軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

421:スキルの成長

とりあえず、しばらくはフォレストドラゴンを狙って戦うこととして――とりあえず、今日中に成長武器の経験値を貯め切ることを目標としよう。

赤龍王と戦った際に 強制解放(リミットブレイク) を使ってしまったため、今はレベルが下がっている状態なのだ。

十分戦える攻撃力ではあるのだが、やはり若干の火力不足を感じてしまう。

幸い、フォレストドラゴンはいい経験値になりそうであるし、経験値を貯めるのにもそれほど苦労はしないだろう。

「ルミナ、また上空から索敵を頼む。フォレストドラゴンか……或いは、それに比肩するような亜竜がいたら教えてくれ」

「承知しました、お任せください!」

上空へと舞い上がるルミナを見送り、俺は緋真の方へと視線を移す。

次に戦う相手も気になるが、まずは緋真のスキル進化が先だろう。

しかも、今回進化することになったのは、緋真が多用するスキルである《術理装填》だ。

このスキルの強化次第では、緋真の大きな戦力向上につながるだろう。

「うわ、スキル進化に12ポイントもかかる。なにこれ……」

「随分とポイントを使うな。それだけ強力なスキルってことか?」

「まあ、これまでのスキルの延長線上って感じではありますけど……とりあえず、進化させてみますね」

俺の言葉に頷きつつ、緋真は新たなスキルへの進化を実行したようだ。

そしてスキルの詳細を確認し、小さく頷きながら新たなるスキルを発動する。

「《 術理掌握(・・・・) 》、《スペルエンハンス》【フレイムストライク】」

スキルの発動と共に、緋真は炎の魔法を発動した。

それ自体はこれまでの《術理装填》と変わりはないが、今回は武器が炎を纏うことはなく、掌の中に炎の渦が現れるに留まる。

果たしてどのようなスキルなのかと首を傾げたその時、緋真は躊躇うことなく、その炎を己の手で握り潰した。

瞬間――光と熱が、周囲へと一気に拡散する。

「っ……!」

「あら……また派手な姿になったわね」

スキルを発動した緋真は武器だけではなく、体の端々から炎を発するような姿へと変貌していたのだ。

指先や足先だけでなく、肩口などからもちらちらと炎が舞い上がり、毛先に至ってはそれ自体が炎となって揺らめいている。

その姿を見て、俺は緋真が発動した新たなスキルの正体を理解した。

《術理装填》は、己の操る武器に魔法を込めるスキルであった。この性質そのものが変貌していないのであれば――

「魔法を……己の体の中に取り込んだのか」

「そうみたいですね。《術理掌握》の場合は武器だけじゃなく、自分の体にも魔法を取り込んで、ステータスを向上させる効果があるみたいです。この通り、武器にも効果は及んでいますから、攻撃力上昇自体も変わってはいないですね」

言いつつ、緋真は燃え上がる紅蓮舞姫を掲げる。

普段からしょっちゅう燃えているためあまり違和感はないのだが、どうやらこのスキルの場合は武器も体の一部として扱うらしい。

まあ、これまでのスキルと同じ使用感でも扱えるのであれば好都合だろう。

「だが、武器の振り方で魔法を放出しちまうんだろう? ステータスまで頻繁に上がり下がりするのは問題ないのか?」

「ああ、それなんですよ。何と、今回から魔法の解放は、コマンドワードを使用した解放に変更になったんです。つまり、モーションじゃ魔法は解放されなくなりました。どんな発動形式になるかは、解放時のモーションによるらしいですけど」

