軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

297:特異なる存在

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《格闘》のスキルレベルが上昇しました』

『《強化魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《降霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』

『《戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

日が落ちるまで森の中を彷徨い、魔物を狩り続ける。

それなりに手間はかかったものの、目論見通りもう一つレベルを上げることに成功した。

とりあえず、《格闘》と《戦闘技能》が上限レベルに達したため、スキルを進化させておくことにしよう。

ちなみに、前回 《テイム》がレベル40になった際には【モンスターヒーリング】というテクニックが手に入っていた。

これは魔法のような詠唱時間が存在するテクニックであり、指定したテイムモンスターのHPを回復させることができる。

尤も、俺がやるよりもルミナが魔法で回復した方が速いため、出番のないテクニックであったが。

それよりも、ルミナに新たなスキルが生えたことに注目するべきだろう。

「ルミナもセイランも、順当にランクが上がったスキルについては分かるが……ルミナ、《精霊の囁き》ってのは何だ?」

「精霊たちが手を貸してくれるスキルです。といっても、危険があった時に警告してくれる程度ですが」

「はぁ……不意討ちの防止か?」

どうやら、自動で発動するタイプのスキルであるらしい。

どの程度の効果があるのかは実際に発動させてみないことには分からないが、俺たちには精霊の声は聞こえないようだし、こちらでは正直効果を実感できない。

まあ、少し経ってから効果について再度確認してみることとしよう。

「さてと……そろそろ時間だな」

「もうかなり暗いですけど……ああ、でもまだ夕方ですね」

「具体的に何時から現れるのかは知らないけど、そろそろ深層に移動した方が良さそうね」

闇月の森の中、比較的深層に近い場所でレベル上げを行っていたものの、移動には若干の時間がかかる。

深層に辿り着くころには、日も完全に落ちていることだろう。

ルミナに明かりを用意させながら、俺たちは森の奥へと向けて歩を進めた。

「やっぱり、夜になると雰囲気違いますねぇ」

「夜の森は危険だからな。ゲームでもなければ歩き回るような場所じゃない」

山中での修行を行った時にも、夜は極力動き回ることはなかった。

夜行性の動物が活発化し、尚且つこちらの視界は著しく制限される。人間が出歩くには向かない場所なのだ。

だが、今回はそうも言っていられない。今回の標的は、夜にしか出現しないのだから。

ルミナには広い範囲に照明を配置させ、できる限り暗闇の死角を作らないように注意しつつ先へと進む。

徐々に近づいてくる森の境界。俺たちは無言で頷き合い、覚悟を決めて――深層へと足を踏み入れた。

そして――

「……?」

「何も……起こらない?」

てっきり、足を踏み入れた瞬間にマーナガルムが現れると思っていた俺たちは、何の気配もないことに拍子抜けして顔を見合わせる。

教授の情報ではこの近辺で出現していたし、出てこない筈がないと思うのだが。

もう少し奥まで入る必要があるのか、今日だけは何か特別なのか、或いは――そう考えていた、その瞬間だった。

――森の奥から、僅かな赤い光と共に、爆音が響き渡ったのは。

「っ……そういうことか!」

「既に戦闘中ってことですか!」

マーナガルムはネームドモンスター。エリアに一体ずつしか出現しない、貴重な存在だ。

そのため、他のプレイヤーが戦闘を行っていた場合、それ以外のプレイヤーはネームドモンスターと遭遇することはできない。

あらかじめ示し合わせていたならば、レイドなり何なりで協力することはできるだろうが、毎度そう上手く行くような話でもあるまい。

しかし、マーナガルムが戦闘を行っているということは、同時にチャンスでもある。

映像では見ることのできなかった行動も確認できるかもしれないし、今後の戦いに有利に働くだろう。

正直な所、アルトリウスたちならばともかく、他のプレイヤーにマーナガルムを倒せるとも思えないしな。

「行くぞ、向こうだ」

「はい! 急ぎましょう」

「……けど、誰が戦っているのかしらね?」

更に森の奥、赤い光が見えた方向へと走り出す。

アリスが口にした疑問については、正直俺も気になっている所だ。

これまで森でレベリングしている間も、他のプレイヤーに遭遇することはなかった。

俺たちが森に向かうのを見て、真似をしようとしたプレイヤーがいたのか。

或いは、『MT探索会』のようにマーナガルムの存在を知り、挑もうとした連中がいたのか。

もしもアルトリウスたちが挑むのであれば俺にも連絡が来るだろうし、他の何者かだとは思うのだが。

(だが、もしかしたら――)

