軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

471:第四段階の真龍

悪魔共を殲滅し、周囲の安全が確保できたことを確認しつつ、俺はインベントリから聖火のランタンを取り出した。

消えることのない聖火を宿すランタンを地面に置けば、金色の光が周囲へと向けて広がっていく。

これで、周囲の魔物や悪魔はこの場所には近づけなくなっただろう。

別段、普通に進化させてもいいのだが、最初は落ち着いて能力の変化を確認したいところだったのだ。

「さてと……シリウス、準備はいいか?」

「グルルッ!」

俺の問いに対し、シリウスは威勢よく唸り声を上げながら首肯する。

その姿に笑みを浮かべつつ、俺はテイムモンスターのメニューを呼び出した。

進化可能となったシリウス、そこに刻まれている進化先はただ一つだけだ。

「ブレイドドラゴン、刃の龍か」

名前そのものからは、あまりこれまでとの変化は感じられない。

恐らく、これまで通り順当な成長をすることだろう。

しかし、それはつまり、この巨体が更に大きく成長するということでもある。

シリウスの体に潰されては堪ったものではないため、俺たちは一旦シリウスから距離を取った。

今でさえ見上げるほどの巨体であるというのに、これがどのように成長するのか。

若干の不安と期待、それらをない交ぜにしながらシリウスの進化を決定し――その瞬間、龍の巨体は銀色の輝きに包まれた。

「さてと、どうなりますかね?」

「今の時点ですでに一級品だったからな。期待はできるだろう」

「ですよね! それに、ドラゴンの成長ってワクワクしますし!」

楽しげな様子の緋真の言葉には、苦笑を零しつつも内心で同意する。

やはり、ドラゴンという存在には心が躍るものだ。

それが己の配下であり、しかも大きく成長しようとしているとなれば、期待せずにはいられない。

シリウスの巨体は膨れ上がるように巨大化し、さらに二回りほど大きくなったところでストップした。

それと並行するように、シルエットの一部が鋭角的なデザインに変化する。

さて、これまでとはどのように違った姿を見せてくれるのか――その期待が最高潮に達した瞬間、シリウスを包んでいた銀色の光が弾けて消滅した。

「オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

びりびりと、空気を震わせるほどの巨大な咆哮。

それを発した巨大なドラゴンは、全身を揺らしてその巨大な翼を広げた。

ブレイドドラゴン、刃の龍。その威容は、決してその名に恥じぬものだ。

頭は若干兜のような形状になっており、額から伸びた刃は更に鋭く太く、強靭なものへと変化している。

また、両腕は肘の部分までの外殻が肥大化し、まるでガントレットを装備しているかのような様相となっていた。

しかも、その横からは弧を描くように鋭い刃が伸びている。

擦れ違いざまに腕を振るうだけで、もろい魔物などなます斬りにしてしまうことだろう。

翼はその重い体を支えるためか更に大型化しており、骨の部分は鋭く強靭な刃と化している。

しかも骨が増えて可動域が広がったのか、翼だけを前に伸ばして斬りつけることもできるようだ。

極めつけは尻尾の刃だ。形状はこれまでと変わっていないが、体に合わせて大型化しており、しかも常に銀色の魔力を帯びている。

どうやら、常時何かしらの強化状態にあるようだ。

その凄まじい威容に、唾を飲み込みながらもシリウスのステータスを確認し、俺は思わず眼を見開いた。

■モンスター名:シリウス

■性別:オス

■種族:ブレイドドラゴン

■レベル:1

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:84

VIT:84

INT:50

MND:50

AGI:55

DEX:54

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《昇華魔法》

スキル:《剛爪撃》

《穿鋭牙》

《吶喊》

《ブレス》

《物理抵抗:大》

《硬質化》

《鋭斬鱗》

《鋭刃翼》

《斬尾撃》

《魔法抵抗:大》

《覇気》

《移動要塞》

《研磨》

《小型化》

《龍気》

《バインドハウル》

《自己修復》

《鱗弾》

《魔剣化》

称号スキル:《真龍》

強いなんてものではない、合計値ではルミナやセイランを大きく上回るステータスだ。

最も高いステータスでは、辛うじてSTRはセイランの方が上回っているが、大きくレベル差がある状況でこれなのだから凄まじい。

そして、どうやらスキルも軒並み強化されているようだ。

《吶喊》、《魔法抵抗》、《覇気》についてはルミナやセイランで分かっているからあまり気にする必要はない。

また、《鋭斬鱗》や《斬尾撃》については、これまでのスキルが順当に成長したものになるだろうからそれほど疑問があるわけではなかった。

気になるのは《移動要塞》、《自己修復》、《鱗弾》、《魔剣化》である。

