軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

533:突破と偵察

飛行する悪魔と魔物、その数は正面から見た限りでは数えきれないほどだ。

個々の能力はそれほど高くはないのだが、やはりそれだけの数を相手するとなると苦戦は免れないだろう。

とはいえ、正面から馬鹿正直に突っ込んでくるだけであれば、やりようはいくらでもある。

「シリウス、ブチ抜いてやれ」

「グルルルルッ!」

俺の言葉に、シリウスは唸り声を上げながら敵の集団へと向けて突撃する。

頭の角を前面に押し出し、真っすぐと敵の集団に吶喊していくその姿は、まるで艦船のラムアタックのようだ。

正面衝突を恐れることなく向かってくるとは思わなかったのか、悪魔たちは慌てて回避行動を取ろうとするが、一切減速することのないシリウスはそのまま敵陣を容赦なく貫いていく。

角で貫き、鱗で引き裂き、翼で斬断する――シリウスの突撃を止めることなど、悪魔たちにできるはずもない。

(つくづく、空中では反則だよなぁ)

通常、空中戦というものは衝突を避けて戦うものだ。

セイランでも前足を使った打撃などを使うことはあるが、それでも空中で体当たりまでは行わない。

それは単純に、空中でバランスを崩してしまえばそのまま地面まで落下してしまいかねないからだ。

だが、シリウスの場合はそれがない。何故なら、彼我に圧倒的なまでの重量差があるからである。

体重の軽い相手では、例え正面衝突したところでシリウスには殆ど衝撃を与えられない。

セイランほどの攻撃力があれば衝撃を与えられるだろうが、それでも地面に叩き落すのは簡単にはいかないだろう。

例え同じレベルの体格を持つ亜竜が相手であろうとも、空中で正面から殴り合えるシリウスは、空中戦においては反則に近い存在なのだ。

「《練命剣》、【命輝一陣】!」

シリウスの突進を避け切れずに弾き飛ばされ、鱗によって磨り下ろされた悪魔へと、生命力の刃を飛ばす。

それによって完全に体勢を崩した悪魔は、そのまま地面へと墜落していった。

それ以外の悪魔たちも、緋真やルミナの魔法、そしてアリスの矢によって次々と叩き落されていく。

この高度から地面に墜落すればひとたまりもない。余計な手間もかからず楽なものではあるが、素材を回収できないことが心残りだ。

「やはり、空中戦はシリウスの独壇場だな……」

重量級の怪物が、その重さを感じさせない動きで大暴れしているのだ。

シリウスを止めるとなると、それこそ上位の真龍か、或いは相当な大きさに巨大化した悪魔ぐらいの戦力が必要だろう。

アルフィニールの悪魔たちでは、集団で張り付きでもしない限りシリウスを落とすことは出来ないだろうが、あの鱗がある以上それも困難だ。

シリウスは、その重量を感じさせない動きで旋回し、攻撃を躱した悪魔の群れへと突撃していく。

流石にセイランほど小回りが利くわけではないので、逃さず仕留め切れているわけではないのだが、撃墜する数としては十分だろう。

「俺たちも負けちゃいられないな、セイラン」

「クェエッ!」

セイランは威勢よく声を上げ、強く翼を羽ばたかせる。

瞬間的に加速したセイランは、それと共に幾条もの雷を走らせ、正確に悪魔たちを狙撃していった。

元々大雑把な攻撃が多いところのあったセイランなのだが、ここ最近はそういった無駄が省かれてきている。

いかなる心境の変化かは知らないが、無駄が省かれればその分だけMPの消耗を避けられ、戦闘可能時間の延長に繋がる。

純粋な能力の伸びだけでなく、そういった面での成長を見られるのもテイムモンスターの醍醐味ということか。

「『生奪』」

シリウスの攻撃を逃れてこちらへ向かってきた悪魔の一体、その攻撃を上半身の動きだけで躱しつつ刃を合わせる。

前に進む速度と相手の体重だけでその身を斬り裂き、真っ二つになった悪魔は塵となって消滅した。

やはり、相手のレベルもあまり高くはない。かなり敵の拠点に近づいてきているのだが、それでも悪魔や魔物の強さは大したものではないようだ。

「空中でこれだけの数に襲われるのも久しぶりだけど……地上と同じぐらい素直な動きね」

「だな。空中戦に慣れている様子もない。まだ魔物の方がいい動きをしている」

アルフィニールの悪魔にはよくある性質であるため、そう不思議に思うことはないのだが、それはそれとして気にはなる。

