軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

430:開戦へ向けて

「つまり、今回は防衛戦になるってことか」

『はい。状況的に、こちらから仕掛けることは難しいですね』

フォレストドラゴンの放ってきた木の葉の刃を躱しながら、アルトリウスからの通話に返答する。

アルトリウス側としては直接会っての会話を希望していたのだが、こちらはギリギリまでレベルを上げるため、この大型亜竜たちが生息するエリアに留まっていたのである。

詳細な作戦共有は直接の方がいいだろうが、概要程度ならば通話でも何とかなるし、別に問題はないだろう。

まあ、問題があるとするならば、今まさにフォレストドラゴンとの戦闘中であるということなのだが。

【武具神霊召喚: 断斬之神剣(フツノミタマ) 】を付与した刃は、強靭なフォレストドラゴンの外殻を斬り裂き、その肉にまで刃を届かせる。

やはり、常時防御力ダウンの効果は高いようだ。

『斥候からの情報では、悪魔たちは既に障壁前に集結しつつあるようです。位置的には、帝国と聖王国の北端都市を狙うつもりのようですね』

「まあ、奴らはリソースを集めることが目的だからな。人間が多い場所を狙うのは自然だろう」

『おかげで対策は取りやすいですがね……しかし、厳しい戦いであることも事実です』

アルトリウスの言葉に頷きつつ、俺はフォレストドラゴンの攻撃を回避しながら距離を取る。

そこに入れ替わるように、緋真が放った炎の魔法が直撃し、フォレストドラゴンの巨体は派手に燃え上がった。

火を消そうと身を震わせるフォレストドラゴンであるが、その回復能力の性質上、その場から動くことはできない。

結果として水の魔法を使って火を鎮火させたわけだが――当然その頃には、シリウスによる渾身の一撃を受けることとなっていた。

「帝国の方は、独自の戦力で防衛するのか?」

『そうですね、帝国は銀龍王もいますし、帝国軍もきちんと稼働している。彼らは独自に防衛を行えますが、決して異邦人の参戦を断っているわけではありません。当然、帝国でも参加はできますよ』

「ふむ……だが、俺たちは聖王国を担当するんだろう?」

『ははは、まあ、そうなりますね』

さもありなんと、軽く肩を竦める。

聖王国は、俺たちの移住先候補である。しかも、辛うじて形を保っているとはいえ、国自体はほぼ崩壊している状態だ。

『キャメロット』や『エレノア商会』の支援が無ければ、とっくに立ち行かなくなっていたことだろう。

(復興やら支援やらもクエストになっているらしいが……その辺り、例の女神が絡んでいるのかねぇ)

