軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

505:一番槍

シリウスのブレスが効果を発揮しているその範囲ギリギリ、一歩でも近寄れば吹き飛ばされるであろう衝撃波の横を駆け抜けながら、俺と緋真は悪魔の群れへと向けて突撃する。

俺たちを待ち構えていた悪魔は、シリウスのブレスの直撃を受けて派手に吹き飛んでいる。

紙屑か何かのように吹き飛んでいる姿はコミカルではあるが、これが己に接触したらそんなことも言っていられない。

ともあれ今必要なのは、シリウスのブレスによって混乱している悪魔の群れに更なる打撃を加えることだ。

奴らはこちらを待ち受け、一斉攻撃によってこちらの陣を崩そうとした。だがその目論見は、シリウスとパルジファルの防御によって防がれている状態である。

(森を強引に切り開くことでの前進、そして不意打ちに対しての完璧な対処――間違いなく、悪魔共はこちらの動きを把握しきれていない)

そもそも、完璧に悪魔を統率できる個体であるならば、ここに来るまでのアルフィニールの悪魔の動きは無いだろう。

こちらに対する迎撃は急ごしらえの対応である可能性は高い。

シリウスの反撃を受けて、その対応をするどころか盛大に混乱している状況を見るに、恐らく間違いではないだろう。

二の矢、三の矢を準備している可能性は低く、あったとしても綿密な準備による迎撃作戦ではない筈だ。

であれば――

「更に混乱させてやるとしよう――貪り喰らえ、『餓狼丸』!」

「有効なのは間違いないですけど、ホント命知らずですよね……焦天に咲け、『紅蓮舞姫』!」

緋真と共に成長武器を解放し、敵陣へと向けて突撃する。

シリウスのブレスによってこちらの状況を掴めていないのか、俺たちを狙った攻撃は飛んで来てはいない。

それでも、散発的な流れ弾が来ることがあるが、狙いの定まっていない魔法など避ける必要もない程度のものだ。

シリウスのブレスは、俺が想定していた通りの持続時間でゆっくりと細まり、その効果が消失して――

「《奪命剣》、【咆風呪】!」

「【紅桜】!」

――広範囲に呪いの風と爆裂する炎が、混乱していた悪魔たちを一気に薙ぎ払った。

ブレスの余波を受けていた悪魔たちは、あまり威力の高くはないテクニックといえど耐えられるものではなかったらしい。

次々と倒れていく悪魔たちから生命力を吸収しつつ、俺は次なる獲物へと向けて駆ける。

「すぐにアルトリウスたちが詰めてくるだろう。それまで、存分に狩ってやるといい」

「ま、死なない程度に頑張ります」

そうは言いつつも、先程ノータイムで俺についてきた辺り、コイツも戦場に慣れてきたものだ。

弟子の思わぬ成長を実感しつつ、俺は混乱から脱しきれていない悪魔の群れへと踏み込んでいく。

「《練命剣》、【煌命閃】!」

斬法――剛の型、扇渉・親骨。

強く踏み込み、体全体を使って大きく刃を振るう。

その切っ先より生じた黄金の軌跡は、そのまま放射状に広がって前方の敵を一気に薙ぎ払った。

既に強化を済ませている餓狼丸は、ただそれだけで十分な威力を持っているが、その上で特に高い攻撃力を持つ【煌命閃】を使用したのだ。

デーモンはおろか、アークデーモンであろうとも、防御せずに受けきれるようなものではない。

複数体の悪魔を纏めて両断しながら、地面を汚す血を踏み越えて前に出る。

「《練命剣》、【命輝一陣】」

ブレスが止んだこと、そしてその直後に俺たちが来たことをようやく理解したのだろう、悪魔たちの注意が一斉にこちらへと向き始める。

だが遅い。俺たちは、もうとっくの昔に攻撃行動へと移っているのだから。

放った生命力の刃は、俺を指差して喚き声を上げていたデーモンの首を斬り飛ばす。

敵はいくらでもいるのだ。標的に悩んでいる時間など勿体ない。

「《奪命剣》、【呪衝閃】!」

まだ距離が開いている内に、接近戦では使いづらいテクニックを使っておくこととしよう。

テクニックの発動と共に、刃に黒い闇が纏わり付き、長大な槍へと姿を変貌させる。

