軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

363:想定外の連戦の結果

今回、俺はさっさと目的のアイテムを手に入れて、餓狼丸の強化を行うつもりであった。

何しろ、イベントの開催まではあまり時間的余裕は無い。

本来の想定では、イベントが開始するまでに餓狼丸を二段階強化するつもりだったのだ。

通常の手段で一段階強化し、その上で再び経験値を溜めて青龍王から受け取ったアイテムを使用する。そこからある程度経験値を溜めて、餓狼丸の解放を使用可能な状態にしてから金龍王に挑むのが適当だと思っていたのだ。

しかし――

「手に入れるのに二日間丸々かかったんだね」

「……あのクソ蛇とは二度と戦いたくない」

餓狼丸の強化に必要となる素材、『呑竜の舌』。これを手に入れるために倒したグラットンスネークの数は二十体を超える。

いや、正確に言えば一つ目を手に入れたのは二十には届かない頃であった。

だが、何らかの不測の事態で 強制解放(リミットブレイク) を使用することになった場合に備え、もう一本を確保するために再戦したのだ。

どうやら、手に入る確率が低いアイテムであったらしい。確率としては十体ちょっとで一本といったところであったが、果たして運が良かったのか悪かったのか。

ともあれ、大幅に予定を遅れてしまったものの、こうして武器強化のためにフィノの所に顔を出したというわけである。

「というわけで……はい、強化できたよ」

「ああ、助かる。さて、これで更に経験値を溜めてこないとな……」

イベントの開催は明日だ。それまでに餓狼丸の経験値を溜め切れるかどうかは微妙な所であるが、幸いなことにイベント中は餓狼丸を使うということはない。

例えイベントを終えた後からでも、経験値を溜めてくる余裕は何とかあるだろう。

とはいえ、あまりのんびりとしていられないこともまた事実ではあるが。

思わず嘆息を零しつつも、俺は強化された餓狼丸の性能を確認した。

■《武器:刀》餓狼丸 ★7

攻撃力:66

重量:22

耐久度:-

付与効果:成長 限定解放

製作者:-

■限定解放

⇒Lv.1:餓狼の怨嗟(消費経験値10%)

自身を中心に半径36メートル以内に黒いオーラを発生させる。

オーラに触れている敵味方全てに毎秒0.5%のダメージを与え、

与えた量に応じて武器の攻撃力を上昇させる。

⇒Lv.6: 強制解放(リミットブレイク)

餓狼の怨嗟による攻撃力上昇が最大値に到達した状態で、

現段階で蓄積している全経験値ゲージを消費して発動。

五分間の間、全ての攻撃力を大幅に上昇させる。

発動終了後、強制的に成長段階が一段階下降する。

→ 餓狼呑星(がろうどんせい)

