軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

470:魔獣を支配する者

「グルァアアアッ!」

光を帯びたシリウスの尾が、大きく弧を描いて振りかざされる。

その鋭い一閃は、逃れられず直撃を受けることになった悪魔たちを纏めて両断し、緑の血で地面を汚す。

経験値を稼ぐため、当てもなく悪魔の支配下にある土地を歩き回っていた俺たちであったが、思いがけず悪魔の集団と接敵することとなったのだ。

しかし、それはこの間の黒い渦のゲートによるものではなく、何やら大量のスレイヴビーストを引き連れた集団であった。

(……スレイヴビーストの収集部隊か?)

スレイヴビーストは、悪魔たちがその土地にいる魔物を捕獲、支配下に置くことによって生まれるものであると考えられる。

探せば普通の魔物として出現してくるのだから、それについては疑問に思うほどのことではない。

となれば当然、それらの魔物を捕獲する悪魔が存在することも容易に想像がつくのだ。

それが恐らく、あの悪魔なのだろう。

■デーモンテイマー

種別:悪魔

レベル:78

状態:アクティブ

属性:闇・地

戦闘位置:地上

この辺りの悪魔にしてはレベルが低く、体格もそれほど大きいとは言えない。

手には鞭が握られており、どこかサーカスの調教師といった風情の見た目をしている。

他のデーモンやアークデーモンが護衛をするように動いていることからも、あの悪魔がこの一団における重要な立場であると考えられるだろう。

とはいえ、上位の悪魔ではないため喋ることも無いだろうし、情報源としては使えないのだが。

それに、大量の魔物を従えているため、中々に面倒な状況だ。

「ったく、どこからこんなに集めて来やがったんだか……!」

この悪魔の一団は、実に五十体近い魔物を引き連れていたのだ。

見たことのあるものから無いものまで多種多様、様々な種類の魔物が軒を連ねている。

そのおかげで、こちらとしても対処法の分かっていない魔物が多数含まれており、大変面倒な状況であった。

幸いと言うべきか、爵位悪魔は含まれていない。単体でシリウスを抑えられるような存在がいないならば、ある程度力押しでも対処は可能だろう。

「《奪命剣》、【咆風呪】!」

だが、いかんせん数が多い。

魔物の群れへと向けて【咆風呪】を放つが、それでも全ての魔物を包み込むには至らない。

HPを大幅に回復させつつも、俺は思わず舌打ちした。

悪魔の大群と比べればまだマシなのだが、それでも数が多いことには変わりはない。

むしろ、多種多様であるだけ厄介かもしれないな。だが――

「《スペルエンハンス》、【インフェルノ】!」

「光よ、撃ち貫け!」

この規模であるなら、逆にそこまで細かい戦い方をする必要もない。

範囲攻撃で丸ごと削りつつ、体力の減った相手をシリウスに片付けて貰うまでだ。

俺たちの範囲攻撃を受け、魔物の群れはまんべんなくダメージを負った状態となっている。

耐性などは気にしないでの攻撃であるため、あまり削れていない魔物も存在しているが、それについては仕方がない。

多少なりとも削れている状態であるならば、シリウスが強引に突っ込んでも反撃を受ける数が少なくなるのだ。

「ガアアアアアアアアッ!」

だが、シリウスは俺たちの真似をしたのか、ダメージを負っている魔物の群れに対して薙ぎ払うようにブレスを吐き出した。

衝撃波のブレスはまとめて魔物たちを斬り刻み、全体に満遍なくダメージを与える。

連なるような範囲攻撃に、魔物たちの中でも弱い部類の個体は消し飛ばされてしまったようだ。

強力な攻撃ではあるのだが、長期にわたる戦いではそうそう連発できるようなものではない。

大規模なイベント時にはできない、贅沢な使い方だ。

「シリウス、セイラン、突っ込め!」

「ガアッ!」

「ケェエッ!」

大幅に削れた魔物たちへと向けて、テイムモンスターたちが突撃する。

既に体力の少ない魔物たちは、この二体にとっては単なる獲物でしかないだろう。

大暴れするシリウスたちの様子を眺めながら、俺もまた前方へと向けて足を踏み出す。

「『生奪』」

あれだけ範囲攻撃を重ねはしたが、それでも魔法に対して耐性を持つ魔物はそこまで大きなダメージは受けていない状況だ。

そういった連中を片付けるのは、俺やアリスの仕事だろう。

まあ、アリスの方は後方で控えている悪魔たちを暗殺しに行った様子ではあったが。

(あの魔物使いっぽい悪魔を殺すと支配が解けそうだし、最後に取っておいてほしいんだがな)

