軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

473:北方の動き

あれこれと走り回った翌日、俺たちはまたしても北の地へと足を延ばしていた。

こちらは魔物も強く、また悪魔たちがうろついているため敵側の戦力を削ることにも繋がる。

大規模な侵攻の予防にも効果があるだろうし、他の場所で戦うよりも効率的なのだ。

まあ、敵の出現頻度的に、レベル上げに効率的かといわれるとそうでもないのだが。

「グルルルルッ!」

だが、いざ敵が現れれば結構な団体で出現する。

原因は言うまでもなく、悪魔が群れて行動しているからだ。

デーモンやアークデーモン、そして多種多様なスレイヴビースト。

そして、稀に現れるデーモンナイト等の爵位持ちではないが高位の悪魔。

慣れた相手ではあるが、それなりの数が一度に出現するため油断はできない。

尤も、退屈はしないで済むちょうどいい相手ではあるのだが。

「シリウスの面倒は見なくても大丈夫そうだな」

ブレイドドラゴン――新たな進化段階へと到達したシリウスの戦闘能力は、まさに脅威の一言に尽きた。

これまでも、その頑丈さを生かした戦闘を得意としていたが、進化によって更なる攻撃力と防御力を手に入れたのだ。

これまでは、何だかんだでルミナが付き添って、状況に応じて回復して貰っていたのだが、今では戦闘が終わるまで余裕で体力を保たせることができている。

危険になれば折を見て回復魔法を飛ばせばいいし、常に傍で介護する必要がなくなったのである。

そうなればルミナも動きやすくなり、敵の殲滅速度は更に上昇した。

(これなら、もっと大胆に動いても構わないか)

元々、シリウスはその巨体と色から非常に目立つ存在でもあった。

戦闘方法も大胆――悪く言えば大雑把で、俺の動きを真似している部分もあるが結局はフィジカルを生かした大暴れになってしまう。

尤も、敵の注意を大いに引いてくれるという面もあるため、俺たちにとってはそれもメリットの一つなのだが。

しかし、それ故に多くの敵に狙われ、HPを削られやすいこともまた事実だったのだ。

だが、今のシリウスならば敵に狙われても大したダメージは蓄積しないし、常にその状態を見守っておくような必要もない。

これならば、もっと派手に悪魔領を動き回り、敵からの注目を集めても問題は無いだろう。

「それなら、もっと多くの敵と戦えるだろうからな――っと!」

斬法――剛の型、刹火。

こちらへと向かってきたアークデーモンの攻撃を躱しつつ、その首を斬り飛ばす。

心臓だけでは死なないアークデーモンも、流石に首を飛ばせば即死するようだ。

まあ、これは俺の攻撃力が上昇したことも原因のひとつであろうが。

《昇華魔法》が既定のレベルに達したことにより、俺は新たな呪文を習得した。

その名も【アダマンエッジ】と【アダマンスキン】。その名の通り、攻撃力上昇、防御力上昇の呪文である。

これまで使っていた【ミスリルエッジ】や【ミスリルスキン】の上位互換であるため、使用感は変わらない。

だが、餓狼丸の切れ味は、これまで以上に高まっていたのだ。

俺が一体ずつ敵を仕留めている間にも、雷鳴や閃光、爆炎が悪魔たちを蹂躙していく。

そして、その輝きによって身を煌めかせるシリウスは、痛手を受けた悪魔たちを相手の反撃ごと捻り潰していくのだ。

やはり、多勢を相手にするにはこういった戦い方の方が効率的だろう。

(向こうでもこっちでも、戦争の戦い方はそう変わるもんでもないか)

かつての戦場で目にした、兵器による蹂躙の様相を思い浮かべながら、苦笑と共に敵陣の中へと斬り込んでいく。

仲間たちの派手な攻撃のお陰で、俺に対する注意は殆ど向いていない状態だ。

これならば、悪魔の首を刈り取ることなど容易いことである。

歩法――間碧。

敵陣の隙間に身を滑りこませるようにしながら、体勢の崩れている悪魔の首へと刃を走らせる。

アークデーモンならばともかく、普通のデーモンのHPはかなり削られてしまっている状態だ。

それならば、軽く首を裂いてやるだけでそのHPなど簡単に削り切れてしまう。

あまり刃が鋭すぎるというのも味気ないものだ。

「《奪命剣》、【咆風呪】」

軽く溜め息を吐きつつ、黒い呪いを纏う刃を振り下ろす。

瞬間、前方を包み込むように大きく広がった【咆風呪】の闇が、HPの減っていたデーモンたちを纏めて喰らい尽くした。

ただでさえHPが減少気味だったのだ、その状態ではアークデーモンはともかく、ただのデーモンに耐えられるはずがない。

これによってまとめて悪魔共を葬ることに成功したが、流石に多数を討ち取ったせいか、いくつかの悪魔の注意がこちらへと向けられることになった。

(こういうのは、普通ではあり得ない戦い方なんだったか)