これからの戦闘の要になる可能性のあるスキル、果たしてどのようなものであるのか。

「そうだな……シリウス、《移動要塞》ってのはどんなスキルだ?」

「グルルッ!」

俺の言葉に応え、シリウスは全身に魔力を行き渡らせた。

その瞬間、ガチンと全身の鱗や刃が蠢き、体に張り付くような形で固定化される。

どうやら、これはブレイドドラゴンの防御姿勢であるらしい。

「機動力を抑えて、防御力を高めるスキル……って感じですかね?」

「翼を畳まないといけないということは、飛んでいる間は使えないのか。だが、こいつは確かに堅牢そうだ」

元々のスキルは《堅牢》だったのだろうから、素で防御力の上昇効果は有るだろう。

それに加えて、この防御態勢。これならば、ひょっとしたらディーンクラッドの攻撃すらも防げるかもしれない。

まあ、無傷で防げるとは思えないが、それでも耐えきることは可能だろう。

「更に頑丈になったってことか。次は《自己修復》だが、回復系のスキルか?」

「頑丈だし回復もするって、貴方みたいに質が悪いわね」

「悪かったな」

最近更に回復力が高まったことは事実であるためアリスの皮肉は否定はしきれないが、利益になっているのだから文句は無いだろう。

苦笑を零しつつもシリウスを見上げれば、彼は何故か若干困った様子で唸り声を上げた。

「グルゥ……」

「ん? 《鱗弾》を先に使いたいのか? それはまぁ、構わんが」

どうやら、次のスキルである《鱗弾》を先に使った方が都合がいいらしい。

どんな理由なのかまでは【アニマルエンパシー】では判明しなかったが、別に順番にこだわりがあるわけでもないし、問題は無いだろう。

とにかく、次に確認するのは《鱗弾》に変更となった。俺の言葉に頷いたシリウスは、のしのしと巨体を揺らして横を向き、上半身を低く、そして尻尾を上げるように構える。

そして次の瞬間――シリウスの鱗が、逆立つように蠢いた。

「……まさか」

名前から想像できたことではあるが――どうやら、予想通りであったらしい。

次の瞬間、逆立った鱗は、シリウスの体から分離して次々と撃ち出されていったのだ。

凄まじい速さで飛翔した銀の鱗は、まるで重機関銃の弾丸のように前方にあった樹を斬り刻み、穴だらけにしてへし折ってしまう。

《鱗弾》。その名の通り、鱗を弾丸として撃ち出すスキル。元より鋭く頑強なシリウスの鱗は、弾丸として使えばこれほど強大な破壊力を生み出すということか。

だが、これは同時に諸刃の剣にもなり得る。何しろ、防御力の要である鱗を撃ち出しているのだから、当然防御力の低下は避けられないのだ。

尤も――

「成程、これで《自己修復》を使うわけか。シリウス、やってみてくれ」

「グルル!」

そのための対策スキルも、きちんと用意されているということである。

シリウスが魔力を消費すると共に、その体を薄っすらと銀色の光が包み込む。

そしてその瞬間、まるで早回しをするかのように、翼から放たれた鱗が生え揃った。

これならば、若干のタイムラグとMPの消費はあるが、長時間の防御力低下は避けることができるだろう。

「ふむ……HPも若干回復するのか。回復目的に使うもんではなさそうだが」

「相手の攻撃で損傷した鱗とかも戻せるのかしら?」

「ああ、そのようだな。MPの消費はそこそこ大きいが、何だかんだで便利そうだな」

今の《自己修復》で、MPは一割程度消費している。

回復の用途にしては、消費量が多めなスキルになってしまうだろう。

まあ、それだけ効果は高いということでもあるし、使い所を間違えなければ問題は無いだろう。

「でもこの鱗、撃ち出した分は素材にはならないんですね」

「ああ……そりゃまあ、真龍の鱗を無制限に手に入れられるわけもないか」

残念ながら、弾丸として撃ち出した鱗は一定時間で消滅してしまうらしい。

素材として取っておけるのであれば便利だったのだが、それは仕方のない話だろう。

「で、最後のスキルだが。攻撃用のスキルだよな?」

「グルッ!」

俺の問いに、シリウスは自信満々に頷く。

そしてその直後、シリウスの尻尾が、銀色に輝くその刃が、眩く輝きを増した。

大きく消費されるMP。そして、シリウスは強く足を踏みしめながら体をたわめ――

「ガアアアアアアアアッ!」

全力で、輝く尻尾を振り抜いた。

そしてその瞬間、俺たちは確かに目撃したのだ。

――銀色の軌跡をなぞるように、遠景の景色が割れてずれた光景を。

「……!」

遠く離れた場所にあった岩が、真っ二つになってズレ落ちる。

広範囲に放たれる、高威力の斬撃。魔剣の名に相応しい、凄まじい威力の一撃だ。

その分だけMPの消費も多いようではあるが、ブレスに続いてシリウスの切り札となってくれることだろう。

「いい具合だな、ますます楽しみになってきた」

これから、悪魔との戦いはますます本格化する。

その中で、シリウスの力は間違いなく俺たちの助けとなってくれることだろう。

そう確信し、俺はシリウスへと向けて心からの賞賛を送ったのだった。