軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

479:到達

悪魔の警戒線を利用したレベル上げを始めた翌日。

俺たちのレベルは、あと一歩である98まで到達していた。

移動する必要もなく敵と戦い続けられるここは、素材稼ぎはともかくとして、経験値効率は非常に高い。

この調子ならばすぐにレベルが上がる――かと思ったのだが、98に上がるのにはそれなりに時間がかかってしまった。

どうやら、この辺りから急激に必要経験値が増加するらしい。

(終わりが見えているだけマシではあるがな)

必要量が多いとはいえ、レベルはあと一つ。

これならば、頑張れば今日中には目標であるレベルキャップまで到達することができるだろう。

問題があるとすれば――

「《練命剣》、【煌命閃】!」

斬法――剛の型、輪旋。

タイミングを合わせて振るった刃が、こちらに飛び掛かってきたスレイヴビーストを纏めて両断する。

しかしその直後、こちらへと向けて複数方向から魔法による攻撃が殺到した。

舌打ちと共に、地を蹴ってその攻撃を回避する。

歩法――烈震。

俺が一瞬前までいた場所を打ち砕いた魔法は、直撃を受けていればひとたまりも無かっただろう。

その余波だけでもダメージを受けかねなかったが、そこは【断魔鎧】を展開しているため痛手を受けることは無い。

むしろ、爆風の勢いに乗りながら前進し、こちらへと魔法を放ったアークデーモンの首を一瞬で刎ね飛ばした。

しかし、それでも悪魔たちの動きに動揺は一切ない。当然のように放たれた追撃を、俺は《蒐魂剣》によって斬り払った。

(昨日より、明らかに動きが良くなってきている……!)

