軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

941:剣士の結集

俺に付いていきたいという戦刃の言葉であったが、他のメンバーもこれには同意であったらしい。

第四エリアの探索を終えてやってきた門下生たちは、基本的にデスペナルティの解除を待ちつつ準備を行うこととなった。

メンバーは全員揃って死に戻っており、行けるところまで行ってから戻ってきたようだ。

師範代たちはジジイまで辿り着いている辺り、中々に頑張ったものではあるが。

「良い経験になりましたが……まだ一太刀も届きませんでしたね」

「うむ、まだまだ足りんな」

師範代たちは全員、俺が師範になるよりも前からその座にいるため、当然ながらジジイとの交戦経験はある。

しかしながら、真剣を用いた殺し合いを行ったのは今回が初めてだろう。

殺す気のジジイを相手にしたことは無かっただろうし、それもいい経験になったはずだ。

尤も、本物があれ以上だと考えると気が遠くなるような話だろうが。

「お兄様は、あの先代にも勝ったのですね」

「まあ、なぁ」

ユキの言葉には、軽く肩を竦めて首肯する。

元々、一度はジジイのことを上回ったのだ。

だというのに、『唯我』を使えないジジイを相手に負けるわけにはいかない。

それでは、本物のジジイを相手に勝利するなど夢のまた夢だろう。

「それで、師範。結局、この後はどうするんだ?」

「そうだな……」

ともあれ、ジジイの話は後回しでもいい。

今気にするべきは、これから挑むダンジョンだ。

「俺たちが挑もうとしているのは、右から二つ目。大公ヴァルフレアのものと思われるダンジョンだ」

「確か、強い敵が多いエリアでしたよね」

「ああ。能力や行動が制限されるわけじゃないが、純粋に敵が強い。そういうエリアだ」

頷きつつ、ちらりと緋真に視線を向ける。

俺の合図を受けた緋真は、ウィンドウにいくつかの情報を表示しつつ続けた。

「構造は、一般的なダンジョンアタックです。とにかく地下へ地下へと潜っていく形になります。ただ、エリア自体はかなり広めで、大人数で行動しても邪魔にならない程度のスペースはあるようです」

洞窟型ということで少々懸念していた部分はあったのだが、どうやら十分な広さは確保されているらしい。

とはいえ、屋内だと真龍二体を本来のサイズで動かすことは難しいだろうし、そこはある程度大きさを縮める必要はあるだろうが。

今回はベルも外に出せそうだし、できれば羽を伸ばさせてやりたいところだったんだがな。

「今のところ、出回っている情報はほとんどが第一層のものばかりですね。第二層以降の情報はほとんどありません」

「それは、まだ到達しているプレイヤーがいないということですか?」

「いえ、到達しているメンバーが情報を公開していないという点もありますが……どうも、そもそも調査がしづらいようですね」

緋真の言葉に、思わず首を傾げる。

第二層への到達が難しいという点についてはわかるが、調査が難しいというのはどういうことか。

これについては揃って疑問に思っていたのか、水蓮がそれに対して声を上げた。

「第二層以降には何か制限でも?」

「制限と言えば制限なんですが……どうやら帰還のスクロールが使えないみたいです。しかも、階層への転移手段なども無いようですね」

「……それってつまり、奥まで進んだら徒歩で戻らないといけないってこと?」

「はい。幸い、構造はそこまで複雑じゃなくて、道に迷う程じゃないみたいですけど……」

「確かに、楽観視できるもんじゃなさそうだな」

普通に難易度が高いエリアだ。相応に消耗もあるだろう。

しかし、そんなエリアで限界まで進んでしまえば、戻るだけの余力が無くなってしまう。

現在の消耗と、先行きの長さを比較して判断しなければならないのだ。

尤も――先がどこまであるのかもまだ不明なわけだが。

「単純だが、厄介な仕様だな。可能な限り物資は持ち込んでおいた方がいいか」

「ですね。どうしても消耗は避けられませんから」

「あまりダメージを負ってしまうと、あと後でジリ貧になりそうですね……まあその辺、師範はある程度余裕があるかもしれませんが」

「別段、そのために今みたいな構成にしてるわけじゃないんだがな」

水蓮の言葉に、苦笑を零す。

確かに、俺のスキル構成は自動回復を多く取り入れている。

そういう意味では、回復アイテムによる補助は最低限でも問題はない。

一度の戦闘で消耗しすぎなければ何とかなるのだ。こういった場面では、このメリットは中々に大きいだろう。

「とりあえず、レイドでも敵の強さに変化がないことは事実のようです。最初からレイドでの攻略を想定されていることは間違いないみたいですね」

「……そうでもなければ、まともに攻略できる難易度ではないんじゃない?」

呆れを交えた様子のアリスの言葉だが、それを否定することもできないだろう。

話を聞く限り、とてもではないがパーティ単位でどうにかなるような場所には思えない。

あの時、ドラグハルトとヴァルフレアの戦いを見たからこそ脳裏に浮かぶ、圧倒的な力。

あれがヴァルフレアの力の基準であるならば、そのダンジョンも相応の難易度であるだろう。

とはいえ、流石にあれほどの力を対面するとは思いたくないのだが。

「それで、出現する敵とボスはどんな感じでしょうか?」

「ドラゴン系が多いみたいですね。リザードマン、亜竜……バランスよく強力な敵が多いですね」

「人型の分類はいいが、ドラゴンもいるか。ボスもその類ってわけだな?」

「そうですね。第一層から、大型のドラゴンがボスになるみたいです」

ヴァルフレアの正体があの黒いドラゴンであったし、その系譜と言われれば納得できるラインナップである。

人型のリザードマンやドラゴニュートはまだ戦いやすい方ではあるのだが、ドラゴンの相手はそれなりに骨が折れそうだ。

まあ、こちらにはシリウスとベルがいるわけだし、何とかなるだろう。

「第一層のボスは屋内ということで飛行はしないみたいですが、四足歩行で素早く移動してくる感じみたいですね。一応ドラゴンです」

「ふむ……まあ、飛ばれるよりはマシか」

それなりに厄介そうな敵ではあるのだが、空を飛ばれるよりはよほど戦いやすいだろう。

門下生たちも、地上の敵が相手ならばまだ戦いやすいはずだ。

それを相手にどの程度苦戦するかはわからないが――まずは、第一層を試金石にしてみるべきだろう。

「とりあえず、今判明しているのはこんなところですね。正直、かなりの消耗を強いられると思うので、準備は万全にしておきたいです」

「そうだな。お前たちもさっきのエリアでそれなりに消耗しただろう。消耗品の補充は普段よりも多めにしておけよ」

俺の言葉に頷き、門下生たちはいったん立ち上がる。

向かう先は、外で店を開いている『エレノア商会』の露店だろう。

装備の修復や消耗品の補充、そして追加。準備すべきことはいくらでもある。

先行きの不透明な戦となれば、それも猶更だろう。

可能な限り万全の準備を整えておくべきだ。

「……こいつも、だな」

腰に佩いた二振りの小太刀に触れ、小さく呟く。

まだ早いかとも思っていたが、これもいい機会ではあるだろう。

そろそろ、こいつらも強力な武器を握ってもいい頃だ。

流石に、これがあればジジイに勝てたなどと思い上がることも無いだろうし、ここいらで一つ活躍の機会を増やしてやることとしよう。

「さて……素直に攻略させてくれるかね」

第四のエリアは相性が良かった。

だが、ここから先はそうもいかないだろう。

果たしてどのような困難が待ち受けているのか――それを乗り越え、踏破してみせるとしよう。