軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

006:北の平原

「とりあえず、戦闘が始まる前にスキルについて説明しておきます」

「まだ何かあるのか……?」

「面倒くさそうな顔しないでくださいよ、もう」

フィノから買い取った装備を身に纏い、パーティを組んだ俺と緋真は街の北側にある草原へと足を踏み出した。

見渡す限りの草原であるが、周囲にはそこそこプレイヤーの姿が見受けられる。

どうやら、目的は俺と同じく、この平原の敵との戦闘のようだが……ああも人が多いと邪魔だな。

まあ、先まで行けば多少人も減るだろう。その間に、そのスキルの説明とやらを聞いておくとしよう。

「先生も知っていると思いますが、スキルにはいくつか種類があります。ウェポンスキル、マジックスキル、セットスキル、サブスキルですね」

「ああ、そこは作成時に説明を受けたな」

「スキルは、スキル枠がある分だけ装備することができます。スキル枠はウェポンとマジックで一つずつ、セットは初期だと五つ。今の先生の場合、効果を発揮できるスキルはこれだけです」

今の俺の場合は、持っているスキルは全て装備している状態だ。

だが、今後スキルを習得するとなると、スキル枠を増やすか、どれかを外してサブに回さねばならない、ということか。

「で、先生の場合ですが……《採掘》のスキルって、今は使いませんよね?」

「まあ、そりゃそうだな」

「はい。なので一つ、有用なスキルを取ってもらって、そちらと入れ替えてもらおうかと思います」

「ほう。有用ってのは、一体どんなスキルだ?」

「スキル名は《識別》です。スキルのメニューを開いて、スキル習得を選んでください」

言われた通りに、メニューを操作する。

すると、キャラクター作成時に見たような、無数のスキルが並ぶ画面が目の前に表示されていた。

以前と違う点は、上のほうの欄に『現在SP:2』と表示されていることだろう。

「スキルの習得は、そのSP……スキルポイントを消費して行います。検索欄で《識別》を検索してみてください」

「やってみよう……ふむ、出てきたな」

「初期スキルですからね。《識別》の取得ポイントは2なので、今の先生でも取得できるはずです」

緋真の言葉に従い、俺は《識別》のスキルを選択してみる。

すると、スキルの説明と共に、習得するか否かの選択肢が表示された。

■《識別》:補助・アクティブスキル

フォーカスした対象の情報を表示する。

対象となるのは人間、モンスター、アイテムなど。

対象のレベルよりもスキルレベルが低い場合、失敗する場合がある。

「成程、相手の情報を読み取るスキルか」

「相手の名前が分かるだけでも、色々と便利ですからね。もう一つ《鑑定》っていうスキルもあるんですけど、これは表示に時間がかかる代わりにより詳しい情報を得られるスキルです。けど――」

「……まあ、俺の場合はそちらは使いづらいだろうな」

しばらく相手を注視しなければならないのは面倒くさい。

ぱっと見て、ぱっと相手の情報を得られた方がいいだろう。

情報は貴重な力の一つだ。相手を見るだけで得られるならば、習得しておいて損は無いだろう。

小さく頷き、俺は習得のボタンを押下した。

「習得できましたね。そうしたら、セットスキルの《採掘》を押して、《識別》と交換してください」

「……よし、できたぞ」

「OKです。それじゃあ、試しに私を《識別》してみてください。レベル差があるので、あまり見れないとは思いますが」

まあ、使用感を確かめておくのは重要だろう。

頷き、俺は緋真を注視した。すると、彼女の横に、半透明の画面が浮かび上がる。

■緋真

種別: 人間族(ヒューマン)

レベル:???

状態:???

属性:???

戦闘位置:???

「見えたが、確かにあまり分からんな。属性ってのは何だ?」

「プレイヤーを見た場合は大体魔法属性ですね。装備によって影響されることもあるみたいですが。敵の場合は、その属性で相手の弱点属性を判断したりします」

「成程な……これはアイテムにも使えるんだったな」

「はい。なので、積極的に使うようにしてくださいね――と言っていたらほら、敵ですよ」

接近自体には気づいていたのだが、緋真の言葉を受けて前を向く。

視界を遮るものの無い草原故に、その近づいてくる姿はすぐに判別できた。

あの姿は――

■ファングラビット

種別:動物・魔物

レベル:2

状態:アクティブ

属性:なし

戦闘位置:地上

「何だ、ただの兎か」

「油断しないでくださいよ、確かに兎ですけど、すばしっこいうえに的が小さいから――」

緋真がそう言っている間にも兎は俺のほうへと向けて突進し、そのまま跳躍して俺へと突撃してきた。

まあ、見えている以上どうということはないが。

半身になって躱しつつ、居合いの要領で俺は小太刀を抜き放ち、跳躍してきた兎の首を斬り裂く。

その一瞬後、兎は俺の背後へとどさりと落下し――そのまま事切れた。

『レベルが上昇しました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀》のスキルレベルが上昇しました』

『《死点撃ち》のスキルレベルが上昇しました』

「兎程度でもレベル上がるんだな……で、ステータスだったか」

「普通に倒しましたね、初心者は結構苦戦するんですけど……ええと、フリードを倒した時の蓄積経験値があるみたいですね。レベルって1ずつしか上がらないんですよ。オーバーした経験値がある場合、次に経験値を取得した時にレベルアップします」

