軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

167:双子の悪魔

次の階層に入った際、目に入ったのは以前の塔と同じような、壁に沿って設置された螺旋階段だった。

もう少し階層があるかと思っていた身からすれば少々拍子抜けであったのだが――

「……成程、こういう趣向か」

「こういうのがあるゲームって結構見ましたけど、実際に目の前にあると中々エグいですね」

目に入ったのは、階段の壁から定期的に突き出してくる槍の姿だ。

タイミングよく通り抜けなければアレによって突き刺され、ついでに中央の吹き抜けに押し出されて下まで叩き落されるというわけだ。

タイミングさえ見極めれば大した仕掛けではないのだが――

「正直に付き合う義理も無いな。セイラン!」

「クエェ!」

俺の呼びかけに応えて、セイランは翼を広げる。

中央が吹き抜けになっているのであれば、わざわざ階段を上る必要もない。そこを飛び越えてしまえば済む話だ。

そんな俺の意図を察したのか、緋真は呆れた表情でこちらを見つめてくる。

「先生……それはどうなんですか?」

「阿呆、罠の類であれば、相手の思惑に乗らないようにするのが常道だ。他に道が無いならまだしも、通り抜けられるのであればそれを利用するまでだ」

告げて、セイランの背へと跳び乗る。

今回は二人を乗せなければならないが、アリスは体重が軽いから何とかなるだろう。

マイナーグリフォンの頃であればまだしも、今のセイランならばそう難しい話でもない。

「緋真、お前は後ろに乗れ。アリスは前だ」

「飛べるって結構面白いわね。普段行けない所にも行けるし」

「アリスさんも、結構メタなこと好きなんですね……」

嘆息しつつも、緋真自身これを登るのは面倒だと考えていたのか、素直に俺の後ろに乗る。

そしてアリスは身軽な身体能力で俺の目の前に跳び乗り、セイランの背へと腰を下ろした。

ルミナは自分で飛べるため、俺たちの周囲を飛び回りつつ警戒だ。

既に何度も行っているためか、ルミナは何も言わずとも翼を広げ、俺へと向けて笑みを浮かべている。

さて、それではさっさと登り切ってしまうとしよう。

「行くぞ、セイラン」

「クェッ!」

俺の言葉に力強く頷いて、セイランは軽く旋回するように助走をつける。

それと共に翼を羽ばたかせたセイランは、強く地を蹴って上空へと舞い上がった。

セイランはその場でホバリングすることも可能であるが、こうやって勢いをつけた方が飛びやすいのだろう。

グルグルと螺旋を描くように飛翔するセイランは、そのまま上空へと向けて上昇していく。

周囲を警戒しつつも階段の様子を眺めてみれば、崩落しそうな足場やタイミングをずらして飛び出してくる槍、そして転がり落ちて来そうな岩など、中々に殺意の高い罠の数々が見て取れる。

