を着ているのに、こちらは裸で立っているみたいな感覚なんだ。不思議な目だ。これがクロマグロたちが住む世界なのか。潮の流れが早すぎてビンチョウマグロの俺には耐えれそうにもない。

「待てよ、少年。動くな。てか、動けないだろ?」

そんな訳ないと体を動かすが、まるで型にはめられたみたいに体が動かない。蝋人形されたってコト!?

「……何これ?」

「シンクロって知っているか?俺の眼に見つめられている間、俺の魔力量を上回まらないと体の自由が効かないぜ?つまり少年との魔臓才能値の差を考慮すると、俺が許可するまで一生動けないってことだ」

魔力量?

ちょっと待て。相手は自称姉さんたち以上の魔力持ちだ。それが本当なら、なんて強力な能力。

けど、全部鵜呑みにするほど無知じゃない。そんなはったりに騙されたりはしない。

「うそ、でしょ。あんたの眼がシンクロを起してるって話が本当なら、あんたは魔力量じゃなく、単純に俺以上の身体強化で俺を縛っているだけ。あんたの身体強化が切れたら、身体強化をずっと使っていられる俺の力が上回る。その瞬間、シンクロの制御権は俺に移るはずだ」

「……ちょっと、やめてくんない?」

イレイザーが周りをキョロキョロと見回す。

「なんで秒で俺の能力の秘密を暴くのよ。それにペラペラと。ちょっ、誰かに聞かれてないよね!?」

まあイレイザーの言うことも全てがはったりって訳じゃない。

実際、今俺は指の一本も動かせない。

俺以外の人間は身体強化に時間制限があるとはいえ、姉さんたち以上の魔力持ちなら身体強化を1時間くらいならずっと使っていられる。相手が本気を出せばその一時間、俺を拘束することが可能となる。嘘は混じっていたが、やはり恐ろしい能力に違いは無い。

たしか学長は人類最強って言ってなかったか?こんな馬鹿げた能力より?

俺が行こうとしている王立魔法学園ってのは、一体どれだけの化け物がいるんだよ。

2年後、ビンチョウマグロの俺氏、シャチとかホオジロザメがいる南極の海に行く編始まる。

「勘の鋭い少年だなぁ。それとも知識が深いのか?もっといろいろバレる前に、とっとと情報抜き取っておくか」

イレイザーが一歩前に歩み出ると、こちらも自然と足が前に出る。不思議な感覚だ。ちょっとジャンプとかもしてみて欲しいかも。俺が力を抜いてもジャンプするのだろうか?

「ん?なんだこの魔力線の細かさは。どうなってやがる。目がかすんでんのか?」

接近し、眼をこすって俺のことを覗き込んで来るが、たぶんそれは見間違いではない。俺の魔力線は事細かに体中に張り巡らせている。初見だとびっくりするよね。てかこの人以外、見ることなんてできないか。

「本当にどうなってやがる。なんで魔力線がこんなに……おいおい、少年。俺の見間違いじゃなきゃ、お前さん、魔力線が2本無いか?」

良く見える神の眼だこと。

俺の抱えている秘密をものの見事に暴かれていく。

あの日ヴィトルノスの種を2個飲んだことまでは流石にわからないだろうが、それでも成果はバレた。更に情報を抜き取られる。

「はえー、二本の魔力線を行き来し、魔力が体内で循環してやがる。それでずっと身体強化をね。こんなこと考えたこともないし、考えてもやるか普通?」

「神の眼があって、魔臓才能値Sだったら俺もやらなかったでしょうね」

小物故に失うものが無く、誕生した奇跡の魔力循環である。修理スキルにも便利だよ。

「……だよなぁ。本当に不思議なものを見せてくれる。グラン先生は一体どこでこんなのを知ったんだ。身体強化が淀みなく使えているのは、単純に使う時間が長くて熟練度が高いからなのか?」

