軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

307:防衛のための遊撃

遊撃という言葉を聞くと、少々懐かしい気分になる。

国連軍に所属していた頃は――つまり軍曹の部隊に所属していた頃は、基本的に遊撃のような立ち位置でいたからだ。

まあ、敵を察知しては突撃するという動きをしていたため、どっちかというと鉄砲玉のような扱いだったかもしれないが。

ともあれ、今の俺たちの動きは、基本的に遊撃だ。敵を見つけ、有利な状況を作り出し、襲撃を行う。その繰り返しである。

その小手調べとしても、まずはこの炎の悪魔共を片付けるとしよう。

「さてと……仕掛けるとしようか」

「十分離れましたしね。これなら、街の方に察知されることは無いでしょうし」

アファルドから出現した悪魔共を追跡し、ある程度の距離を移動した。

ここまでくれば、街の中にいる悪魔に察知されるということもないだろう。

それに、あまり遠くまで行きすぎると、この炎の悪魔たちが分散してしまうかもしれない。

それよりも早く、こいつらには攻撃を加える必要があるのだ。

「けど、結構な数よ? 大丈夫?」

「こいつら相手なら何とかなるさ。さてと……ルミナ、まずは一当てだ」

「はい、お父様! 光の鉄槌よ!」

直後、ルミナの手より放たれた光熱波がデーモンたちに襲い掛かり――直撃と共に、眩い閃光を迸らせた。

衝撃を伴って爆裂する閃光は、悪魔の群れを飲み込んで、全体に等しくダメージを与える。

それによってバランスを崩した悪魔たちは、しかしこちらの存在に気づいて迎撃態勢を取り――そこに、上空からセイランの雷が襲い掛かる。

意識を横に向けた所での一撃だ。降り注いだ雷は直撃と共に周囲の悪魔へと感電を引き起こし、悪魔の群れを丸ごと痺れさせる。

痺れによって動きを止めた悪魔たち。その頭上へと、緋真は手を翳した。

「《スペルエンハンス》、【フレイムバースト】!」

頭上にて起こった爆発は、悪魔たちに等しく衝撃を与える。

魔法の等級としては低いものであるが、それでも飛行を妨げるには十分すぎる威力であったようだ。

その圧力により、悪魔の群れは一斉に地面へと向けて墜落を始める。

さて、そのまま地面に叩き付けられて果ててくれれば楽ではあるのだが――流石に、そう都合よくはいかないだろう。

俺は小さく嘆息し、セイランへと合図を送って地上へと降下する。

「お父様、上空に残ったものは私が受け持ちます!」

「ああ、頼んだぞ!」

尤も、今の一撃で墜落しきらなかった悪魔も存在する。

だが、そんな悪魔共へと向けて、薙刀を取り出したルミナが翼を羽ばたかせた。

あまり使う機会のない薙刀ではあるが、上空で振るうには中々便利な代物だ。

ドッグファイトになる空中戦において、リーチの長さはそれだけで武器となる。

上空の悪魔は既に数が少ないし、ルミナだけでも問題はないだろう。

「セイラン、叩き落せ!」

「ケエエエエッ!」

俺の命令に従って、セイランは強烈な下降気流を発生させる。

ダウンバーストというほどではないが、それでも体勢を立て直そうとする悪魔を地面に叩き落とすには十分な勢いだ。

風に巻き込まれた悪魔たちはバランスを失い、空中でもがきながら地面へと叩き付けられる。

ルミナが放った魔法の爆心地辺りにいた悪魔については、かなりHPを削られていたこともあってか、それだけで絶命して燃え尽きることとなった。

他の悪魔にしても、かなりHPを削られている状況だ。不意討ちが上手いこと嵌った結果だ。

「いい具合だ……ッ!」

こちらも地面に叩き付けられる前に急制動、強烈なGに耐えながら勢いを殺し、セイランの背から飛び出す。

その着地際に地面に落ちた悪魔を踏みつけて足場にしつつ、俺は餓狼丸の刃を抜き放った。

頭蓋を踏み潰されて灰となって消える悪魔、その火の粉を踏み込みで蹴散らしながら、前へ。

歩法――烈震。

獲物はいくらでも転がっている。

炎を纏う悪魔たちは、元より痛みや恐怖を感じるような性質ではない。

地面に叩き付けられたからと言って、それで行動不能になるダメージを負っていないのであれば動き続けるのだろう。

とはいえ、それだけのダメージを負ってすぐさま攻撃行動に移れる筈もない。

まずは、起き上がる前の悪魔共を斬り捨てればよい話だ。

「【ダマスカスエッジ】、【ダマスカススキン】、【武具精霊召喚】――『生奪』」

斬法――剛の型、輪旋。

片膝を着き、立ち上がろうとしていたデーモンの首を、大きく弧を描く一閃が刎ねる。

無防備な体勢への一閃は、相手に反応する隙すら与えない一撃だ。

燃え尽きて灰となっていく死体には目もくれず、更に前へと足を踏み出す。

その頃には他の悪魔たちも体勢を立て直しつつあったが――同時に、俺たちもまた全員が戦闘に参加できる状況となっていた。

