軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

404:金龍王の血

斬り裂かれた人間体の金龍王の身より、赤い血が流れだす。

だが、それもほんのひと時のこと。彼女の身に刻まれた傷は煙を上げながら修復され、数秒後には影も形も無くなってしまった。

唯一、流れ出た血だけはそのままで、彼女の周囲には血が飛び散っている状態であった。

餓狼丸の解放は強制的に終了となり、その刀身は普段の白刃へと戻っている。

いい感じのクリーンヒットを当てることはできたものの、これ以上の戦闘続行は不可能だ。

これで納得してくれていればよいのだが――そんな俺の懸念は、にこやかな表情の金龍王によって払拭された。

「うむ、実に見事! 妾のブレスを正面から撃ち破るとは、やってくれるものだ!」

「……普通にクリーンヒットしたはずなんだがな」

致命傷である筈の傷だったわけだが、まさか数秒で完治してしまうとは。

確かに、これまでの回復力から見て、この程度のダメージであれば問題はないと踏んでいたことも事実だ。

しかし、まさかああもあっさりと回復してしまうとは思わなんだ。

正直、これが敵に回っていたらと思うと、背筋が寒くなるような思いである。

強制解放(リミットブレイク) を使っても血を流させる程度が限界の相手……金龍王は高い回復力を持っているが故ではあるだろうが、大公級の悪魔もこれぐらいの能力を想定しておいた方がいいのかもしれない。

「……まだまだ、足りないな」

「ふふ……精進することだ」

金龍王は薄く笑いながらそう告げて、昂っていた魔力を解除する。

周囲を覆っていた重圧は嘘のように消え去り、俺はようやく一息ついた。

かなりHPもギリギリであったし、とりあえずポーションで回復しておくとしよう。

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《刀術》のスキルレベルが上限に達しました。スキル進化が可能です』

『《格闘術》のスキルレベルが上昇しました』

『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《降霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《致命の一刺し》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』

『《エンゲージ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復特性》のスキルレベルが上昇しました』

『《高位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『《背水》のスキルレベルが上昇しました』

『《走破》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』

戦闘終了した途端、一気に流れるインフォメーションに思わず頬を引きつらせる。

勝てたわけでもなく、しかも短い時間しか戦っていなかったというのに、こうも大量にレベルが上がるとは。しかもスキルの進化まで発生してしまっている。

やはり、龍王の存在は能力の桁が違うということなのだろう。

ともあれ、とりあえずは目標を達成できた。金龍王も満足したようであるし、後は彼女の血を持ち帰れればいいだけだ。

まあ、既に傷は塞がってしまったため、その辺りは金龍王に何とかして欲しいところではあるのだが。

そう思いながら金龍王の胸元と、足場に飛び散った血を眺めていたところ、彼女は再びぱちんと指を鳴らした。

瞬間、周囲に飛び散っていた血や服に染み込んでいた血が浮かび上がり、金色の光に浄化されながら一塊になっていく。

「せっかく流したのだ、無駄にするのも勿体なかろう。銀龍王にはこれをくれてやればよい」

そう言いつつ、浮かび上がった金龍王の血は、赤い結晶へと変化する。

その数は四つ。どうやら、これは金龍王の血を固めてできたものであるらしい。

目的であった金龍王の血なのだが、それが四つの塊となってきたことに、思わず眼を瞬かせる。

「これは……全て、銀龍王に渡せばいいのか?」

「否、あ奴の傷であれば、それ一つで完治させられる。病や呪い、或いは魔法による枷であろうとも消し去れるであろう。残りは自由に使えばよい、妾にあれほどの傷を与えてみせた褒美だ」

