軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

290:二体目の達成

「ふぅ……何とかなったわね」

「相性が悪かったな……だが、いい判断だった。よくやったな、緋真」

「あはは、ありがとうございます」

あの炎の翅を展開した獄炎纏いは、接近戦主体の俺たちには著しく相性の悪い相手であった。

まあ、効果が切れるまで逃げ回っていれば何とかなったとは思うのだが、流石にそれで終わらせるのも面白みに欠けるというものだ。

何はともあれ、倒せてよかった。これで紅蓮舞姫の素材も手に入っただろう――いや、出ていなかったら困るが。

とりあえず一息ついた俺たちは、そのまま湖の畔まで移動して着陸した。

周囲に魔物の気配もないし、ゆっくりと戦果を確認できるだろう。

「ふむ……ああ、目的の素材はあったな」

「こっちにもありましたよ!」

「私の方にもあったわ。流石に三つは要らないんじゃないかしら?」

「まあ、あって損するということもないし、問題はなかろう」

正直な所、これほど上位の素材は生産職に預けてもあまり期待できるものではない。

そもそも、獄炎纏いからは防具の素材は手に入らなさそうであるし、それについてはあまり気にしないでもいいか。

とりあえず、目的であった『獄炎蝶の赤翅』は緋真に渡し適当な素材と交換しておく。

自分ではまず使わないだろうが、貴重な素材であることは間違いないのだ。

特に、一番多く手に入った『獄炎蝶の鱗粉』は何かと使い道があるかもしれない。

これについてはエレノアたちに預けると面白いことになるかもしれないな。

「さてと……」

成長武器の経験値はまだ溜まり切っていない。

まあ、強敵ばかりと戦っており、結構頻繁に解放を使ってしまっているためだろう。

適当な魔物を相手にして俺と緋真の武器だけ成長させてしまうか、それともアリスのも含めて一気に成長させるか――まあ、次の標的である『闇月狼マーナガルム』は特に強敵であるようだし、成長させておくのも悪くは無いのだが。

