軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

480:レベルキャップ

「思ったよりあっさりとレベルキャップまで行ったな」

「あっさりだったかしらねぇ……」

しみじみと呟いた俺の言葉に、アリスが半眼を向けつつ声を上げる。

確かに数時間に渡ってぶっ続けて戦闘を行っていたのは悪かったかもしれないが、素早くレベルを上げられたのは紛れもなく事実だ。

「それで、先生。レベルキャップに到達したってことは――」

「当然、解放クエストにも挑むさ。ま、その前にスキルの調整だがな」

「ああ……確かに、色々と上がりましたしね」

レベル上げを実行するにあたり、他のスキルもそれなりに成長した。

おかげで、上限に達しているスキルもいくつか出ている状態だ。

レベルキャップを解放するにしても、まずはこれらのスキルを進化させてからの方がいいだろう。

「よし。それじゃあ、各々でスキルを調整したら霊峰の麓に向かうとするか」

「結局、直で神殿に向かうわけじゃないのね」

「それで上手く行く可能性は低そうだからな。素直に試練を受けるとするさ」

仮にそれで解放することができたとしても、得られる特典が少なくなりそうな気がする。

今後に影響してきそうな話であるし、そこは慎重に事を運んだ方がいいだろう。

さて、レベルキャップの解放も重要ではあるが、今はスキルの進化だ。

俺と緋真とアリス、全員に進化可能なスキルがあるようだし、一つ一つ確認していくこととしよう。

(まあ、俺の場合は単純だがな……)

俺のスキルの中で上限に達しているのは、《HP自動大回復》と《MP自動大回復》だけだ。

これらは効果も分かりやすく、進化しても特に妙な変化はしないだろうと考えられる。

とはいえ、ある程度の期待は抱きながらスキルの詳細を開けば、そこにはある程度予想していた情報が並んでいた。

「進化先は《HP自動超回復》と《MP自動超回復》か……まあ、そのままだな」

自動回復は自動回復、効果が大きく変わる様子も無さそうだ。

だが、元より有用な効果であったものが、更に伸びるとなれば大きなプラスとなることだろう。

例によって《回復特性》や《 再生者(リジェネレイター) 》の影響も受けることであるし、更に回復能力も高まってくれることだろう。

「ポイントはそこそこ割高だが……迷うような理由も無いな」

一通り確認し、俺は改めて二つのスキルを進化させた。

より回復力が高まれば、戦闘中の選択肢も増えることになる。

より無茶が効くようになれば、高位の悪魔相手にも迫るチャンスは増えることだろう。

と――

『条件を達成したため、称号スキル《 帰還者(リターナー) 》を取得しました』

「……おん?」

丸っきり予想外の方面からのアナウンスに、思わず眼を見開く。

称号スキルの取得が発生するなど、露ほども考えていなかったのだ。

思わず呆然としつつも、指は即座に確認のために動く。

称号スキルは滅多に取得することのできないスキルだ。俺もいくつか保有しているが、長い間新たなものは取得できていなかった。

まあ、汎用的に効果のある《剣鬼羅刹》を常につけているので、あまり意識していなかったというのもあるのだが。

「条件的には、自動回復スキルの第三段階がキーであるようだが……さて、どんな効果かね」

呟きつつも、その効果を確認する。

記載されていた効果は、方向性は予想通りであったが、その効果は予想とは異なる内容であった。

■《 帰還者(リターナー) 》

不滅とすら謳われた戦士に与えられた称号。

いかなる傷も、彼の歩みを止める要因とはなり得ない。

十二時間に一度、即死ダメージを無効化する。

即死ダメージ――つまり、頭と心臓に対しての致命ダメージおよび、HP十割以上のダメージを無効化するという効果か。

言ってしまえば、汎用性の低くなった《聖女の祝福》だろう。あちらは条件を指定せずに効果が発動するからな。

逆に言えば、こちらはより大きなダメージに限定して効果が発動する。

死にかけている状態での小さな一撃ではなく、不意打ちで受けるようなダメージへの対策といったところか。

決して強いとは言えない効果だが、状況によっては光ることになるだろう。

「で……取得条件は《HP自動超回復》、《MP自動超回復》、《回復特性》、《 再生者(リジェネレイター) 》の取得と装備か。ここまでの条件ならもっと強い効果でもいいんじゃないのか?」

