軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

018:宿場町へ

『《生命の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《収奪の剣》のスキルレベルが上昇しました』

エレノアから依頼を受けた翌日、俺は早速彼女の依頼の遂行に動いていた。

やろうと思えばあの直後でもできたのだが、エレノアたちの予定の調整、および伊織の防具作成の時間が必要であったため、今日に延期されていたのだ。

確かに、俺が伊織の依頼を受けたのは、彼女のクエスト達成も目的の内に入っていた。

それを放置したまま先に進んでしまったのでは、あの蜘蛛を倒してきた意味が無いというものだ。

ともあれ、そんなこんなで装備の新調が完了し、俺は生産職の面々を伴って北側の平原へと赴いた。

「ふむ、いい調子だな」

「あの、クオンさん。一撃で倒してしまうと、防具の性能は確かめられないのではないんですの?」

「こいつら如きにダメージを喰らうような要素が無いからなぁ」

斜め後ろから響いた伊織の声に、俺は肩を竦めてそう返す。

多少は薙刀の扱いにも慣れてきたらしい彼女も、何だかんだで狼を一匹倒していたようだ。

どうやら、パーティの人数が多いと、その分だけ出現する敵の数も増える傾向にあるらしい。

流石に五匹いっぺんに出て来られると、一度に相手しきるのは難しい話だ。

幸い、エレノアを始めとするメンバーはそこそこ戦えるため、俺が三匹相手をしてやれば後は自分たちで何とかできるようだったが。

「しかし、聞きしに勝る無茶苦茶ぶりだな、クオン。トッププレイヤーだって、狼五匹に囲まれたらそこそこ苦労するぞ?」

「緋真がそんな有様だったら、俺はあいつを一から叩き直さなきゃならなくなるんだが」

「ああいや、彼女とアルトリウスの周囲の連中は別だけどよ」

勘兵衛の言葉に、俺は軽く肩を竦める。

アルトリウスという名前は知らないが、緋真が腑抜けていないようであるならば一安心だ。

まあ実際のところ、防具の性能がまるで分からないのは事実だし、多少攻撃を喰らった方がいいのかもしれないが――手加減をして攻撃を受けるというのは俺の主義に反する。

要は、俺が対処しきれなくなるほどの数や腕を持った相手が出てくればいいだけの話なのだ。

それまでは、きっちり捌き切ってやるとしよう。

まあ、性能を確かめたくなる気持ちは、この新調された防具を見てるとよく理解できてしまうのだが。

■《防具:胴》大森蜘蛛糸の着物(黒)

防御力:19(+3)

魔法防御力:6(+1)

重量:3

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(小) 魔法防御力上昇(微)

製作者:伊織

■《防具:腰》大森蜘蛛糸の袴(黒)

防御力:14(+3)

魔法防御力:3(+1)

重量:1

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(小) 魔法防御力上昇(微)

製作者:伊織

■《防具:装飾品》大森蜘蛛糸の羽織(白)

防御力:10(+3)

魔法防御力:4(+1)

重量:2

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(小) 魔法防御力上昇(微)

製作者:伊織

■《防具:頭》鋼の鉢金

防御力:9(+3)

魔法防御力:2(+1)

重量:2

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(小) 魔法防御力上昇(微)

製作者:伊織

■《防具:腕》鋼の篭手

防御力:11(+3)

魔法防御力:0(+1)

重量:5

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(小) 魔法防御力上昇(微)

製作者:フィノ

■《防具:足》鋼の脛当て

防御力:10(+3)

魔法防御力:2(+1)

重量:6

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(小) 魔法防御力上昇(微)

