軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

408:赤龍の火山

聖王国南東の都市から出発し、そのまま南東の方向へと向けて飛行する。

飛行する鳥系統の魔物はちょくちょく出現するが、この辺りの魔物は俺たちにとってすでにランクが低すぎる存在である。

ルミナやセイランの魔法で容易く蹴散らせる程度でしかないため、戦闘らしい戦闘も起きない。

多少なりとも足しにするためシリウスに対応を任せているが、今のところシリウスのレベルが上がる様子はなかった。

(俺たちやルミナたちのレベル基準で考えれば、まだ十分な経験値を得られる場所なんだがなぁ)

相変わらず、シリウスのレベル上昇には時間がかかる。

戦力としては十分に高まってきてはいるのだが、最終目標が龍王の領域となると、辿り着くのはまだまだ先だ。

その行く末は楽しみではあるが、同時にどれだけの時間がかかるのかという不安もあるのだ。

尤も、気にしたところで必要経験値が下がるわけでもないし、ただ順当に戦い続けるしかないのだが。

「そう言えば先生、庭園で得られたイベントポイントはどうしたんですか?」

「例のごとく、プラチナのスキルオーブと交換したぞ。もうすぐスキルスロットも増えるしな」

「あー、やっぱりですか」

現在の所、俺たちのレベルは79、つまりあと1レベル上がればスキルスロットが増加するのだ。

その時に何のスキルを取るかについては、色々と考えておく必要があるだろう。

現状、既に必要だと思っていたスキルについては獲得済みの状況でもある。その他に俺に必要になるスキルは何があるだろうか。

(現状の課題は……やはりテクニック周りか)

現状、格上相手に戦うことが増えてきたこともあり、火力面の不安がどうにも拭いきれない状況だ。

俺がメインの火力として扱っているのは、言うまでもなく《練命剣》である。

今更言うまでもないことだが、このスキルはHPをコストとして消費するため、使い続ければそれだけリスクが高まってしまうのだ。

このデメリットを何とかするために使用しているのが《奪命剣》であるわけだが、最近は《練命剣》をテクニック単体で使わなければならない場面が多く、《魔技共演》による同時回復が難しくなりつつある。

要するに、HP回復が間に合っていないことが問題なのだ。

(となると……必要なのはHP回復系のスキルか、アリスの使っているような防御無視のスキルか)