普通ならば、俺のような攻撃役は敵の注意を引いてはならないらしい。

まあ、分からなくはない。より高いダメージを与えられる攻撃役は、敵からの攻撃を受けずフリーな状態で戦えた方が効率的だろう。

だからこそ、パルジファルのような優秀な壁役がいると効率よく敵を倒せるのだろうが、生憎とウチにいるメンバーは全員が攻撃役だ。

今更戦闘スタイルを替えられるものでもないし、誰が注意を引いても――否、アリス以外はあまり変わらないだろう。

「《練命剣》、【命輝閃】」

歩法――縮地。

こちらに注意が向いたのであれば、敵がこちらに向かってくるということでもある。

その動きを先んじて潰すため、俺はアークデーモンの内の一体へと滑るように接近した。

上体が動かぬこちらの動きを捉え切れなかったのだろう、アークデーモンは突如として眼前に現れた俺に、困惑した様子で硬直した。

無論――

斬法――剛の型、白輝。

そのような隙を、見逃す筈もない。

振り下ろした早太刀の一閃は、袈裟懸けにアークデーモンの体を両断する。

斜めにズレ落ちるその体には、獣のような顔に驚愕の表情が張り付いていた。

「《練命剣》、【命輝一陣】!」

間髪入れず、横合いへと向けて生命力の刃を飛ばす。

目標を定めて移動してきていたアークデーモンは、その一撃を魔法によって防御するが、それこそこちらの狙い通りだ。

足を止めた悪魔の後ろに赤い影が揺れたのを確認して、俺はもう一体残っていた悪魔へと目標を定める。

既に魔法を準備していたらしい悪魔は、こちらへと向けて紫に輝く雷光を放ち――その魔法は、俺が身に纏っていた【断魔鎧】に吸収されて消滅した。

歩法――烈震。

今の一撃で【断魔鎧】は消滅することになったが、もう一度魔法を発動させるような時間は与えない。

俺はすぐさま相手の懐へと飛び込み、その胴へと一閃を走らせた。

斬法――剛の型、輪旋。

「しッ!」

その一撃はアークデーモンの胴を深く斬り裂き、更に返す刀が上へと跳ね上がる。

腹を抱えるように前のめりになったアークデーモンは、さながら首を差し出すような姿勢だ。

その首筋へと向けて、俺は跳ね上がった餓狼丸の刃を断頭台のごとく振り下ろした。

体の反転の勢いを、捻りと共に合流させ、その威力を存分に伝える。

例え《練命剣》を使っておらずとも、今の餓狼丸の鋭さならば、アークデーモンの首を落とすことなど造作もない。

緑の血を噴き出しながら、重い音を立てて首が転がり――そして、黒い塵となって消滅する。

どうやら、これで戦闘は終了のようだ。

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀神》のスキルレベルが上昇しました』

『《神霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《致命の一刺し》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《クロスレンジ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復特性》のスキルレベルが上昇しました』

『《見識》のスキルレベルが上昇しました』

『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』

『《会心破断》のスキルレベルが上昇しました』

『《 再生者(リジェネレーター) 》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』

敵の数も多かったため、実入りもそれなりに多かった。

これでまた、レベル上限まで一歩近づいたわけだ。

「さっさとレベルを上げて、試練とやらを見てみたいところだが――」

霊峰を見上げながら独りごちるが、その前に一つだけ気になっていることがあった。

現在、俺たちは悪魔領を少しずつ北に向かっているのだが、徐々に敵と遭遇する頻度が高くなってきているのだ。

まあ、情勢を考えれば当然ではあるのだが、この先に何かがあるのではないかと勘繰ってしまう。

あまり深く入り込むことも好ましくないため、程々で引き返すことになるだろうが、もう少し先が見てみたい。

少しばかり、試してみることとしよう。