軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

411:赤龍王の試練

翌日ログインし、周囲の状況を確認する。

景色は変わることなく、荒涼とした火山の光景であるが、やはり他のプレイヤーの姿は見受けられない状況だ。

大規模なイベントではあるし、動いているプレイヤーも多いとは思うのだが、果たして彼らはどこにいるのだろうか。

ひょっとしたら地上からは別ルートがあったのかもしれない。空を飛んで移動するプレイヤーはあまり多くはないし、俺たちは独自のルートを移動している可能性もある。

まあ、最終的に目的地に到達できるのであれば、どちらでも変わりはないが。

「よいしょっと……目的地も見えてきそうな感じですね、先生」

「ああ。真龍の姿もちらちら見えているし、あそこに向かえばいいんだろうな」

「火口って……嫌な予感しかしないんだけどね」

ぼやくアリスの言葉には苦笑しつつ、従魔結晶からルミナたちを呼び出す。

ともあれ、今日の予定に変更はない。このまま火口へと向かい、赤龍王と面会するのだ。

そのまま赤龍王の試練も突破し、悪魔との決戦に備えなければなるまい。

まだ多少の時間があるとはいえ、奴らとの決戦は刻一刻と迫りつつあるのだから。

とりあえず山頂へと向けて歩き出しつつ、俺は緋真へと向けて問いかけた。

「それで、赤龍王の試練の話は出回ってるのか?」

「はい、一応辿り着いたプレイヤーはいるっぽいですね。山を登ること自体はそこまで難しくはありませんから。まあ、面倒ではありますけど」

「……否定はできんな」

昨日出会った魔物たちは、どいつもこいつも対応が面倒な奴ばかりだった。

対処できないほど強いというわけではないのだが、倒すのには少々時間がかかる魔物が多かったのだ。

ある程度レベルの高いプレイヤーであれば山を登ることは可能だろうが、面倒であることは否定しきれないだろう。

尤も、俺たちはあまり相性が良くなかったということもあるが。もっと相性のいいパーティ構成であれば、あっさり登れてしまっていてもおかしくはないだろう。

「大方の予想通りというか、赤龍王の試練は力試しみたいですね。あの火山の中はダンジョンみたいな構造になっていて、まず赤龍王の所まで辿り着けるかどうかが第一段階、そして赤龍王に直接実力を示すのが第二段階だとか」

「色々と気になる話ではあるな」

まず、あの火口の中にダンジョンが広がっているという話だが、果たしてどのような構造となっているのか。

そもそも真龍たちが過ごしている環境であるし、人間が移動することなど想定されていない可能性もある。

尤も、完全に人間が生存できないような環境であればそもそも突破することはできないため、辿り着いたプレイヤーなど出てくるはずもないし、そこについてはある程度安心してもいいとは思うが。