まず最初に続いたのは、空から降ってきたアリスだ。上空から垂直に落下してきたアリスは、両手で持ったネメの刃をデーモンの頭頂部へと突き刺した。

彼女はそのまま、後ろに倒れ込むようにしながら刃を抜き取り、器用に回転して着地する。

痛みを感じないとはいえ、中々無茶な動きをするものだ。

「ゴアアアアアアアッ!」

「《蒐魂剣》!」

左側にいた悪魔が、叫び声と共に口から炎を吐き出してくる。

火球となったそれは俺へと一直線に飛び――青い光を纏う一閃によって掻き消される。

魔力の気配を感じる以上、《蒐魂剣》で破壊できる程度のものでしかないのだ。

攻撃の効果が無かったことに、しかし悪魔は動揺もなく……と言うより何も考えていない様子で、こちらへと襲い掛かってくる。

しかし、その体は横合いから叩き付けられたセイランの一撃により、拉げて吹き飛ぶこととなった。

「 強制解放(リミットブレイク) の属性耐性無視、普段から欲しくなりますね……っと!」

一方、俺の右手側で戦闘を行っているのが緋真だ。

コイツの場合、属性が火に偏っているため、同じ火属性の相手にはどうしても相性が良くない。

その分、火を使った攻撃の火力はとんでもなく高いため、長所短所でしかないのだが。

とはいえ、全く戦えないというわけでもない。緋真は属性を付与していない紅蓮舞姫で悪魔の足を斬りつけ、体勢を崩した悪魔の首を割き、そして心臓部に刃を突き立てる。

そんな弟子の様子を横目で見ながら、俺は次なる標的へと肉薄する。

「ガアアアッ!!」

「力だけは強いんだがな……『生奪』」

運動能力そのものについては、同種の悪魔と比べても明らかに向上している。

好戦的で恐れを知らぬその動きは、集団で攻め込んできたとしたら確かに恐ろしいものだ。

しかし、相手の陣容を崩した上でこちらから攻撃を仕掛けた場合、むしろ戦い易い相手であるとも言えた。

フェイントも何もなく、ただ単純に攻め込んでくるその攻撃は、俺にとってはただのカモでしかない。

斬法――剛の型、刹火。

振り下ろされた拳を躱しながら走らせた刃が、悪魔の肘から先を斬り飛ばす。

片腕が無くなったことでバランスを崩した悪魔の横を抜け、膝裏を斬り裂いて体勢を崩す。

そして俺の胸の高さにまで落ちてきた悪魔の首を、横薙ぎの一閃で斬り飛ばした。

更に、そのまま体を沈み込ませて横から殴りかかってきた一撃を躱し、心臓へと刃を突き立てる。

流石に、炎に包まれているためあまり接近したい訳ではない。すぐさまその胴へと蹴りを入れて押し出しつつ、刃を構える。

「《練命剣》――【命輝一陣】!」

横薙ぎに放った生命力の刃は、既に致命傷を負っていた悪魔へととどめを刺す。

舞い散る燐光と火の粉を陰に、俺は更に先へと踏み出した。

歩法――烈震。

残るは最後の悪魔。瞬く間に片付けられたことに対する動揺もなく、こちらを迎撃しようと唸り声を上げている。

しかし、それが迎撃態勢を整えるよりも早く、俺の一閃が悪魔の首へと襲い掛かった。

「『生奪』」

斬法――剛の型、扇渉。

滑り込むようにして放った刃が、大口を開けた悪魔の首を断つ。

こちらの姿を認識しきれていなかった悪魔は、まるで表情を変えることもないまま首を飛ばし――そのまま、灰となって消滅した。

血振りをするも、刃に血が付いた様子もない。どうにも、おかしな悪魔だ。

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《エンゲージ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復適性》のスキルレベルが上昇しました』

『《高位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

とりあえず、この群れは片付けたが……これは思ったより、レベル上げの相手としてもいいかもしれない。

それなりに強く、経験値も持っており、尚且つ奴らの目論見の一部を潰すことができる。

北を攻めるまでは、レベル上げのためにこの辺りで魔物を狩りつつ飛んでくる悪魔を迎撃するか。

「……よし、しばらくはここで悪魔を待ちつつ戦うぞ。レベル上げも兼ねてな」

「あー……まあ、いいかもですね。悪魔の素材は美味しくないですけど」

緋真の同意を得て、笑みを浮かべつつ首肯する。

さて、北を攻めるまでにどこまで育てることができるだろうか。

残された時間は長くはない。できる限り、有効に使わなくてはならないだろう。

(……そういや、あいつらも時間が無いだのと言っていたな)

ぼやきつつも楽しそうにしている師範代たちの姿を思い浮かべ、軽く肩を竦める。

さて――果たして、あいつらは決戦までに合流できるのか。

そちらのことも、一応頭に入れておくこととしよう。