軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

624:風の歩む先、凍れる城塞あり その11

『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《致命の一刺し》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動超回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動超回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《クロスレンジ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復特性》のスキルレベルが上昇しました』

『《超位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』

『《会心破断》のスキルレベルが上昇しました』

『《 再生者(リジェネレイター) 》のスキルレベルが上昇しました』

『《ワイドレンジ》のスキルレベルが上昇しました』

それなりに強い敵であったためか、スキルのレベルもそこそこ上昇させることができた。

とはいえ、このダンジョンの中では色々と制限もあるし、あまり積極的に戦いたい相手でもなかったが。

とりあえずは一段階警戒のレベルを下げ、先に戦っていたパーティの代表らしき槍使いの青年へと声をかける。

「よう、無事だったか?」

「無事とは言い難いが……ありがとう、本当に助かった」

悔しげな様子は残っていたが、それでも槍使いは深く頭を下げてくる。

確認すると、盾を持っていた回復魔法使いは復活が間に合わずに死に戻り。戦線の崩壊後に巻き込まれたらしい魔法使いは、ギリギリで蘇生が間に合ったようだ。

そして、抜け駆けをしようとしたスカウトであるが、辛うじて生きていたらしい。《聖女の祝福》でもセットしていたのだろうか。

しかし、前線の要であるタンクが落ちたとなると、一度撤退する他ないだろう。

尤も、近い内に門の一つは解放される筈だ。スタート地点からでもここからでも、そうそう距離は変わらないだろう。

「さてと、それじゃあアレは開けさせて貰うぞ」

「……そうだな。そっちの手柄だ」

渋々という表情は残っていたが、それでも槍使いは素直にこちらの手柄を認めた。

あれだけ必死で封印の解放を目指していたのだから、譲ることに抵抗を覚えるのも仕方のない話だろう。

しかしながら、一度はこちらに譲られた立場である以上、ここでごねるような真似はしないつもりであるようだ。

――だが、それに納得できない者もいたらしい。

「おい、何言ってんだ!」

祠へと向かおうとする俺を留めたのは、先程ゴーレムに蹴り飛ばされたスカウトの男であった。

半ば反応は予想できていたため、軽く溜め息を吐きつつそちらへと視線を向ける。

こちらのことを警戒するスカウトは、槍使いへと向けて食って掛かるように声を上げた。

「辿り着いていたのは俺たちが先だぞ!? あれを開ける権利は俺たちのもんだろうが!」

「お前こそ何を言ってるんだよ。結局俺たちじゃ、あのゴーレムを倒せなかっただろうが! そもそも、お前が罠の解除に成功していれば済んだ話だろ!」

「それは……ッ、そいつらが急かさなきゃ成功してたに決まってる!」

こちらを指差しながら喚く男に、思わず失笑を零す。

何ともまぁ、自分勝手な感想だ。多少なりともこのパーティの努力は買っていたのだが、流石にコイツに譲ってやる気は起きないな。

「罠の解除に成功しても、お前さんたちだけでゴーレムを倒していても譲っていたさ。だが、罠を発動させてゴーレムにも勝てませんでした、なんて状況じゃ話にならんだろう」

「貴方たちが罠の解除に取り掛かった時点で、私たちは足を止めていましたからね。それでも解除に失敗したのは、貴方の腕が足りていなかったからでしょう」

「そっちが余計なことをしなけりゃ成功してた!」

「俺たちは何もしていないし、お前さんが勝手に勘違いしただけだろう。後続がいたら待ったをかけても良かったぞ?」

幸い、後ろに迫ってきている他のパーティはいなかったのだが、実際に来たら足止めをしても良かったと思っている。

早い者勝ちであるとはいえ、横取りなんて見ていて気分のいいものでもないからな。

だが、それでもスカウトの男が納得する様子はない。というより、この類には最初から言葉は通じないと考えていいだろう。

「別に、こっちはお前さんたちが全滅するまで傍観してから手を出しても良かったんだ。そっちの方が後腐れがなくて良かったか?」

