軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

281:敵であり味方の舞台

元々、ある程度の違和感はあったのだ。

あまりにも多すぎる敵の数、夜になったら大半が眠るという行動、火を放てと言わんばかりの立地。

この 集落(ステージ) からして、『卑怯な手を使って下さい』と言わんばかりの条件をしていたのだ。

まあ、どう考えても正攻法で勝てる相手ではないし、そういった手段を利用して尚、このブラッディオーガは難敵だ。

そして、だからこそ――まだ何らかの手が眠っていると、そう判断したのである。

「それがまさか、毒とはな。ここを作った連中は一体どこまで仕込んでいるのやら」

夜を待つまでの間、アリスが周囲を探索して発見した植物、『ショウカイ』。

小さな白い花をつけているこの植物には、特殊な状態異常である『回復阻害』を付与する効果があったのだ。

これは単純に、一定時間の間だけ、あらゆる回復効果が適用されなくなるという状態異常である。

自己回復を生命線としている俺からすると中々厄介な状態異常ではあるのだが、ブラッディオーガにとってはそれ以上だろう。

コイツは防御や回避の行動を殆ど取らず、自らの回復能力に任せた戦闘を行っていた。そんな戦闘スタイルそのものが、コイツに牙を剥くことになるのだ。

「良く効くでしょう? 貴方専用に作り上げた、特別製の濃縮毒よ」

「ガ……ッ!?」

ブラッディオーガの背後から現れたアリスが、その背に刃を突き立てる。

紫色に輝く刃は、《ベノムエッジ》を発動させているが故だろう。

ブラッディオーガの身に更なる毒を注入したアリスは、夜闇に身を隠しながら陰惨に嗤う。

「効果継続に全力を尽くしたから、効果が切れるまでにはまだまだ時間があるわ。それまで生き残れるかしらね?」

「無論、それまでに仕留めるさ」

「ええ、ここから全力で詰めますよ!」

背中から攻撃されたことで、ブラッディオーガの注意は後方に逸れた。

その隙に、俺と緋真は同時に突撃する。

ブラッディオーガも接近する俺たちに気づき、すぐさま視線を前に戻す。だが、そんな奴の顔面に、ルミナが放った光の弾丸が突き刺さった。

眩い光量で爆裂する光はブラッディオーガの視界を塞ぎ――その隙に接近した俺は、全力で刃を振り下ろす。

「《練命剣》――【命輝閃】!」

斬法――剛の型、白輝。

力強い踏み込みから放つ神速の一閃。黄金に輝く生命力を纏い、その一撃はブラッディオーガの右腕を深く斬り裂いた。

先ほどまでであれば、すぐさま煙を上げて再生を始めるところであるが、生憎と今はその様子は見れない。

どうやら、アリスの毒はしっかりと効果を及ぼしているようだ。

「《術理装填》――《スペルエンハンス》、【フレイムストライク】! 【緋牡丹】ッ!」

続き、飛び込んできたのは燃え上がる紅蓮舞姫を掲げた緋真だ。

蜻蛉の構えで飛び込んでくるその姿は、まるで示現流であるかのよう。

その気迫を前に、ブラッディオーガは初めて棍棒を防御のために構え――利き腕が上がり切らず、僅かにブレた。

俺の一撃によるダメージで、腕を上げ切ることができなかったのだ。

緋真の一撃は、そんな構えきれていないブラッディオーガの棍棒へと直撃し、衝撃と共に巨大な炎を噴き上げた。

「ゴアアッ!?」

その衝撃によって、ブラッディオーガは後方へと吹き飛ばされる。

それだけではなく、奴の手にあった棍棒は大きく弾き飛ばされ、瓦礫の中に突き刺さることとなった。

舞い散った炎を【朱椿】で吸収することによって回復し、緋真は尚も魔法の詠唱を継続する。

その様子を視界の端に捉えながら、俺は武器を失ったブラッディオーガへと肉薄した。

「ガアアアアッ!」

だが、敵もさるもの。武器を失ったことによる動揺を最小限に抑え、こちらに対して迎撃の拳を振り下ろしてきたのだ。

まるでバスケットボールか何かのような、巨大な拳。

あの巨大な武器が無かろうと、この化物は肉体一つで十分すぎる攻撃力を有していると言えるだろう。

だが――ここまでになれば、ある程度対処もし易いというものだ。

久遠神通流合戦礼法――山の勢、不動。

合戦礼法を鬼哭から不動に切り替える。

そしてその直後、ブラッディオーガが振り下ろした拳を、俺は正面から左手を掲げて――その一撃を、真っ向から受け止めた。

衝撃に地面がめくれ上がり、しかし俺自身には一切のダメージは無い。