製作者:フィノ

後々篭手と脛当ても新調したため、森で手に入れた素材を売却した金も含めて、ほぼすっからかんになるまで金を放出してしまった。

まあ、所詮はあぶく銭。苦労して稼いだ金というわけでもないし、使ってしまったことに後悔はしていない。

尤も、次の新調の時にどう稼ぐかということは悩みの種ではあるのだが。

何はともあれ、新たに手に入れた装備は、これまでの物とは比べ物にならぬほど良い性能となったのは事実だ。

デザインについてもかなり落ち着いたものになっているし、伊織の計らいなのか、白い羽織の背中には菱形に『久』の一文字が入った、家紋のような紋章が刻まれていた。

まあ、実際の家紋は教えていないし、俺の名前であるクオンを漢字にして一文字取ったのだろう。これはこれで、オーダーメイド感が出ていて好みではある。

ちなみに、何故かこれらすべてを纏った俺の姿を見て、勘兵衛が半笑いで伊織へと詰め寄っていたのだが――生憎、その理由は教えてもらえなかった。

「……正直、この人に関する噂は眉唾だと思ってたんだけど……実物見るとそうも言ってられないね」

「八雲、動画を見ておきなさいと言ったでしょう? 見てなかったの?」

「いや、それは見てたけど……自分の目で見ないと信じられないって、あんなの」

俺の戦いを見てしばらく呆然としていたのは、八雲と呼ばれる少年だった。

いや、種族が 小人族(ハーフリング) であるため少年に見えているが、実際のところどれぐらいの年齢なのかは分かっていない。

何しろこの種族、どの年齢でも子供のような姿をしているからだ。見た目から年齢を判断することは困難と言える。

まあ、リアルではエレノアの弟らしく、最大でも二十代前半程度だろうと睨んでいるのだが。

そんな八雲は木工職人であり、エレノアのプレクランにおけるトップ生産職の一角を占める存在だ。

俺が弓や杖を使うことはまずないであろうから、世話になる機会はほとんどないかもしれないが、顔を知っておいて損はあるまい。

「緋真の奴だって似たようなことはやってると思うんだがな」

「いや、お前さんがやってるのは、剣姫の嬢ちゃんがやってるのよりかなり難易度高いだろ……あの嬢ちゃんのですら常人には真似できないんだから、お前さんのは最早異次元の領域だって」

「確かに難易度の高い術理を使うことはあるが、今日やってるのはそう難しいもんじゃない筈なんだが」

師範代クラスに足を踏み入れている緋真でも、難易度の高い業を使うことはできていない。

まあ、これは実戦的に使い易い業を優先しているからこそでもあるのだが。

あいつらも、もう少し経験を積めたら効率的に相手を斬るための業に移行できると思うんだが……今しばらくは練習が必要だろうな。

「……まあ、俺のやっていることはあまり気にしなくてもいい。所詮、相手を斬ることしか能のない人間だからな。それより――」

顎でしゃくるように、俺は前方を示す。

その先には既に、立ち並ぶ石柱が目前まで迫っていた。

目的地はこの石柱を越えた先、第二の町であるリブルムだ。

「今からボス戦になるわけだが、どうする? アンタたちは後ろで見てるか?」

「流石に、何から何まで世話になりっぱなしっていうのも寝覚めが悪いわ。雑魚敵の処理くらいは任せて欲しいのだけど……」

「ふむ、あの狼どもをね」

でかい狼が連れてくる、普通の狼数匹。

まあ、あれの相手をする程度なら、エレノアたちでも問題は無いだろう。

弓使いのエレノア、短剣二刀流の八雲、槌使いのフィノ、薙刀使いの伊織、槍使いの勘兵衛。

流石に詳しいスキル構成は聞いていないが、一応このフィールドで安定して戦える程度の実力はある。

であるならば、雑魚の相手ぐらいは任せても問題ないだろう。

「まず、八雲と勘兵衛がウルフたちを押さえるわ。続いてフィノと伊織が突撃。クオンはフィノたちが動いたタイミングでボスの方に向かって」

「ふむ。まあ、それならあんたに従おうか」

確かに、いの一番に飛び込んだら狼どもも俺に集ってくるだろう。

エレノアたちに狼どもの処理を任せるならば、それは少々都合が悪い。

まあ、やろうと思えば手が無いわけではないのだが、この程度の雑魚相手に使うのも少々勿体ないだろう。

ここは大人しく、エレノアの手腕を観察させてもらうとしようか。

若干緊張しながらも、余裕を残した面持ちで、エレノアはゆっくりと石柱の向こう側へと進んでゆく。

そして――

『オオオォォォ――――ン!』

以前聞いたものと同じ、巨大な狼の遠吠えが、草原に響き渡っていた。

■グレーターステップウルフ

種別:動物・魔物

レベル:8

状態:アクティブ

属性:なし

戦闘位置:地上

以前と変わらぬ識別結果だ。強さも当然、以前と同じということだろう。

つまり、新調した刀の威力の違いを分かりやすく検証できるということだ。

僅かに切っ先を持ち上げ、口元に笑みを浮かべて――そんな俺の様子には気付かず、エレノアはパーティメンバーたちへと指示を発していた。

「八雲、勘兵衛、ヘイトを集中!」

「《挑発攻撃》、行くよ!」

「オラ狼ども、『こっちを見ろ』ォッ!」

まずは身軽な八雲が突撃し、ステップウルフたちに短剣で軽く攻撃を加えてゆく。

使っているスキルは、確かダメージを与えた敵からの攻撃が自分に向くようになる攻撃スキルだったか。

そして鎧をがっちりと着込んでいる勘兵衛が使っているのは、《大声》とかいうスキルだろう。

効果そのものは八雲が使ったスキルに近いが、こちらにはダメージが無く、その代わり広い範囲に効果が発揮された筈だ。

スキル名を宣言しなかったのは……確か、ショートカットとか言ったか?