「へぇ、便利になったのね」

どうやら、これまでの不便だった部分を含めての改善となるらしい。

これならば、純粋な強化として扱うことができるだろう。

あまり仕様が変わりすぎると慣れるのに時間がかかってしまうし、これに関してはちょうどいいと言えるだろう。

「どれぐらいの火力強化になっているかは分からないし、一度試してみた方がいいか」

「ですね。魔法によってどう変わるのかも確かめる必要がありますし」

魔法の種類だけ強化のバリエーションがあるわけだし、検証はかなり大変だろう。

尤も、今更弱い魔法を使う必要があるかどうかは、正直分からない所であるが。

とはいえ、長々と検証に時間をかけている余裕があるわけではない。

ここは、戦闘しながら確認していくしかないだろう――ちょうど、ルミナも帰ってきた所であるしな。

「お父様、あちらから――くっ、来ます!」

「シャガアアアアアアアアアッ!!」

突如として響き渡った咆哮、そしてこちらへと接近してくる気配。

そちらから勢い良く飛来してきたのは、全身に青白い雷光を纏うドラゴンであった。

その姿はフォレストドラゴンに比べて小柄ではあるが、手足は太く狼のような四つ足の哺乳類の姿にも近く感じる。

獣とドラゴンの中間、そんな姿の亜竜は、こちらへと向けて鋭く狂暴な視線を向けていた。

■トニトルスドラゴン

種別:亜竜

レベル:85

状態:アクティブ

属性:雷

戦闘位置:地上・空中

雷属性の亜竜――レベルからして、フォレストドラゴンと同格の亜竜になるのだろう。

複合属性ではないためステータスはシンプルだが、決してフォレストドラゴンに劣るということはあるまい。

むしろ、あちらよりも機動性に優れた姿をしているため、こちらの方が面倒臭そうだ。

「とはいえ、好都合だな。中々に強敵の気配だ」

「面倒臭そうですね、これ」

「何、それだけ経験値にも期待できるってことだ。それに、相手もやる気十分のようだぞ」

前足で地面を掻くトニトルスドラゴンは、今にもこちらに向けて飛び掛からんとしている体勢だ。

だが、こちらにもシリウスがいるため、安易には動けない状況なのだろう。

トニトルスドラゴンの体格はシリウスとほぼ同格、体重についてはシリウスの方が上だろう。

だが、機動性はあちらの方が高そうであるし、その性質上、安易にマウントを取られるということもないだろう。

背後を取られればシリウスとて危険であるし、上手いことサポートしなければならないだろう。

ならば、まずは――

「ルミナ、セイラン!」

「はいっ!」

「ケェエッ!」

シリウスを警戒するドラゴンへと、上空から光と風の魔法が降り注ぐ。

特に、既にスキルを発動しているルミナの魔法はかなりの威力だ。

大型の亜竜とて、決して無視しきれるようなものではないだろう。

「シイイイィィィィィ……ッ!」

そんなルミナたちの攻撃に、トニトルスドラゴンは苛立った様子で翼を翳す。

どうやら、翼の外側は硬質な鱗となっているらしく、防御に使うことができるようだ。

魔法も防げる鱗は果たしてどのような素材なのか気になるが、それは倒してから考えるべきこと。

今気にするべきは、この怪物をいかにして倒すかということだ。

「シリウス、行け!」

「ガアアアアアアアアアアッ!」

足を止めたトニトルスドラゴンへと向けて、地を蹴ったシリウスが襲い掛かる。

即座に反応したトニトルスドラゴンは、押さえ込まれることを嫌って逃れようとするが、ルミナたちに注意を払っていたせいで僅かに遅い。

相手が逃れるよりも早く、シリウスの一撃はトニトルスドラゴンの胴へと直撃した。

「シャアア……ッ! ガガアッ!」

その一撃を受けたトニトルスドラゴンは、横に弾かれながらも魔法を発動した。

翼より発せられた青白い雷は球体となり、中空に線を引きながらシリウスへと襲い掛かる。

小回りの利かないシリウスは魔法の直撃を受けるが、この程度であれば大した痛手にはならない。

気にすることも無く、シリウスはそのままトニトルスドラゴンへと向けて襲い掛かった。

「ガルアアアッ!」

「ギィィイイイッ!」

魔法を喰らいながら前進したシリウスは、そのまま強引にトニトルスドラゴンへと食らいつく。

鋭い爪と牙、刃の如きそれに捕らえられれば、逃れる術など存在しない。

しかし、シリウスの爪と牙が食い込むと同時、トニトルスドラゴンの体が青白く光り始めた。

そして――

「ジャアアアアアアアアッ!」

「ガァ――――ッ!?」

トニトルスドラゴンは、周囲に放出するかのように青白い雷を解き放った。

眩い電撃に晒され、シリウスは堪らずトニトルスドラゴンから距離を取る。

それを目にし、俺は舌打ちと共に相手へと向けて走り出した。

痺れて動きの止まったシリウスに追撃をさせるわけにはいかない。

幸い、あの放電はそれなりに大技であったらしく、トニトルスドラゴンの動きも若干ながら止まっている。

今のうちにダメージを与えつつ、コイツの能力を観察することとしよう。