軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

188:駆ける騎兵たち その9

「《練命剣》――【命輝一陣】!」

テクニックが再使用可能になったタイミングを見計らい、刃に生命力を注ぎ込む。

放出できる限界までHPを捧げることは流石にリスクが高いのだが、それでもそれに見合うだけの破壊力を導き出すことができる。

黄金に輝く刃は空を裂いて飛翔し、悪魔の群れを纏めて薙ぎ払う。

そして、返す刃で放つのは、先程と同じく失ったHPを補填するためのテクニックだ。

「《奪命剣》――【咆風呪】!」

溢れ出した呪いの風は、斬撃の衝撃に怯んでいる悪魔たちを飲み込み、その生命力を削り取ってゆく。

奪い取った生命力が己の中へと流れ込んでくるのを感じながら、更に先へ。

《奪命剣》の攻撃力そのものは《練命剣》とは比べるべくもないのだが、範囲についてはこちらの方が広いようだ。

そして、この攻撃によって体力を削られた連中は、後続から放たれる範囲魔法によって吹き飛ばされることになる。

「――【フレイムストライク】!」

放たれた炎の魔法が悪魔の群れに突き刺さり、巨大な爆炎と共に蹂躙する。

それを放ったのは緋真ではなく、『キャメロット』の魔法攻撃部隊の部隊長であるスカーレッドだ。

彼女は攻撃魔法を専門にしているだけあって、その威力は緋真の魔法よりも更に高い。

しかも――

「【フリーズストライク】っ!」

彼女は、二種類の魔法を習得している。

まあ、魔法使い系のスキル構成をしているプレイヤーは、大概は二種類の魔法を使っているらしいが。

理由としては、一つの属性だけでは不利な相手と当たった場合に打てる手がなくなってしまうから、だそうだ。

ルミナやセイランにしても二種類の属性を保有しているし、それほど珍しいことでもないのだろう。

ともあれ、魔法攻撃力に優れたスカーレッドの魔法は、俺の振るった【命輝一陣】にも劣らぬ数の悪魔共を吹き飛ばす。

辛うじて一撃目を耐えたとしても、二撃目に耐えられるようなものではなく、投棄されたゴミのように地上へと向けて墜落していった。

そして、それでもなお、攻撃を生き延びたような悪魔は――

「しッ!」

「そこだっ!」

俺が振るう野太刀と、ディーンが繰り出した馬上槍によって斬り裂かれ、絶命する。

魔法系の技能はほぼ習得していないディーンは遠距離攻撃には向かず、結果的にこうして、俺と並んで残敵を片付ける作業をすることになったのだ。

魔法攻撃こそできないものの、その戦闘能力は素晴らしい。

「……まさか、馬上槍まで扱えるとはな」

「剣と一緒に教えられましたからね。馬が手に入ったら是非使いたいと思っていましたよ」

「空中で使うことになるとは思っていなかっただろうがな」

「ははは、それは確かに」

互いに笑いながら言葉を交わし、それでも手を止めることはない。

俺たちにとっては、後ろの連中が詠唱している魔法が生命線なのだ。

この黒い悪魔の群れを何とか突破しない限り、目的地に辿り着くことはできない。

接近する悪魔を次々と斬り裂き――そんな俺たちの横を、一本の矢が貫いてゆく。

風を纏うその矢は、まるでドリルか何かのように悪魔の群れに突き刺さり、螺旋を描きながら抉り抜く。

弓使いである高玉の 魔導戦技(マギカ・テクニカ) だろう。こちらは弾速が凄まじく、触れた悪魔が紙屑か何かのように引き千切られ、そのまま貫通していく。

彼はそれ以外にも次々と矢を放つことで俺たちの援護を行っており、何気に仕事量は一番多いかもしれない。

流石は『キャメロット』の幹部メンバー、その実力は折り紙付きということだ。

「《スペルエンハンス》、【ルミナスストライク】!」

続いて魔法を放ったのはアルトリウスだ。

こいつは緋真と同じようにバランスの良いスキル構成をしているようで、魔法も決して不得手ではない。

特に、悪魔には効果が若干高い光属性の魔法であるため、威力でも緋真に引けを取るということはない。

尤も、流石にルミナよりは威力が低い様子であるが。

ちなみに、マリンは攻撃系の魔法も扱えるものの、全員の回復や補助に専念しており、最後の一人であるデューラックは最後尾で後ろから追撃してくる悪魔への対処を行っていた。

