軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

296:深層

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《格闘》のスキルレベルが上昇しました』

『《強化魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《降霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《死点撃ち》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《エンゲージ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復適性》のスキルレベルが上昇しました』

『《戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

森の奥に進むにあたり、遭遇した魔物を狩り続けた。

主にシャドウパンサーとブラッドトレントであったが、どちらも決して甘く見ることはできない相手だ。

特に、シャドウパンサーは不利と見ればすぐさま逃走を選ぶ潔さがある。レベル上げ目的の狩りにおいては、若干面倒な性質だ。

まあ、こいつらの場合は他の魔物を囮にして逃げようとするので、そちらを無視して追撃すればすぐに倒せるのだが。

他にも何種類か魔物と遭遇したが、面倒だと感じたのはこの二種による奇襲程度だ。

ブラッドトレントもそこそこ仕留めることができたし、いい土産になっただろう。

「まあ、木の素材があってもそこまでは使わんのだがな……」

「毛皮も、まだ覇獅子の素材を超えるレベルじゃないしね」

現在アリスが被っている頭巾は、カイザーレーヴェの素材を元に製作された逸品だ。

素材のレベルが高いだけに、作成にはかなり困難を要したとの話があるが、そのおかげで装備の性能は非常に高い。

数字だけを見れば、そこらの金属鎧にも匹敵するような防御力を持っているのだ。

尤も、アリスの場合は直接攻撃を受けるような状況になったら負けであるため、そもそも防具としての性能はあまり重要ではないのだが。

「……まあ、いいレベル上げにはなったか」

「ですね、結構上がりましたよ」

「あ、こっちスキル進化が来てるからちょっと待って」

「ほう、何が上がったんだ?」

「《走破》と《無音発動》ね。ちょっと待って」

どうやら、アリスは二つもスキルを進化させられるようだ。

俺は近々《格闘》や《戦闘技能》が進化レベルに達するところではあるが、こちらは《格闘術》と《高位戦闘技能》に進化させるつもりであるし、真新しい印象はない。

後は……《強化魔法》はレベル50が見えてきた所ではあるが、果たしてこのスキルは進化するのだろうか。

どちらにしろ、ディーンクラッドとの戦いで切り札になるほどのものとは思えないし、過度な期待はしないでおくとしよう。

少なくとも、少しずつ強化されていることに変わりはないのだ。停滞しているよりは遥かにマシというものだろう。

「《走破》が《立体走法》になるのは知ってますけど、《無音発動》って何になるんですかね? 一応、ちょっとしたレアスキルですけど」

「ええと……《無影発動》というスキルになるみたいね。効果は……無音で発動したスキルで攻撃した際のヘイト蓄積の削減。ただし未発見状態のみ」

「ほう、敵から狙われづらくなるってことか」

要するに、敵を背後から刺した時に反撃を受けづらくなるということだろう。

アリスにとっては、中々に有効なスキルとなる筈だ。

スキルの発動はこれまで通り声に出さずに行えるようであるし、彼女にとってはかなり便利なスキルになるだろう。

「へぇ、これはこれは……役に立ちそうね。まあ、ディーンクラッド相手に通じるのかどうかは微妙だけど」

「試しに使ってみればわかるんじゃないのか?」

「それもそうね。次の戦闘辺りで確認しておくわ。けど……そろそろ目的地みたいね」

アリスの言葉に、俺は改めて前方へと視線を向ける。

その先には、明らかに植生の違う木々が乱立する、不思議な境界線が存在していたのだ。

マップを確認してみれば、教授たちが戦闘したエリアの手前に当たるらしい。

どうやら、ここから先がマーナガルムの領域であるようだ。尤も、まだ昼間であるためマーナガルムは出現しないのだが。

「さてと……教授の動画では暗くてあまり見えなかったからな。どんなエリアになってることやら」

「何だか凄く大きな木が見えてますけど、どうなってるんですかね?」

思い思いに口にしながら、境界線の向こう側へと足を踏み出す。

途端、目の前に広がった光景に、俺たちは思わず息を飲んだ。

