軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

337:孵化の準備

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《格闘術》のスキルレベルが上昇しました』

『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《降霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《死点撃ち》のスキルレベルが上昇しました』

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《エンゲージ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復適性》のスキルレベルが上昇しました』

『《高位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『《識別》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

『フィールドボスの討伐に成功しました! エリアの通行が可能になります』

グランドドラゴンの巨体が消滅し、全員にドロップアイテムが配布される。

それなりに厄介な相手であったが、流石にディーンクラッドと比べてしまうと格落ちというイメージが拭えない。

流石に、比べる相手が悪いと言えばそれまでなのだが。

「ふぅ……強敵ではあるんですけどね」

「流石に、相手が悪かろうよ」

公爵級悪魔であったディーンクラッドは、成長武器の能力全てを使ってようやく手が届くほどの怪物であった。

今回のグランドドラゴンは、成長武器の性能を一切発揮せずに勝利できてしまったのだ。

流石に、比べる相手が悪いとしか言えないだろう。

「ともあれ、ひとまずは目標達成だな」

「チケットも手に入りましたし、レベルも70になりましたし……とりあえず、スキルを取ってから戻りましょうか」

「そうだな……さて、どうしたもんか」

これで、新たに二つのスキルを取得できるようになったわけだ。

ポイントが余っていればスキルオーブを取得するところであったが、今回は真龍の卵でポイントをほぼ使い切ってしまった。

流石に、残りのポイントだけでプラチナのスキルオーブを手に入れることは不可能だ。

素直に、通常のスキルの中から選ぶしかないだろう。

「……ちなみに、お前たちは何のスキルを取るんだ?」

「私は《魔技共演》と他の何かを」

「《魔技共演》と……《月属性強化》ね。《月魔法》を取ったら出現したわ」

「揃いも揃って……確かに便利だがな、このスキルは」

ここまで様々なスキルが増えてくると、《魔技共演》は確かにありがたいスキルだ。

緋真にしろアリスにしろ、複数のスキルを同時に使う機会はあるし、このスキルが無駄になることはないだろう。

アリスの場合はそれに加え、《月魔法》の属性強化を取得するらしい。

今のところ、あまり効果を実感できていない魔法であるし、強化すればもう少し強くなるだろうか。

「しかし、どうしたものかねぇ……」

悩みはしているものの、候補として考えているスキルはいくつかある。

一つは、以前に取得するスキルの候補として考えていた《背水》のスキルだ。

HPが低ければ低いほど攻撃力が上昇するこのスキルは、《練命剣》でHPを捧げた時にも効果を発揮する。

自力でHPを制御できる俺にとっては、それなりに使いやすいスキルだ。

もう一つ、希望があるのは――

「なあ、姫さんが付与してくれたあのスキル……空を走れるスキルは分からんか?」

「え? えーと……プラチナのスキルオーブにもそれっぽいのは無いですけど」

無記名のスキルオーブの場合、理想のスキルを探すため、検索ウィンドウを利用することができる。

緋真はそれを利用してスキルを探したようであるが、どうやら該当するようなスキルは存在しなかったようだ。

であれば、あれはスキルには該当しないのか、それとも何らかのスキルの進化版なのか。

と――頭を悩ませる俺に、スキルオーブを操作しているアリスが声をかけてきた。

「あれ、《走破》の上位スキルだと思うわよ?」

「ほう……その心は?」

「今の私のスキルは《立体走法》になってるけど、このスキルってレベルに応じて壁を走れる歩数が変わるのよ。で、この説明に『まだ空中を足場とすることはできない』って書いてあるのよね」

「成程? つまり、《立体走法》が更に進化したら使えるようになるかもしれないのか」

「もしかしたらレベルかもしれないけど……まあ、そういうことね」

少々遠いかもしれないが、いずれ手に入るのであれば取得しておいて損はないだろう。

走るだけでレベルが上がるのであれば、それなりに使いやすいだろうからな。

今回はあまりポイントも使わずスキルが取得できそうだ。

「とりあえず、こんな所か……緋真はまだ悩んでるのか?」

「はい。やっぱりプラチナのスキルオーブにはいいスキルがたくさんありますね。戻りがてら考えておきます」

「そうしておけ。それじゃ、一旦エレノアたちの所に戻るとするか」

そろそろ場所の選定も済んだであろうし、真龍の卵を孵す準備も整っているはずだ。

時間的に今日実施することは不可能であるが、現地まで行ってからキャンプを張ってログアウトしなければならない。

今日はあまり戦うことはできないが、明日存分に戦うことになるのだ。今回は早めに終わらせてもいいだろう。

若干この先の地――帝国のことは気になるが、今回は真龍の卵が優先だ。

「戻るぞ、セイラン」

「クェ」

頷いたセイランに跨り、再びアドミス聖王国の国内へと戻っていく。

さて、果たしてどのような場所で戦うことになるのやら。

その先で生まれてくるドラゴンも含め、楽しみにさせてもらうとしよう。

* * * * *

「で……ここがその作戦エリアと」

「そういうこったな」

予想通り、既に場所の選定を終えていたエレノアは、勘兵衛を案内人として俺たちを作戦の場所まで連れて来てくれた。

場所は聖王国の北東部付近、俺たちは訪れたことのないエリアだ。

見晴らしの良い草原地帯であるのだが、草が若干高く、移動には少々邪魔だ。

足元に潜んでいるような魔物がいると厄介なエリアであると言えるだろう。

そんなエリアを見渡して、俺は思わず呆れの表情を浮かべる。何故なら――

「……あれ、『MT探索会』の人々だよな?」

「ああ。お前さんの出した条件のエリアを探るのに、彼らに問い合わせたんだが――」

「それで付いて来てしまったと。いや、簡単な拠点まで作ってくれているし、それはありがたいんだが」

ゲーム内の情報を集めることに執心する『MT探索会』。どうやら、彼らも既に真龍の卵のことを知っているようだ。

とはいえ、彼らが卵を取得できたということはないだろう。交換リストの中から詳細を確認して、持っている人間に当たりをつけていたといったところか。

まさか、話を聞いただけで《蒐魂剣》でのMP確保まで見抜かれてしまったのだろうか?

