軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

439:人魔大戦:フェーズⅠ その7

デーモンの振るう剛腕を半身になって回避しながら、なぞるように餓狼丸の刃を流す。

脇腹を斬り裂かれたデーモンはぐらりと体を傾がせるが、まだ死んではいない様子だ。

現状、多数の悪魔がこちらに向かってきている状況であり、あまり敵一体にこだわっている暇はない。

今はとにかく、効率的に悪魔を狩り続けなければならないのだから。

「『生奪』」

使うのは基本的に《練命剣》と《奪命剣》の組み合わせでいい。

これならばHPの消費は最低限で済むため、攻撃力と継戦能力のバランスが最もいいのだ。

MPの消費については時折飛んでくる魔法を《蒐魂剣》で斬ればいいだけだし、これだけならばいつまででも戦っていられるだろう。

とはいえ――

「流石に、この程度の敵を相手し続けるのは勘弁だがな」

斬法――剛の型、輪旋。

黒と金のオーラを纏う刃の一閃が、二体の悪魔の首を斬り飛ばす。

敵の防御力はそこまで高くはない。《練命剣》のテクニックを使わなかったとしても、この程度を斬るだけであればそれほど苦労はしないだろう。

だからこそ、多少なりとも困難な戦場になってくれなければ面白みがないのだ。

「《練命剣》――【煌命閃】!」

故に、一気にHPを消費して、広範囲に広がる一閃を叩き付ける。

広く軌跡を残すこの一閃に巻き込まれた悪魔たちは、先ほど手傷を負ったものを含め、胴から真っ二つに斬り裂かれた。

《魔技共演》での一撃に耐えられないのであれば、当然こちらを受けきれる筈もない。

相手の防御の上から両断しつつ、俺はゆっくりと前に進み出た。

それと共に刃に宿すのは、渦を巻くような黒いオーラだ。

「《奪命剣》、【咆風呪】」

その刃を振り下ろすと共に放たれる、漆黒の風。

触れたものの体力を喰らうその一閃でHPを回復させ、それと共に視界の塞がった連中へと向けて一気に足を踏み出した。

斬法――剛の型、穿牙。

真っ直ぐに突き出した刺突が、HPを削られ膝を突いていた悪魔の心臓を穿つ。

そのまま刃を捻って確実に心臓を潰しつつ、崩れ落ちる体を隠れ蓑にしながら次なる獲物へと向けて駆ける。

【咆風呪】程度で動けなくなるような相手など、いちいち気を付けて戦うことすら時間の無駄だ。

(それだけ、俺の攻撃力が上がってるってことかね)

恐らく、主な原因は《神霊魔法》……【武具神霊召喚】によるものだろう。

MPの大半を封印するという大きな代償の代わりに得た、敵防御力の低減効果。

これのお陰で、攻撃性能はそれほど高くはない【咆風呪】でもこれだけのダメージを与えることができたのだろう。

遠距離攻撃にすら効果が適用されるのは実に助かるが、実際どんな仕組みになっているのやら。

まあ、これだけ大量のMPを封印しなければならないのだから、その位の効果は有って然るべきだろう。

打法――寸哮。

隣からこちらに伸ばそうとしていた手を躱し、代わりに押し当てた左の拳から衝撃を叩き付ける。

心臓に直接打撃を受けた悪魔は、それでHPを全損させてその場に崩れ落ちた。

今の打撃の感触はスキルを得る前と変わらなかった。やはり、武器――というか、【武具神霊召喚】を使用した武器以外には効果が反映されないのだろう。

まあ、性質を考えれば当然ではあるのだが。

「尤も、これだけ削れていれば十分だがな」

例え【武具神霊召喚】の効果が反映されていなかったとしても、これだけ体力が削れていれば問題はない。

急所を攻撃してやれば、それだけで仕留め切れてしまうような状態だ。

ただでさえ大して強くないというのに、動きが鈍っている状態では相手になる筈もない。

(さてと……多少は敵の動きも鈍り始めたか)