新たに覚えたこのテクニックは大変強力ではあるが、長すぎて近距離では取り回しづらいのだ。

斬法――剛の型、穿牙。

前方へと向けて、一直線に進む呪いの切っ先。

標的に悩む心配などありはしない。強引にここまで来たお陰で、敵の数は無数に残っているのだから。

一直線に伸びた【呪衝閃】は、そのまま複数体の悪魔の体を貫通し、その身の生命力を吸い尽くす。

今も餓狼丸によるスリップダメージは受けているが、《練命剣》によって消費したHPは、これであっさりと回復しきれてしまった。

(やっぱり、こっちの方が使い易いな)

【呪衝閃】は、この伸びてくれるという性質が非常に便利だ。

【命輝一陣】や【咆風呪】ほどの射程は無いが、それでも十分な距離でダメージを与えることができる。

一方で、《練命剣》や《蒐魂剣》のテクニックの方は、今回は若干使いづらかった。

と言っても、条件によっては十分に効果を発揮できる類ではあったし、機会があれば使うこともあるだろう。

「さて……もう少し見せて貰おうか」

【呪衝閃】によって開いた敵陣の穴に、自ら飛び込んでいく。

相手の出鼻を挫くことはできたが、数の上ではやはり相手の方が有利だ。

であれば、混乱している今のうちに、相手の陣容の性質を出来るところまで把握しておきたい。

そもそもの話、こちらから攻め込んでいる形である以上、状況としては不利なのだ。

故に、少しでも相手の情報を探り、アルトリウスに届けておきたい。

歩法――縮地。

塵となった悪魔たちの死体に紛れるようにしながら、その先にいた相手へと接近する。

こちらの動きを捉え切れていないアークデーモンは、接近に対する対処がワンテンポ遅れ――当然、次の行動に移る前にその首を刎ね飛ばす。

そうして崩れ落ちようとする相手の体に、俺は潜り込むようにしながら接触した。

打法――破山。

地面を踏みしめるくぐもった音、同時に迸った衝撃は、首を失った悪魔の死体を後方へと向けて吹き飛ばす。

まるで自動車に撥ねられたかのような勢いで吹き飛んだ死体は、後方の悪魔を巻き込んで体勢を崩させた。

(餓狼丸の解放を加味しても、あまり頑丈じゃない。アルフィニールの悪魔には違いないだろう。だが、指揮している個体はどこにいる?)

指示を飛ばしているような悪魔の姿は、今のところ見えていない。

待ち構えていた悪魔たちの混乱が収まり切っていない所を見るに、今もこの場で指示を飛ばしているというわけではなさそうだ。

流石にこの短時間では、アリスが見つけ出して暗殺したということは無いだろうし、別の場所にいると考えた方がいいだろう。

「『生奪』」

斬法――剛の型、刹火。

横からこちらを包囲しようと迫ってきたアークデーモンへと逆に接近し、その腕を斬り飛ばす。

だがそこで動きを止めることは無く、相手の横を抜けながらアキレス腱を切断して更に進む。

その直後、俺を狙っていたらしい魔法が動けなくなった悪魔を巻き込んで炸裂し、その身を吹き飛ばしていた。

(集団戦を意識した動きではない。最初の集中砲火はともかくとして、それ以降の動きは素人同然だ)

待ち構えておいて、相手が来たら一斉に攻撃するという指示だけを出していたのだろうか。

その号令を出すタイミングまでは指揮個体の悪魔がいた可能性はあるが、今は指示すら出していないのだろうか。

片付けやすい相手であることは助かるが、それを支配していた個体が見つからない状況はよろしくない。

そいつが何を考えていたのか、どのような作戦であるのかを把握することができないからだ。

一つ言えることは、都合よく進んでいるように見えるこの状況は、決して楽観視していいものではないということだけである。

「……だが、今やれることに変わりはないか」

とりあえず、こうして踏み込んだ以上は敵を倒す以外に道はない。

ルミナやセイランたちも追い付いて戦闘を開始しているし、アルトリウスを始めとした他のプレイヤーも程なくして到着することだろう。

それまで、相手の体勢を立て直させることなく、適度に引っ掻き回してやることとしよう。