軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

203:レベル50

ミリエスタからさらに北上、街道に沿ってアドミス聖王国へと向かう。

道は徐々に上り坂へと変じてきており、そして前方に見えてきているのは山々だ。どうやら、この山道を抜けなければ、アドミス聖王国には辿り着けないらしい。

まあ、ボスの名前がマウンテンゴーレムという時点で、山の中での戦いであるということはイメージできていたのだが。

出現する魔物については、山道に入り始めた辺りで変化が生じた。

確かに、ベーディンジアに出現する魔物は、どいつもこいつも平原での生活に適応した種ばかりであったし、山の中に入ってこないことも納得ではある。

そうして遭遇した魔物であるが――

■ローリングストーン

種別:物質・魔物

レベル:45

状態:アクティブ

属性:地

戦闘位置:地上

坂道を一直線に転がり、こちらを押し潰そうとしてくる岩であった。

いや、これは生物と言っていいのかどうか微妙な存在なのだが、分類上は魔物であるらしい。

見た目からしてネタとしか思えないのだが、1メートル半はありそうな岩が真っ直ぐに転がってきたら、それはそれで恐怖である。

流石に、山道でこれを受け止めることは困難だ。先ほど遭遇した時は咄嗟に回避したのだが、ローリングストーンはそのまま山道を転がってどこかに消えて行った。

「何か、魔物って言うよりはトラップの一種みたいな印象なんですけど……【フレイムストライク】」

「確かに、あまり戦っているという実感は湧かんな……『生奪』」

「いいじゃない、楽に倒せるんだから。私は正直相性が良くないけど」

三つ転がってきたローリングストーンに対し、緋真は半眼を浮かべながら魔法を撃ち放つ。

こいつらは比較的魔法に弱く、更に威力のある魔法を受けると前進する勢いが弱まるのだ。

そこへ攻撃を当ててやれば、あまり苦労せず倒せる魔物であった。

動きの鈍った岩に対して俺が一閃、そのHPを削り取る。そして他の二体はルミナとセイランの一撃によって粉砕されたようだ。

ちなみに、アリスは何もしていない。こいつ相手には《スティンガー》を使って突き刺すぐらいしか対処法が無いのだ。

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『レベルが50に達しました。第二ウェポンスキル、第二マジックスキルが解放されます』

「……何だと?」

「先生、どうかしたんですか?」

レベルアップ通知に続いて届いた耳慣れぬインフォメーションに、俺は思わず眉根を寄せて硬直する。

第二のウェポンスキルとマジックスキル、だと?

一体どういうことかとスキルメニューを覗き込んでみれば、その実態はすぐに明らかとなった。

今まで枠が一つだけしかなかったウェポンスキルとマジックスキル、そこに一つずつ枠が追加されていたのだ。

ちなみに、通常のスキル枠は追加されていない。どうやら、レベル50はそのような追加処理となるようだ。

「……レベル50で、ウェポンスキルとマジックスキルの枠が増えた。サブウェポンや第二属性を選べということか?」

「え、マジですか!? ちょっと見せてください!」

俺の言葉に素っ頓狂な声を上げた緋真は、俺の腕に掴まりながら背伸びをしつつ、こちらのスキルメニューを覗き込んでくる。

まあ、内容については今更であるため特に気にせず開示してやれば、緋真は驚いた様子で大きく目を見開いて見せた。

どうやら、緋真にとってもこれは想定外の成長であったらしい。

「ウェポンスキルとマジックスキルが増えるってことは、それだけ 魔導戦技(マギカ・テクニカ) を使える数が増えるってことですね……いや、先生にはあんまり関係ないですけど」

「まあ、それはそうだな。しかしお前の称号スキルは……」

「刀と火に限定されてますからね……確かに、強化は乗らないですけど」

デメリットは特にない強化であるが、俺や緋真にとってはメリットの薄い内容ではあるか。

しかし、全くメリットが無いというわけでもない。緋真は《格闘術》を通常のスキルとして取得しているから、これを第二ウェポンスキルに回せばスキル枠を一つ空けることができる。

