軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

095:新たな力

席に戻り、手に入れたものを確認する。

周囲から視線が集まるところではあるが、この辺りは『エレノア商会』の面々で固めているため、外からは視線が通り辛い。

その辺りはあまり気にする必要も無いだろう。

さて、色々と手に入ったわけだが――

「新しい武器に、スキルオーブに……ああ、スキルの進化もあったな。全く、色々と増えすぎだ」

「武器から確認しよう」

「……どっから生えてきた、フィノ」

「成長武器を貰えると予想して、待ってた。あ、これ修理した装備ね」

いつの間にか俺の左隣を占拠していたフィノが、身を乗り出しつつ声を上げる。

昨日修理を依頼していた装備を受け取りつつ、俺は彼女の様子に思わず苦笑を零していた。

強引な台詞ではあるが、その言葉自体に異論はない。

俺自身、この餓狼丸という刀には興味を惹かれているのだ。

その興味の大部分はこの刀の由来なのだが、これから使っていく以上、能力そのものも気になる。

俺はフィノの言葉に頷きつつ、餓狼丸を取り出して確認していた。

■《武器:刀》餓狼丸 ★1

攻撃力:28

重量:16

耐久度:-

付与効果:成長 限定解放

製作者:-

「……何だこりゃ?」

今使っている刀より若干弱いのも気になるが、名前の横についている星印は何だ?

それに、武器の耐久度が存在しないことや、付与効果もよく分からん。

そして、文字では表示されていないが、武器のデータの下に何やらゲージのようなものが付いている。

一体、これはどういった武器なのだろうか――そんな疑問と共に首を傾げていた俺に、フィノが横から声を上げていた。

「……データ、見てもいい? 良かったら私が解説する」

「おお、そりゃ助かる。頼んだ」

「ん……では失礼」

俺の許しを得て、フィノは身を乗り出しながら餓狼丸のデータ画面に視線を送る。

殆ど密着しているような姿勢だが、彼女はまるで気にした様子は無かった。

まあ、姿形は殆ど子供であるし、俺も全く気にはならないのだが。

「ふーん……成程、こうなってるんだ」

「何か分かるのか?」

「ん、成長武器については、アルトリウスがある程度情報を公開していた。おおよそ、私にも分かるよ」

フィノの言葉に、俺は目を瞬かせる。

まさかあの男、自分しか持っていなかった武器の詳細を公開していたのか。

奴が無意味なことをするとは思えんし、何かしらの意図はあったのだろうが――とりあえず、今は餓狼丸自体のことだ。

「……成長武器は、その名の通り武器自体が成長し、強化されていく。その強化段階が星印の数字」

「ふむ。いくつまで上がるんだ?」

「それは分からない。聖剣コールブランドもまだ★2か3辺りの筈」

つまり、俺たちのレベルのように、そう頻繁に上がるというものではないらしい。

とは言え、この武器を使い続けられるというのは俺にとっても僥倖だ。

この刀は紛れもない名刀、それに性能が伴っているのであれば言うことはない。

「成長武器は、敵を倒して経験値を稼ぐことでここのゲージが増えていく。それが最大の状態になった時、提示された素材で強化するとレベルが上がる」

「勝手にレベルが上がるってわけじゃないのか……耐久度の値も無いようだし、メンテナンスフリーかとも思ったが」

「確かに、成長武器は破損しない。けど、強化には生産職が必要だよ」

何やら期待を込めた視線で見上げてくるフィノに、思わず苦笑する。

確かに、こいつは珍しい武器だ。鍛冶師であるフィノが触りたいと思うのも無理はない。

それに、俺としてもフィノに任せることに否は無いのだ。これまでの武器で彼女の腕の良さは知っているし、預けても問題は無いだろう。

「分かってるさ、ゲージが溜まったらお前さんの所に持ってくるよ」

「ん、よろしくね……えっと、話の続き。成長武器には特殊能力がある。それが、そこに書かれている『限定解放』」

「成長は……その名の通りなんだろうが、そいつは一体何なんだ?」

「詳しいことは分からない。前例がコールブランドしか無いから。けど、仕様が同じならば、経験値ゲージ最大値の十分の一を消費して、強力な効果を発動させる特殊スキルだったはず」