単純に、HPが足りていないのであればその回復手段を増やす。

或いは、既存の回復手段を強化する――方法としては妥当なところだろう。

懸念としては、前者を用いてしまった場合、《奪命剣》の使用頻度が落ちてしまう可能性があることか。

そのため、どちらかと言えば後者の方が望ましい。つまり、防御無視と《奪命剣》を組み合わせて、効率的にダメージを与えながらHPを回復させるという手法である。

とはいえ、こちらも問題がないというわけではない。アリスが使っている防御無視スキルの原型である《ペネトレイト》だが、突きの攻撃に限定されているのだ。

全ての攻撃に単純に防御無視を付与できるというスキルは無く、必ず何かしらの制限が発生するのだ。

「……まあ、適当に見繕っておくか。緋真、アリス、そっちは何を取るつもりなんだ?」

「私はMP関連ですかね……どんどん消費量が多くなってきているので、軽減系か、回復系辺りが欲しいです」

「こっちは正直何でもいいのだけどね。まあ、あると便利なのは保険の類かしら。緊急回避ができるタイプのスキルね」

二人の返答に対し、成程と首肯する。

緋真は火力を上昇させるために魔法を使う必要があるため、どうしてもMPの消耗が激しくなってしまう。

《蒐魂剣》や《MP自動大回復》といった回復手段があるが、これは決して安定した回復手段とは言えないだろう。

これを補うためにMPの回復手段を新たに追加するか、もしくはそもそもの消費量を減らすか、といったところか。

また、アリスの方は分かり易い方針であるとも言える。彼女の戦闘スタイルにおいて最もリスクが高いのは、当然ながら敵に対して攻撃を当てた瞬間だ。

一撃で相手を仕留め切れなければ反撃を受ける可能性が高いし、そうすれば防御も薄く体力も低い彼女には致命傷になりかねない。

そうした際の保険として、緊急回避に使えるスキルは確かに有用だろう。

「ふむ……方針が決まっているなら、さっさとレベルも上げてしまった方が良さそうではあるな」

「それなら、レベルを上げながら行きます? 確かに、多少時間の余裕はありますけど」

「実際に赤龍王の元に向かうのは明日になりそうだが……まあ、それはそれで構わんだろう」

一応、期間的にはまだまだ余裕がある。多少ゆっくり目に向かっても、時間の面での問題はないだろう。

気にするとすれば他のプレイヤーであるが、先に向かった連中がクリアできるのであればそれはそれで構わない。

報酬は確かに気になるが、あくまでも目的は龍王同士の協力なのだ。それが成功するのであれば、別に誰の成果であったとしても問題はないのである。

「よし……それならそろそろ、降下してみるとするか。どうやら、火山地帯にも入ってきたようだしな」

「この辺り、魔物のレベルはどれぐらいなんですかねぇ」

セイランに合図を送り、ゆっくりと地面に降下する。

緩やかな上り坂となっているこの土地は、既に火山の麓か、少し登り始めた程度の場所に位置しているだろう。

草木はあまり生えてはおらず、黒い岩肌が覗いている地面が多い。

恐らく、溶岩が固まった後なのだろう。活火山とは聞いていたが、実際にこのような光景を目にするのは初めてだ。

「ふむ……やはり、少々気温が高いな。地熱の影響か?」

「一応、熱対策のポーションは持ってきたんでしょう? まあ、今ならまだ必要は無さそうだけど」

「そうだな。さて、進むとするか。これだけ開けた場所なら、そうそう奇襲を受けることも無かろう」

荒涼とした風景だけに、視界はかなり開けている。

おかげで、目に見える形で近づいてくる敵に気づけないということはない状態だ。

とはいえ、擬態して奇襲してくるような魔物もいるため、油断できるというわけではないのだが。

その辺り、きちんと警戒を絶やさぬようにしつつ、火山の山頂へと向けて出発した。

「火山ってことでどうなるかと思いましたけど、登りやすそうでいいですね」

「まあ、普通の山よりはな。視界を確保しやすいのもあるが、草木がないだけでかなり楽だな」

「人が立ち入らない山だし、道も何も無いものね。これで森の中を進むことになるなら、山頂まで飛んだ方がマシでしょう」

確かに、獣道すら見当たらないような山は素直に登る気にはなれない。

その点、赤龍王の住処たるこの火山は、登山という一点に限って言えば楽な部類だろう。

尤も、何の障害も存在しないというわけではないのだが。

「む……落石か?」

「何か、前にも似たようなことがあった気が……」

視線の先、山の上の方から転がり落ちてきたのは、黒い岩の塊であった。

比較対象物が少ないため分かり辛いが、恐らくは俺の腰の高さ程度はあるだろう。

あの大きさの岩が直撃しては、流石にひとたまりもない。大人しく横に避けて通り過ぎるのを待とうとし――その瞬間、黒い岩がこちらが避けた方へと進行方向を変えた。

「っ……シリウス!」

「グルルッ!」

地面の状況からして、今の挙動は明らかに不自然だ。

舌打ちと共にシリウスに命じれば、彼は躊躇うことなく前へと進み出て、こちらに向かって転がってくる岩を正面から受け止めた。

かなりの勢いがあったものの、シリウスの体重に比べれば何のことはない。両手で掴むように受け止め、その勢いを完全に殺して見せた。

「……成程。クオン、これ魔物よ」

「前にも転がってくる岩の魔物があったが、あれの同種か」

「いえ、これは……虫のようね」

アリスは《 真実の目(トゥルースサイト) 》で敵の性質を見抜いたのか、そう断言してくる。

それとほぼ同時、シリウスの手に捕まえられていた黒い岩は、もがくようにその形を変えた。

その姿はイモムシとダンゴムシの中間のような姿であり、背中には黒い岩を背負っているようにも見える。

■オブシディアンクロウラー

種別:魔物

レベル:72

状態:アクティブ

属性:地

戦闘位置:地上、地中

どうやらこの魔物の正体は、背面を黒曜石で覆ったイモムシであるらしい。

背中側は頑丈な岩を背負っているだけにかなり堅そうではあるが、腹の側は普通の虫だ。

観察している緋真が嫌そうな表情を浮かべているが、生憎とこいつらを倒すのであれば腹を狙う方が効率的だろう。

尤も、ああやって丸まってしまうと、刃を差し込むことも中々難しそうではあるが。

「ふむ……シリウス、とりあえずそいつは潰してしまえ」

「ガアッ!」

俺の命令に従い、オブシディアンクロウラーを捕まえていたシリウスは、思い切り手を振り上げ、体重をかけながら地面へと叩き付けた。

凄まじい衝撃音と共にオブシディアンクロウラーは半ば地面に埋まる。どうやら、かなりの頑丈さがあるためか、生きてはいる状態のようだ。

しかし、そのHPはかなり削れてきている。流石の防御力とはいえ、シリウスの攻撃力には耐えられなかったらしい。

まだ生きていることを察したらしいシリウスは、ストンプするように相手を何度も踏み潰し、確実に息の根を止める。

どうやら、防御している状態のこの魔物を狙うのは、中々骨であるようだ。

「戦い方は考えねばならんか……まあいい、まだまだ次はあるようだしな」

山頂の方を見上げれば、同じような岩がいくつか転がってくる光景が目に入る。

どうやら、今のシリウスのストンプによって、こちらの存在を察知したようだ。

面倒ではあるが、決して戦えない相手ではない。

上手いこと片付けつつ、経験値の足しにしてやることとしよう。