軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

496:スキルの検証

レベルキャップへの到達から試練、そして悪魔のあれこれに巻き込まれるなど、色々とありはしたが、今日はそろそろログアウトするべき時間だ。

一応、真化のために訪れた女神の神殿から、別の石碑までワープすることはできた。

尤も、これは一方通行であり、再び女神の神殿に飛ぶことはできないようであったが。

とはいえ、下山の手間が省けたことに変わりはない。多少は時間を確保できたし、新たに手に入れたものを確認しておくこととしよう。

「しかし、種族スキルか……俺は自前での回復手段があるからいいんだが、お前は大丈夫なのか?」

「確かにちょっと使い所には迷いますけど、回復手段が全くないわけじゃないですよ? 紅蓮舞姫を解放している時とか」

「ああ、そう言えばそんなのもあったな」

緋真の成長武器である紅蓮舞姫の解放スキルの中には、周囲の炎を吸収して回復する【朱椿】がある。

その効果ならば、《夜叉業》による回復阻害の条件には引っかからないだろう。

まあ、それはそれとしてリスクは高いため、使い所には気を付けなければならないだろうが。

「というか、それについては先生の方が気を付けるべきだと思いますよ? 確かに自動回復は持ってますけど、必要な時に大量に回復できるわけじゃありませんし」

「まあ、その辺りは《奪命剣》で何とかするさ。確かに、自動回復だけじゃ賄いきれん場面も出てくるだろうしな」

《練命剣》を使う関係上、どうしても過剰にHPが削れてしまうことはある。

だからこそ、HPの状況には気を付けなければならないが――元より回復魔法でHPを賄うタイミングはあまりない。

ルミナから受ける時はあるが、それもあまり頻度が高いとは言えないのだ。

他のプレイヤーと行動を共にするときに注意する程度でいいだろう。

「さてと……《夜叉業》」

ログアウトするまでにはまだ多少の時間はある。

まあ、再び狩りに出るほどの時間はないため、大人しくスキルの検証までに留めておくべきだろう。

そう思いつつ種族スキルを発動すると、あの時と同じように角が伸び、右手に赤黒い炎が灯った。

「見た目は結構派手だけど、効果は攻撃力上昇だけなのね」

「上昇の幅は中々大したもんだとは思うがな。侯爵級を相手にあれだけ戦えていたんだから」

「そういえば、あの悪魔は侯爵級だったわね。どうも本体じゃなかったっぽい感じだったけど」

先ほど戦った悪魔エリザリットは、ある程度削ったところで姿を消してしまった。

本体がどの程度の力を持っているのかは不明だが、とりあえずあの分身までであれば現状でも十分に相手ができるだろう。

尤も、どこまで行っても相手は上位の悪魔だ。決して油断することはできない。

「この炎自体には特殊な効果は無いんですね」

「そのようだな。熱も感じないし、敵を燃やせるってわけじゃなさそうだ」

武器全体に燃え移った赤黒い炎であるが、生憎とこの炎自体には効果はないらしい。

この状態で敵に斬りつけても炎によるダメージを与えることはできず、単純に装備の攻撃力が上昇しているだけのようだ。

まあ、それだけでもかなり強力であるため、あまり気にする必要はないだろう。

「角は……生えてはいるが、実体はないのか」

「魔力の塊っぽい感じね。弱点だと困るんじゃない?」

「それは確かにな……とはいえ、頭にある以上、この位置に攻撃を受けたら死ぬことに変わりはないが」

頭から伸びた角に触ろうとしてみるが、スカスカと擦り抜けてしまうだけだ。

魔力によって形作られているこの角に、《蒐魂剣》のような攻撃を受けたらどうなってしまうのか。

想像もつかないが、あまりいい予感はしないので、それは気を付けておくこととしよう。

「アリスの方は……《闇月の魔眼》だったか? 一応効果は聞いてはいたが」

「ええ、結構便利そうなスキルよ。効果が限定的なこともあってか、結構クールタイムも短いしね」

「『放心』ってそこまで効果時間は長くない状態異常ですしねぇ」

「だが、接近戦の間なら十分に有効だろうさ。アリス、ちょっと俺に使ってみてくれるか?」

「いいの? 確かにダメージは無いけど」

「ああ、どの程度相手の動きが止まるのかはその方が分かりやすそうだしな」

果たして、どのような効果が発生するのか。それを知っていた方が、戦いの中でも作戦に組み込みやすい。