地味ではあるが、これが無ければ後衛組が襲われて落とされていたとしても不思議ではない。後で礼を言わなくてはならんな。

「しかし、そろそろ抜けたいところだが――《練命剣》、【命輝一陣】」

ここまで連発してきたこともあり、【命輝一陣】の扱いにもある程度慣れてきた。

どの程度のHPを消費すればどの程度の威力になり、どの程度飛距離が伸びるのか。

覚えたばかりのテクニックであるため、ある程度習熟したいと思っていたことは事実だが――【咆風呪】と合わせて、これならば十分に実戦投入できるだろう。

「《奪命剣》……【咆風呪】」

気になるのは《蒐魂剣》のテクニックである【因果応報】だ。

オークスから聞いた話では、相手の使ってきた魔法を斬り裂いた上でそれを吸収せず、剣に纏って攻撃力を上げるテクニックだったか。

魔法使いであるヴェルンリードを相手にする場合には中々使えるものであるかもしれないが、まだまだ実態は不明だ。

まあ、そこは実際に使って確かめるしかあるまい。今はこちらが魔法の標的になっていない状況であるし、気にしても仕方がないのだが。

「光の鉄槌よ、連なりて……!」

魔法陣を展開していたルミナが、時間差で光の魔法を撃ち放つ。

着弾と共に爆裂する閃光は悪魔共を消し飛ばし、群れの中に風穴を開け――その向こう側へと貫通した。

遮るもの無く見えた青空に、俺は思わず眼を見開く。

「――――っ! 加速しろ!」

それを目にした瞬間、俺はセイランに合図を送り、その身を一気に加速させた。

手綱を掴み、振り落とされぬよう身をかがめて、一直線に前へ。

翼を羽ばたかせたセイランは、風を纏いながら群れに空いた穴を通り抜け――俺たちはついに、宙を舞う悪魔共の群れを潜り抜けることに成功した。

だが、まだ安心はできない。群れを潜り抜けたと言っても、まだ背後に大量の悪魔がいる状況なのだ。

「そのまま先へ急げ! ケツに取り付かれるな、一気に引き離すぞ!」

「スカーレッドさん、魔法で牽制を! 追撃者の出鼻を挫いて!」

「っ――【フレイムストライク】!」

アルトリウスの指示に反射的に反応したスカーレッドが、後方へと魔法をばら撒く。

群れの中から離れてこちらを攻撃しようとしていた悪魔共は、その爆発を受けて動きを止めることになった。

その間に騎獣を加速させ、俺たちは一気に悪魔の群れから遠ざかる。

そして追ってくる悪魔共がいないことを確認し――そこでようやく、安堵の吐息を吐き出した。

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復適性》のスキルレベルが上昇しました』

戦闘状態も解除されたことだし、とりあえずは安心だろう。

かなりの数の敵を倒していたつもりであったが、使ったスキルが少なかったためか、成長はそれほどでもなかったか。

ともあれ、まずは作戦の第一段階は成功だ。

かなり削られているMPの状況を確認しつつ、俺は改めてアルトリウスに声を掛ける。

「とりあえずここまで来ることはできたが……どうする?」

「そうですね……一旦、休憩にしましょう。幸い脱落者はいませんでしたが、それでも結構消耗しましたし」

俺の問いに対してアルトリウスはそう答えつつ、仲間たちに視線を向ける。

『キャメロット』もそうだが、俺たちについても決して無傷で潜り抜けられたとは言えない。

HPについてはマリンが定期的に回復していたこともあってそれなりに無事だが、MPはかなり消耗している。

俺のように高いレベルでの自動回復を持っている者もいない様子で、全員揃ってMPポーションを飲んでいる。

俺も大きく消耗したルミナへとMPポーションを手渡し、俺は改めて状況を確認する。

「結構な数を落としたとは思うが……ヴェルンリードがいる街まではまだ遠いか?」

「半分ぐらい、と言った所でしょう。まだ後続の悪魔がいる可能性は否定できませんね」

「……今のをもう一回やるんですか? MPポーション足ります?」

「まだ多少余裕はあるさ。ここまでで半分到達できているのであれば、目的地までの到達は何とかなるだろうよ」

『エレノア商会』との精算で、事あるごとにポーション系を交換の足しに要求していたのが功を奏した。

今の所、ポーションの数にはまだ余裕はある。アルトリウスたちに配っても何とかなるレベルだ。

ともあれ、とりあえずの方針は決めておくべきだろう。

「今の所、向かってきている悪魔の姿は見えんし、出撃してきているのは先ほどの悪魔だけの可能性は高いな。それで、北の街まで辿り着いたらどうする?」

「状況による、としか。恐らく数多くの悪魔がいると思いますし、正面から挑むのは厳しいです……通常であれば」

「……何か策でもあるのか?」

いかな俺とて、他の悪魔とヴェルンリードを同時に相手にすることは難しい。

これだけ同行者がいればそちらに受け持ってもらうということも考えなくはないが、やはりそれほど現実的ではないだろう。

俺の疑問に対し、アルトリウスは軽く肩を竦めて返す。

「策、というほどでもありませんが……クオンさん、ヴェルンリードは貴方を敵視しています。なので、貴方の動き次第では、あの悪魔を孤立させられる」

「……つまり、有利に戦える場所まであの女を誘き寄せて来いってことか?」

「無論、いくつか条件はあります。まずは情報の収集が必要ですね。うちの高玉さんと、そちらのアリスさんに潜入をお願いしたいです」

「だそうだぞ?」

「それは構わないけど……随分行き当たりばったりね?」

「情報が無ければ、作戦も立てられませんからね。こればっかりは、仕方ありません」

アリスの遠慮のない物言いに、アルトリウスは苦笑しつつそう返答した。

現状、後手に回っていることは否めない。今は少しでも情報が必要であり、それがこの戦いを左右すると言っても過言ではないだろう。

ともあれ、まずは目的地に到達してからだ。

どのように動くかは、状況を見てから判断することとしよう。