軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

168:吹き抜けでの戦い

悪魔共の数は多いが、大半はそれほど脅威であるとは言えぬ雑魚ばかりだ。

そちらについては、テイムモンスターたちに任せておいても問題は無いだろう。

「ルミナ、上の連中を中心に片付けろ。セイランは自由に暴れていい」

「承知しました、お父様!」

「クェエッ!」

最も邪魔なのは空中から攻撃してくるイビルフレイム・ゴーストだ。

《蒐魂剣》で攻撃を散らすことは可能だが、それにいちいち意識を割かなければならないのは面倒だ。

ルミナやセイランが相手をしていれば、こちらに手を出してくる余裕は無いだろう。

緋真とアリスには目配せのみを行い、俺は双子の悪魔へと向けて駆けた。

「【スチールエッジ】、【スチールスキン】」

魔法を発動し、剣の悪魔へと肉薄する。

袈裟懸けに振り下ろした一閃は、翳されたショートソードによって受け止められる。

身体能力ではそれほどの差は無いようであるが――

「ははははっ、甘いなぁ! その程度でヴェルンリード様に楯突こうなんて!」

「《蒐魂剣》」

こちらの動きが止まった瞬間に、魔法の悪魔の攻撃が飛来する。

それを《蒐魂剣》で斬り払えば、その隙を狙って剣の悪魔が攻撃を放ってきた。

斬法――柔の型、流水。

無論、その一撃は受け流しつつ、相手の動きの様子を見る。

こいつらは、単体で見ればそれほど大した敵というわけではない。

だが、どうにも互いの隙を埋める連携が上手いようだ。双子というだけあって、随分と息が合っている様子である。

「成程、そういう手合いか――」

であれば、まずは片方を潰す。連携ができなければただの男爵級悪魔でしかない。

俺は流水によって体が泳いだ悪魔の脇腹へと蹴りを叩き込み、その体勢を崩す。

そしてそのまま、俺は後方にいる魔法の悪魔へと向けて接近した。

だが、それを遮るように他の悪魔が動く。それは他でもない、後方で控えていたピエロ姿の悪魔だ。

「ヒヒヒヒヒヒッ!」

その悪魔は、ジャグリングしていたボールやらボウリングのピンやらナイフやら、様々な道具をこちらへと向けて投げつけてくる。

高速で飛来したのはナイフのみであり、それは即座に弾き飛ばしたが――他の道具は一体何だ?