その言葉に、思わず手の中にある結晶体を見つめる。

見た目は大きいビー玉ほどの大きさの、透き通った赤い結晶体だ。

まさか、これ一つで重傷を負った銀龍王を癒し切れてしまうとは。

人間を基準とするのであれば、即死しない限りは瞬時に完治できてしまうのではなかろうか。

何にせよ、かなり貴重な品だ。自由に使えるというのであれば、いざという時のために取っておくこととしよう。

「さて、それでは一度戻るとしよう」

そう呟くと、金龍王は軽く腕を振るう。

それと共に俺たちの体は金色の光に包まれ、先程までいた金龍王の住処に一瞬で転移していた。

ここまでくると、最早転移程度で驚くようなことはない。先ほどの席に再び座り、軽く息を吐き出して金龍王へと視線を向ける。

「感謝する、というのもおかしな話ではあるが……これで、こちらも依頼を果たせる。ありがとう」

「何、お主らが自力で勝ち取ったに過ぎぬ。お主らの力、確かに見せて貰ったぞ」

そう口にして、金龍王は満足げに頷く。

しかしながら、次の瞬間にはその表情を引き締め、硬い口調で続けた。

「しかし、今のままでは大公級を相手にすることは不可能であろう。お主たちは、もっと力をつけねばならぬ」

「まあ……それは自覚している」

「ディーンクラッドであそこまで苦戦していたわけですしね……公爵級とはいえ、位としては一番下でしたし、しかも結構手加減していたところがありましたから」

あれを手加減と言っていいのかどうかは微妙なところではあったが、ニュアンスは間違っていないだろう。

あいつは人間に期待しすぎていた。俺たちの力を見ることに固執するが故に、受け身に回っていたのだ。

他の悪魔もそうであるなら楽なのだが、実際はそう上手くはいかないだろう。

ディーンクラッドを基準に考えるべきではない。敵は、もっと強力である可能性が高いのだ。

「問題が分かっているのならばよい。お主たちは技術こそ高いが、まだまだ未熟。少なくとも、レベルをあと20は上げて来なければなるまい」

「20……レベル100がとりあえずの目安か」

そこまで行けば公爵級に通じるようになるのか。

正直な所、あまり実感としては湧かないが、確かに一つの区切りではあるのだろう。

とりあえずはそこを一つの目標として、レベル上げを行っていくとするか。

どのようにレベル上げを行うかについては相談が必要だが、ディノタイラント辺りはねらい目だろう。

シリウスが成長した今、以前よりも楽に戦えるだろうし、狙ってみるのもアリかもしれない。

――そう考えていた、瞬間だった。

『ワールドクエスト《真龍の試練》が発生しました』

『詳細は公式ホームページをご確認ください』

突如として響き渡った公式のアナウンスに、思わず眼を見開く。

どうやら、金龍王の出した提案は、早速女神に承認されたようだ。

「ふむ、あ奴らも同意したようだな。であれば、悪魔共が来るまでに、これを片付けることが先決だろう」

「他の真龍たちか……そっちも見に行ってみたいところだな」

「そうさな。お主であれば、赤龍王を狙うのが良かろう。恐らく、その方が相性がいいだろうからな」

小さく微笑みながら告げられた金龍王の言葉に、多少驚きつつも首肯する。

どういう基準で相性がいいと言っているのかは分からないが、真龍たちを熟知した金龍王の言葉であれば、一定の信頼には値する。

赤龍王か……どこに住んでいるのかは知らないが、悪魔との戦いのためにも協力して貰わねばなるまい。

「それじゃあ、そうと決まれば早速戻るとするよ。きっかけは色々と強引だったが……世話になった」

「うむ。お主の活躍は、また観戦させて貰うこととしよう。お主と轡を並べる日を楽しみにしているぞ。その時は……妾の真の姿を見せてやるとしよう」

「成程、そりゃ楽しみだ」

金龍王の言葉に笑みを返しながら、席を立つ。

結局、最後まで手加減をされていたため、金龍王の真の姿を目にすることはできなかった。

次の機会があるとすれば、それは悪魔の領域を隔てる障壁が消えた時。

その時を楽しみに、まずはやるべきことを片付けていくこととしよう。