作品タイトル不明
395:武具強化
準備期間と割り切ってログインした本日のゲーム。
足りていなかった成長武器の経験値をさっさと貯めた俺たちは、急ぎフィノの元に武具強化へと来ていた。
実際の所、緋真たちは別行動をしている間に強化が終わっていたので、今回の成長武器強化は俺だけなのだが。
とはいえ、どのような効果が追加されたのかは確認しなくてはなるまい。
それに、一つ頼んでおきたいこともあるしな。
「うーん……何かゴリ押し感があるね、本来の素材を使わない強化って」
「仕方あるまい。どうせこの後でレベルが一段階下がるんだから、本来の強化もその後でできるさ。まあ、素材はまだ手に入らんだろうが」
第八段階への強化は、この国で手に入る素材では行えない。
となると、恐らくは悪魔によって占領された土地で手に入るものになってしまうのだろう。
どうしたところで現状では手に入らないアイテムだ、今は諦めるしかない。
今はただ、やれることを最大限にこなす、それが最適解だ。
「とりあえず、先生さんのはこれね。姫ちゃんたちの装備は見せて貰ったんでしょ?」
「ああ。二人はスキルが追加されていたが……まあ、俺のはないんだろうな」
フィノから強化された餓狼丸を受け取り、情報を確認する。
餓狼丸は純粋な性能強化が行われる系統の成長武器だ。
スキル増加によって選択肢を増やすというタイプの成長はしない。
■《武器:刀》餓狼丸 ★8
攻撃力:73
重量:23
耐久度:-
付与効果:成長 限定解放
製作者:-
■限定解放
⇒Lv.1:餓狼の怨嗟(消費経験値10%)
自身を中心に半径37メートル以内に黒いオーラを発生させる。
オーラに触れている敵味方全てに毎秒0.5%のダメージを与え、
与えた量に応じて武器の攻撃力を上昇させる。
⇒Lv.6: 強制解放(リミットブレイク)
餓狼の怨嗟による攻撃力上昇が最大値に到達した状態で、
現段階で蓄積している全経験値ゲージを消費して発動。
五分間の間、全ての攻撃力を大幅に上昇させる。
発動終了後、強制的に成長段階が一段階下降する。
→ 餓狼呑星(がろうどんせい)
発動残り時間を一分消費して発動。次に行う攻撃のダメージを十倍にする。
残り一分未満で発動した場合、攻撃後に強制解放状態が終了する。
案の定というか、普通に成長しただけである。
とはいえ、順当に攻撃力も上がっているし、解放の効果範囲も増えている。
ここには記載されていないが、生命力の吸収上限と、攻撃力の上昇幅も上がっているだろう。
ちなみにだが、緋真とアリスの成長武器についてはかなりの強化となっていたようだ。
■《武器:刀》紅蓮舞姫 ★7
攻撃力:62
重量:19
耐久度:-
付与効果:成長 限定解放
製作者:-
■限定解放
⇒Lv.1:緋炎散華(消費経験値10%)
攻撃力を上昇させ、攻撃のダメージ属性を炎・魔法属性に変更する。
また、発動中に限り、専用のスキルの発動を可能にする。
専用スキルは武器を特定の姿勢で構えている状態でのみ使用可能。
→Lv.1: 緋牡丹(ひぼたん)
上段の構えの時のみ使用可能。
斬りつけた相手に周囲から炎が集まり、爆発を起こす。
→Lv.2: 紅桜(べにざくら)
脇構えの時のみ使用可能。
横薙ぎの一閃と共に飛び散った火の粉が広範囲に爆発を起こす。
→Lv.3: 灼楠花(しゃくなげ)
霞の構えの時のみ使用可能。
突き刺した相手に特殊状態異常『熱毒』を付与する。
→LV.4: 灼薬(しゃくやく)
正眼の構えの時のみ使用可能。
全身に炎を纏い、ステータスを向上させる。
→LV.5: 朱椿(あけつばき)
下段の構えの時のみ使用可能。
周囲の炎を吸収して、HPとMPを回復させる。
→LV.6: 火日葵(ひまわり)
脇構えの時のみ使用可能。
振り上げと共に放つ火球が大爆発を起こす。
→LV.7: 緋岸花(ひがんばな)
下段の構えの時のみ使用可能。
突き刺した地面を中心に、触れるとダメージを与える炎の華を咲かせる。
⇒Lv.6: 強制解放(リミットブレイク)
緋炎散華を発動している状態で、
現段階で蓄積している全経験値ゲージを消費して発動。
緋炎散華の専用スキルの威力を上昇させ、クールタイムが全て五秒となる。
発動終了後、強制的に成長段階が一段階下降する。
■《武器:短剣》ネメの闇刃 ★7
攻撃力:58
重量:16
耐久度:-
付与効果:成長 限定解放
製作者:-
■限定解放
⇒Lv.1:暗夜の殺刃(消費経験値10%)
発動中は影を纏った状態となり、敵から認識されづらくなる。
また、発動中に限り、認識されていない相手に対する攻撃力を大きく上昇させる。
更に、4秒に一度、1秒前にいた場所に幻影を発生させる。
⇒Lv.3:夜霧の舞踏(消費経験値5%)
《暗夜の殺刃》の発動中のみ使用可能。
周囲に霧を発生させ、敵からの発見率を大幅に下げる。
⇒Lv.5:無月の暗影(消費経験値10%)