「成程。それならしばらくはレベル上がりそうだな、と」

緋真の言葉に頷きつつ、ステータスの操作を完了させる。

成長の方針はもう決めてあるし、しばらく悩む必要は無いだろう。

上がっていく数字に満足感を覚えつつも、俺は倒れた兎の姿を確認した。

血が流れる姿は実にリアルだが、これはグロ表現フィルターとやらを切ったせいだろう。

そう考えつつ兎の死体に触れ――その瞬間、目の前にウィンドウが表示されていた。

『【ファングラビット】を解体しますか? Yes/No』

「解体?」

「魔物を倒すと、その魔物の素材を手に入れることができるんです。死体に触れて解体すると、アイテムが手に入りますよ」

「ほう。やってみよう」

緋真の言葉に頷きつつ、ウィンドウのYesを押下する。

すると、兎の死骸は光の粒子となって消え去り、先ほどのウィンドウに新たな文字が表示されていた。

どうやら、手に入ったアイテムの説明らしい。

■《素材:食材》牙兎の肉

ファングラビットの肉。

焼くと淡白でさっぱりとした味わい。

■《素材:革》牙兎の毛皮

ファングラビットの毛皮。

あまり大きくはないため防具には向かない。

どうやら、手に入ったアイテムはインベントリに勝手に格納されるらしい。

とりあえず、敵を倒したらこうして回収しておけばいいだろう。

アイテム欄を確認し、スキルの上昇なども一応確認してからメニューを閉じる。

しかし、スキルのレベルが偏るな。

使ってないとレベルが上がらないのなら、とりあえず《強化魔法》も使っておくべきか。

その方が《MP自動回復》も上がるだろうしな。

小さく頷き、俺は小太刀を収めた上で太刀を抜き放った。

確か、魔法を使う時は使う魔法を意識して、と――

「――《シャープエッジ》」

「魔法スキルのレベル上げですか。いいと思います、途切れたらかけておくといいですよ」

「ああ、そうするとしよう。さて、次行くぞ次」

オレンジ色の光を纏う太刀を片手に、俺は草原を進む。

先ほどの、街の門の近くに比べると、徐々に人の数も減ってきている様子だ。

そしてそれに伴い、俺たちに対して襲い掛かる魔物も増え始めるだろう。

そんな期待に応えるかのように、次に現れたのは先ほどとは異なる魔物だった。

■ステップウルフ

種別:動物・魔物

レベル:3

状態:アクティブ

属性:なし

戦闘位置:地上

『《識別》のスキルレベルが上昇しました』

「ほう、狼か」

「あー、初心者殺しの狼さんですか。気をつけてください。その大きさですけど、兎以上のスピードで攻撃してきますよ」

「イヌ科の動物ってのはそんなもんだろ」

緋真に対してそう返しつつ、俺は太刀を構える。

狼ってのは恐ろしい動物だ。犬を飼っている人間なら分かるが、犬の走る速さは人間よりも遥かに速い。

体重もそれなりにあり、体当たりをしてくれば、重心の安定しない人間ぐらいは軽く押し倒せることだろう。

マウントを取られればそれまで、喉笛を食い千切られて終了だ。

それが、鼻先から尻まで体長1メートルはあろうかという狼ならば、さらに脅威であると言えるだろう。

無論――

『グルルルルル……!』

「熊と殴り合いするよりは大分マシだな。刀もあるし」

「は?」

『ガァッ!』

緋真が俺の発言に対して疑問符を浮かべるが、それに声を返すよりも早く、狼は俺へと襲い掛かってきた。

緑色がかった体毛を持つ狼は、草原の中で若干の保護色となりつつ、見事に四足を駆動して俺へと突撃してくる。

速い、が――現実の犬よりは若干遅い。

どうやら、ゲームということで遅く設定されているようだ。

若干の失望を覚えつつ、俺は脚を狙って噛み付こうとしてくる狼に対し、横薙ぎに太刀を薙ぎ払った。

「しッ!」

『ガ――ガッ!?』

噛み付こうとするほんの寸前での踏み込み。

強く地を叩く踏み込みの衝撃によって狼はほんの僅かに怯み、その瞬間に、薙ぎ払った太刀によってその前足を斬り払われていた。

当然立つことができず倒れこむ狼の喉を、振り下ろした刃で斬り裂く。

頭を潰しても良かったのだが、切っ先が傷む可能性があったからな。

骨を貫く突きはもう少し刀の性能を確かめてからの方がいいだろう。

『レベルが上昇しました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀》のスキルレベルが上昇しました』

『《強化魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《死点撃ち》のスキルレベルが上昇しました』

「結構経験値くれてたんだな、あの素人も」

「まあ、分かってましたけど……しばらく援護は要らなさそうですね」

「まあな。自分に襲い掛かってきた相手だけ対処しとけ」

「分かってますよ」

嘆息交じりに頷く緋真に満足しつつ、俺は再び先へと進み始める。

しかし、あまり強い敵はいない様子だな。狼程度じゃ、群れで襲い掛かってくるぐらいじゃないと割に合わん。

そう考えるも、出てくる狼は多くて三体同時程度。

緋真に襲い掛かった奴はすぐさま斬り伏せられてしまうため、あまり面白い戦いとはいえない。

どうしたモンかと考えつつ進んだ先で――俺たちは、幾人かのプレイヤーがたむろしている場面に遭遇したのだった。