作品タイトル不明
604:戦いの終わりと始まり
『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』
『《刀神》のスキルレベルが上昇しました』
『《格闘術》のスキルレベルが上昇しました』
『《格闘術》のスキル進化が可能です』
『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』
『《神霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』
『《致命の一刺し》のスキルレベルが上昇しました』
『《MP自動超回復》のスキルレベルが上昇しました』
『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』
『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』
『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』
『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』
『《HP自動超回復》のスキルレベルが上昇しました』
『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』
『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』
『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』
『《クロスレンジ》のスキルレベルが上昇しました』
『《回復特性》のスキルレベルが上昇しました』
『《超位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』
『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』
『《見識》のスキルレベルが上昇しました』
『《血の代償》のスキルレベルが上昇しました』
『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』
『《会心破断》のスキルレベルが上昇しました』
『《 再生者(リジェネレイター) 》のスキルレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』
意外なことではあるが、エリザリットが倒れたその瞬間、悪魔たちは撤退を開始した。
生存しているプレイヤーの数は百を割っており、遠く離れた石板からの復活となっているため戦線復帰は不可能。
たとえデルシェーラとエリザリットがいなかったとしても、悪魔側は有利な状況に変わりはなかった。
それでも撤退を選択したということは、あらかじめそのように指示を受けていたということだろう。
恐らくはエインセル――デルシェーラに兵力を貸し出したであろう大公だ。
「情報を持ち帰られるか……仕方ない」
可能であれば、こちらの手札を分析されたくはなかった。
しかし、この状況では敵の追撃など不可能だ。口惜しいが、撤退する奴らを見送るしかない。
どれだけ奮起したところで、百に満たない戦力では、悪魔の軍勢を殲滅することなど不可能なのだから。
「ったく……成功したとはいえ、勝ったとは言えんな」
ここまでの戦いで、この街は完全に破壊し尽くされている。
この状況では、修復するよりも一から立て直した方が早そうな様相であるし、元々の立地の問題もある。
やはり、ここを悪魔との戦いの最前線として利用するのは見送るべきだろう。
まあ、その辺りのことはアルトリウスやエレノアが勝手に考えるだろうし、こちらで気にすることでもあるまい。
それはそれとして――
「……もう行くのか?」
「慣れ合う義理はないでしょう? 今回は面倒なストーカーが敵だったから、お互いに利用しただけよ」
「ま、それもそうだな」
戦いが終わったからか、ロムペリアはさっさと踵を返して立ち去ろうとしている。
種族は人間になったとはいえ、別段味方同士というわけでもない。
今回は、利害が一致したから共闘しただけだ。
「だが、報酬ぐらいは請求したのか?」
「前払いで受け取ってるわ。それじゃ」
さて、果たしてどのような報酬が支払われたのやら。
アルトリウスからか、或いはファムからか――まあ、ロムペリアも少しずつ人間社会に馴染んできているようで何よりだ。
いずれ決着をつけるにせよ、それまでに下らんことで倒れる心配もないだろう。
そんなことを考えつつ、こちらも味方と合流しようと歩き出す。
――声が響き渡ったのは、その直後のことであった。
『条件を達成しました。ワールドクエスト『風の歩む先、凍れる城塞あり』が発生します』
「っ……!」
思わず、息を飲む。
それは、ワールドクエストの発生を告げる宣言。
その内容が何を指し示しているかなど、最早考えるまでも無いだろう。
「デルシェーラと決着をつけろと。つまりは、そういうことか」
視線を動かせば、立ち去ろうとしていたロムペリアも一度足を止めていた。
