作品タイトル不明
410:山頂を目指して
火山を登って行くと、所々で魔物と遭遇する。
今回は金龍王の住処を目指して移動していた時とは違い、普通に魔物と遭遇している状況だ。
出てくる魔物に対処しながら、そこにどのような違いがあるのかと話し合っていたのだが、結論としては金龍王の属性に原因があるのではないかという話になった。
金龍王、およびその眷属たちは、全て聖属性の魔力を帯びて産まれてきた存在である。
真龍たちは特定の属性に特化することによって色が決まるため、黄金のドラゴンが集うあの浮遊島には、聖属性の使い手である真龍たちが集っているということになるのだ。
聖属性には魔物払いの魔法などもあり、聖火の塔についても同様の性質を持っている。つまるところ、金龍王たちの持つ魔力によって、魔物たちが接近しづらかったのではないかという考察だ。
赤龍王は当然火属性であり、魔物避けの能力などない。だからこそ、赤龍王の住処であるこの火山には、普通に魔物が生息しているのだろう。
「そう考えると、何となく性質が見えてくるな」
火山に生息している魔物は、当然と言えば当然なのだが、熱に強い魔物ばかりだ。
オブシディアンクロウラーも外殻は凄まじい耐熱性能であり、緋真も相手を直接焼くというよりは、足元で爆発を起こしてひっくり返すような使い方に切り替えている。
他にも頑強な殻に篭ろうとするカタツムリ型の魔物や、硬質な針を飛ばしてくるヤマアラシ型の魔物などが見受けられたが、最も面倒臭かったのは、オブシディアンクロウラーと同様の材質でできているらしきゴーレム、オブシディアンゴーレムであった。
物理攻撃は殆ど通じず、火属性の魔法もあまり効果がない。結果的に、シリウスが押さえ込みつつルミナとセイランがひたすら魔法を当て続けることになってしまった。
正直、時間がかかるだけで何の旨味もないため、見かけても自分たちからは戦闘を仕掛けないようにしているほどである。
「まあ、これはこれで面倒なんだがな……《蒐魂剣》」
飛来した炎の魔法を斬り裂き、嘆息を零す。
俺たちが今戦っている魔物は、人型をした炎の塊、リビングフレイムである。
精霊の類かと思ったのだが、ルミナ曰くただの魔物であるとのこと。
どういう経緯で生まれてくるのかはよく分からないが、その性質は生きている炎そのものと言っても過言ではないだろう。
人の形をしてはいるが、基本的に物理攻撃は通じないため、物質による肉体を持っているわけではないことがわかる。
だが――
「要するに、自律で動き回る魔法みたいなもんだろう」
「――――」
リビングフレイムは感情の機微を見せないため、殺気を読んで対処することは難しい。
しかも物理的な攻撃は通じないため、《練命剣》については効果を発揮しないのだ。
ついでに言えば炎の魔法も通じないため、緋真にとっては大層厄介な相手でもある。
しかしながら、緋真にも一切の対抗手段が無いわけではない。
それは他でもない、俺も対処手段として利用している《蒐魂剣》である。
斬法――柔の型、刃霞。
炎の鞭と化して襲い掛かってきたリビングフレイムの腕を、翻した刃で斬り裂く。
リビングフレイムは、その体全てが魔法で構成されているような存在だ。
リビングとついているものの、果たして本当に生き物なのかどうかは疑問だが、何にせよ魔法である以上は《蒐魂剣》が通じるということである。
青い光を纏う餓狼丸に斬り裂かれたリビングフレイムの腕は、そのまま火の粉となって消滅してしまった。
どうやら痛みは感じていないらしく、リビングフレイムの動きに鈍る様子はない。だが、それでもHPはきっちりと減少していた。
「《蒐魂剣》、【断魔斬】」
発動には時間がかかる【断魔斬】をチャージしながらリビングフレイムへと接近する。
相手は思考が単純で、近くにいる相手を優先的に攻撃するだけだ。
多少の魔法であれば、既に展開している【断魔鎧】が受け止めてくれる。
魔法特化型であるだけに、魔法攻撃力は結構高いが、それでも接近するまでの時間を稼ぐ程度であれば十分だ。
斬法――剛の型、輪旋。
大きく振るった一閃と、そこから放たれた蒼い光芒。
虚空に軌跡を描くその一撃は、炎の人型を袈裟懸けに斬り裂いて真っ二つにして見せた。
切っている手応えがないため、何とも微妙な感覚ではあるが、それでも仕留め切ったことに変わりはない。
軽く息を吐き出して、俺は次なる獲物へと向かった。
「『生魔』」
【断魔斬】はクールタイムが長く、しばらくは使えないため、《練命剣》を組み合わせてスキルを発動する。
そちらのリビングフレイムはシリウスへと攻撃を加えていたが、俺の接近と共に標的を切り替えた。
シリウスは魔法攻撃を持たないが、一応ブレスについては攻撃が通じていた。しかし、どちらにしろ相性の悪い相手には変わりがないだろう。
歩法――陽炎。
相手の標的をずらすため、緩急をつけながらリビングフレイムへと接近する。
相手はこちらへと炎の礫を放ってくるが、こちらの動きは捉え切れずに空を裂くばかりだ。
その間にリビングフレイムへと接近した俺は、その身へと向けて刃を振り下ろした。