この森に来る前、雲母水母たちから妙な話を聞いた。

この森の方角から、爆発音を聞いたプレイヤーがいたという話だ。

状況からして、同じ現象である可能性が高いが……そうだとすれば、同じプレイヤーが複数回マーナガルムと戦っているということだろうか。

もしそんな人物がいるのであれば、あらかじめ話を聞いておきたかった所であるが――どうやら、件の人物が近付いてきたようだ。

「先生、あそこです!」

「ああ。さてと、果たして誰が――」

――赤い光が煌めき、爆裂を巻き起こす。

その光によって夜闇の中に浮かび上がったのは、巨大な狼の黒い影。そして、その魔法を放った人影の存在であった。

赤い髪、白い肌、そして黒いレザーの衣。血のように赤い魔力を纏う女の姿に、俺は思わず絶句した。

見間違える筈もない、あの姿は――

「ロムペリア……ッ!?」

「っ、魔剣使い――ぐっ!?」

瞬間、黒い影に飲まれて姿を消した巨大な狼が、こちらに気を取られて視線を向けたロムペリアを巨腕で殴り飛ばした。

弾き飛ばされたロムペリアは、空中で体勢を整えながらも地面に叩き付けられ、そのまま地に手を付けながら俺たちの傍まで滑ってきた。

間違いない、こいつはかつて出会った伯爵級悪魔、ロムペリアだ。

アルファシアでその影を見て以来、目撃例はなかったが――

「貴様、こんなところで何をしている!」

「それはこっちの台詞――と言いたい所だけど、ここに来た以上は目的なんて分かり切っているわね」

前方へと視線を向け、ロムペリアはそう口にする。

その視線の先、闇の中から姿を現したのは、見上げるほどに巨大な黒い狼だ。

大きさは初めて戦ったボスであるグレーターステップウルフよりも一回り以上大きい。

だが、纏う威圧感も魔力も、これまでの敵とは圧倒的に違う。

黄金に輝く瞳は、こちらに対する敵意ではなく、強烈な戦意を放ってきている。

「消えなさい。これは私の獲物……貴様に渡すつもりはないわ」

「こちらの台詞だ。貴様らの首魁を倒すためにも、こいつは俺たちが倒す」

「首魁……はっ、そういうこと。けど、関係ないわね。邪魔をするなら貴様から片付けるわ」

互いの殺気が高まる。

ここにきて伯爵級悪魔と遭遇するとは思わなかった。

状況は悪いが――マーナガルムと戦う機会を見逃すわけにはいかない。

ここで倒さなければ、翌日更に強化されたマーナガルムを狙わなければならなくなる。

正直な所、これ以上マーナガルムに強化されては困るのだ。今日の内に奴を倒さなければならない。

この状況で伯爵級、しかも上位の悪魔であるロムペリアを相手にするのは厳しいが――

「オオォ――――――――ンッ!」

「ッ!?」

「……っ!」

だが、そんな俺たちを諫めるように、マーナガルムは力強い遠吠えを発した。

それはまるで、俺たちとロムペリア、まとめてかかって来いと挑発しているかのようで――この魔物にはそれだけの力があるのだと、直感的に理解できた。

「チッ……一時休戦だ。だが、援護は期待するな」

「フン……巻き込まれて死なないように気を付けることね」

互いに悪態を吐きつつ、しかし殺気を納めてマーナガルムへと向き直る。

そんな俺たちの姿を見つめ、マーナガルムはその巨大な口元を吊り上げてみせた。

まるで人間のような、知性を感じる笑顔。やはり、こいつはこれまでの魔物とは一線を画する存在であるようだ。

「先生……大丈夫なんですか?」

「さあな。だが、やるしかあるまい」

ロムペリアはあまりにも危険すぎる不確定要素だ。

だが、戦闘能力は間違いなく高い。この機会を逃すわけにはいかないだろう。

俺は抜き放った餓狼丸をマーナガルムの方へと構え直し、意識を集中させたのだった。