軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

419:大型亜竜

丘を登って、ルミナが示した方向へと向かう。

この先にいるのは、恐らく大型の亜竜。どのような能力を持っているかは分からないが、奴らは属性が偏っていることが多く、見ればある程度の能力を類推することはできる。

果たしてどんなドラゴンなのか――その期待と共に丘の向こう側へと視線を通せば、そこにいたのは茶色い体を持つ大型のドラゴンであった。

体の大きさは、恐らくグランドドラゴンと同じ程度だろう、今のシリウスよりも若干大きいように思える。

体色についてもグランドドラゴンに近い茶色ではあったが、その質感は明らかに異なっていた。

あれは――

「何と言うか、木みたいに見えるな」

「翼もなんだか、枝と葉っぽいですよね。ちゃんと動いてはいますけど」

総じて、木で作られたドラゴン。だが、ゴーレムのようなものではなく、きちんと生物的な特徴を備えた存在。

何とも不思議な存在であるが、感じ取れる魔力の量からも、あれがかなり強力な亜竜であることは理解できた。

■フォレストドラゴン

種別:亜竜

レベル:85

状態:アクティブ

属性:地・水・木

戦闘位置:地上・地中・水中・空中

『《識別》のスキルレベルが上昇しました』

その情報を《識別》で読み取り、思わず眼を見開く。

木属性――地属性と水属性の複合魔法、セイランの持つ嵐属性のような特殊な魔法だ。

そのような特殊属性を持つ亜竜がいることは驚きではあったものの、納得できる範囲ではある。

「木属性のドラゴンか……真龍は基本属性しかいなかったと思ったんだが」

「やろうと思えばできるんじゃないの? 《強化魔法》だってできたんだし」

「ふむ……ま、やりようもないし気にしても仕方がないか。ところで、木属性がどんな魔法なのか分かるやつはいるか?」

俺の問いに対し、緋真とアリスは沈黙する。

複合属性はかなり稀少であり、魔法特化型のプレイヤーでもあまり持っている者はいない。

特に、あまり人気とは言い難い地属性が前提であるためか、俺もこれまで木属性魔法の使い手を目にしたことは無かった。

「うーん……一応、概略程度は知ってますけど、具体的にどんな性能なのかって言われると……」

「まあ、それでも無いよりはマシだ。教えてくれ」

「ええと……とりあえずその名前の通り、植物を操る魔法がメインらしいです。樹の槍を作り出したり、刃のような葉っぱを飛ばしたり」

「地属性と同じく、物理的な攻撃に近いわけか」

とはいえ、地属性の魔法でもそうだが、物理的に見えつつも現れた物体はあくまで魔力で構成された代物だ。であれば、《蒐魂剣》を使えば破壊することは可能だろう。

基本的には地属性の魔法と同じような対処であると考えておいた方が良さそうだが――逆に言えば、ここまでは本当に地属性と大差がない。

複合属性だというのに、その前提の魔法と性能が変わらないということがあるだろうか。

そんな俺の疑問に答えるように、緋真は言葉を付け足した。

「それから、リジェネ……自動回復系の魔法があるという話も聞きました」

「自動回復か……それは注意が必要だな」

「貴方が言うのもどうなのかしらね、それ」

薄ら笑いで茶々を入れるアリスに半眼を返しつつ、木属性に対する考察を続ける。

地属性は防御力の強化に秀でた属性、水属性は回避能力に優れた属性であったかと思う。

それに対し、木属性は回復能力を持っていると。それまでの地属性や水属性まで使える可能性を考えると、中々面倒そうな相手である。

「しかし……水があるとはいえ、火は効きそうだな」

「よく燃えそうな見た目してるものね」

「赤龍王は色々大変でしたけど、こっちならいい感じに戦えそうですね」

赤龍王を相手にする際、緋真は 強制解放(リミットブレイク) を使わざるを得なかった。

だが、今回のフォレストドラゴンについては、体が木でできているような存在だ。

水属性もあるため消火は可能だろうが、少なくとも火属性のドラゴンよりはよく通じることだろう。

「よし、なら行くとするか。最初は……緋真、頼むぞ」

「了解です。《スペルエンハンス》、【ファイアエクスプロージョン】!」

俺の指示に頷き、緋真はその手の中に火球を発生させる。

フォレストドラゴンへと向けられたそれは、空中にオレンジの先を描きながら飛翔し――それが着弾するよりも早く、俺たちは一斉にフォレストドラゴンへと向けて走り出した。

「【ミスリルエッジ】、【ミスリルスキン】、【武具精霊召喚】、《剣氣収斂》」

魔法とスキルを発動し、攻撃力を一気に高める。