そんな俺の言葉に、アリスは呆れた様子で半眼を作っていたが、やがてじっと見上げながら俺の瞳を見つめてきた。

刹那――

「――――ッ!?」

アリスの瞳が、暗い銀色に輝く。

その瞬間、周囲の全てが暗闇に染まり、浮かび上がる銀色の月だけが視界の全てを染め上げてしまった。

強烈な閃光を直視したかのような衝撃。頭痛にも似た感覚に仰け反り、額を押さえ――気づけば、アリスは俺の背後で刃を突きつけていた。

「どうだったかしら?」

「……こいつは強烈だな。【ムーンレイク】までなら何とかなったが、コイツに対する対処は難しい」

「ふふ、初めて貴方を相手に一本取れたわね」

視界を奪うと共に衝撃を与えるこのスキル、とてもではないが初見で対処できるようなものではない。

初見ではなかったとしても、アリスの気配を捉え切るのは困難だろう。

無論、弱点が無いというわけでもない。このスキルは目を合わせなければ発動しないし、必然的にアリスは相手の目の前に姿を現すことになる。

リターンは確かに大きいが、その分のリスクは間違いなく存在している。

中々に難しいスキルだと言えるだろう。

「……先生でも対処できないスキルだなんて」

「おい緋真、そこまで驚くか? 俺だって直接やり合うことは避けるスキルなんていくつもあるぞ?」

「そりゃまぁ、そうですけど……」

どこか納得いっていない様子の緋真に、思わず苦笑を零す。

アリスに対して複雑な感情を抱いているようではあるが、それで剣を鈍らせるほど己を制御できない人間ではない。

その点が気になるのであれば、いずれ自らの力で解決してみせることだろう。

「それで、お前の方はどうだったんだ?」

「私は、《スペルエンハンス》がレベル上限に達しました。進化したスキルは《オーバースペル》ですね」

「効果は単純な上位互換か?」

「どうも、追加消費量に限界が無くなった感じですね。流石にそこまで使うことは無いですけど」

《スペルエンハンス》は、魔力を多めに消費することによって魔法の効果を高めるスキルだ。

これまでは追加消費量の限界があったのだが、この進化によってそれが取っ払われたということらしい。

まあ、流石に限界までMPを注ぎ込むようなタイミングはそうそうないだろうが、とどめの一撃に使うというのであれば有効かもしれないな。

「で……俺の方はテクニックの追加か」

「三魔剣のテクニックですよね?」

「ああ、手札が増えるのはいいが、果たしてどこまで使えるテクニックかね」

《練命剣》のテクニックである【命衝閃】、《奪命剣》のテクニックである【呪衝閃】、《蒐魂剣》のテクニックである【破衝閃】。

どれも似たような名前であるが、衝くという名前が付いている辺り、刺突の攻撃なのだろう。

果たしてどのようなテクニックとなっているのか――とりあえず、試してみることとしよう。

「《練命剣》、【命衝閃】」

テクニックの発動と共に、HPが消費されて餓狼丸を黄金の光が包み込む。

その形は、馬上で扱う 突撃槍(ランス) のようにも見えるものとなっていた。

それ自体の重さは無く、餓狼丸の重さをそのままに扱えるが、槍の長さ自体は長大で二メートル以上はあるだろう。

「奇妙な感覚だな……馬上槍として扱う物でもなさそうだが」

「突きで使うのよね。リーチはありそうだけど」

「長すぎて取り回しが良くないな……タイミングを見て扱わんと隙が大きいぞ」

攻撃にしても切っ先にしか攻撃性が無く、側面で叩いても重さが無いため大したダメージにはなり得ない。

やはり突き刺す以外の道は無いようだし、普通に槍として扱うしかないのだろう。

そう思いながら地面へと槍を突き刺し――その瞬間、突き刺した先で刃に込めていた生命力が爆発した。

小さなクレーターとなった地面に、俺たちは思わず顔を見合わせる。

「……突き刺した槍が爆発するんですか?」

「えげつないわね、これ」

「ふむ……取り回しは悪いが、威力は高そうだな」

思った以上に破壊力の高かった攻撃に、満足して頷く。これなら、タイミングを見れば強力な攻撃になるだろう。

この後に確認したところ、【呪衝閃】は通常に比べて吸収量が大きく、攻撃時に前方に伸びる攻撃。【破衝閃】は刺突になる代わりに魔法破壊性能の高い一撃だった。

どちらも使い所を誤らなければ強力なテクニックであったし、そう言った手札が増えたことはきちんと念頭に置いておくこととしよう。