「ほう……? 中々デメリットはでかいんだな」

その説明を聞き、俺は武器の説明文へと指を伸ばしていた。

この限定解放とやらをタップすれば、何かしらの情報が出てくるだろう。

同時、一つのウィンドウが表示される。適当な予想であったが、どうやら大当たりであったようだ。

■限定解放

⇒Lv.1:餓狼の怨嗟(消費経験値10%)

自身を中心に半径30メートル以内に黒いオーラを発生させる。

オーラに触れている敵味方全てに毎秒0.2%のダメージを与え、

与えた量に応じて武器の攻撃力を上昇させる。

「こいつは……」

「ほほー……これはまたえげつない能力」

まさか、敵味方関係なくダメージを与える能力とはな。

しかし、強力であることは間違いないだろう。かなり広範囲に及ぶ効果であるし、同時に武器の攻撃力まで上昇する。

正直な所、ピーキーすぎて扱いづらい所はあるが、コストの重さもあることだし、どの道そうしょっちゅう使うことは無いだろう。

「レベルが上がれば限定解放の能力も増える……かもしれない」

「最初がこれだと、何が来るのか楽しみでもあり、恐ろしくもあるな……とりあえず、こんなもんか」

さて、次は――さっさと終わるであろうスキルの進化をやっていくか。

壇上では、既にクラン部門の発表が行われているが、案の定と言うべきか『キャメロット』が一位を取っている。

予想通り過ぎて何の面白みもない状況だ。

とりあえず、スキル画面を開く。

目に入るのは、レベルが30に到達した《刀》のスキルの横にある『MAX』の文字だ。

似たような表示に見覚えはある。ルミナが進化可能なレベルになった時の表示だ。

「フィノ、お前さんはスキルの進化は分かるか?」

「……知らない。っていうか、スキルレベル30に到達した人って先生さんが初めてじゃない?」

「ああ、そうなのか」

確かに、緋真でもまだ30には届いていなかったな。

俺も今回、大量に敵を倒したからこそここまでレベルが上がったのだ。

情報が無くても無理は無いだろう。少々当てが外れた形になったが、とりあえず情報を確認しないことには始まらない。

小さく嘆息し、俺は《刀》のスキルをタップしていた。途端、ルミナのヴァルキリーへの進化時のように、三つの選択肢が表示される。

■《刀術》:ウェポンスキル

《武器:刀》の武器を装備した際に補正を適用する。

武器のサイズに影響を受けずに均等に補正を適用し、

攻撃と防御の両方にバランスよく効果を発揮する。

■《太刀術》:ウェポンスキル

《武器:刀》の武器を装備した際に補正を適用する。

武器のサイズが大きい場合に高い補正を適用し、

攻撃時に高い効果を発揮する。

■《短刀術》:ウェポンスキル

《武器:刀》の武器を装備した際に補正を適用する。

武器のサイズが小さい場合に高い補正を適用し、

回避及び不意打ちで高い効果を発揮する。

「ほーう?」

思わず、顎に手を当てて唸る。

武器種別で戦い方を決めつけられているような気がするのは少し言いたいことがあるが、内容はそこそこ単純だ。

要するにバランス型か攻撃型か回避型か、ということだろう。

後は、どの武器を優先的に使っているかということなのだろうが――正直どちらも使っている。

メインで使っているのが太刀であることは事実だが、小太刀も普通に利用しているのだ。

であれば、普通にどちらにも効果を発揮する《刀術》を選択するべきだろう。

「 師範代たち(あいつら) ならば偏らせるのもアリなんだがな……ま、いいだろう」

スキルを進化させるには、どうやらスキルポイントを5点消費するらしい。まあ、余っているからそこは問題ないのだが。

軽く肩を竦め、《刀術》を選んで確定する。

これによって、《刀:Lv.30》が消えて《刀術:Lv.1》に変化した。

また最初から上げ直しか、と思わなくはないが――正直ウェポンスキルについてはいつの間にか上がっていた程度の認識だ。

Lv.1になったとしても、それほど差は無いだろう。