尤も、魔法については考える必要があるだろうが。

「……しかし、どうしたものか」

元々、通常のスキル枠が増える前提でプラチナスキルオーブを交換したのだ。まさかこのような枠の増え方になるとは考えてもおらず、途方に暮れる。

とりあえず、ウェポンスキルについては緋真と同じように《格闘》でもいいだろう。

刀以外で使っている武器などないし、打撃にスキルの補正が追加されるようになれば、多少は火力も上がる筈だ。

問題はマジックスキルである。

「うーん……先生、今更攻撃魔法は使いませんよね?」

「使わんな、というか使いこなせる気がしない。 魔導戦技(マギカ・テクニカ) も使わんしな」

緋真が使っている所を見て、使いようによっては有効であることも理解したが、それでもやはり使う気にはなれない。

やはり、魔法を単品で使うにしても、俺はそちら方面にはあまりスキルを取っていないし、有効とは言えないだろう。

「《付与魔法》か? いや、あれは生産用だしな。穴埋めで取るのも勿体ない……」

「……プラチナオーブでレアな魔法スキルはないの?」

「うん? そう言えば確かに、魔法系のスキルはチェックしていなかったな」

以前にプラチナスキルオーブを手に入れた時は、自分に使えるスキルがあるかと探していたのだ。

あの時は他の魔法など必要なかったため、まるでチェックしていなかったが、今なら取得も十分考えられる。

アリスの助言に従い、インベントリからプラチナスキルオーブを取り出した俺は、早速スキル一覧の確認を開始した。

魔法に関しては、マリンが持っていた魔法のように、特殊なレア魔法も存在している。

通常取得できる魔法では俺に扱えそうなものはないが、レア魔法の中には何かしら使えるものがあるかもしれない。

「ふむ……だがやはり、基本的には普通の魔法と変わらんな」

マリンの持っていた《幻惑魔法》、薊に譲った《死霊魔法》……通常では習得できない魔法はそれなりに多い。

だが、基本的には通常の魔法と同じく、俺の望むような自己強化の魔法は発見できない。

さて、どうしたものか――悩みつつ魔法の一覧及び効果を確認して、ふと一つの魔法が目に入った。

「……《降霊魔法》」

通常とは異なる魔法を習得するレア魔法の中でも、かなり上位に位置する魔法。

プラチナでしか取得できないこの魔法は、他の魔法とは一線を画する特殊な性能をしているようだ。

この魔法は、ある意味では《テイム》や《召喚魔法》にも近しい性能をしている。

だが、パーティの枠は必要とせず、ごく短い時間だけ配下精霊を呼び出す。しかし、その代償として発動中はMPの半分が封じられるようだ。

MPの封印はともかくとして、配下の召喚は中々便利だ。

だが、それ以上に特殊なのは、一定のレベルごとに専用のポイントを取得し、任意の配下を強化できるという仕様だろう。

これならば出すだけ出して放置できるというのもあるが、それ以上に気になるのが【武具精霊召喚】という魔法だ。

これは配下を直接召喚するわけではなく、武器そのものに精霊を降ろす魔法であり、武器や防具の強化に繋がるらしい。

「ふむ……これならば扱えるか。なら、これで行くかね」

ボスを倒せばスキル枠も追加されるだろうが、別段どうしても欲しかったスキルがあるわけでもない。

であれば、ここで魔法の取得のために使用してしまってもいいだろう。

そう判断して、スキルオーブを発動させる。結果、俺のステータスはこのような形となった。

■アバター名:クオン

■性別:男

■種族: 人間族(ヒューマン)

■レベル:50

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:35

VIT:26

INT:35

MND:26

AGI:18

DEX:18

■スキル

ウェポンスキル:《刀術:Lv.21》

《格闘:Lv.1》

マジックスキル:《強化魔法:Lv.38》

《降霊魔法:Lv.1》

セットスキル:《死点撃ち:Lv.36》

《MP自動大回復:Lv.6》

《奪命剣:Lv.12》

《識別:Lv.29》

《練命剣:Lv.12》

《蒐魂剣:Lv.12》

《テイム:Lv.32》

《HP自動大回復:Lv.5》

《生命力操作:Lv.36》

《魔力操作:Lv.35》

《魔技共演:Lv.20》

《インファイト:Lv.26》

《回復適性:Lv.20》

サブスキル:《採掘:Lv.13》

称号スキル:《剣鬼羅刹》

■現在SP:32

《降霊魔法》を取得した瞬間、召喚精霊の選択ポイントが付与される。

現状1点であるため、取れる精霊は一つだけだ。

無論、取得する対象は【武具精霊召喚:Lv.1】である。

この魔法にポイントを割り振って行けば、その都度に精霊も強化されていくということか。

「よし……試してみるか」

小さく呟き、詠唱を開始する。

《強化魔法》と比べるとかなり詠唱時間は長い様子だ。これを最初から使用する場合は、戦闘に入る前に準備しておくぐらいでちょうどいいかもしれない。

「【武具精霊召喚】」

魔法を発動した瞬間、俺の足元に魔法陣が広がった。

そしてその直後、俺の目の前に白い光の球体が出現する。

現れた光は俺の周囲をぐるりと回ったのち、俺の握る餓狼丸の中へと吸い込まれるように姿を消した。

刹那、餓狼丸は薄ぼんやりとした光に包まれる。どうやら、これが精霊を召喚した状態ということらしい。

「光ってる以外はあまり変わらんな」

「先生、自分で選んだんじゃないですか」

「まあな。性能が上がっているのであれば文句はないさ」

半眼を浮かべた緋真の言葉に、俺は苦笑しながらそう返す。

確認すれば、確かに餓狼丸の攻撃力は上昇している様子だった。

その強化幅はまだ大きくはないものの、《強化魔法》の初期と比較すれば明らかに高い。

尤も、MPを半分封印するというデメリットもあるのだ。それ位は効果が無いと困るのだが。

MPを確認してみれば、バーの半分が灰色に染まった状態となっている。

これが、半分が封印された状態であるということなのだろう。尤も、俺は半分も使うことはまず無いため、あまり困りはしないのだが。

「ふむ……ま、とりあえずは試し斬りだな。ちょうどボスも近付いてきたようだし」

「ボス相手に試し斬りねぇ……緋真さんもそれでいいのかしら」

「ですね。私も紅蓮舞姫の解放を試してみたいです」

「決まりだな。それじゃあ、さっさとボスの所に殴り込みと行くか」

やれることが増えるのは、中々に楽しいものだ。

俺たちは足取りも軽く、境界のボスの元へと足を進めて行った。