そしてその直後、緋真の魔法が直撃し、フォレストドラゴンの横っ腹に巨大な爆発を発生させた。

「カロロロロロロロロ……ッ!」

木々がざわめくように、フォレストドラゴンは巨体を動かしこちらへと注意を向ける。

不思議な鳴き声ではあるが、威圧感はグランドドラゴンと比べても遜色はないだろう。

尤も、龍王たちと比べてしまえば大したことはないのだが。

炎の直撃を受けたフォレストドラゴンは、羽のような葉をいくつか燃え上がらせながら、こちらへと強い殺意を向けてくる。

そんな巨大なドラゴンへと向けて、シリウスは躊躇うことなく吶喊した。

「ガアアアアアアアアアアッ!!」

「カロロロロッ!」

シリウスが大きく振りかざした尾を、フォレストドラゴンはその胴で受け止める。

瞬間、フォレストドラゴンの体表にある樹木のような外皮が盛り上がり、シリウスの一撃を正面から受け止めてみせた。

強力無比なシリウスの一閃は、その防御すらも貫いてダメージを与えてみせたが、想像以上にダメージ量が少ない。

どうやら、表面の樹を削るだけではダメージを与えられず、その下の肉にまで刃を届かせる必要があるらしい。

「それはそれで厄介だな――《奪命剣》、【命喰牙】」

攻撃があまり通じなかったと見るや、シリウスはフォレストドラゴンを押さえ込みにかかる。

体格ではフォレストドラゴンの方が上ではあるが、重量ではシリウスの方が上であると思われる。

シリウスの容赦ない体当たりを受け、フォレストドラゴンは仰け反るように後退したことも、その考察を後押ししていた。

無論、フォレストドラゴンとてただで押さえ込まれるわけではなく、強く地面を踏みしめながらシリウスに対し尾による攻撃を放った。

鞭のようにしなる尾の一撃を受けてシリウスは僅かに後退し――その瞬間、足元から発生した樹木が、シリウスの手足を縛りつけた。

「――ルミナ!」

「はい、お父様!」

名前は知らないが、その魔法が足止めの効果を持っていることは見ればわかる。

どのような追撃を行ってくるかは分からないが、早急にシリウスのカバーに入らなくてはなるまい。

ルミナにはシリウスの援護に向かわせつつ、俺たちはフォレストドラゴンの注意を引くために攻撃を開始する。

まずは、先程作り出した【命喰牙】をフォレストドラゴンの足に突き刺しつつ、その背に登れる場所を探して走り出す。

その間に、緋真とセイランは強力な魔法を放ち、フォレストドラゴンに確かなダメージを与えた。

やはり最初に思った通り、火の魔法はかなり効果的であるようだ。

(とはいえ……流石にタフだな)

シリウスによる攻撃や緋真たちの魔法を受け、それでもフォレストドラゴンのHPはさほど減少していない状態だ。

しかも僅かにではあるが、減らしたはずのHPが少しずつ回復していっている。

少しずつでも削って行かなければ、フォレストドラゴンのHPはいずれ最大値まで戻ってしまうことだろう。

厄介ではあるが、それは避けなければなるまい。

「よっと……」

フォレストドラゴンの前脚まで接近した俺は、そのまま鉤縄を伸ばしてフォレストドラゴンの背中を登り始めた。

シリウスの救出に向かったルミナは、その足を拘束していた木の根を斬り落とし、足のうちの一本を解放することに成功する。

一つ外れれば後は楽なもので、シリウスは己の手を使って強引に拘束を引き千切り始める。

逆に言えば、四肢を拘束されればシリウスですら抜け出せないほどの強度であるということだ。

俺たちが捕まれば、脱出することは困難だろう。

「となると、こいつは中々リスキーかもな」

フォレストドラゴンの背によじ登り、その背を走りだしながら呟く。

俺が背に乗ったことには気づいているらしく、木の表面のような鱗の隙間からは蔦のようなものが伸び、こちらを捉えようと蠢いていた。

歩法――陽炎。

殺到してくる蔦を回避し、避け切れないものは斬り払いながら先へと進む。

前脚の辺りからよじ登ったこともあり、目的地である首元まではそれほど距離はない。

蔦を振り切った俺はそのままフォレストドラゴンの首元まで駆け抜けつつ、跳び下りながら刃を振り下ろした。

「『練命破断』!」

その一閃は、フォレストドラゴンの首へと直撃し――強固な鱗による防御を無視して刃を潜り込ませる。

深々と侵入したその一撃はフォレストドラゴンの首を裂き、致命傷には至らずとも確かなダメージを与えたようだ。

衝撃を分散しながら着地し、痛みに藻掻くフォレストドラゴンを見上げて笑みを浮かべる。

「いい具合だ……さあ、続きと行こうか」

体力を大きく削ったとはいえ、強敵であることに変わりはない。

油断なく構え、再びその巨体へと向かったのだった。