「どういう構造のダンジョンなんだ?」

「所々にある足場を飛び移りながら下へと降りていく感じですね。足を踏み外したら溶岩に真っ逆さま、当然一発アウトです」

「……まあ、幾ら耐性を上げていても、溶岩は無理でしょうね」

乾いた笑みを浮かべるアリスの言葉には内心で同意する。

俺の知る中で最も高い耐久度を誇るプレイヤーはパルジファルだろうが、彼女でも溶岩に落下すれば耐えられまい。

俺たちは空を飛べるとはいえ、流石に安心できるものでもないだろう。

「幸いというべきか、ダンジョン内では魔物は出現しないみたいです。そんな足場で敵に襲われたら堪ったものじゃないですしね」

「単なるアスレチックね。それならまぁ、構造次第じゃない? 飛べば楽そうだけど」

「それ、飛ばせて貰えるのか?」

「ああ、それは無理っぽいですね。飛んでショートカットしようとしたプレイヤーが、見ていた真龍に撃ち落とされたらしいです」

ズルはするな、ということだろう。

流石に真龍の攻撃を防ぐには本気で迎撃しなければならないし、そんなことをしていたら飛ぶどころではない。

素直に俺たちだけで降りていくべきだろう。ルミナたちは出していていいのかどうかは分からんが、それで撃ち落されても困るし、一旦結晶に戻しておいた方が安全か。

「結構難しいらしいですけど、クリアしたプレイヤーはそれなりにいるみたいですね。で、その後ですけど……赤龍王と戦うっぽいです」

「……マジか」

「直接実力を示すって……そこまで直接的じゃなくてもいいじゃない」

思わず、アリスと共にぼやくように声を上げる。

龍王の力は、金龍王との戦いで嫌というほど理解させられた。

最大限に強化された状態で 強制解放(リミットブレイク) を使い、それでようやく届かせることができたというレベルなのだ。

とてもではないが、まともに戦って何とかできるような相手ではない。

龍王とは、それほどの力を持つ怪物なのだから。

「正直、勝てる相手じゃないと思うが」

「そりゃまあ、普通に戦ったら負けますよね。龍王の戦力って、普通に考えて公爵級悪魔以上っぽいですし」

俺たちも公爵級悪魔に勝利したとはいえ、一つのパーティにおける戦力では到底届くようなものではなかった。

赤龍王の力があれ以上であるとするならば、まず勝てるような相手ではないだろう。

しかし――

「絶対に勝てないような試練にはしないと思うんだがな……金龍王の方針に喧嘩を売るようなもんだろう?」

「赤龍王と金龍王の関係はよく分かりませんけど、流石に逆らうことはないんじゃないですかね。多分、攻略法はあるんだと思いますけど」

「じゃなけりゃ、まともに相手を出来る存在じゃないだろうよ。どんな戦いになることやら」

まだ赤龍王と会ったことが無いだけに、その方針を類推することは難しい。

試練と名がついている以上は勝てない戦いにはしない筈だが、試練の方針そのものはそれぞれの龍王に任せられているため、どんな内容になるかは分からないのだ。

手加減をされた戦いになるのか、或いは何らかの条件を達成しなければならないのか――分からんが、どのような条件にせよ達成しなくてはならない。

後の悪魔との戦いに、真龍たちの力は必要不可欠なのだから。

「とりあえず、前に辿り着いたプレイヤーの話では、手も足も出ずに全滅したらしいですね。まだ攻略の糸口はつかめていないようです。まあ、掴めていても流していないだけかもしれませんけど」

「競争ではあるからな。最低限の情報は流しつつ、重要な情報を秘匿するのも分からんではないさ」

それによって他のプレイヤーを赤龍王に到達させつつ、少しずつ情報を明らかにするつもりなのだろうか。

そのプレイヤーたちの思惑は分からんが、多少なりとも情報が集まることはありがたい。

実際に赤龍王とぶつかるまでに、可能な限り情報を集めておきたいところだ。

尤も、期待は薄いであろうが。

「何にせよ、現状で分からんのであれば入ってみるしかあるまい。まずは、火山のダンジョンを攻略することが先決だ」

「ですね。赤龍王のことはともかく……まずは、アスレチックを攻略しないといけませんから」

命懸けのアスレチックとは、何とも過激なことだ。

とはいえ、ぼやいていても何も始まらない。まずは内容を確認し、対策が必要であればまた考えることとしよう。

そう決意を固めながら歩き続け――あまり魔物と出会うこともなく、俺たちは火山の頂上に到達することとなった。

ここまでくると他のプレイヤーの痕跡を覗くことができたが、どうやら彼らは東側から登ってきたらしい。

そちら側には、普通に道があったのだろうか。分からんが、もしかしたら今も挑戦している者たちがいるのかもしれない。

そう思いながら火口へと近づいたところで、上空を飛び回っていた真龍の内の一体がこちらへと舞い降りてきた。

「次の異邦人が来たか」

「……赤龍王の眷属か」

「さぁ、貴様らの行くべき場所はその穴の奥だ。ボスの所まで辿り着けるってんなら、是非見せてくれよ」

金龍王の眷属が厳かな雰囲気を漂わせていたのに対し、赤龍王の眷属は中々に乱暴なイメージだ。

この辺りも真龍の種族ごとに特色があるのか――或いは、個体の性格なのか。

しかし、赤龍王は粗暴であると聞いていただけに、あまり意外な印象はない。

まあ、性格云々については別に気にする必要はないだろう。強さがあり、戦ってくれるならそれでいい。

挑発じみた真龍の台詞については受け流しつつ、ルミナたちを結晶に戻しながら火口へと向かう。

そこから内部を覗き込んでみれば、下には燃え滾る溶岩の赤が見て取れた。

「……凄い熱気」

「耐熱ポーションは飲んでおくか……さてと」

よくよく見てみれば、火山内の壁面に所々足場となるような出っ張りが見える。

あそこを飛び移りながら下へと向かって行けということか。

成程、これは――

「中々ハードなアスレチックだな」

「ちょっと足を滑らせたら即死じゃない、これ」

「これは流石におっかないですね」

アスレチックとはよく言ったものだ、これは命懸けにも程がある。

しかし、これを降らなければ赤龍王の元へは辿り着けない。

何とかして、ここを降りて行かなければならないだろう。

「ぼやいていても仕方ない、行くとするか」

「了解です」

耐熱ポーションを飲み干し、ガラス瓶を適当に放り捨てながら、火口へと向けてジャンプする。

さて、無事に辿り着けるかどうか――ここで死んでも勿体ない、慎重に行くこととしよう。