「さて……最後はこれか」

先ほど手に入れた、無記名のスキルオーブ。

左手に持って右手を翳してみれば、案の定、大量のスキルの名前が表示されていた。

しかし、本当に数が多い。どれを選んだもんか――

「はぁ、はぁ……間に合ったか。済まない、少しよろしいかな、クオン殿」

「あん?」

背後から掛けられた声に、俺は眉を顰めながら振り返る。

そこにいたのは、腰に仰々しいケースのようなものを付けた、白衣の男性。

黒髪に無精髭のその姿は、現実にそのままいてもそれほど違和感のない見た目だ。

「失礼、私はプロフェッサーKMK。クラン『MT探索会』のクランマスターです」

「ああ、エレノアの言っていた……どうも、既にご存知のようだが、クオンです。それで、何か御用でも……プロフェッサー?」

「呼びづらければ『教授』でも結構ですよ。見たところ、早速スキルオーブを使用するところだったようですが、その前に少しご協力をお願いしたい」

ふむ、協力ね。特に急ぎの用事も無いし、それほど問題は無いのだが――さて、何を協力しろと言うのか。

そんな俺の疑問を晴らすように、半眼を浮かべたエレノアが振り返りつつ声を上げていた。

「プラチナで取れるスキルが何なのかを確認したいんでしょ? それと効果も。どうせゴールドの方はもう確認済みなんでしょうけど」

「ははは、当然だとも。どうかな、クオン殿。協力していただければ、こちらからもお礼をさせていただきますが」

「礼ね……具体的には?」

「ふむ、とりあえず350万ほどでどうかな? それに加えて――」

あっさりと放たれたその言葉に、俺は思わず絶句していた。

少なくとも、ポンと提示するような金額ではない。

そんな俺の隣で、エレノアは再び呆れたように口にしていた。

「貴方、私がいる隣でよくそんなことが言えるわね。 安すぎ(・・・) でしょう?」

「お、おい、エレノア?」

「クオン、そのアイテムでしか手に入らないスキルは、現状では取得不可のレアスキルも含まれている可能性が高いわ。特に、ゴールドとの差分があるスキルは間違いなく珍しいものよ」

「それはまあ、理解できるが……」

「そんな珍しいスキルの、取得条件こそ分からずとも、効果までは閲覧できる。これがどれだけ貴重な情報だか、分かるでしょう?」

その言葉に、俺は視線を細めつつも納得していた。

俺の持つ《収奪の剣》も、似たようなものだと言えるだろう。

取得条件が分からず――いや、オークスから習得できるのかもしれないが――それでいて、高い効果を持つスキル。

今後取得できるかもしれないとなれば、そのスキルの詳細は値千金の情報となるだろう。

それに、多少効果が分かれば、取得のための条件も類推できるかもしれない。

エレノアの言葉に、教授は苦笑を浮かべて頭を掻きつつ続けていた。

「いえ、私も金だけで済ませるつもりではなかったのですが……しかし確かに、350万では少ないですね。では、500万に加え、提供していただいたスキル情報の数に応じて、こちらも無償で情報提供に応じるというのはどうでしょうか」

「……お、おう。ええと、どうなんだ?」

「妥当な所よ。それとも、もう少し引き出しておく?」

「いや、いい。それで頼む」

「ありがとうございます、クオン殿。ついでと言ってはなんですが、良さそうなスキルを見繕いましょう」

何というかまぁ……この人物も、組織を上手いこと運営できるタイプのようだ。

流石にエレノアほどではないのだろうが、高い資金力を持っているのは間違いない。

見た目の年齢は三十代半ばほどだが、リアルではもっと年を取った人物なのかもしれないな。

(とはいえ……ある意味、都合は良かったか)

スキルオーブで表示されているスキルは、ざっと見ただけでも数百を超えている。

これを全て確認してスキルを探すのは流石に骨だ。

彼に手伝って貰えるなら、幾らか効率的に選ぶことが出来るだろう。

流石に、一人でやったら何時間かかるか分かったものではないからな。