暴れ回るシリウスによって、悪魔共はかなり散らされている状態だ。

そして、離れた場所にいる悪魔たちは、動き回るアリスによって各個撃破されている。

そのおかげで、キルゾーンを抜けて壁に迫ってきた悪魔たちは数が減ってきている状況だ。

しかし、それもまだ全てではない。壁を登り激しく攻撃を仕掛けようとしてくる悪魔は存在している。

だが、シリウスの目は悪魔たちの侵攻ルートの方へと向けられている。このままだと、あちらに向かっていきかねない状況だ。

誘導されているということはないだろうが、このまま向こうに行かせてしまうのは都合が悪い。

「シリウス! 向こう側の壁に近い悪魔を片付けろ!」

「グルッ!」

俺の言葉を聞き、シリウスの視線が壁側に戻る。

そして、勢い良く地を蹴ると、一切容赦することなく悪魔の群れへと向けて襲い掛かった。

少々ダメージを受けてはいる様子ではあったが、どうやら外壁上のプレイヤーから回復魔法を送って貰っている様子だ。

あれならば、シリウスが倒れることはあり得ないだろう。

「さて――《練命剣》、【命輝一陣】」

多めにHPを注ぎ込み、範囲を広げた一閃で、動きを止めていた悪魔たちを纏めて薙ぎ払う。

残るのは積み重なる悪魔の亡骸と、その先からこちらへと向かってくる悪魔の群れだ。

どうやら、奴らもまだまだやる気に溢れているらしい。

「《練命剣》、【命双刃】」

さて、それではもう一度実験だ。装備している武器を模倣する形で形成される【命双刃】には、果たして【武具神霊召喚】の効果は適用されるのか。

それを確かめるため、俺はこちらへと向かってくる悪魔の群れへと向けて突撃した。

まず振り下ろすのは右の一閃。こちらへと放たれる魔法を掻い潜りながら放つ一撃は、デーモンの胴を半ばまで斬り裂く。

その右手の感触を忘れぬようにしながら【命双刃】の刃を振るえば、深手を負っていた悪魔はその場で倒れ伏すこととなった。

(刃の重さが無い分だけ威力が下がるのはいつものことだが……思ったほどの差は無いな?)

これに【武具神霊召喚】の効果が適用されていないのであれば、ここまでの切れ味を発揮するとは思えない。

どうやら、この魔法は【命双刃】の刃にも効果を発揮することができるようだ。

正直、使い所の少ないテクニックであったのだが、これならばもうちょっと活用するのもアリだろう。

「《蒐魂剣》!」

こちらを狙ってきた魔法を《蒐魂剣》で斬り裂きつつ、悪魔の群れの中へと突入する。

この混戦状態の中では、魔法でこちらを狙ってくることはできないだろう。

眼前に迫った悪魔に対して両の刃を振り抜く形で振るい、その胸をバツの字に斬り裂く。

噴出する緑の血は気にすることなく、更に敵陣の奥へと潜り込む。そして――

「《練命剣》、【煌命閃】!」

斬法――剛の型、扇渉・親骨。

大きく踏み込みながら放った一閃と共に、黄金の軌跡が広がる。

数多くの悪魔を巻き込みながら放った一撃は、果たしてどれだけの数を巻き込んだことだろうか。

だが、ここで手を止めることはない。返す刀にて放つのは、【煌命閃】と対を成す一撃だ。

「《奪命剣》、【冥哮閃】!」

荒れ狂う黒い軌跡が、【煌命閃】の範囲から逃れていた悪魔たちを薙ぎ払う。

《奪命剣》の中でも特に威力の高い一撃だ。たとえ《練命剣》に及ばずとも、有象無象の悪魔を片付けるには十分である。

斬り裂かれ、或いは吸い尽くされ、悪魔たちはバタバタと崩れ落ちていくその中で、しかし俺は足を止めることなく更に前へと踏み込んだ。

まだまだこの場所は外壁に近い。魔法があれば十分に狙える範囲内だ。

もう少し、敵を奥へと押し込みたいところである。しかし――

「――――ッ!?」

突如として俺の眼前にまで飛び込んできた悪魔の姿に、思わず眼を見開いた。

これまでの悪魔は、かなり大柄な異形の姿をしていた。

しかし、この悪魔は人間大の大きさで、その全身が黒紫の装甲によって覆われている。

顔面までも覆われたその姿は、子供向けの特撮番組に出てくるような様相だ。

■アークデーモン

種別:悪魔

レベル:92

状態:アクティブ

属性:闇・氷

戦闘位置:地上・空中

「爵位持ちではない、上位の悪魔か……!」

これまでの悪魔はデーモンだったが、こいつは更にその上。

成程、どうやらこれまでの敵とはレベルの違う相手であるらしい。

だが――それこそ、望む所というものだ。

「いいだろう――小手調べと行こうか!」

笑みと共に刃を振るい、振るわれた鉤爪を弾き返す。

多少は骨のある敵が出てきたならば、ここからは楽しめそうだ。