「いや、無駄なデスペナルティを受けなくて済んだんだ。礼を言いこそすれ、文句を言えるような立場じゃない」

「思わず助けを求めちゃったけど……絶対に、私たちだけじゃ勝てなかったと思うし」

連携はまあまあだったと思うのだが、武術の心得がある二人頼りである点はいただけない。

その辺りをカバーできるだけの技術を手に入れられたのならば、あのゴーレムにも勝利できただろうに。

まあ、それでもここまで来ることができている辺り、何かしらの奥の手はあったのかもしれないが。

どちらにせよ、あの時点で戦線は崩壊しかけていた。あのまま勝利することはあり得なかっただろう。

「くそっ……お前らがあのデカブツに勝っていれば!」

「戦闘に参加せずに抜け駆けをしようとして、一方的にやられた奴の言うセリフじゃないな」

自分が何もできずにやられたことについては多少思うことがあるのか、男は言葉を詰まらせる。

援護なり何なりして、あのゴーレムの足止めでも出来れば多少は勝ちの目もあっただろうに。

もしもあの時点で祠を開けることに成功していたら、そのまま逃げて俺たちにゴーレムを押し付けていたことなど想像に難くない。

どうしても性根の曲がったやつというものは一定数存在する。もはや説得する意味もないと、俺は祠へと向けて足を進めた。

だが、随分とあきらめの悪いこの男は、掴みかかってでも俺を止めようと足を踏み出し――仲間の槍使いによって肩を掴まれ止められた。

「いい加減にしろ、俺たちはミスったんだよ! その責任は俺たちのものであって、あの人は関係ない!」

「ふざけんなよ、みすみす手柄を渡していいってのか!?」

「渡したんじゃない、俺たちには手に入らなかっただけだ!」

いい加減諦めの悪い様子であるが、これ以上の問答は無駄だ。

あの男以外は納得している様子であるし、ここはさっさと祠を開けて先を急いだほうが建設的だろう。

しかし、往生際の悪い男は身をよじり、仲間の拘束から逃れようとして武器に手をかけ――

「――今、何をしようとしたのかしら」

――凍るような声音に、体を硬直させた。

身を隠して状況の推移を見守っていたのだろう、これまで姿を見せなかったアリスが、ここでようやく声を上げたのだ。

武器は抜いておらず、戦闘態勢ではない。だが、これ以上ないほどに鋭く冷たい刃のような殺気を放ちながら、彼女はフードの隙間から男の顔を覗き込んでいたのだ。

「仲間の手を振り払うぐらいならいいけど……まさかそのまま、クオンに斬りかかろうだなんて思っていないわよね?」

「な……ッ!?」

「もしそうなら、今度こそ石碑に戻って貰うことになるけど――どうなのかしら?」

人を突き刺すという行為を疑似的とはいえ続けてきたアリスは、『人を殺す』という感覚を直感的に理解している。

故に、アリスが放つ殺気は、並の門下生よりもよほど強い。下手をすれば、師範代たちにも匹敵するほどだ。

それは、素人には到底耐えきれるようなものではないだろう。

身を硬直させた男は、腰の武器からゆっくりと手を離す。それを確認して、アリスはようやく殺気を収め、男の傍からゆっくりと離れて行った。

これ以上は問答も意味はないと、俺はさっさと祠へと近づき、その扉を開いた。

中にあったのは紫色の円盤――光を発したそれは、遠くへとその光を放って崩壊していく。

これで、三つ目の封印を解除することができただろう。四つ目を探すか、またはほかのパーティに譲って門へと向かうか――その辺りは、歩きながら決めればいいことだ。

「畜生……ふざけんなよ、晒してやるからな……!」

「お前、まだそんなことを!」

「ふむ。まぁ、勝手にすりゃいいさ。血の気の多い奴が喧嘩を売ってくるなら、それはそれで面白いだろう?」

負け惜しみの声を上げる男に対し、俺は横目に視線を向けながら笑みを浮かべる。

その言葉に男が絶句している内に、彼の仲間たちは深々と頭を下げ、帰還のスクロールで撤退していったのだった。

「あのまま斬りかかってきたなら、それはそれで面白そうだったんだがな」

「全く……あの様子だと、懲りてはいなさそうだけど」

「何かを仕掛けてきたなら、相応に対処するまでだ。あの類は、どうしたところで納得はしないからな」

言葉を重ねる時間を無駄にするだけだ。適当に流した方がよほど建設的である。

それでも手を出してくるというのであれば――後は存分に、剣を振るわせて貰うこととしよう。

「さて、とりあえず次に向かうとするか。一旦、中央の防壁に向かうつもりでな」

「……了解。まあいいわ」

「はい、そろそろもう一つの封印も発見されてそうですしね」

アルトリウスの手際ならば、恐らく何とかしていることだろう。

その辺りにも期待しつつ、先を急ぐとするか。