どうやら、今の声は彼女の耳にも届いていたらしい。
分類上は彼女も 現地人(NPC) だとは思うのだが、果たしてどのような基準で聞こえてきたのか。
しかし、それでもこちらに手を貸すつもりは無いらしく、彼女はそのまま無言で立ち去って行った。
ロムペリアはきちんと自分の実力を把握している。勝ちの目が薄い戦いにまで顔を出すつもりはないのだろう。
「何にせよ……まずは態勢の立て直しか」
エリザリットを仕留め、デルシェーラに痛手を与えた。
しかし、そのために支払った代償は、決して安いものではない。
この都市を使った悪魔共の時間稼ぎと侵攻計画を退けたとはいえ、完全に有利な状況になったというわけではないのだから。
とりあえずは、あの馬鹿共を回収して撤退することとしよう。
どうやら、生き残りの内の三分の一はうちの馬鹿共のようであるしな。
* * * * *
「お疲れ様ねぇ、兵士の皆さん。シェラートにしては、予想通りの戦果だったかしらぁ」
「敵の情報に未知数部分が多すぎるだろう。これでもかなりの戦果だとは思わないのか?」
「入力値が不十分だったのは認めるわよぉ。予定通りの戦果を挙げられたんだし、十分は十分でしょ」
半眼を向けるこちらの視線など何のその、ファムはいつも通りの様子でそう口にする。
彼女の言う通り、最低限目標であったエリザリットの撃破に加え、デルシェーラに痛手を与えることにも成功した。
こいつの計算通りであるならば、公爵級悪魔の体力を一部削ることに成功したわけだ。
そう考えれば、今回の間に合わせの作戦にしては十分な戦果であったと言えるだろう。
「で、アルトリウスの奴はどうした?」
「各方面への連絡ね。ま、すぐに来るでしょ」
拠点まで戻ってきて、アルトリウスはすぐさま後始末に奔走しているらしい。
『キャメロット』の戦力が壊滅寸前まで追い込まれたのは今回が初めてだろうし、色々と調整があるのだろう。
それ以外にも、このクソビッチが酷使した聖女へのアフターケアもあるだろうしな。
「はぁ……それで? お前はどんなイカサマを使ったわけだ?」
「イカサマだなんて人聞き悪いわねぇ。ルールに則って、きちんと戦っただけじゃない」
「まともな方法で公爵級の動きを止められるものかよ。石板に罠を仕掛けていたんだろうが――」
「ファムさん、《呪詛術》を使ったんですか?」
と、俺の疑問にも答えるつもりだったのだろう、隣から緋真が声を上げる。
その言葉を、ファムは否定することなくにんまりと笑みを浮かべた。
ちなみに、アリスはこいつが苦手なようで、とっとと姿を消している。
「《呪詛術》っていうのは?」
「先生の《神霊魔法》みたいな、スキルオーブ産かイベント産のレア魔法です。効果が限定的かつ扱いづらいので、実際に使っている人は初めて見ましたけど」
緋真がここまで言うということは、かなり珍しい魔法なのだろう。
苦労して手に入れた魔法が扱いづらいとなると、使い手などほとんど見かけないことだろう。
「私からしたら、こんなに面白い玩具はそうそうないんだけどねぇ」
「スキルツリー的には《呪術》から成長したのが《呪詛術》なんですけど……基本的には対象にデバフを与える魔法です。攻撃性能はあんまり無くて、付与成功率が高いのが特徴ですね」
「確かに、コイツが好きそうな代物だな」
デルシェーラに対しても、『拘束』と『烙印』の状態を与えていた。
公爵級にすらその効果を通しているのだから、付与率は確かに高いのだろう。
だが、だとしても公爵級を長時間拘束できるのは不可解だ。
たとえ刻印を使ったルミナであったとしても、奴を長時間捕らえることなどできなかっただろうに。
だが、その疑問に対する答えは、緋真が既に持ち合わせていたようだ。
「特に特徴的なのが、【 呪(とこ) いの 颶風(かぜ) 】っていう呪文ですね。この呪文は他の呪文と組み合わせて使うんですけど……簡単に言うと、そのもう片方の呪文の発動条件を指定できるんです」
「大方は合ってるけど、正確にはその発動条件次第でもう片方の呪文を強化できるのが【 呪(とこ) いの 颶風(かぜ) 】よぉ」
緋真の言葉と、ファムの補足。それを合わせて、大まかな部分は理解することができた。
つまり――
「お前はあの時、石板の破壊と自分の死を発動条件にしていたわけか」
「そうそう。特級の貴重品である石板、そして自分自身の命……これらが失われることを前提とした呪文は、大幅に効果を増幅してくれるのよぉ」
つまりこのクソビッチは、最初からデルシェーラが石板の破壊を狙ってくることを睨んで、そこに罠を仕込んでいたわけか。
そして、痛手を受けたデルシェーラが、逆上して襲ってくることまで想定した上で自分の命を差し出したと。
本当に、大層な真似をしてくれるものだ。
「ったく……エレノアへのフォローはせんぞ?」
「その辺りは自分で何とかするわぁ」
石板をそのように使われて、エレノアも大層腹を立てていることだろう。
まあ、作戦行動に必要だったと考えれば、その辺りにも理解は示してくれることだろうが。
ともあれ、その辺りのことは勝手にやって貰うこととして――今は、この先の話だ。
俺はそう考えつつ、ちょうど部屋へと入ってきたアルトリウスへと向き直ったのだった。