まあ、徹底して死にづらくなったということではある。

戦闘の条件によってはセットしておくのも悪くはないだろう。

これから先、とんでもない攻撃力の悪魔が出現したとしてもおかしくはないのだから。

「こんなところか……緋真、そっちはどうだ?」

「順当なところですけど、先生が欲しかったやつが出ましたよ?」

「む? どのスキルだ?」

「ほら、空中を走るやつですよ」

言いつつ、緋真はスキルの一覧を示す。

こいつが持っているスキルの中で、今回進化対象となったのは三つ。

《練闘気》、《高位戦闘技能》、《立体走法》だ。

どれも元々は一般的なスキルであり、進化したとしても特殊な効果を得るようなものではない。

だが、唯一《立体走法》に関しては、スキルの仕様が大きく変わるものであった。

「《武神闘気》、《超位戦闘技能》……そして、《空歩》か」

「スキル自体はルミナちゃんたちも持っていたやつの名前と一緒ですけど、空を飛べない人間でも取得できるものだったんですね」

そのスキル自体は、ルミナが以前から持っていたものと同じ名前だ。

恐らく効果も一緒で、空中に足をつけて走ることができるようになるものだろう。

ルミナは随分前からこのスキルを持っていたし、そう考えると少し弱く感じてしまうが――そもそも最初から空を飛べるルミナと、翼を持たない人間とでは条件が異なるのだろう。

「他の二つは単純な上位互換ですけど、こっちはプラスアルファですね」

「効果はどんなもんだ?」

「予想通り、空中を走れるスキルですが……スキルレベルに応じて走れる歩数が増えるみたいですね。最初は三歩だけです」

言いつつ、緋真は助走をつけて跳躍する。

そして次の瞬間、何も無い空中を蹴って、三角跳びの要領で更に高く跳躍した。

どうやら、足をつけたいと思った場所に対して自在に足場を作れるようなイメージのようだ。

「便利そうだな。消費はどうだ?」

「特にMPの消費もありませんね。結構便利そうです」

緋真の報告に、成程と頷く。これは中々に便利そうなスキルだ。

しかしながら、俺の持っている《立体走法》のスキルレベルはまだ20。

このスキルを取得するには、まだまだ長期にわたってのレベル上げが必要になるだろう。

「まあ、こっちは取得したのが遅かったからな。楽しみにしておくとしよう」

「私の方も色々研究しておきますね。アリスさんの方はどうでした?」

「私の方は《暗黒魔法》、《アサシネイト》、《曲芸》が上限になったわ。まあ、あまり変わったスキルじゃないわね」

そうは言うものの、《曲芸》以外はアリスにとってメインの火力と呼べるスキルだ。

特に、《アサシネイト》は不意討ち時のダメージを大幅に上げるスキル。アリスのスキルの中では最も高いダメージを叩き出しているものだろう。

その強化は、さらに大きなプラスとなる筈だ。

「《暗黒魔法》は《深淵魔法》へ、《アサシネイト》は《フェイタルエッジ》へ、《曲芸》は《パルクール》へ。効果は大体そのままの強化みたいね。《フェイタルエッジ》は即死効果が付与されているみたいだけど」

「《死神の手》での確率増加もありますしね」

「その辺りは実験するしかないわね。けど、レベルキャップを解放しないと経験値も無駄になりそうだし、さっさと霊峰に向かいましょう?」

「ふむ……その辺りは分からんが、行かない理由も無いしな」

スキルレベルがどうなのかは分からんが、少なくともキャラクターレベルはこれ以上上がらない状態だ。

このまま戦っても経験値が無駄になるかもしれないし、さっさとレベルキャップを解放した方がいいだろう。

尤も――解放クエストが一筋縄でいくのかどうかは分からないが。

「さて……鬼が出るか蛇が出るか、避けては通れない道なら、さっさと進んでしまうとしようか」