作品タイトル不明
405:第三段階スキル
「そういえば、金龍王でレベルアップしたおかげで、進化できるスキルが出てきたんだよな」
「あ、先生もですか?」
「まあ、私たち全員同じレベルだから、ウェポンスキルの進化は完全に同じタイミングでしょう」
金龍王の浮遊島から帰還する途中、相変わらず魔物の気配もないため、俺たちはのんびりと戦果を確認していた。
とんでもない強敵であったお陰でほとんどすべてのスキルが成長したわけだが、今回ついに、《刀術》のスキルが最大レベルに達したのだ。
第二段階のスキルはレベル50で進化ということか。まあ、それでもすべてのスキルが同じレベルで進化するというわけではないようだし、一つの目安程度に考えておいた方がいいだろう。
ともあれ、気にするべきはスキル進化だ。俺の場合はウェポンスキルだけであるが、緋真たちは他のスキルもレベル上限に到達している。
魔物たちが寄ってこない今の時間を使って、さっさと進化させてしまった方がいいだろう。
「《刀術》の上位スキルは……一択か」
スキル名は《刀神》。どうやら、純粋に《刀術》の上位互換となるスキルであるらしい。
基本的には効果の変化はなく、純粋なスキルの効果倍率が上がる程度の効果のようだ。
とはいえ、基礎的な攻撃能力が向上することは実に好ましい。
今回の金龍王との戦いでも火力不足には難儀することになったが、こうして能力を高めていけば、いずれは彼らの能力に近づいていくことだろう。
まあ、何の強化も無く彼らにダメージを与えられるようにするには、果たしてどれほどのレベルアップが必要になるのか。
正直気の遠くなるような話であるし、あまり気にしすぎない方がいいだろう。
「緋真は俺と同じとして、アリスはどうだったんだ?」
「私のスキルは《闇殺刃》。例によって、不意打ち特化型のウェポンスキルね」
アリスの場合は、元々は《暗剣術》という名称のスキルだったはずだ。
通常の攻撃ダメージに対する補正倍率は低いが、不意打ちにおける補正値が非常に高いというスキル。
本来はピーキーで扱い辛く、一枠目のウェポンスキルとして選択しているプレイヤーは少ないであろうスキルだ。
無論、アリスであれば十全に扱いきれるスキルであるため、今更そこに不安を抱くようなことはないが。
レベルが一定に達したことで新たな 魔導戦技(マギカ・テクニカ) も生えたのだろうが、これに関しては毎度のごとく、俺には関係のない話である。
緋真なら十全に扱えるのだろうが、俺にはどうしても肌に合わない。
まあ、今更と言えば今更だ。気にすることでもないだろう。
「そういえば、アリスも全然 魔導戦技(マギカ・テクニカ) は使わんな。やっぱり、隠れている時には邪魔なのか?」
「ああ、まあそれもあるけど、一応《暗剣術》以降の 魔導戦技(マギカ・テクニカ) は、暗殺向けのモーションではあるのよ? ただ、大体の敵は普通に刺せばそれで倒せるし、倒し切れないような強い相手にリスクを冒すのもちょっとね」
「まあ、お前さんは反撃されたら死にかねないからな……モーション後の硬直は厳しいか」
アリスは一撃で致命傷を与える代わり、自身も致命傷を負いかねないリスクを背負っている。
少しでもリスクは軽減することが、彼女なりの戦い方ということか。
「それを言うなら、私も最近はあんまり 魔導戦技(マギカ・テクニカ) は使っていないんですけどね……《術理装填》と紅蓮舞姫のスキルが便利なので」
「そういえばそうだったか。だが、たまには使っていただろう?」
「まあ、通常あり得ない動きができるので、そこは利用できますけどね。威力そのものが高いのもありますけど、強引に体を動かすのも一長一短って所です」
その辺りについては緋真の匙加減だ。こいつならば扱いを誤って自滅するということもないだろう。
とりあえずは、選択肢が増えたという程度に考えておくこととするか。
新しいテクニックを利用するかどうかは今後見ていくこととして――
「それで、そっちの他の進化スキルは何があるんだ?」
「私の方は《回復適性》ですね。進化すると《回復特性》でしたっけ?」
「ああ、あのスキルか。確かにそうだな」
地味ではあるが、そこそこに効果は高いスキルだ。