「グルル……!?」

まるで綿でも殴りつけたような感触だったのだろう。ブラッディオーガは困惑した様子で俺を見下ろしている。

その刹那、横合いから黒い影が割り込んだ。他でもない、これまで後方支援に徹していたセイランだ。

あの棍棒があっては近寄れなかったが、素手となった今ならばある程度のダメージを抑えることができる。

俺に攻撃を受け止められたことによって硬直していたブラッディオーガは、その一撃を無防備に顔面で受けて殴り飛ばされることとなった。

吹き飛ばされたブラッディオーガを追い、全身に嵐を纏ったセイランは倒れた敵を押さえ込みにかかる。

「ケエエエエエエエエエッ!」

「グルアアアアアアアアッ!」

雷撃を発しつつブラッディオーガを取り押さえるセイランは、少しずつではあるが奴にダメージを与えている。

だが、顔面を殴られながらも健在なブラッディオーガは、必死に暴れながらその拘束を解こうとしていた。

いい仕事ではあるのだが、いかに攻撃力が減ったとはいえ、あのまま揉み合いを続けていれば、先に体力が尽きるのはセイランの方だろう。

それに、あの腹部の口のこともある。あれで喰らいつかれるのは流石に危険だ。

であれば――

「緋真、合わせろ! セイラン、下がれ!」

「はいっ! 《スペルエンハンス》、【ファイアジャベリン】!」

「クェエッ!」

緋真が魔法を放つのとタイミングを合わせ、セイランはブラッディオーガの上から跳び退る。

その刹那、ブラッディオーガが避ける暇もなく、突き刺さった緋真の炎が爆裂した。

燃え上がる炎の中、俺はさらに踏み込んで刃を振るう。

「《蒐魂剣》――【因果応報】!」

炎を振り払おうと暴れるブラッディオーガは、しかし唐突に炎が消えたことに虚を突かれた表情を浮かべる。

どうにもこいつは予想外の事態に弱いように感じる。

突然事態が動くと、その状況を理解するまで動きを止めてしまうのだ。

これだけの肉体を持っているのであれば、反射的に動いてしまえば済む話だというのに――

「――《練命剣》、【命輝閃】」

「ッ!? ガアアアッ!!」

眼前にいるのは、緋真の炎を吸収した俺の姿。

ようやく炎が消えたことを理解したブラッディオーガは、座り込んだ体勢から俺を取り押さえようと飛び掛かり――そんな奴の巨体へ、俺は一歩前へと足を踏み出した。

斬法――剛の型、刹火。

狙うは奴の右腕、先程傷をつけた場所。

今だ塞がらぬその傷へ、正確に刃を走らせ――俺の一閃は、ブラッディオーガの右腕を斬り飛ばした。

血を噴き出しながらグルグルと宙を舞う右腕。ブラッディオーガは驚愕に目を見開いて自らの腕を視線で追い――その瞬間、小さな足が俺の肩を蹴った。

「これは、どうかしら」

横合いから忍び寄っていたアリスは、俺の肩を足場にして跳躍、ブラッディオーガの顔面へと接近して刃を振るう。

毒の染み込んだ刃は、見開かれたブラッディオーガの目を真っ直ぐに貫き、その内側まで刃を届かせる。

深く潜り込んだアリスの刃は、明らかに致命傷そのもののダメージだ。

しかし、それでも尚ブラッディオーガは崩れ落ちることなく体勢を保ち――

「ここまでだ――『生奪』」

翻った一閃が、ブラッディオーガの首筋を斬り裂いた。

ぱっくりと傷口が開き、一瞬遅れて夥しい量の血が噴出して――その身が纏っていた、赤黒いオーラが消える。

そしてその直後、ブラッディオーガはその場に地響きを上げながら倒れ伏したのだった。

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

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『《死点撃ち》のスキルレベルが上昇しました』

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『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動大回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《エンゲージ》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復適性》のスキルレベルが上昇しました』

『《戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』