それを一言で言うのであれば――幹の直径が、最低でも一メートルには達しようかという巨木が、広い間隔を置いて連なる森といった所だろう。

木一本を取っても、長い年月をかけて成長したことが窺える。そんな木々が、この森には無数に立ち並んでいるのだ。

足元には細かな雑草は生えているものの、背の低い木々は存在しない。まるで、無数の柱が立ち並ぶ地下空間か何かのようだ。

頭上から僅かに降り注ぐ木漏れ日は、そんな空間を神秘的に演出していた。

「……『闇月の森:深層』か。ここが、マーナガルムとの戦闘エリアになるわけだな」

「広いですね……飛び回るには、少々邪魔ですけど」

「空中戦は無理だろうな。いくら広いと言っても、障害物が多すぎる」

中空を見上げながらルミナが呟いた言葉に、俺は軽く肩を竦めて同意する。

確かに広く感じる空間ではあるが、こうも太い木々が存在する以上、飛行には不向きだ。

特に、視界の悪い夜の闇の中では、高速ではない飛行すら危険だろう。

ルミナやセイランには悪いが、そこは地上での戦闘に限定して貰うこととしよう。

まあ、セイランならば木々を足場にするぐらいはやってのけるだろうが。

「戦闘エリアとしてはどうですかね?」

「足場は柔らかいが、足を取られるほどのレベルではない。障害物は多いが、逆にこちらも遮蔽物として利用することは可能。そこまで不利な状況ってわけでもないだろうよ」

多少の注意は必要であるが、決して俺たちにばかり不利なフィールドというわけではない。

だが、相手にとってはホームグラウンドであることも忘れてはならないだろう。

地の利という点においては、圧倒的に相手側へと軍配が上がる状況だ。あまり安心してもいられない。

「さてと……とりあえず、ざっと下見をするとしよう。どこで戦うかを決めておいた方がいいな」

「けど、正直どこもあんまり変わり映えしなさそうな感じですけど」

「見渡す限り、この木が生えている感じね。壮観な光景だけど、戦い易い場所があるかは正直疑問だわ」

「それでも無駄にはならんだろう。行くぞ」

木々の間隔や足元の触感など、実際に動いて覚えた方がいいものは多い。

感覚的なものである以上、実際に体感しなければ覚えることは難しいのだ。

特に目的地を定めることなく、真っすぐと進むように歩き出す。

試しに触ってみた感じ、ここに生えている木々はかなり丈夫だ。

俺の攻撃であっても、これを斬り倒すことは困難だろう。

「動画を見た感じ、マーナガルムってこの木を足場にして攻撃してきてましたよね。壁を蹴るみたいにして……」

「かなりのスピードだったわね。姿を消した後にあれで突撃してくるのは厄介だわ」

「変にルミナちゃんがヘイトを取り過ぎたら拙そうですね。魔法攻撃は控えめにしないと……」

まだまだ情報は少ないが、現状において最も大きな問題点となるのは機動力の差だろう。

マーナガルムは素で敏捷が高いと思われるが、その上で足場や転移を利用した攻撃を行ってくるのだ。

ただ跳び回るだけならばまだしも、転移を使われると俺でも一瞬姿を見失ってしまうだろう。

魔法も厄介ではあるのだが、今のところあの転移が最も危険な行動であると言わざるを得ない。

尤も、対策を取るにしてもあまり有効な方法が見つからないのが本音だが。

「……ふむ」

「先生? どうかしました?」

「いや……この森、魔物が出現しないのかと思ってな」

「あ、そう言えば……」

深層に足を踏み入れてから、一度も魔物が出現していない。

それどころか、生き物の気配すら感じ取ることができないのだ。

まるで、この場にいる動物は俺たちだけであるかのように、この深層の森は深い静寂に包まれていた。

「静かでいいんだけど……ここまでくると不気味ね」

「マーナガルムの縄張りってことだろうよ。魔物たちが近寄らないってことは、魔物たちもマーナガルムにとっては獲物ということか」

「獄炎纏いの時だって、魔物同士で戦ってましたし、そういうこともあるんじゃないですか?」

思い起こされるのは、獄炎纏いが他の魔物を襲って捕食していた光景だ。

あれを見た感じ、魔物でも他の魔物を襲うということはあり得る様子だと言える。

他にも理由はあるのかもしれないが、現状それを確かめる術はない。

「ここで魔物と戦いながら待つつもりだったんだがな……」

「どうします? 探索を続けるんですか?」

「……とりあえず、ざっと地形を感覚で覚える程度でいい。その後は、深層から出てレベル上げだな。夜までの時間を無駄にするのも勿体ない」

時間は有限だ。強敵と戦う必要があるのだから、夜までに少しでもレベルアップしておくべきだろう。

ディーンクラッドとの戦いと同じく、マーナガルムもまた、決して負けるわけにはいかないのだから。