回復系のスキルにはすべて影響してくるため、緋真の場合はMPの回復に役立つことだろう。
緋真は魔法の使用頻度が高まっているし、MPの回復力を高めることは重要だろう。
回復力が高まれば高まるほど、全力で戦闘可能な時間が伸びるということでもある。
どの程度伸びているのか、確かめてみるのも悪くはあるまい。
「それで、アリスはどうだ?」
「私はウェポンスキルと、《看破》がレベル上限ね」
「……金龍王に《看破》を使ったのか?」
「一応擬態みたいなものだったから、《看破》なら本来の姿が見えるかと思って。まあ、無理だったけど」
そもそも桁違いの能力を持った金龍王を相手に、その手のスキルが通じるかどうかは微妙なところだ。
とはいえ、隠れているものを暴き出す《看破》は悪魔相手にもそこそこ使い所のあるスキルだ。
戦闘に直接絡んでくるわけではないとはいえ、不要ということはない。
「進化先は……《 真実の目(トゥルースサイト) 》。成功率の上昇に加えて、常時効果を発揮するようになるらしいわ」
「常時《看破》が発動するみたいな感じになるんですか? 邪魔じゃありません?」
「というより、何かしら偽装している相手にアイコンが出てくるような感じらしいわね。探しやすくなるし、それほど邪魔にもならないでしょ」
アリスの説明に対し、納得して頷く。
直接戦闘に絡んでくるタイプのものではないが、確か師範代たちが解放した国では悪魔が人間に化けていたらしい。
そのようなタイプの悪魔が出て来た時には、このスキルは大いに役立つことだろう。
今後どのような悪魔が出現するかも分からんし、公爵級の力を持った悪魔が搦め手を使ってきたら大層厄介だ。
そういったスキルについても、伸ばしておいて損はあるまい。
「とりあえず、スキルは順当に進化させておくとして……ルミナたちは流石にまだか」
「すみません、お父様」
「いや、単純にレベルが達していないだけの話だからな。レベルが到達すれば、また新しいスキルが生えるだろうさ」
現状、ルミナとセイランのレベルは27、30まで上がれば新しいスキルを習得することになるだろう。
それに、さらにレベルが上がれば次なる進化もある筈だ。
尤も、今のところそれが何レベルになるのかは今のところ定かではないが。
「お前たちにしろシリウスにしろ、今はレベルを上げるしかない。とりあえず、レベル30を目指すこととしよう」
「はい、お父様。頑張ります」
「クェ」
シリウスについては、次の段階への進化がとりあえずの目標だろうな。
果たしてどのような姿になるのか――レベルの上りが遅いため先は長いが、次なる姿も楽しみだ。
とはいえ、それよりも先にやるべきことがあるのだが。
「緋真、イベントの情報はどんな感じだ?」
「ええと……簡単に言うと、赤龍王、黒龍王、青龍王が出す課題を達成して、彼らに認められようって感じらしいです。どんな課題が出るかは、龍王ごとに違うらしいですね。場所は指定されていますけど、現状それ以上の情報はありません」
「ふむ……成程な」
それぞれの龍王ごとに何が起こるのかは分からないが、何にせよ今のところ情報が足りない。
一度アルトリウスの所に立ち寄って情報を集めていくか、或いは金龍王の助言通り、赤龍王を狙ってさっさと移動するか。
(……まあ、順当に情報だろうな)
時間制限があるとはいえ、まだある程度の余裕はある。
とりあえず無策に突っ込むよりは、ある程度情報を集めてからの方がいいだろう。
まだアナウンスがあってから時間が経っていないため、あまり情報も集まっていないだろうが、それに関しては後から通信で聞いても構わない。
とにかく、ある程度の情報共有は必要だ。MALICEの目を考えるとあまり込み入った話はできないが、できる限りの話をしておくべきだろう。
「とりあえず、行先は赤龍王の領域だ。向こうが同意した以上、こちらへの課題を出しはするだろうさ。俺に合っているというのであれば、ある程度予想もできるしな」
気性が荒いと言われている赤龍王、果たして龍王の一角はどのような課題を出してくるのか。
まあ、どうせ戦闘に絡む何らかだろうが、決して楽なものにはなるまい。
その内容に関して期待を寄せつつ、俺たちは帝都へと降下していったのだった。