答えてやんない。

「いいや、この細かい魔力線のおかげか。こいつのおかげでムラがない。魔臓才能値を4000台と侮るとケガするなこりゃ。身体強化がうますぎて魔臓才能値7000くらいのやつと同じ強度がありそうだ」

それが正解。どこまでも解析してくる。

こちらも相手のシンクロを暴いたが、相手もこちらの秘密を暴いてくる。

そう、俺の魔臓才能値は低いが、実は身体強化の制度が高く、魔力以上の強化がされている自覚を持っていた。当然誰に知らせることもなく、ずっと秘密にしているつもりだったのに、この目の前では何もかもが見破られる。

これ以上は見られていたくない。

俺になりに抵抗させて貰うことにした。

「あっ!!ボンキュッボンの美人のお姉さんが胸元にお酒をこぼしてる!」

「何!?どこだ!?」

言葉とは裏腹に全く慌てる素振りをしない。視線を外してくれると思ったが、そう甘くはないか。

やはり視線が外れることがシンクロの解除の条件らしい。まだ体はシンクロしている。

しかし、動揺はしたらしい。

一瞬拘束が緩んだ感じがしたので、急いで強引に動く。相手の足を払い、胸を前蹴りして突き飛ばす。

視線からの拘束が解除されたのを感じ取り、急いで姿を隠す。

息も絶え絶えに、物陰からイレイザーに話しかけた。

「はあはあ、べーだ。もうあんたの前には姿を見せてやんない」

「くー、やるね少年。いててて。それにしてもなんでシンクロが解除された?目は離していないはず」

折角なので教えてあげることにした。

「あんたが俺の身体強化を褒めた時、なんとなく感じたんだよ。普通の人は身体強化にムラがあり、完璧じゃないと。俺って結構体鍛えてて、おまけに身体強化には一部の隙も無い。でもあんたは巨乳お姉さんの存在に心が揺らいで身体強化が乱れた。たぶんその瞬間に俺の力が一瞬だけ上回ってシンクロの主導権が移った。その一瞬を付かせて貰いました」

「少年、天才かよ……。俺の能力にこんな弱点があったとは。グラン先生でさえ教えてくんなかったぞ」

大物は魔力を使え。小物は頭を使え。常識だろ?

「少年、良いこと教えてくれた礼に、俺の眼から見たあんたの弱点も教えてやろう」

そろそろ立ち去ろうとしていたが、まさかの助言くれる発言に立ち止まる。

聞いておいて損はないだろう。なんたって、あいつには体の隅々まで覗かれたのだから。

「聞いておく」

「よろしい。神の眼はもう閉じたから出てきてくれ。あんまり大きな声で話したく内容もある」

俺に関する情報も出るだろうし、大人しく従った。

一応警戒したが、あの輝くような黄金の眼は消えて死んだ魚のような目が戻ってきていた。ニートみたいな目だな。

「怖がるなよ」

「怖がっていません。気味悪がっているんです」

「傷つくなぁ」

和解の握手だろうか。スッと手を差し出してきたので、俺もそれに応じる。

手を握られた瞬間、指先から静電気が走ったような痛みを感じる。

「むっ!」

絶対にイレイザーが何かしたと思って睨みつける。

「へへっ。ごめんごめん。でもまあ、言うよりこっちの方が早い。これがお前の弱点だ。身体強化が乱れただろう?」

そう言われて初めて気づいたのだが、右手の身体強化だけが少しおかしい。完全に身体強化が解かれたわけじゃないが、明らかに力が弱まっている。

「何をした?」

「俺は昔、特殊な場所にいたんだ。表向きには知られていない組織……この国でもグラン先生や一部の貴族しか知らないだろうな」

「質問に答えて」

「まあ慌てるな」

機嫌を損ね先を急かす俺に、イレイザーが話を続ける。これが一番近道の説明だと言わんばかりに。

「 天壊旅団(テンカイ・ブリゲード) って呼ばれてる。なんと驚け、あの神を罰する組織である」

「神を?」

「そうそう。神ってのは結構わがままな連中でな。人間に協力的なのもいれば、自由奔放なのもいる。そういうのはありがたいんだが、中には悪いのもいるんだよ。人間だって同じだろ?」

