軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

314:北の都市へ

北西と北東、同時刻に侵攻を開始し、アファルドへと向けて移動する。

街道を通っているため魔物とはあまり遭遇しないが、それも皆無ではない。

けれども、最前線のプレイヤーの大半が揃っている現状、そこらの魔物に対して苦戦する要素などありはしない。

こちらまで近寄ってくる前に、遠距離攻撃で全て片付けられてしまう程度のものだ。

そのため、移動については少々退屈ではあったが――この後忙しくなるのだ、今はゆっくりしていても問題はなかろう。

「それで、着いたら具体的にどうするんだ?」

「さっきも言いましたけど、今回は本当に作戦どうこうじゃないんです」

そう時を置かずして到着することになるだろうが、まだしばしの余裕はある。

その間に、抱いていた疑問を解消するためアルトリウスへと問いかけたのだが、彼の返答はそんなあっさりとしたものであった。

どうやら、本当に作戦らしい作戦は無いらしい。

「これまでは、現地人の救出や保護、護衛といった条件があったため、かなり慎重に動く必要がありました。しかし……」

「今回は、その制限はないか……喜ぶべきではないんだがな」

「ええ……しかし、攻略という面から見れば、紛れもなく好都合です。統率は取れませんが、単純に中央へと向けて進軍するだけですから」

烏合の衆とは言えど、単純に敵へと向かって突撃するだけならば簡単だ。

決して有効な戦術であるとは言えないが、異邦人だけで突撃するならばリスクも少なく、例えやられたとしても奪われるリソースはごく一部だ。

決して効率の良い戦い方であるとは言えないが、元より大量のプレイヤーを制御する手段などない。

そう考えれば、最も適した作戦であるということは否めないだろう。

「つまり、中央まで駆けて悪魔を殴ればいい、と」

「そういうことですね。今回は、単純な削り合いになります。とにかく目に入る限りの敵を倒し、掃討するのみです」

「成程な……まあ、分かり易いのはいいことだ。そういうことなら、好きに動かせて貰うぜ」

「はい、それを期待していますから。どうか存分に」

こちらとしても、難しいことを考える必要はないのは楽なものだ。

ただ単純に、目の前にいる敵を倒し続ければいい。都市の内部には大量の悪魔が存在していたが、それらを片付けながら街の中央へと向かえばいいだけだ。

一応ながら、進軍前に街全体を包囲する形で展開するらしいし、それほど敵を討ち漏らすこともないだろう。

そうこう話している内に、俺たちの視界にはアファルドの姿が見え始めた。

相変わらず周囲の外壁は崩壊しており、また補修する様子も見られない。

防衛意識が皆無であるその様は、そのまま相手の自信の表れであるようにも思えるものだ。

「皆さん、展開してください」

街の姿が目に入った瞬間、アルトリウスは各部隊長へと指示を出した。

その瞬間、各部隊長たちは己の部下、およびほかのプレイヤーたちを誘導し始める。

部下まで動きの統率が取れているその様は、流石『キャメロット』といった所だろうか。

大した混乱が起きることもなくプレイヤーが散開していくのを見ながら、俺はセイランから降りて餓狼丸を抜き放った。

瓦礫に満たされたアファルドの街では、正直騎獣での移動は行いづらい。

尤も、セイランであればそれも大して問題はないだろうが――今回は敵の掃討が目的だ。急いで敵陣を突破する必要もないため、ここは徒歩で移動した方がいいだろう。

この場とは反対の東側でも、同様にプレイヤーたちが展開を始めているようだ。作戦の開始はそう遠くはないだろう。

徐々に張り詰め始める空気に、隣に立つ緋真は硬い表情で鯉口を鳴らす。

「いよいよですね……」

「そう逸るな。本番は明日――無論、この戦いとて軽視できる訳ではないが、まだ全力を出し切るタイミングじゃないぞ」

「……まあ、そうですけど」

「お前にとっては戦いづらい相手かもしれないが、何もできないわけじゃなかろう。援護は任せるぞ」

「……! はい、勿論です!」

俺のその言葉に、緋真は目を見開き、そして力強い笑みと共に首肯する。

敵の相性が悪いため緊張していたようではあるが、流石にそれに関して無理を言うつもりはない。

『獄炎纏い』の時もそうであったが、例え相性が悪くとも、できることは必ずあるのだ。