イベント時のような戦いであればともかく、今はシリウスのレベル上げが目的だ。

これだけの数の魔物を屠ることができるならば、大きく経験値を稼ぐことが可能だろう。

いくつも悪魔の群れを狩ってきたし、そろそろ進化のレベルに到達して欲しいところなのだが――まあいい、今は目の前の相手に集中するべきだろう。

歩法――烈震。

目についた相手へと向けて一気に駆け抜け、いくつもの石の塊が浮かぶような奇妙な魔物へと向けて刃を突き出す。

初めて見る魔物であるため名前も分からないが、どうやら魔法に対する耐性が高い魔物であるらしい。

シリウスへと向けて様々な属性の魔法を放っていた魔物であるが、俺の接近を感知すると、その標的をこちらへと移す。

だが、その反応は流石に遅い。

「しッ!」

斬法――剛の型、穿牙。

その魔法が放たれるよりも早く、俺の突き出した餓狼丸の切っ先が、中心に浮かんでいる水晶玉を穿つ。

恐らくそこが本体だろうと踏んだのだが、どうやら正解であったようだ。

《致命の一刺し》の効果が発動したらしく、まだまだ残っていたHPは一撃で砕け散る。

物理攻撃に弱いのか、弱点部位に対してのダメージが大きいのか――何にせよ、対処法は理解した。

後数体同じ魔物がいることであるし、それらも一様に片付けてしまうこととしよう。

「《蒐魂剣》、【断魔斬】!」

そんな水晶の魔物たちは、一体を片付けたせいかこちらへと標的を変更した。

ヘイト管理という概念は正直あまり理解していないのだが、この魔物たちはどうも攻撃対象を一緒に定めているようだ。

決まって集中攻撃を受けると考えると中々面倒ではあるが、逆に言えばどこに攻撃が飛んでいくのかは分かりやすい。

こちらへと殺到してきた魔法は【断魔斬】でまとめて斬り払い、吸収しながら前へと駆ける。

歩法――陽炎。

この魔物たちの攻撃は、厄介ではあるが単調でもある。

俺が一人で向かって行っているためか、単体を対象とした魔法しか飛ばしてこないのだ。

狙いを定めての攻撃であるならば、陽炎で容易に回避することができる。

そうして肉薄した相手の本体へと向けて刃を振るえば、その水晶の体は容易く砕け散ることとなった。

「《練命剣》、【命輝一陣】」

そして二体目、物理攻撃が有効であるならば、【命輝一陣】も通用するはずだ。

そう思っての一閃であったが、流石に距離があったためか、余裕をもって回避されてしまった。

とはいえ、その回避行動の間は攻撃できないらしく、こちらは容易に移動できるようになったわけだが。

その間にもう一体の魔物へと接近、魔法を躱しながら一閃を放ち、相手の本体を粉砕する。

最後に残った一体は、それでも気にした様子もなく魔法を放とうとし――上空から飛来したルミナの一閃により、同じく砕け散ることとなった。

「よくやった。さて――」

確認すれば、最早魔物の姿はない。

悪魔たちについては、緋真やアリスたちによって片付けられている状況である。

あと残っているのは、例の魔物使いらしき悪魔だけのようだ。

「いい具合のようだな。シリウス、叩き潰せ」

「グルルッ!」

俺の言葉に威勢良く頷いたシリウスは、その鋭い前足を持ち上げる。

魔物使いの悪魔はせめてもの抵抗なのか鞭を振るうが、物理攻撃には強いシリウスに通用するはずもない。

気にすることも無くシリウスは腕を振るい、俺の言葉通り悪魔の体を叩き潰したのだった。

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀神》のスキルレベルが上昇しました』

『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《クロスレンジ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復特性》のスキルレベルが上昇しました』

『《高位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『《血の代償》のスキルレベルが上昇しました』

『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』

『《会心破断》のスキルレベルが上昇しました』

『《 再生者(リジェネレーター) 》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《シリウス》がレベル上限に達しました。《ソードドラゴン》の種族進化が可能です』

どうやら、ちょうどよく目標達成となったらしい。

果たしてどのように変わるのか、期待と共にメニューを開いたのだった。