《暗夜の殺刃》の発動中のみ使用可能。
2秒間の間だけ体を透過させ、相手の攻撃をすり抜ける。
⇒Lv.7:孤影の毒刃(消費経験値5%)
《暗夜の殺刃》の発動中のみ使用可能。
発動後一度だけ、攻撃を命中させた相手を『致死毒』状態にする。
⇒Lv.6: 強制解放(リミットブレイク)
暗夜の殺刃を発動している状態で、
現段階で蓄積している全経験値ゲージを消費して発動。
発動後、敵一体を攻撃してから一分間、自身のHPがゼロにならなくなる。
一分経過時、発動中に受けたダメージを十倍にして相手に与える。
発動終了後、強制的に成長段階が一段階下降する。
奇数レベルであるため、どちらも新たなスキルを習得している。
尤も、派生スキルである緋真と、解放スキルであるアリスでそれぞれ異なってはいるのだが。
二人とも効果は確認済みであり、特にアリスの取得した《孤影の毒刃》はかなり高い効果を持っているようだ。
『致死毒』状態は『毒』、『猛毒』のさらに上位互換であり、耐性を持っていても防ぐことが難しい。
しかも一度付与されれば、かなりの速さで相手の体力を削っていくそうだ。
恐らくは、俺の回復能力でも賄いきることは難しいほどのものなのだろう。
ちなみに紅蓮舞姫の新たなスキルについては、緋真が『【フレイムフィールド】の上位互換だ』と若干拍子抜けした様子で語っていたのだが。
(使われた身からすりゃ、あれは結構厄介なんだがな)
緋真との直接対決で【フレイムフィールド】を使われたが、あれは大層面倒臭い魔法であった。
こちらとしては、きっちり打ち消さなければまるで身動きが取れないのだから。
炎というものは、それだけ恐ろしいものなのだ。その上位互換となれば、厄介極まりない効果を持っていることだろう。
まあ、評価については実際に目にしてから決めた方がいいだろうが。
「でー? 先生さん、これで装備を作っておけばいいの?」
「ああ。正直、あまり数は用意できないから、できなかったらできなかったで構わない。そのうちまた増えるだろうしな」
フィノが興味深そうな様子で観察しているのは、机の上に載せられた銀色の物体だ。
他でもない、ソードドラゴンたるシリウスの鱗である。
戦闘をしていたり、レベルが上がった際に落ちていることがあるのだが、レッサーの頃から比べてかなり立派な鱗となっている。
触れた感触は金属に近いが、鉄などと比べると比重は軽い。素材としてどのような性質を持っているのかどうかは――まあ、俺には分からん話であるが。
「流石に牙やら、尻尾の刃やらが落ちることは無いようだが、鱗はちょくちょく手に入る。使い潰してしまっても構わないから、少し試してみてくれ」
「んふふ、了解。結構面白そうだね」
自分の頭ほどもある鱗を持ち上げ、フィノは楽し気にそれを観察している。
人知を超えた怪物たる真龍の体の一部だ、進化段階がまだ三段階目とはいえ、素材としての稀少度は間違いなくトップクラスだろう。
フィノでも扱いきれるかどうかは分からんが、俺が自分で持っていても何の役にも立ちはしない。
装備の作成や、例え成功せずともフィノのスキルレベル上げにでもなれば十分だろう。
「ありがと、先生さん。そうだ、ついでにこれを姫ちゃんに持って行っちゃって?」
「構わんが……小太刀か。あいつはもう持っているぞ?」
「ううん、それは特別製。姫ちゃんの戦い方に合わせたものだよ」
そう告げるフィノから手渡されたのは、一振りの小太刀であった。
彼女の言葉に目を瞬かせ、確認のために鯉口を切れば、現れたのは僅かに赤みのかかった銀色の刀身。
どうやら、構成しているのは普通の金属ではないらしい。
「属性付与をしたミスリル合金。魔法杖の素材とかに使うものだけど、合金にして強度も両立したものだよ。魔法触媒にしつつ武器としても扱える、新商品」
「成程、そりゃ確かにアイツ向けだな」
二刀流を扱い出した今の緋真は、小太刀を使って魔法を発動することが多い。
その点、この刀ならば魔法の威力向上も見込めるため、緋真にとっては結構な戦力上昇になるだろう。
今のあいつの戦い方は、様々な応用も効きそうではあるし、なかなか興味深いものだな。
■《武器:刀》上ミスリル合金の小太刀
攻撃力:46(+10)
重量:15
耐久度:100%
付与効果:攻撃力上昇(中) 魔法威力上昇:火(中)
製作者:フィノ
まあ、俺にはあまり意味のない品になるだろうが。
とはいえ、そろそろ小太刀や野太刀も新調したくはあるし、シリウスの鱗による武器製作が上手く行って欲しい所だ。
「確かに預かった。それじゃあ、頑張ってくれ」
「うん、そっちもね」
軽く手を振り、踵を返す。
今日の内に成長武器の解放を行える程度に経験値を貯め、明日には金龍王の元へと向かう。
尤も、その前に色々と面倒事もあるのだが。
「さてと……紫藤の爺さんはどう考えていることかね」
溜息と共に呟きつつ、俺は『エレノア商会』の支店を後にしたのだった。