発動残り時間を一分消費して発動。次に行う攻撃のダメージを十倍にする。

残り一分未満で発動した場合、攻撃後に強制解放状態が終了する。

とりあえず、いつも通りの強化内容だと言えるだろう。

強制解放(リミットブレイク) の効果に変化があるようには見えないし、いつも通りに『餓狼の怨嗟』の効果範囲、吸収量が伸びただけだ。

とはいえ、吸収限界も伸びているため、その分だけ攻撃力の上昇幅も大きくなる。解放時の攻撃力増加はかなり期待できることだろう。

尤も、それが金龍王という規格外の怪物に通じるかどうかはまた別の話なのだが。

「確認した。ありがとな、フィノ」

「ううん、こっちこそ。本当なら他の装備の強化もしたいんだけど、今はイベントだからね……」

普段であれば、こうして新たな国に入ってきた段階で、『エレノア商会』は新素材の収集を開始する。

その中には新たな鉱石等も含まれており、フィノがそれを使って新たな武器を作ることは恒例行事でもあった。

実際、野太刀や小太刀は結構使いこんできているし、そろそろ新たな装備に切り替えたい所ではあるのだ。

しかしながら、イベントに向けて特訓中のフィノにはそこまでの余裕は無い。こうして成長武器の強化に来て貰えるだけでも御の字と言ったところだ。

「状況が状況だからな、仕方ないさ。それより、緋真たちの方は問題ないか?」

「うん、問題ないよ。いい調子。秘策もあるし」

「くくく、そうか。その調子で頑張ってくれ」

傲慢な物言いではあるが、純粋に楽しみにしているのだ。

緋真がどのように挑んでくるのか――それが、ただただ楽しみなのである。

その結果も、明日になれば分かることだろう。その時を楽しみにしながら、俺は『エレノア商会』を後にしたのだった。

「さてと……経験値を稼がんとな」

建物の前で待っていたテイムモンスターたちを連れ立って、街の中央へと向かう。

これまでは素材の回収やら石碑の解放を優先して行動していたが、今日は流石に経験値を溜めることを優先しなくてはならないだろう。

今日中に限界値まで溜められるかどうかは微妙な所ではあるが、行ける所までは行ってしまいたい。

それに――

「お前の進化も見えて来たことだしな」

「グル?」

シリウスのレベルは、今の所14に到達している。

これまで通りであれば16で進化するだろうし、そこまでは上げ切ってしまいたい所だ。

今の状態でもそこそこ戦えてはいたのだが、やはり高レベルの魔物を相手にするには少々足りていなかったのは事実だ。

だが、もう一段階進化すれば、恐らく前線で戦うことも可能になるだろう。

まあ、その分巨大化して、街中まで連れ込むことは流石に難しくなるだろうが。

今はワゴン車かマイクロバス程度の大きさではあるのだが、これ以上大きくなると人通りの多い場所では邪魔だし、狭い道に入ることはできなくなってしまうだろう。

シリウスには悪いが、街に入る時には従魔結晶に戻って貰うことになる。

「しかし、そのレベルで大した能力だな、お前は」

「これで、まだ第二段階ですからね」

この辺りの魔物と渡り合っているため忘れがちだが、シリウスの進化段階はまだ二段階目だ。

ルミナでいう所のスプライトであった時分である。今現在のルミナたちは第四段階であり、進化段階だけを見れば二つもの差が開いている状況なのだ。

シリウスは未だルミナたちに匹敵するとまでは言い難いが、それでも極端に見劣りはしない程度の能力を有している。

進化段階が二つ開いた状態でそのレベルなのだから、果たしてこの先どうなるのかは是非とも確かめてみたい所だ。

「それで、お父様。どこに向かうんでしょうか?」

「できるだけ北側で、帝都から離れている場所だな。なるべく強い魔物を相手に数をこなしたい」

今回の目的はあくまでも経験値集めだ。

そのためには、強い魔物と数多くの戦闘をこなすのが最も効率がいいだろう。

実際の所は狩りやすい魔物を狙う方がいいのかもしれないが、今は他のプレイヤーの数も多い。

イベント前の追い込みの時期であるため仕方のない話ではあるのだが、流石にプレイヤーが集まっている場所では効率が悪いと言わざるを得ないだろう。

帝国は広いし、離れればプレイヤーの数も減る。別に見られて困るというわけではないのだが、人がいない場所の方が戦う上でも気を遣わずに済む。

「まあ、あまり北側には行っていないんだがな……」

これまで、帝国内ではあまり北側には移動していないため、比較的北側に位置している街に移動した上で北上するしか無い。

ついでに北側の街もある程度石碑を解放しておこう。全ての街を解放する必要はないが、移動に困らない程度にはしておきたい所だ。

今後、悪魔との戦いにおいて、北側への移動は特に重要になるだろうからな。

(ついでだ、あの壁のことも確認しておくか)

北側の、悪魔が支配した領域とを隔てる巨大な魔法の壁。

破れているということは恐らくないだろうが、それでも度々状況は確認しておきたいところだ。

あれはあくまでも奴らの側から設置した物であり、信用しきれるものではないのだから。

しかしまぁ、随分と気にしなくてはならないことが増えてしまったものだ。

悪魔のこと、ドラゴンのこと、そして自分たちの強化のこと――久方ぶりの平穏な期間だというのに、やらなければならないことは山積みだ。

とはいえ、アルトリウスやエレノアほど忙しいということはないだろうが。

「……あいつらは今何をやってるんだかな」

「お父様?」

「何でもない、さっさと行くぞ」

新しい国に入った以上、裏側でやることは多そうだ。

政治やら商売の話はこちらには分からんし、何かあったら話を聞くぐらいでいいだろう。

己の中でそう完結させて、俺は北寄りの街へと転移したのだった。