「……あれを素直に登るのは勘弁して欲しいわね」

「この高さから落とされたら流石に死にますよ」

「前の所ではここまで殺意の高い仕掛けは無かったと思ったが……ベーディンジアで難易度が上がったってことか――」

「……! クオン、ちょっと止まって貰っていいかしら」

「ん? セイラン、一度止まれ」

どうやら、アリスが何かを発見したらしい。

空中のセイランに制動をかけ、その場でのホバリングへと移行させる。

若干空中でのふらつきはあったものの、セイランは安定した体勢でその場に静止した。

「よし……で、どうした? 何かあったのか?」

「あそこ、あの壁の辺りに《看破》が反応したのよ。何かあると思うんだけど」

「ふむ? あの辺りか」

アリスの指差したあたりへと向けてセイランを移動させる。

どうやら、階段沿いの壁に対してアリスのスキルが反応したようだ。

ただのトラップであればわざわざ近寄るような真似はしない筈だが……さて、何を見つけたのやら。

「周囲の階段にトラップは無いわ。降りても大丈夫よ」

「それは良いが……結局、何を見つけたんだ?」

「そこの壁、どうも壊せるみたいなのよね。確か、そういう所に例のランタンがあるんでしょう?」

「ほほう?」

確かに、以前の聖火の塔では、『聖火のランタン』は破壊できる壁の内側に隠されていた。

破壊できる壁があるということは、それが隠されている可能性も十分にあるだろう。

まあ、トラップも無いのであれば試しても損はあるまい。

「セイラン、殴り壊せ」

「クェッ」

前はピッケルで破壊したが、長々と時間をかける必要もあるまい。

セイランの攻撃力ならば、壁を破壊する程度造作も無いだろう。

指示を受けたセイランは、特に疑問を抱いた様子もなく前腕を振りかぶり、塔の壁へと叩き付ける。

どうやら薄い石材でできていたらしく、セイランの一撃は容易く壁を破壊し、その奥にあった空間を露わにしていた。

割れた壁の破片の中、狭い空間に安置されていたのは、想像していた通り、先程のミミックとはデザインの異なる少し豪華な宝箱だ。

恐らく問題は無いと思うのだが、ミミックという前例がある以上は油断するわけにはいかない。

「どうだ、トラップはありそうか?」

「いいえ、これからは特に発見できないわね。開けてみるわよ」

どこかわくわくした調子で、アリスはゆっくりと宝箱を開く。

その中に入っていたのは――案の定、四つのランタンだった。

「やっぱり『聖火のランタン』でしたね。ここまで無かったから、見逃してたかと思いました」

「俺もそれは少し考えていたが……まあ、見つかってよかったな。アリスもそれを探していたんだろう?」

「ええ、少し欲しいと思っていたから。一つ貰ってもいいかしら?」

「構わんさ、俺たちは持ってるからな。余った分は換金でいいか?」

「ええ、勿論。ありがとうね」

上機嫌そうに頷いたアリスは、ランタンのうちの一つをインベントリに収める。

残る三つはエレノアに売りつければいいだろう。

聖火の塔でしか手に入らないため、これもそこそこ貴重なアイテムではある。

便利な効果もあるし、そこそこいい値段で売れるだろう。

「ギリギリだったが探していたものも手に入ったし、後は上の悪魔を片付けるだけか」

「塔がかなり悪意まみれだっただけに、どんな悪魔がいるのかは少し気になるわね」

「トラップって悪魔が直接仕掛けてるんですかね?」

「さてな。運営がやっているにしろ悪魔がやっているにしろ、叩き潰すことに変わりはない」

奴らの性質が変わらない限り、斬るという結論が変わることはあり得ない。

そんな決意と殺意を胸に俺はセイランの背に跨り、他の二人を同じように乗せ、再び中央の吹き抜けへと身を躍らせた。

翼が空を打つ音と共に、セイランの体は僅かに沈み――けれど、その翼で風を捉えて徐々に浮かび上がる。

己自身で風を起こせるため、どこでも飛翔することは可能なのだ。

再び吹き抜けの中空を旋回しながら飛翔し始めた。

螺旋を描きながら上空へと駆け上り、やがてその上へ――螺旋階段の上のエリアへと到達する。

「――《蒐魂剣》」

刹那、飛来した魔法を抜き放った野太刀にて斬り払う。

それと共にセイランの背中から飛び出した俺は、その魔法を放ってきた存在へと向けて斬りかかり――寸前で差し込まれた刃により、その一撃を受け止められた。

「……いけないなぁ、いけない奴らだなぁ! そう思わないかい、エイラ!」

「ああ、全くだよアイラ! せっかくの僕たちのトラップを、あんなふうに無視してくるなんて!」

現れたのは、小柄な少年と少女の姿をした悪魔だ。

周囲にはそれ以外にも何体かの悪魔が存在しているようだが、こいつらが最も強い魔力を持っていることは間違いない。

どちらも金髪の、似たような顔の造作をした悪魔。どうやら、こいつらは双子の悪魔であるらしい。

俺の一刀を受け止めた悪魔の腹に蹴りを叩き込んで距離を開きつつ、野太刀を背の鞘へと納める。

そして餓狼丸を抜き放ちつつ、俺は目の前の悪魔共へと問うた。

「お前たちがここを抑えている悪魔か。双子の悪魔とは珍しいな」

「つまらない人間だなぁ。まあいいけどね。私は男爵級第41位、アイラ」

「僕は同じく42位、エイラ。ここまで来ちゃうなんて、運が悪い人間だよねぇ。トラップで死んでいた方が楽だったのにさぁ!」

魔法を放ってきた女の悪魔がアイラ、そして俺の一閃を受け止めた方がエイラか。

男爵級の悪魔であるが、そこそこ位階は高く、そして二体。

十把一絡げに片付けられるような敵という訳ではないだろう。

更に、こいつらの周囲には何体もの悪魔が存在している。

いつものレッサーデーモンに加え、三体のデーモンナイトと二体のデーモンプリースト、宙に浮かぶイビルフレイム・ゴーストと――

(見覚えのない奴が一体いるな……ピエロか?)

■デーモンクラウン

種別:悪魔

レベル:38

状態:アクティブ

属性:なし

戦闘位置:地上

それは、道化師の姿をした悪魔。

でっぷりと太ったその姿は随分と不気味なものであるが、果たしてどのような攻撃をしてくることやら。

未知の相手である以上、警戒は絶やせない。

「まあ、どちらでもいい――全て斬り殺せば済む話だ」

魔法を詠唱しながら、《練命剣》を発動する。

さて、いかなる悪魔であるかは知らないが、仕事を果たさせて貰うとしようか。