「しッ!」
斬法――剛の型、白輝。
振り下ろした刃は、袈裟懸けにリビングフレイムの体を斬り裂く。
真っ二つに斬り裂かれたその体は、一瞬元に戻ろうと蠢くものの、結局はその形を保てずに消滅した。
ちなみに、リビングフレイムは倒されるとその場に半透明の液体のようなものを落とす。
どうやら、これがリビングフレイムの死体であるらしい。
どういう物体なのかはよく分からないが、そこからアイテムを回収できる以上問題はないだろう。
『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』
『《刀神》のスキルレベルが上昇しました』
『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』
『《降霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』
『《MP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』
『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』
『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』
『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』
『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』
『《高位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』
『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』
『《背水》のスキルレベルが上昇しました』
『《走破》のスキルレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』
どうやら、他のメンバーも処理が終わったらしく、戦闘は終了した。
それと同時に、目標であったレベルへの到達に成功したようだ。
そこそこ時間がかかってしまったのは、この山にいる魔物が総じて面倒なものばかりであったからだろう。
とはいえ、これで何とかレベルは80、新たなスキルの習得が可能になったというわけだ。
「はぁ……この辺り、本当に相性の悪い魔物ばっかりですよ」
「今のは《蒐魂剣》があるだけまだマシだろう?」
「正直、私の方がやり辛いんだけどね。物理攻撃も毒も効かないし、魔法をちまちま当てるしかないわ」
アリスの場合は魔法は補助的な活用しかしていないし、確かに相性は悪いだろう。
防御無視ができる分、まだ単純に頑丈な相手の方が相性はいいと言える。
何にせよ、目標は達成だ。レベルアップの処理の後、新たなスキルを習得することとしよう。
俺がとるスキルは、元々予定していた通り、防御無視の効果を発生させるスキルだ。
この山では防御力の高い魔物が多いため、早くも役に立ってくれることだろう。
「俺に使えるとすれば……《会心破断》、これか」
アクティブスキルである《会心破断》。その効果は、クリティカルヒットの攻撃力を高めつつ、防御力を無視するというものである。
ここでクリティカルヒットが何を指すかと言えば、要するに『弱点部位に対して理想的な攻撃を命中させる』ということらしい。
つまるところ掠めるような当て方ではなく、しっかりと刃筋を立てて弱点部位に攻撃を当てろということだろう。
それに関しては普段からやっていることであるし、問題はあるまい。
(《死点撃ち》……いや、《致命の一刺し》とも効果は重複する。こっちはパッシブじゃないがな)
《致命の一刺し》は常時効果を発揮するパッシブスキルであるのに対し、《会心破断》は使用を宣言しなくてはならないアクティブスキルだ。
しかも効果は一振りのみであるため、実際の所は中々扱いの難しいスキルだろう。
俺の場合は《魔技共演》で《練命剣》や《奪命剣》と組み合わせて使うことになるだろうか。
何にせよ、上手いこと扱わねばならないだろう。
「よし……お前たちは何を取ったんだ?」
「私は《賢人の智慧》っていうスキルですね。消費MP軽減のパッシブスキルです」
「こっちは《ブリンクアヴォイド》。数メートルほどを一瞬で転移するスキルね。クールタイムが長いのが難点だけど」
どうやら、二人とも元々予定していた通りのスキルを取得したようだ。
使い心地については少し使ってみなければ分からないだろうが、とりあえずはこれで一段落と言ったところだろう。
「よし、そろそろ時間もいい頃だし、ログアウトするか」
「山頂も近いですし、明日は赤龍王に会えそうですね」
「試練ねぇ……どうなることかしら」
嘆息を零すアリスの様子には苦笑しつつ、再び山頂を見上げる。
本番は明日――しっかりと英気を養い、臨むこととしよう。