金龍王と会話した際に触れた、女神の正体を思い返す。

実際に会って話をしたわけではない以上、あまり実感が湧いているわけではないのだが、女神はクエストという形で異邦人の動きを制御している部分があるように思える。

まあ、それはこちらにとっても都合の良い話ではあるし、踊らされることに問題があるわけではないのだが。

『聖王国の北端都市は要塞化が進んでいます。開戦までには、ギリギリ間に合うかと。情報は掲示板で周知して、プレイヤーも徐々に集まってきていますね』

「重畳ではあるが……公爵級が出てきても大丈夫なのか?」

『一応、対ディーンクラッドを想定しています。とはいえ、あの巨体で攻撃されたら、通常の建造物なんてひとたまりもありませんが……色々と、仕掛けは準備していますよ』

正直、巨人のような姿となったディーンクラッドを思い浮かべると、要塞程度で何とかできるものではないと思えてしまう。

対策をしているというのであれば、ある程度は問題ないのかもしれないが――やはり、不安は拭いきれないものだ。

しかし、こちらが真龍を味方に付けている以上、奴らも強力な戦力を持ち出してくる可能性は十分にある。

要塞がどこまで当てにできるかは分からないが、そこはエレノアの手腕に期待することとしよう。

シリウスによって強引に突き飛ばされたフォレストドラゴンへは、ルミナの放つ光とセイランの放つ嵐の魔法が一斉に襲い掛かる。

進化したことによって攻撃力を増したルミナたちは、大型亜竜が相手であったとしても、簡単に有効なダメージを与えることができる。

そんな破壊力の嵐に晒されるフォレストドラゴンへと向けて、俺は一気に接近して刃を振るった。

「《練命剣》、【命氣練斬】」

眩く輝く生命力が、餓狼丸の刀身を包み込む。

これまでのように噴き上がるような黄金のオーラが現れるわけではなく、むしろ餓狼丸の刀身そのものが黄金に輝くかのように。

《練命剣》がレベル50に達して新たに得たテクニックは、単体攻撃用の高威力攻撃だった。

広範囲に攻撃を行える【煌命閃】と比較すると、リーチこそ短いものの威力は上昇しながらも消費するHPは少ない、使い勝手のいいテクニックとなっている。

簡単に言えば、【命輝閃】の上位互換であると言えるだろう。その鋭い刃による一閃は、フォレストドラゴンの右前足を深々と斬り裂いて見せた。

「回復手段は潰して、と……で、何だったか」

『基本的な戦闘方針についてですよ。今回、こちらから攻めることはできません。真龍関係と要塞の建築で、そこまでの手が回りませんでしたから』

「なら、専守防衛か?」

『基本的には、そうなります。ただ、完全なる籠城戦でもありません』

「ふむ、ある程度野戦もするか――《奪命剣》、【命餓練斬】」

同じく《奪命剣》の新たなテクニックでフォレストドラゴンの足を完全に切断しつつ、アルトリウスの言葉を反芻する。

こちらも【命輝練斬】と同様、高威力の単体攻撃となっているテクニックだ。

流石に《練命剣》ほどの威力はないが、それでも通常時より遥かに攻撃力は高く、またHPの吸収効率も高い。今後多用していくことになるだろう。

『攻撃に特化したクオンさんや、広い場所で戦力を発揮できる騎兵部隊もいますからね。隙を見て野戦部隊を放出し、敵数を減らす必要があります』

「そして敵戦力を削ったところで、改めて殲滅すると……難しいが、状況を考えるとそれが妥当か」

『正直なところ、障壁の影響で得られる情報が少ないのが現状です。詳しい部分は、実際に戦ってみなければ分からないでしょう』

アルトリウスの言葉に、軽く嘆息を零す。

状況が状況とは言え、中々に難しい問題だ。正直なところ、ここまで行き当たりばったりで戦うことには不安が残る。

しかし、悪魔との戦いは常に予想外の連続だ。どんな悪魔が攻めてくるかもわからない以上、対策を練ることは難しい。

だとしても、奴らは待ってくれるわけではないのだ。できることを可能な限りこなすしかない。

「状況は理解した。こっちはギリギリまで鍛えておくから、そちらも準備を頼む」

『ええ、分かっています。戦力として、期待させて貰いますよ』

「こっちができるのはそれ位だからな。精々、派手にやってやるとしよう」

事前準備に関しては、俺にできることなどない。

作戦関係はアルトリウスに、物資関係はエレノアに、全て任せきりになってしまう。

若干申し訳なくは感じるが、俺がそちらにいた所で何か役に立つわけでもなし、レベルを上げを行っていた方がよほど有意義というものだ。

足の一本を失ったフォレストドラゴンは、シリウスの攻撃を一方的に受けるばかりだ。

程なくしてHPも尽きるだろうと、軽く嘆息して餓狼丸を肩に担ぐ。

相手としては少々物足りなくなってきたが――どうせイベントは明日だ、今から新しい狩場を探している暇もない。やれるところまでやるしかないだろう。

「ま、明日はよろしく頼む」

『ええ、ご活躍を期待しています。それでは』

アルトリウスからの通話が切れ、それとほぼ同時にシリウスがフォレストドラゴンの首を噛み千切る。

ずっと通話しながらの戦闘であったが、随分と緊張感のない相手になってしまったものだ。

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀神》のスキルレベルが上昇しました』

『《格闘術》のスキルレベルが上昇しました』

『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《高位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『《血の代償》のスキルレベルが上昇しました』

『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』

『《会心破断》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』

レベルの上昇を確認して、小さく頷く。

これでレベルは90、とりあえず一区切りのレベルまで辿り着いたと言えるだろう。

まあ、新たなスキルの当てもないし、今新たなスキルを取得してもイベントまでに育てられるわけでもないため、今は控えのスキルを入れておく程度にするが。

フォレストドラゴンの死骸の上で勝鬨を上げるシリウスを眺めながら、俺は明日の戦いに思いを馳せていたのだった。