だが何にせよ、妨害目的で投げつけられたものには変わりあるまい。

まずは迎撃よりも回避を選択して距離を取ろうとし――その瞬間、赤いボールが急激に膨張し、爆発していた。

「――――ッ!?」

爆炎に押され、地面を転がる。

だが、暢気に転がっている暇などない。俺は転がった体勢から即座に体を起こし、振り下ろされた刃を受け流した。

斬法――柔の型、流水。

その攻撃を受け流しつつ、相手の体勢を崩す。

後方へと流した力のベクトルを逆に利用しつつ立ち上がり、そちらへと刃を振るおうとして、こちらへと杖を向ける悪魔の姿に舌打ちする。

「《蒐魂剣》」

「そら、喰らいなよ!」

こちらを貫こうと狙う闇の槍。

黒い炎を纏うそれは、例の邪炎とやらを利用した攻撃なのだろう。

無論、どちらも魔力による現象である以上、《蒐魂剣》に斬り裂けない道理はない。

霧散する闇と炎の残滓を乗り越え、俺は後方へと跳躍する。

移動する先は、体勢を立て直した剣の悪魔の方だ。

奴が振り返るタイミングと完全に合わせ、俺はその斜め後方へと移動する。

「な――!?」

「背中を狙えると思ったか?」

魔法の方、アイラとやらに攻撃を仕掛けると思っていたのか、後ろに移動した俺の姿に悪魔は僅かに硬直する。

その隙に放った一閃に対し、エイラは僅かに遅れつつも剣を差し込み、攻撃を受け止めてみせた。

だが――それこそがこちらの狙いでもある。

斬法――剛の型、竹別。

甘く構えられた武器など、狙ってくれと言っているようなものだ。

俺の放った一閃はエイラの剣に垂直に衝突し、剣閃の衝撃を余すことなく相手の手へと叩き付けていた。

隔絶した身体能力があるのであればまだしも、拮抗した身体能力ではこの一撃に耐えきることなど不可能。

その一撃によって、悪魔の手に有った剣は遠く弾き飛ばされていた。

「チッ! クラウン、アイツを足止めしなさい!」

その様子を目にしたアイラは、若干慌てた様子で悪魔へと指示を飛ばす。

だが、その声に応えるものはない。苛立った様子の悪魔がそちらへと視線を向ければ、そこには膝から崩れ落ちた道化師の姿があった。

デーモンクラウンはそのまま塵となって崩れ――その向こう側に、紅の頭巾を纏うアリスが姿を現す。

「他所に頼り過ぎよ、貴方」

「お前ッ!」

「いいのかしら、貴方の弟は詰んでいるようだけれど」

「――――っ!」

アリスの言葉に、アイラは目を見開いてこちらを向く。

だが、既に手遅れだ。剣を弾かれ、後ずさりして逃れようとしていた悪魔の前に、俺は既に肉薄している。

「『生奪』」

餓狼丸が二色のオーラを纏う。

袈裟懸けに振り下ろした一閃に、エイラは即座に反応して後方へと跳躍するが――僅かに遅い。

俺の一閃はエイラの肩口から胸にかけてを斬り裂き、緑の血を噴出させる。

――だが、まだだ。

歩法――烈震。

「こ、のォ……ッ!」

「無駄だ」

迎撃のために振り下ろされた腕を掻い潜り、その懐へと肉薄する。

こちらを認識はできているのだろう、エイラは恐怖を滲ませた瞳でこちらを見下ろしている。

こいつらを二体合わせれば、子爵級にも届くかもしれない。だが、単体で見ればただの男爵級悪魔だ。

連携さえ崩してしまえば、この程度ということだろう。

斬法――剛の型、穿牙。

突き出した刃が、悪魔の心臓を穿つ。

目を見開いた悪魔は硬直し――その刃を引き抜くと共に、その場に崩れ落ちた。

「エイラッ! 人間が、よくも――!」

その光景に激高したアイラは、強大な魔力を収束させる。

ヴェルンリードと同じように、魔法に特化したタイプの悪魔なのだろう。

だが、奴と比べればその出力は雲泥の差だ。その程度であれば、《蒐魂剣》で容易く斬り裂ける程度であるが――

「あら、背を向けてくれるのね」

それが発動するよりも早く、背後から忍び寄ったアリスがその背に取り付き、アイラの喉に刃を走らせた。

一筋の傷が走り、血が噴き出して、魔法を発動しようとする悪魔の声が止まる。

それを確認したアリスは、アイラの背を蹴り飛ばしながら後ろへと跳躍し――それに合わせて、俺は前へと足を踏み出す。

血を零しながらも体勢を崩してたたらを踏んだ悪魔は、まるでこちらへと首を差し出しているかのようだ。

「そこまでお膳立てしなくても良かったんだがな――『生奪』」

苦笑交じりに刃を振るい、その首を断ち斬る。

血を噴出する首は地面を汚し、けれどそれが広がり切る前に黒い塵となって消滅した。

少々拍子抜けではあったが、余計なことをさせずに片付けられたのは僥倖だろう。

「ったく……長引かせる理由が無かったのも事実だが、これは流石に簡単すぎだ」

「いいでしょう、私も少しは楽しみたいんだから」

「それ自体は否定せんがな……ま、早い者勝ちってことか」

これでも、アリスは俺に譲ってくれた方だろう。

本来であれば、あの悪魔の背中に忍び寄った時点で奴の心臓を穿つことも可能だったはずだ。

まあ、それで即死していたかどうかは分からず、反撃で魔法を食らっていた可能性もあるし、それを警戒して喉を潰すに留めたのだろうが。

耐久力の低いアリスでは、反撃を受ければ一発で危機に陥る可能性がある。

これまで一人で動いていたアリスは、その辺りかなり慎重に動いているのだろう。

「ちょっとアリスさん、私にデーモンナイトを全部押し付けるのは流石に勘弁してくださいよ」

「後衛を先に潰すのは常套手段でしょう? 放置していたら面倒だったでしょうし」

デーモンナイトを片付け終えた緋真が、ぼやきながらこちらに近づいてくる。

どうやら、前衛であるデーモンナイトたちを全て引き受けていたようだ。

ルミナやセイランたちも他の雑魚共を片付け終え、悪魔たちは全滅した。これで戦闘は終わりらしい。

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《識別》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復適性》のスキルレベルが上昇しました』

全ての敵を片付けたことで、巨大な燭台で燃え上がっていた黒い炎がその勢いを弱め始める。

その内側から徐々に表れるのは、神々しい黄金の炎だ。

それは徐々に強まり、黒い炎を飲み込む勢いで燃え盛り始め――その輝きと共に、変異していた塔の姿が本来のものへと戻っていく。

どうやら、聖火の塔の奪還は上手くいったようだ。

「よし……頼まれていた仕事も完了だな。戻るとするか」

「中々ハードでしたね……」

「人使いが荒いわよ、クオン」

「お前さんも楽しんでいたんだろうが」

アリスに対し半眼で告げると、彼女はフードの下でにやりと笑みを浮かべる。

全く、中々いい性格をしているものだ。

ともあれ、やるべきことは全て果たした。拠点に帰還することとしよう。