軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

416:炎の誓い

地に伏した赤龍王へと向けて、ゆっくりと近づく。

アリスの 強制解放(リミットブレイク) を受けたとはいえ、赤龍王のHPはまだ四分の一程度は残っている。

あれを受けて尚それだけの体力が残っている赤龍王に驚けばいいのか、或いは龍王のHPをそこまで削り取るアリスの 強制解放(リミットブレイク) に驚けばいいのか――まあ、何はともあれ、作戦は成功だったわけだ。

正直な所、俺たちにはこれ以上に赤龍王に対して有効なダメージを与える攻撃手段を有していない。

圧倒的な格上である存在を相手にするには、単発型の 強制解放(リミットブレイク) に頼る以外に道はないのだ。

故に、ここからまだ戦闘を行うとなると、正直かなり厳しい状態である。念の為、餓狼丸の解放時間はできるだけ消費しないようにしていたが、それでも残り時間は半分以下。これだけで赤龍王を追い詰められるかどうかは、中々難しいところだ。

と――伏していた赤龍王が、その体を震わせる。

初めから意識を失っていたわけではなさそうだったが、どうやら衝撃から立ち直るのに時間がかかったらしい。

アリスの 強制解放(リミットブレイク) を受けた時の感覚は分からないが、龍王が動けなくなるほどなのだから、結構な衝撃なのだろう。

「さてと……赤龍王、まだやるか?」

「ッ……当然だ、こんな所で終われるわけがねぇ!」

地に前足を突き、体を起こして、赤龍王は凶相を浮かべる。

闘争心に溢れたその姿は好ましいものではあるのだが、生憎と今の状況では厄介以外の何物でもない。

もし、これが何の躊躇いもなく殺し切っていい相手であれば、何も悩むことなく戦いを続行していただろう。

しかし、赤龍王は決して殺してはならない相手だ。単純に仕留め切るまで戦い続ければいいという話ではない。

何とかして納得させなければならないのだが、果たしてどうしたものか――頭を悩ませつつも餓狼丸を構え直した、その時だった。

『――何をやっている、赤龍王よ』

「ッ……ババア!? テメェ、見てやがったのか!?」

『無論、英雄たちの戦いとなれば、見逃すわけがなかろうに。それよりもお主の話だ、赤龍王。まさかお主、格下の人間相手にしてやられたから、大人気なくも本気を出すと言うのではなかろうな?』

「ぐ……っ!」

突如として響いた金龍王の声に、赤龍王は天を仰ぎながら声を上げる。

その言葉は図星だったのか、彼はドラゴンの顔にも分かり易く、悔しげな表情を浮かべていた。

赤龍王がこちらのことを侮っていたことは分かっていたし、その隙を突いたことも事実だ。

だからこそ、油断なく本気を出されてしまえば、こちらとしては打つ手がなくなる可能性が高い。

尤も――そこまでされてしまっては、プレイヤーの誰も赤龍王を攻略できなくなってしまうだろうが。

『先も言った通り、これは人間の力を見極めるための試練だ。彼らは未熟故、その先の可能性を観察することこそが試練の本質。だというのに、お主がそれを見失ってどうする』

「やり方は任せるっつったのはアンタだろうが! 俺なりに見極めてんだよ!」

『口の減らぬ小僧め。途中まではよかったが、ここから先は看過できぬ。それ以上は、異邦人の誰も達成できぬ戦いになるからな。まさか……悪魔共に利する行動をとる、などとは言わぬだろうな?』

「チッ……」

金龍王の言葉に、渋々といった様子ではあったが、赤龍王は身に纏っていた炎を収めた。

どうやら、彼もこれ以上の戦いに利はないと判断したらしい。

流石に、本気を出した龍王を相手に戦うような試練など、今のプレイヤーには誰も達成できる筈がない。そうなれば、龍王たちの結束を達成できず、ひいては人類側の防衛戦力が大きく欠如する展開を招きかねない。

つまるところ、赤龍王がやりたい放題をすることは、利敵行為であるということだ。

本当に、自分たちが超存在であるということを少しは理解して欲しいものである。

「まあいい、お前たちが強かったことは事実だ。俺をここまで追い詰めるとは思いもしなかった……だから、認めてやる。お前たちは、俺が共に戦うに足る人間だ」

「……安心したよ。流石に、本気を出されちゃ堪らないからな」

「フン……だが、いずれは決着をつける。その時までにもっと強くなっておけよ、お前ら」

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀神》のスキルレベルが上昇しました』

『《格闘術》のスキルレベルが上昇しました』

『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《降霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《致命の一刺し》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復特性》のスキルレベルが上昇しました』

『《高位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『《背水》のスキルレベルが上昇しました』

『《走破》のスキルレベルが上昇しました』

『《会心破断》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』

『《真龍の試練:赤の炎》が達成されました』

赤龍王が言葉を締めくくると共に、ワールドクエストのアナウンスが響き渡る。

どうやら、これで正式に、赤龍王の試練は達成という形になったようだ。

しかしまぁ、厄介な相手に目を付けられた気がする。

流石にロムペリアほどこちらに執着しているわけではないだろうが、特別な人間であるとは思われているようだ。

「ん……? おい人間、お前、銀龍王の一部を持ってやがるな?」

「ああ、彼を助けた礼として、彼の爪を受け取ったが」

「そうか、ならこいつを持って行けよ」

そう言うと、赤龍王はあっさりと、己の爪の一本をへし折った。

放り投げられた巨大な鉤爪は、俺たちの目の前に突き刺さる――どうやら、これがこのイベントの報酬となるらしい。

確かに、真龍たちの頂点たる、龍王の爪。これは、他では決して手に入ることのない貴重なアイテムだろう。

「人間共は、そういうもんから武器を作り出すんだろう? だったら、そいつを使えば、お前らはもっと強くなれるってことだ」

「ああ、それは確かにその通りだが……龍王の爪なんて、加工できる人間はまだいないぞ?」

「お前らの武器が俺に通じたんなら、同じ手段なら加工もできるだろ? 楽しみにしてるぜ」

俺たちの武器は成長武器で、その切り札を切ったからこそ通じたのだが――そう言おうとして、ふと言葉を止める。

確かに、成長武器であれば限定的ながら、龍王にも通じるような力を得ることができた。

それならば、加工の為のハンマーが成長武器であった場合、似たような効果を得ることができるのか。

何とも言えない話だが、聞くだけ聞いてみても損はないだろう。

「……分かった、ありがたく受け取ろう。いずれ、俺たちの力にしてみせる」

「ああ、楽しみにしてるぜ。そっちの真龍もな。どう育つのか、期待しているからよ」

確かに、赤龍王も戦闘開始からしばらくは、シリウスの戦いに注目していた。

龍王が欠けている現状、希少な種であるシリウスの存在は、彼らにとっても興味深いものなのだろう。

シリウスを龍王のレベルに至るまで育てるにはどれだけの時間がかかるか分からないが、それもまた目標の一つだ。

いずれは、その成果を龍王たちに見せることもあるだろう。

「ま、色々とケチはついたが……お前らの実力は本物だ。いずれ、悪魔のクソ共と戦う時、共に戦うことを楽しみにしてるぜ」

赤龍王はそう口にすると、周囲へと向けて真紅の魔力を走らせた。

俺たちの足元で魔法陣となったそれは、眩く輝きながら俺たちの視界を染め上げて行く。

「じゃあな。また会おうぜ、人間」

――その言葉を最後に、俺たちは龍王の領域から転送されたのだった。