緋真が説明していたような気がしたが、あまり気にしていなかったな。

そんなことを考えつつも、俺は【シャープエッジ】を発動しながら己の出番が整うのを待ち続けた。

と――そこで、待ち望んでいた声が上がる。

「タゲ集中確認!」

「こっちもだ、いいぜ姐さん!」

「フィノ、伊織、行きなさい! それとクオン!」

「ああ、分かってる!」

待ってましたとばかりに、俺は太刀を脇構えに駆ける。

ステップウルフたちを迂回するように、その奥にいるボスへと。

俺が横を通り抜けるのを、しかし狼たちは気にも留めない。既に狙う獲物を見定めているからだろう。

ならば――存分に、親玉を狙わせてもらうとしよう。

『オオオォォ――――ッ!』

向かってくる俺に反応し、デカ狼はこちらに噛みつこうと前へと出る。

だが、甘い。俺が馬鹿正直に正面から突っ込むだけだと思ったら大間違いだ。

歩法――陽炎。

疾走からの急制動。全身の筋肉の動きを制御し、慣性を殺しながら、一瞬で小走り程度の速さにまで減速する。

物の動きを見る際、脳はその先を読んで情報を補完する。

その裏を掻いてやれば、こちらの姿は容易く相手の認識の外へ置くことができるのだ。

ガチンと、俺を噛み砕こうとした牙が打ち合わされる。狼の視界には、今なお向かってきている俺の姿が映っていることだろう。

その僅かな混乱の隙に、俺は再び先ほどの速度まで急加速した。

「……ッ!」

斬法――剛の型、鐘楼・失墜。

膝を用いて篭手を蹴り上げて放つ神速の斬り上げ、そして続け様に放たれる打ち下ろしの一閃。

その振り上げの時点でデカ狼の右目を抉り、痛みから反射的に頭を動かしたところへ打ち下ろしの一閃を肩口へと。

放たれた一閃は、《生命の剣》を使うこともなく、確かにグレーターステップウルフの肉を斬り裂いていた。

「ははははッ!」

俺がレベルアップしたからというのもあるだろう。

だがそれ以上に、この太刀の斬れ味が素晴らしい!

ああ、やはり、斬るならばこうでなければ!

『グルァアアッ!』

俺を打ち払おうというのだろう。デカ狼は、その左腕で薙ぎ払うように振るう。

だが、甘い。そんな動きは、肩の筋肉の動きから疾うに見切れている。

俺は半歩下がって上段へと構え――目の前スレスレを通り過ぎた前足を見送って、正面に来た頭へと太刀を振り下ろした。

斬法――剛の型、兜響。

それは斬るための術理ではなく、割るための術理。

引いて斬るのではなく、叩いて割る。それは刀を使う上での術理としては邪道もいい所と言えるだろう。

これは、相手の兜を上からブッ叩き、その衝撃を以て兜の内部を破壊するという業だ。

そのため、刃を潰れさせないように峰を使って相手を攻撃するのである。

流石に、頭蓋骨を真上から両断するのは中々にリスクが高い。

ここは確実に行かせてもらうとしよう。

『ゴ、ガ……ッ!?』

人間相手であれば今の一撃で脳を潰していただろうが、流石はボスモンスター。この程度では死なないらしい。

だが、衝撃によって朦朧としているのか、完全に動きが止まってしまっていた。

少々拍子抜けではあるが――まあ、スキルを使った切れ味を試すにはちょうどいい状態だ。

「《生命の剣》」

太刀が光を纏う。それを大上段へと構え、俺は地に伏せる狼の隣へと立った。

半ば気絶しているのか、俺の姿も捉えられていないデカ狼は、もがくように呻くばかり。

あの時はもう少し楽しめたのだが――まあ、これも成長だと考えておこう。

「シッ!」

そして、一閃を振り下ろす。

遮るものもなく狼の首へと吸い込まれた一太刀は――その首を、綺麗に斬り落としていた。

『レベルが上昇しました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀》のスキルレベルが上昇しました』

『《強化魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《死点撃ち》のスキルレベルが上昇しました』

戦いとしちゃ少々不満だが、刀の斬れ味は存分に確認できた。

まあ、これはこれで満足しておくこととしよう。