そんな俺の疑問を裏付けるかのように、陣の設営を指揮していた白衣の男性――教授がこちらに気づいて駆け寄ってきた。

「ああ、どうもクオン殿! お待ちしていましたよ!」

「どうも、教授。用件は……既にご存じのようで」

「はははは! 年甲斐もなくはしゃいでしまいましたな!」

やたらとテンションの高い教授に頬を引き攣らせながら、周りの状況を確認する。

ここに集っている結構な数のプレイヤーは、大半が『MT探索会』のメンバーだろう。

一部は『エレノア商会』や『キャメロット』のメンバーも集まっているが、その数はあまり多くはない。

「我々が確認できた限りで、真龍の卵を取得したのはクオン殿、アルトリウス殿の二名のみ。アルトリウス殿が取得したのは少々意外でしたが……真龍の価値は計り知れない。納得もできるというものです」

「真龍についても既に?」

「ええ、勿論。書物による調査では、時折名前の出る存在ですからな。精霊種に近く、女神の眷属である生物。我々異邦人とも立場は似ていますが、彼らはもっと直属の戦力であり、その頂点である龍王は――」

「あー……申し訳ない、その話はまた今度」

このまま話を聞いていたら永遠に終わらなそうな気配に、俺は苦笑しながら教授の話を遮った。

若干残念そうな様子の教授は、一度咳払いをして改めて声を上げる。

「ンンッ、申し訳ない。さて、真龍の卵を孵すためには大量のMPが必要。アルトリウス殿の場合はクランメンバーを集めて順当に対応することが可能でしょう」

「だが……使い手の少ない《強化魔法》系統の魔法では、同じ方針は困難。だからこそ、《蒐魂剣》を用いてMPを回復しながら孵化作業を行う」

「ええ。正直な所無茶苦茶にも程がありますが、貴方なら可能とも思えますからな」

良く俺のことを理解していると言うべきか、あまり付き合いもないのにそこまで見抜かれていることを驚くべきか。

ともあれ、作戦の趣旨は全て見抜かれていると言っても過言ではないだろう。

だが、それならそれで説明が省けるというものだ。どうせ、彼らは生まれてくるドラゴンが気になるだけだろうし、その程度であればこちらとしても別に問題はない。

「クオン殿の要求は、『魔法を使い、空を飛ばず、誘導するのが楽な魔物』とのことでしたね」

「ええ。そういった魔物なら、MPの回復も楽なので」

「そのご希望に沿うと思われるのが、あの魔物……『モノセロス』ですね」

そう言って教授が指差した先にいたのは、額に一本の角が生えた牛のような魔物であった。

聖火のランタンが置かれているためか、こちらまでは近づいて来ていないのだが、遠目でもその姿は分かり易い。

体毛は白く、牛と言われると少々違和感を感じる姿ではあるが、形は牛そのものだ。

角による攻撃も強力そうではあるが、確かに魔力を感じ取ることもできるし、魔法攻撃も頻繁に行うのだろう。

■モノセロス

種別:魔物・幻獣

レベル:58

状態:アクティブ

属性:光

戦闘位置:地上

レベルはそれほど高くはない。まあ、流石に条件を付けて探したのだから、強い敵ばかり選べるというものでもないが。

ともあれ、光属性ということは光の魔法を使うのだろう。

光属性の性質についてはルミナで見慣れているし、対処もそれほど難しくはないはずだ。

「成程……問題は無さそうだ」

「そりゃ何よりだ。ほらクオン、これを使ってくれ」

「おん? バックパックか?」

遠目に魔物の姿を観察していた俺に、勘兵衛が横から差し出してきたのは、小さなバックパックだった。

アイテムを持ち運ぶには少々小さいが、これは――

「……俺が卵を背負って交戦するというわけか」

「一応念のため、羽織の下に背負っとけよ。それなら、たぶんMPを注ぎながら戦闘を継続できるだろ」

勘兵衛の言う通り、戦いながらMPを注ぐのはそれなりに大きな課題ではあったのだ。

こうして背負う形で身に付けながらMPを注げるのであれば、その問題も解決できるだろう。

とりあえずサイズが問題ないことを確認し、一度インベントリの中にアイテムを仕舞う。

「作戦の開始は、リアル時間で明日の昼十二時からだったな。そん時になったら『MT探索会』のメンバーがどんどん敵を誘導してきてくれるんで、お前さんは予定通りに戦ってくれ」

「ああ。勘兵衛も教授も、こんな面倒なことに付き合ってくれてありがとう」

「ははは、私の方は個人的な興味もありますからね」

「俺は姐さんから事情は聞いてるからな、問題はないさ」

快く受け入れてくれた二人に感謝しつつ、明日の作戦へと思いを馳せる。

さて、果たして目論見通り上手く行くか――存分に手腕を振るうしかあるまい。

決意を固め、この日はログアウトしたのだった。