昨日の時点であれば、アルトリウスと通話しながらでも余裕で対処できる程度の単純な動きであった。

しかし今日に入って――否、先程から、明らかに悪魔たちの動きが鋭くなってきているのだ。

こちらの攻撃が終わった瞬間などに、複数の悪魔がタイミングを合わせて攻撃を行ってくる。

対処できないというレベルではないが、片手間に処理できるレベルではなくなってしまっていた。

「指揮している悪魔がいるってわけだ……アリス、頼むぞ」

姿は確認できていないが、悪魔たちの動きを制御する役割を持った悪魔が存在するはずだ。

そういったものを片付けるのはアリスが最も得意とする仕事であるし、ここは任せておいた方がいいだろう。

それよりも、敵を殲滅するペースが下がる方が問題だ。

敵を効率よく短時間で片づけているからこそ、俺たちは悪魔の物量に押し潰されることなく稼ぐことができているのだ。

これで殲滅のペースが落ちてしまえば、増援に来た悪魔たちによって押し潰されかねないのだ。

とはいえ――

「それぐらいじゃなきゃ面白くないがな!」

高揚と共に口角がつり上がる。

それと共に地を蹴り、こちらへと剛腕を振り下ろしてきた悪魔へとさらに踏み込んだ。

斬法――剛の型、刹火。

黒く染まり切った餓狼丸の鋭さは、ただそれだけでもアークデーモンに通じるほど。

《昇華魔法》や《神霊魔法》による強化を受けているこの刃ならば、その腕を斬り飛ばすことなど容易い。

その一閃によって、緑の血を噴出させながらバランスを崩す悪魔の横を通り抜けつつ、体の向きを反転させながら刃を振るう。

「『生奪』」

スキルを纏った刃は、腕を失い倒れ掛かった悪魔の脇腹へと突き刺さる。

あまりにも鋭くなり過ぎたその刃は、悪魔の胴を半ばまで容易く斬り裂いて見せた。

拍子抜けしてしまうような切れ味だが、ただのデーモン相手にはこんなものだろう。

「《練命剣》、【命輝一陣】」

次いで、こちらに向かってこようとしていたデーモンへと牽制の一撃を放つ。

飛び出した生命力の刃に対して、デーモンは即座に防御魔法を発動し――それと同時に、俺は反対方向から振り下ろされた鉤爪の一撃を半身になって回避した。

それと共に相手の二の腕へと刃を滑らせるが、流石に力の篭らない一閃では腕を切断するには至らない。

だが、それでもアークデーモンにとっては予想外のダメージだったのだろう。

痛みによる驚愕か、ほんの僅かながらに体が硬直する。

「《奪命剣》、【命餓練斬】」

その隙を狙い、俺は振り上げた刃をアークデーモンの肩口へと向けて振り下ろした。

【命餓練斬】は《練命剣》ほどではないが、攻撃力の上昇効果がある。

例えアークデーモンであろうとも、度重なる強化を受けたこの一閃を相手に無事でいられるはずがない。

肩口から背中にかけてを深く斬り裂かれたアークデーモンは、更にテクニックの効果によって生命力を吸い上げられ、干からびてその場で塵となった。

「……しかしまぁ、何度使ってもえげつない効果だな」

剣聖オークスは何を考えてこんなスキルを編み出したのやら。

まあ、《奪命剣》の背景を考えると色々と複雑なストーリーが顔を出しそうであるし、あまり気にしないでおくこととしよう。

アークデーモンの絶命を確認し、俺はすぐさま標的を変更する。狙うのは、先程足止めしたデーモンだ。

歩法――烈震。

距離が開いていたこともあり、デーモンは既に防御魔法を解除している。

このタイミングでは、再び防御のための魔法を発動させることは不可能だろう。

「《練命剣》」

斬法――剛の型、穿牙。

悪魔は迎撃か防御か、一瞬悩んだ後に迎撃を選択したようだ。

しかし、その僅かな逡巡が命取りであると言える。その時には既に、俺は相手の懐にまで潜り込んでいたのだから。

生命力を纏わせた刺突は、顎の下から悪魔の頭蓋を貫通する。

頑丈な頭蓋骨すら、この一撃の前ではビスケット程度の強度と大差はないだろう。

塵となって消滅する悪魔から刃を抜き取り、次なる標的へと向けて移ろうとして――前方から声が上がった。

「クオン! 隠れていたデーモンナイトを始末したわよ!」

「でかした、流石だな!」

恐らく、それが指示出しをしていた悪魔だったのだろう。

残る悪魔たちの動きは、急激に鈍っていく。

これならば、増援の前に悪魔の殲滅も間に合う筈だ。

そう考えて周囲の状況を確認したのだが、思った以上に周囲の悪魔の姿は少なくなってしまっていた。

どうやら、少し殲滅を急ぎ過ぎてしまったらしい。

「……まだ増援は遠いか。一度戦闘状態が途切れるな、こりゃ」

一応、遠方に悪魔たちの姿は見えているが、ここまで到達するのには少し時間がかかるだろう。

一方で、悪魔の数はもう少ない。後一分と経たずして、殲滅は完了してしまう。

流石にあそこまで距離があると戦闘状態とは判定されないだろうし、一度戦闘状態は解除されてしまうだろう。

一部のスキルや魔法は、戦闘状態でないと効果が終了してしまうものもあるし、その場合は掛け直しが必要になってしまう。

節約を考えると戦闘状態を継続したいところではあるのだが、一度終了させないとレベルが上がったかどうかも分からないし、ここいらで一度区切るのも悪くはないか。

ということで――

「仕方ない、片付けるとするか――《蒐魂剣》、【因果応報】」

軽く嘆息して、こちらへと向かってきた悪魔に刃を向ける。

撃ち放たれた風の魔法を《蒐魂剣》で斬り裂きながら刃に纏わせ、俺はそのままアークデーモンへと肉薄した。

流石にアークデーモンともなれば、魔法を撃った後の隙もそう大きいものではない。

案の定、アークデーモンは油断なく反応してこちらを迎撃しようと構える。

それを見て、俺は刃に纏わせた風を相手へと向けて放出した。

「――――っ!?」

こちらが脇構えで刀身を隠していたせいだろう、魔法を撃ち返されるとは思っていなかったようだ。

その衝撃を受けて体勢を崩したアークデーモンへ、俺は笑みと共に刃を振るう。

当然、崩れた態勢では俺の一撃を受けきれる筈もなく――アークデーモンの首は、あっさりと刎ね飛ばされることとなったのだった。

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀神》のスキルレベルが上昇しました』

『《格闘術》のスキルレベルが上昇しました』

『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《神霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《致命の一刺し》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』

『《クロスレンジ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復特性》のスキルレベルが上昇しました』

『《高位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『《見識》のスキルレベルが上昇しました』

『《血の代償》のスキルレベルが上昇しました』

『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』

『《会心破断》のスキルレベルが上昇しました』

『《 再生者(リジェネレイター) 》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』

『レベルキャップに到達しました。上限解放クエスト《女神の試練》を受注可能です』

そして耳に届いたレベルアップのインフォメーションに、俺は胸中で快哉の声を上げる。

目標は達した。であれば、いつまでもここにいるような理由はない。

「撤退だ、戻って確認するぞ!」

「はい!」

「わかったわ!」

悪魔の増援も近付いてきているし、あまり時間をかけている場合ではない。

手近にあった素材だけでも回収し、俺たちはさっさと悪魔の警戒領域から離脱したのだった。