果たして、アルフィニールはどのようにして悪魔を生み出しているのか、と。

俺の背中に張り付いているアリスは、周囲を見渡しながらぱちんと指を慣らす。

瞬間、溢れるように放たれた青白い光が周囲を包み――悪魔も魔物も、一斉にその動きを鈍らせた。

無論のこと、少しでも動きを鈍らせれば、それはただの的でしかない。それらは次の瞬間には光の槍と雷の矢に射抜かれて、地面へと墜落していくことになった。

「状態異常への耐性もそんなに高くはないのよね。高位の悪魔だったら、この程度じゃまるで通用しないのだけど」

「倒しやすいのはいいんだが、どれだけ削っても倒した気にならないのは困ったところだ」

「それはそうね。ホント、無尽蔵に増えて行っているみたいだし」

今分かっている範囲では、アルフィニールがどのような方法で悪魔を増やしているのかは分からない。

以前戦った分裂する悪魔は、悪魔たちを分身させて増やしていたが、あれはHPを共有するというデメリットも持っていた。

しかし、今戦っているアルフィニールの悪魔にはその性質は見られない。

個体としての強さはそれほどではないのだが、確かに一体の悪魔として成立しているのだ。

この辺りの謎を解かない限り、アルフィニールを討つことは困難だと思われる。

「その辺りは調べて行かないとならないだろうな。順当に考えれば、増やした悪魔を即座に戦場に送り出しているってことなんだろうが……それは、本当にそれだけなのか」

「実際に見ないことには何も分からないんじゃない? 鍛えるなり、強い状態で生み出すなり、何かしらの方法で精鋭を作っている可能性も否定はできないけど」

「その辺りは、潜入しないことには見えてこないか」

アリスの言葉に、軽く肩を竦める。

彼女の言う通り、その謎は深くまで調べを進めない限り見えてこないだろう。

少なくとも、今の段階で手の届くような情報ではない。

「とりあえずは目先の戦いか……仕方ない」

こうして襲ってきている敵を倒すことは容易だし、このまま先に進むことも可能。

今はただ、自分にできることをするしかない。そう考えながら刃を振るい――こちらへ襲い掛かってきた悪魔は、全て地へ落とされることとなった。

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

さて、これでこちらに襲い掛かってきた悪魔は殲滅できた。

シリウスが前に進みながら戦っていたおかげで、目的地である街との距離も近付いてきている。

どうやら、こちらは先ほど発見した城塞とは異なり、通常の街であるようだ。

周囲を外壁で囲っているが、それほど高いわけではなく、防御としてもそこまで優秀ではないだろう。

「やはり補修の痕はあるが……あそこはあまり堅牢ではなさそうだな」

「さっきの城塞と比べたらそりゃそうですけど、そう簡単に攻略できるとは思えませんよ?」

「そりゃ当然だ、悪魔がぎっしりと詰まっているようだしな」

以前戦った聖王国の都市では、悪魔は多かったものの覆い尽くされるほどの数というわけではなかった。

だが、こちらは今遠目に見ているだけでもかなりの数の悪魔が見て取れる。

明らかに異常なこの数は、まず間違いなくアルフィニールによる補充だろう。

「通じている道が多いってことは、元は交易都市ってところか。攻めやすくはあるが……やはり、数が多すぎる。殲滅して石板を配置するにもかなりの手間だな」

「それはそうだろうけど、クオン……また敵が来そうよ?」

「さっきの集団もあの中から来たようだしな。撃退しても見逃す筈もないか」

見れば、先程と同じように街中から何体もの悪魔が飛び出してきている。

一目散にこちらへ向かってくる様子からも、その狙いは明らかだ。

これまでと同じといえばその通りであるのだが、街を防衛するための反応だと思うと実に分かりやすい。

「……とりあえず、地上で迎撃しながら後退するとしよう。マップの位置は付けておけよ」

「わざわざ地上で戦わなくてもいいじゃないですか」

「それじゃあ振り切っちまうから面白くないだろう」

こちらの方が飛行スピードが速いのだから、引き撃ちしているだけで勝ててしまう。

それでは修行にならないと告げれば、緋真は分かっていたと言わんばかりの表情で嘆息したのだった。