軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

665:山脈へ

翌日、成長武器の再強化を終えた俺たちは、早速レーデュラム跡地へと向けて出発した。

今回の目的地は中々に遠いため、泊りがけの行軍になることだろう。

他のプレイヤーは一切進出していない領域までの出張となるため、当然ながら土地の情報はカエデからの口頭のものしかない。

行き当たりばったりな予定であるのだが――まあ、他に方法もないし、何とかするしかないだろう。

「まずは、山脈まで続く街道に向かうんでしたっけ?」

「そうだな。飛ばなくてもいいが、騎乗はして向かうぞ」

飛行すれば移動速度は速いのだが、やはり他の面倒が多くなる。

セイランたちは地上を駆けるのにも特に不足は無いし、飛行はせずにそのまま向かうとしよう。

既に『エレノア商会』の手によって改修がされ始めているこの都市であるのだが、そのペースは以前ほどではない。

急速に領地を増やすこととなってしまったため、流石に手が足りていないのだろう。

幸いと言うべきか、この都市はデルシェーラの氷に覆われていたためか、物理的な破壊はそこまで酷くはない。

ある程度の補修だけでも、十分に防衛可能な状態であった。

「……流石に、急ぎ過ぎたかもしれんな」

「何がですか?」

小さな呟きを緋真に拾われ、俺は軽く肩を竦める。

分かり切っていた話ではあるのだが、中々に悩ましい状況なのだ。

「不可抗力とはいえ、状況の推移が早すぎるんだよ。本来ならもう少し、力を付けながら慎重に事を進めたかった」

「霊峰の確保から、ここまでほぼノンストップだったものね」

「あー……そういう意味では、ドラグハルトの登場はちょうど良かったのかもですね」

プレイヤーの状況から、どうしても霊峰そのものは確保する必要があった。

しかし、そこから端を発した悪魔との戦線は、結局デルシェーラを倒し切るまで落ち着くことはなかったのだ。

正直不可抗力であったため仕方のない話なのだが、もう少し着実な歩みをしたかった。

先陣を切っていた俺が言うのもどうかという話ではあるのだが。

「戦線が膠着したのはこちらとしてもありがたいし、しばらくは態勢を整えたいところではある。が……ドラグハルトが非常に有利な状況なのも気になるところだ」

「でも、仕方ないんじゃない? 手の出しようもないし」

「それはその通りなんだがな」

アリスの言うように、今はドラグハルトの妨害をすることは不可能だ。

状況という意味でも、手段という意味でも、奴らの動きを止めることはできない。

どうにも気になってしまうことは事実だが、ない袖は振れない。ドラグハルトについては、今は能動的な手段を取ることはできないのだ。

「精々、こちらの態勢が整うまで、ドラグハルトが大人しくいてしてくれることを祈るばかりか。気に入らんが、仕方ない」

希望的観測に過ぎるが、どうしようもない。

こちらにできることは精々、その間に力を蓄えておくことぐらいだろう。

そのためにも、ティエルクレスの素材は確保しなくては。

「よし、出発するぞ。消耗品の準備は問題ないな?」

「買い込んでありますから大丈夫ですよ」

「行きましょう。でも、なるべく稼ぎながら行きたいところね」

ティエルクレスがどこまで強いのかはまだ分からない。

だが、カエデから聞いた逸話からも、以前に戦ったネームドモンスターの実力からしても、かなりの強敵であると見積もった方がいいだろう。

アリスの言う通り、辿り着くまでにできるだけ鍛えた方がいいこともまた事実だ。

「……用事がない以上、急ぐ旅でもない。目につく敵は倒しながら進むとするか」

せめて目的を達するまでドラグハルトが動き出さないことを祈りながら、俺はセイランへと合図を送り、移動を開始したのだった。

* * * * *

「そのまま行け、セイラン! 《ワイドレンジ》、《練命剣》【命衝閃】!」

地上を移動することしばし、街道からそれていることもあり、俺たちは度々敵に遭遇していた。

幸いなことにというべきか、この近辺には悪魔の拠点となっている都市はないようで、際限なくアルフィニールの悪魔が現れるということもない。

あいつらはそれなりの稼ぎになるのだが、一度戦闘が始まるとしばらくは戦い続けなければならなくなる。

移動が目的の今は、正直戦いたくない相手であった。

そんな中で、俺たちが主に標的にしたのは、巨大な牛の魔物であった。

名前はクラッシャーブル。5メートル程はあろうかという巨体だが、中々に直線的な移動の速度は速い。

また、地属性の魔法を操り、防御力も高く持続的な回復能力も持っている。

攻撃力が足りない場合は、かなり苦労する相手となるだろう。

尤も――

「クェエエエッ!」

セイランが発した嵐の魔法が、クラッシャーブルの纏っていた岩の装甲を打ち砕く。

その上で一直線に駆け抜けた俺たちは、装甲に開いた隙間へと【命衝閃】の一撃を叩き込んだ。

強靭な肉体とはいえ、高い威力を誇る【命衝閃】を受けて無事で済むはずがない。

槍と化した生命力の刃は、その肉体を貫いて臓腑を破壊した。

槍部分が長いため餓狼丸の刀身まで相手の肉に埋まることはなく、俺はある程度のところで【命衝閃】を解除し――

「ケエェッ!」

「ブモォオッ!?」

その傷口へと向けて、セイランが前足による一撃を叩き込んだ。

強靭な前足と鋭い爪による一撃は、迸る紫電を纏いながら、クラッシャーブルの肉へと直接に叩き込まれる。

強大な攻撃力と、猛る魔力。その両方を余すことなく受けたクラッシャーブルは、内側から肉を弾けさせながらその場に横倒しとなった。

それを見たセイランは、一度翼を羽ばたかせ、その場で大きく跳躍する。

振り上げた右前脚に集うのは、黒く逆巻く嵐の魔力だ。

「打ち砕け!」

「クェエエエッ!」

跳躍したセイランの一撃は、倒れたクラッシャーブルの顔面へと叩き込まれる。

その衝撃には耐えきれず、クラッシャーブルのHPはあっさりと消滅することとなった。

「防御力は高いが、攻撃力さえ足りていればそこそこに仕留めやすい。ちょうどいい相手だな……修行には物足りんが」

クラッシャーブルは、一度に出現する数は二体か三体程度。

であれば、一体は俺とセイラン、もう一体は緋真とアリス、そしてルミナ。

最後の一体はシリウスに押さえさせておけば容易に勝てる相手である。

それでいて得られる経験値は中々多いため、レベリングには都合のいい相手であった。

まあ、あまり仕留めやすい敵というのも、正直退屈ではあるのだが。とはいえ今日の目的は移動であるため、苦戦するような敵は後の楽しみにしておくこととしよう。

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀神》のスキルレベルが上昇しました』

『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《致命の一刺し》のスキルレベルが上昇しました』

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復特性》のスキルレベルが上昇しました』

『《超位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『《見識》のスキルレベルが上昇しました』

『《血の代償》のスキルレベルが上昇しました』

『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』

『《 再生者(リジェネレイター) 》のスキルレベルが上昇しました』

『《ワイドレンジ》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』

どうやら、緋真たちも戦闘が終わったらしい。

さて、レベルが上がったのはいいことだが――ちょうどレベル120、節目のレベルだ。

新たなスキル枠も生えてきたことだし、いったん休憩して、山脈を超える前にステータスを整理することとしよう。