とりあえず、今日はまだ少し時間がある。しばらくレベル上げに勤しんでも問題は無いだろう。

普段通りにレベルアップの処理を行い、忘れずに《降霊魔法》のポイントを【武具精霊召喚】に振り分け――

『【武具精霊召喚:Lv.10】取得により、EX化が可能になりました』

「……何だと?」

まったく予想していなかったアナウンスに、俺は思わず眼を瞬かせた。

言葉を聞いた感じ、【武具精霊召喚】に何かしらの変化を与えられるようであるが、果たしてどう変化するというのか。

「先生、どうかしたんですか?」

「いや、《降霊魔法》にちょっと予想していなかった変化があってな……とりあえず自分で確認する」

言いつつ、スキルの確認画面を開いて、更にヘルプを表示する。

そこを読み込んでみれば、確かにEX化に関する説明文が追加されていた。

そこで説明されていることによれば、どうやらそれぞれ召喚された精霊は、最大レベルに達することでEX化の道が開かれるということらしい。

EX化させるための《降霊魔法》のポイントは3ポイント。つまり6レベル上昇させればEX化させられるらしい。

EX化させた精霊は、どうやらそれ以降に得られたポイントを割り振ることで様々な能力を上昇させられるようだ。

【武具精霊召喚】の場合は物理攻撃力上昇、魔法攻撃力上昇、物理カット率上昇、魔法カット率上昇、属性ダメージ上昇があるらしい。

つまるところ、《降霊魔法》を発動した際に出現する精霊を、好みでカスタマイズできるということだろう。

「ほほう、これは面白いな……」

【武具精霊召喚】が上限に達したら他の精霊を取るかと考えていたのだが、正直あまり気が進むものではなかった。

しかし、単純に【武具精霊召喚】を強化できるのであれば、全てのポイントをここに注ぎ込んで強化してみてもいいだろう。

カスタマイズ内容については……まあ、全て物理攻撃力上昇でいいか。

これなら、コンスタントに攻撃力を上げていくことができるだろう。

今はとにかく攻撃力が欲しい状況であるし、この強化形態は渡りに船だ。これからも《降霊魔法》は積極的に使っていくこととしよう。

「……で、一体何だったんですか?」

「精霊を好きにカスタマイズできるようになるみたいだな。そのままどんどん攻撃力を上げて行くさ」

「成程……? まあ、MPを半分も犠牲にするわけですし、それ位の恩恵があってもいいんじゃないですか?」

「……そんなあっさり言うほどか?」

「いや、普通はMP半減ってかなり重いコストですからね? このゲーム、結構色々な場面でMP使うんですから」

半眼で告げてくる緋真に対し、首を傾げる。

正直な所、俺はあまりMPを使用しないためピンとこない話だ。

最初に強化するため魔法を使うにしても、それ以降はほとんど使わない上に自動回復や《蒐魂剣》で回復するからな。

とは言え、それだけのコストに見合うだけの魔法にはなってきたということか。であれば、今後も愛用していくこととしよう。

何はともあれ――

「これで二体目の標的も撃破完了だな」

「ですね。ふたを開けてみれば結構余裕でした?」

「いや、あまり直接の殴り合いにはならなかったからイメージはし辛いが、結構な綱渡りだったぞ?」

何しろ、獄炎纏いの攻撃に飲み込まれればその時点で終了となりかねんからな。

俺たちは一撃もクリーンヒットを受けることなく奴を倒す必要があった。

それでも、爆発に巻き込まれてそこそこHPが減っているのだ。

むしろ、ここまで相性が悪かったというのに、よくこの程度で済んだと言うべき所である。

「ともあれ、二つ目まで素材が手に入ったんだ、最後の素材も手に入れたい所だな」

「けど、マーナガルムの情報はまだ入っていないのよね?」

「そうなんだよな。問い合わせてもいいが……せっかくここまで来たんだ、今日はレベル上げでいいかもしれないな」

今日を含め、残り七日。それまでに、俺たちはディーンクラッドの元まで辿り着かなければならない。

逆に言えば、あと一週間あるということでもある。それまでの間、俺たちは可能な限り戦力を強化しなくてはならない。

つまるところ、無駄に敗北している時間が勿体ないのだ。

「マーナガルムは未知数の敵だ。話を聞く限りでは、ネームドモンスターの中でも最も難易度が高いと思われる。無策に突っ込むのは危険だし、高い確率で勝てる勝算を得られてからの方がいいだろう」

「んー……まあ、もうすぐレベル60ですしね。スキルスロットを増やしてからでも遅くはないか」

「スキル、ね……どうしようかしら。戦闘には関係ないスキルを一つ減らして枠を確保していたけれど」

「あまり好みのスキルって訳じゃないが、《聖女の祝福》があるだろう。強敵との戦いには、付けておいて損はあるまい」

死した際に一度だけ復活できる、《聖女の祝福》。

普段は使用していないが、ディーンクラッドとの戦いにおいては保険として活用したい。

戦闘スキルを入れ過ぎて使用できなくなってしまっても困るし、一枠は余裕を持たせておくとしよう。

まあ、レベルの存在しないスキルであるため、普段は使わずサブスキル枠に入れておいても良いとは思っているのだが。

ともあれ、方針は単純だ。

「今日はレベル上げ、および街に戻って成長武器強化の依頼。明日以降、情報が仕入れられたらマーナガルムに挑むとしよう」

「……了解。まあ、その方がいいわよね」

「悪いな、俺たちだけ先に武器を強化することになるが」

「別に、そこに文句をつけるほど子供じゃないわよ」

苦笑するアリスに、こちらも軽く肩を竦めて返す。

一人だけ成長武器の強化タイミングが異なってしまうのは気が引けるが、聞く限りではマーナガルムは強敵だ。可能な限り手は揃えておいた方がいいだろう。

まあそれ以上に、成長武器の★6での強化内容が気になるという点もあるのだが。

アルトリウスがあれほど念押しした強化段階だ、恐らくは何かしらの仕掛けがあると考えられる。

(《降霊魔法》のレベル上げ、成長武器の強化、それからスキルの進化や新たなテクニックの習得……何ができるかはまだ分からんが、やれることはやらなければな)

幸い、この辺りの敵は強敵が多い。レベル上げをするにはちょうどいい塩梅だろう。

ここまでの移動と獄炎纏いの捜索にそこそこ時間をかけてしまったが、修行をする時間は十分にある。

一応、あらかじめ強化依頼をエレノアに入れておけば、後は時間ギリギリまで修行を行っていても問題はない筈だ。

まあ、今の攻略状況については少々気になる所ではあるが。それに関しては、移動する時にでもアルトリウスに聞いておけばいいだろう。

「……まあ、せめて東の街は解放していて欲しい所ではあるが」

マーナガルムは東部の森にいるという。

そこへの足掛かりにするため、東の街は解放していてもらいたいのだ。

情報を集めるにも、そこの方が良いだろうしな。

「よし、とりあえず敵を探すぞ。時間ギリギリまで修行だ」

「はーい、了解です」

「では、敵を探してきますね」

空に舞い上がるルミナを見送りつつ、ゆっくりと歩き出す。

さて、どこまで強化できるか、楽しませて貰うとしよう。