「たしかに」

善人悪人。大物小物。人間にも様々いるように、神もそれぞれか。

人に協力する、激情の神カナタ。自由奔放、怠惰の神ウルス。そして人に裁かれるまだ見ぬ神か。

「そこで何度も修羅場をくぐって来たんだが、一番きつかったのが今の攻撃だ」

今の攻撃?右手を見る。

力がうまく入らない。いや、手に傷はないし、ちゃんと言うとおりに動く。ただ、周りが完璧に身体強化を行えているからこそ、身体強化ができていない右手の一部分だけがやたら気になるのだ。

「神ってやつらは、決まってこの攻撃をしてくる。おそらく俺たちには持っていない感覚で、魔力線を捉えることができるんだろうな」

「魔力線を……」

言われてようやく気付いた。

手がおかしいんじゃない。異常が起きているのは手の内部に伸びている魔力線だ。先ほどの静電気のような痛み、あれは俺の魔力線を傷つける攻撃だったのだ。

「ようやく気付いたみたいだな。俺がさっき、魔力でお前の魔力線を切断しておいた。そこだけ魔力が上手に流れないだろう?神は決まってこの攻撃をする。俺たちもこうして真似して使ったりする」

痛かった気持ちと、この切れた魔力線どうすんねんという気持ちと、その他にもいろいろと不満はあったが、俺は気づくと笑っていた。

「すげー」

出てきた言葉はこれだった。

シルクハットマン、イレイザー。生まれ持った才能だけじゃない。神との闘いでしか得られない知識を吸収して自分のものにしてしまっている。

目の前の男は俺より魔臓才能値が高いとかそういうのだけじゃない。厳しい世界を生き抜くことで、スキルや魔力の世界で、ずっとずっと先を行っている。

「どうだ?書物や私塾じゃこんなこと教えちゃくれないだろ?」

「……うん。ちょっと見直した」

「少年の魔力線は一際細い。魔力線が太い俺たちみたいなのでも、神や魔力線を斬る知識があるやつはどうにか断ち切って来ようとする。少年のを切るのは簡単だな。むしろ防ぐのが無理ってくらいだ」

その通り。

細く脆いってだけじゃない。俺のは体中に張り巡らされており、魔力線を斬ろうと思うならどこだって切断可能だ。強みが諸にそのまま弱点になってしまっている。

「それにまだある。魔力線にずっと魔力を循環させているみたいだが、ありゃ俺たちの体に備わったものじゃない。代謝もしなければ、新しく作り直すこともできない。そんなにヘビーに使い込んでいたら、こっちから壊さなくてもそのうち壊れるぞ?」

……神の眼で見ただけだというのに、俺よりも遥かに理解度が深い気がする。これが経験の差ってやつなのか。

「これは大変だ。ちょっと対策を考えます。なんだかイレイザーさん、教師っぽいですね」

「言ってて俺も思った。んーグラン先生の要請を受けてみようか」

「王立魔法学園の教師に?」

少し考え込む仕草をして、イレイザーは頷いた。

「そだな。そうしよう。悪くない。まさかこんな少年に教えられることがあるとも思っていなかった。もしかしたらあの学園で、俺はまだ強くなれるのかもな」

「どうかな!」

「なんで!?」

イレイザーはニヤリと笑い、また深々と帽子をかぶり直し、こちらに背を向けた。

「少年、良いものが見られた。グラン先生には報告しなきゃならんから少し情報を漏らすぞ」

「はいよー。こっちこそいい話を聞けたよ」

神の話と助言、そこはあんがとね。

「じゃあ2年後、学園で待ってる。お前なら難なく受かるさ」

「だと良いですが」

手を振ってくれたので、こちらも振っておく。

また会える日を楽しみに?しておくか。

「ヒナコ先生にハチが結構イケメンになっていたって言っておいて下さい!」

「べー、やなこった」

ぐっ。あのおっさん!