そして、緋真はそれを知りながら手をこまねいているような人間ではない。

必ずや、自分の仕事を成し遂げてくれることだろう。

「……流石に、悪魔も気づいていますね。攻撃を仕掛けてくるかとも思いましたが……とりあえず、動きは無しと」

「いいんじゃないか。出鼻を挫かれるよりはマシだろう」

「ですね。尤も……もう、準備は完了しますけれども」

どうやら、部隊の展開は滞りなく進んでいるようだ。

プレイヤーを誘導し、綺麗に街全体を包囲する形で展開する。

本来の軍略であれば、既に勝利していると言っても過言ではない陣形だ。

とはいえ、相手は悪魔。こちらのセオリーが通じるような相手ではなく、同時に降伏勧告を聞くような殊勝さもあるまい。

予定通り、全方位から殲滅するまでだ。

「時間通り……そして、予定通り。それでは――各隊、前進を開始してください」

アルトリウスがチャットに向けて話しかけ――同時に、『キャメロット』の面々が前進を開始する。

そのあまりにも堂々と前に進んでいく姿に、他のプレイヤーたちは合わせて前へと進みだした。

この辺りは実に日本人がメインのゲームらしい姿だ。こうも堂々と先頭を歩かれると、ついつい深く考えずに追従してしまうらしい。

尤も、全てのプレイヤーがそうだというわけではなく、一部は先走って騎獣で街へと突撃していった連中もいるわけだが。

「あれ、大丈夫ですかね。集中的に狙われると思いますけど」

「それに対処できるならば十分に優秀な戦力、できないならば戦力としては期待できない、って所だな。まあ、自由にやればいいのさ」

別段、その行動を咎めるつもりも無い。

それで戦果を挙げられるのであれば何も文句はないし、挙げられずに脱落したとしても痛手はほぼ皆無だ。

都市内で暴れたとしてもこれ以上の被害が出ることもないし、存分にやればいいだろう。

そんな連中を尻目に、俺たちは足並みを揃えながら距離を詰めていく。

早くも戦闘に入ったプレイヤーたちは、実力のある一部を除いて悪魔共の餌となってしまったようだが――それは、俺たちにとって都合のいい隙だ。

「――突撃!」

――そして、その機をアルトリウスが逃す筈もない。

彼の鋭い宣言と共に、周囲のプレイヤーたちもまた都市へと向けて駆けだした。

それに合わせて、俺たちもまた地を蹴ってアファルドへと向けて突撃する。

歩法――烈震。

ここまで距離を詰めている状態であれば、例え不利になったとしてもアルトリウスたちのカバーが間に合う。

そう判断し、俺たちは都市へと向けて一気に距離を詰めた。

先行していたプレイヤーたちに集中していた悪魔も、こちらの姿に気づいて構え――

「――【ミスリルエッジ】、【ミスリルスキン】、【武具精霊召喚】、【エンハンス】」

斬法――剛の型、扇渉。

――大きく振るった一閃が、炎を纏う悪魔を胴から両断した。

やはり、いい切れ味だ。ひたすらに攻撃の威力を鍛えてきた甲斐があったというものである。

この程度の悪魔を斬るのに手間取っているようでは、いつまで経ってもディーンクラッドに傷を負わせるなど夢のまた夢だ。

三魔剣を使わず、ただ魔法による強化のみで悪魔を両断する――ここまで積み上げるのには苦労したのだ、この程度は容易にこなせるようでなくては。

「さて、と」

歩法――間碧。

目を見開き、近寄ってくる悪魔共の全景を見つめ、その隙間を見つけ出す。

例え数が多くとも、隙間なく埋め尽くされているということはあり得ない。

奴らの隙間を通り抜けることなど、それほど難しくもないものだ。

そして――

斬法――柔の型、散刃。

その擦れ違い様、接近したすべての悪魔に対して刃を放つ。体を回転、反転させてその動きのままに刃を振るう。

全方位へと向けて攻撃を放つこの業は、単発限りではない火力を得た今だからこそ効果を発揮するのだ。

何体もの悪魔の腕や足を斬り飛ばし、奴らの動きを止めさせながら前へ。

俺が行動不能にした悪魔共は緋真たちや『キャメロット』の連中が仕留めてくれる。

こんな雑魚共をいちいち丁寧に相手をする必要もない。手早く済ませて、街の中央まで向かわなければ。

そう考えた、刹那――街の中央より、巨大な火柱が迸った。

「――――ッ!?」

「あれは……!」

まるで、火山の噴火を思わせるような巨大な炎。

上空高くまで噴き上がったそれは――小さな炎の弾となり、街全体に降り注ぎ始めた。