軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

166:分断された戦い

歩法――縮地。

悪魔共へと向け、躊躇うことなく足を踏み出す。

スライドするように奴らの眼前へ、そうして繰り出すのは遠心力を加えた大ぶりの一閃だ。

「――『生奪』」

斬法――剛の型、輪旋。

翻った一閃は、眼前にいた悪魔三体を纏めて斬り捨てる。

緑の血が噴出する中、俺はそれを隠れ蓑にしながら前へと進み出た。

俺がいきなり至近距離に現れたためか、悪魔共は動きが遅れている。

であれば――

「しッ!」

打法――破山。

正面にいたレッサーデーモンをそのまま後ろへと吹き飛ばし、その先にいた悪魔共を纏めて転倒させる。

ほんの僅かに動きが止まっていればいい。その間に、厄介な相手を片付けるまでだ。

「《蒐魂剣》」

頭上から降り注ぐのは黒い炎による攻撃。

天井付近を飛び回る、イビルフレイム・ゴーストの攻撃だ。

厄介ではあるが、これも魔力による現象であるため、《蒐魂剣》で吸収することが可能である。

これならば、MPを回復させるのにも困らないだろう。

「グルァアアアアッ!」

「くははははははっ!」

そこで追撃を防ぐように横合いから突っ込んできたのは、人狼のような姿をしたデーモンキメラだ。

鉤爪を振りかざしてこちらへと振り下ろしてくるその一撃に、餓狼丸の刃を合わせる。

斬法――柔の型、筋裂。

その相手の勢いに乗せて刃を滑らせ、デーモンキメラの右手首を落とす。

噴出する血に、デーモンキメラは悲鳴を上げながら手を押さえ――前屈みになった首へと、刃を走らせる。

「【スチールエッジ】、【スチールスキン】」

魔法の力を得て鋭さを増した刃が、デーモンキメラの首を半ばまで断ち斬る。

血を噴き出しながら倒れてゆくその体には目もくれず、俺はこちらへと伸ばされた手を掻い潜りながら足を踏み出した。

この状況下では、足を止めさせられるのは致命的だ。

例え雑魚の集いであったとしても、攻撃を受けるわけにはいかない。

「《練命剣》――【命輝閃】」

黄金の刃が輝きを増す。

それと共に放った貫き胴の一閃は、レッサーデーモンの体を胴から真っ二つに両断した。

やはり、このテクニックを使用した上での《練命剣》の一撃は非常に威力が高い。

レッサーデーモンの体程度ならば、容易く両断できるようだ。

尤も、これは《剣鬼羅刹》による攻撃力上昇もあるだろうが。

「《奪命剣》――【命喰閃】」

そして、返す一刀にてレッサーデーモンを逆袈裟に斬り、HPを回復させる。

【命喰閃】はHPの吸収効率を上げた一閃だ。他者の命を啜るその感覚には若干の違和感はあるが、それに剣筋を鈍らせることはない。

一方で、《蒐魂剣》のテクニックである【奪魂斬】については今の状況で使用する予定はない。

相手を斬りつけて直接MPを吸収するこのテクニックも非常に便利であるのだが――

「《蒐魂剣》――適度に回復させてくれるな、ありがたいもんだ」

降り注ぐ黒い炎を斬り払って吸収しながら、前へと進む。

《奪命剣》で消費したMPなどすぐに回復できてしまうのだ、【奪魂斬】を使わずとも何とかなる。

MPを最大まで回復させた俺は、更に前へと踏み込んで刃を振るう。

と――そんな俺の右手側に存在していた悪魔共が、派手な衝撃音と共に吹き飛ぶ。

晴れた視界の先にいたのは、刃を振り下ろした姿勢の緋真だ。

どうやら、【フレイムストライク】を装填した一撃で吹き飛ばしたらしい。

一瞬互いの視線が交錯し、同時に笑みを浮かべる――どうやら、本当に援護の必要はなさそうだ。

「――――っ」

打法――流転。

しがみつこうとしてきた六本腕のデーモンキメラに、テンポをずらしてこちらから肉薄し、その体を投げ飛ばす。

そのまま強く踏み込んで先にいる悪魔へと接近、振り下ろしてきた剣に刃を絡ませる。

斬法――柔の型、流水・逆咬。

方向を反転させて弾き飛ばした刃は天井に突き刺さり、こちらが振り下ろした刃は悪魔の体を袈裟懸けに斬り裂く。

そして、半歩後ろに下がりながら、俺は刃を反転させた。

「『生奪』」

「シィィィィ……!」

それとほぼ同時に頭上から落下してきたのは、黒い炎を揺らめかせる魔物――イビルフレイム・ゴーストだ。

全身が燃えているその体は、触れるだけでこちらにダメージを与えられるのだろう。

尤も、熱のお陰で近づいてきていることなど丸分かりだ。

その突進を躱しつつ振り上げた刃は、あっさりと黒い炎でできた体を霧散させる。

そして、その隙にと背後から近づいてきた悪魔の攻撃を半身になって回避し、その脇腹へと拳を押し当てた。

打法――寸哮。

叩き付けた衝撃が、レッサーデーモンの臓腑を纏めて打ち砕く。

口から大量の血反吐を吐き出して倒れる悪魔は、思い切り蹴り飛ばして他の連中への牽制としつつ、反転して悪魔へと斬りかかる。

個体は大した問題ではなく、厄介なのは数だけだ。

脅威を覚えるとすれば精々デーモンキメラ程度であるが、こいつらもそこまで強力な敵というわけではない。

「ったく……もう数が減って来ちまったじゃねぇか」

結構な数に囲まれていた筈なのだが、既に随分と数が減ってしまっている。

緋真が魔法で吹き飛ばした分もあるだろうが、思ったほどの数もいなかったようだ。

まあ、仕方あるまい。あまり期待しすぎるほどのものでもないし、本命はこの後に待っているのだ。

こいつらはそろそろ片付けてやるとしよう。

「――《蒐魂剣》」

飛来した魔法を纏めて斬り払い、それを放ってきた後衛と思われる悪魔の集団へと突撃する。

やはり接近戦は苦手なのか、慌てふためいた様子で下がろうとするが、逃げ場などない。

擦れ違い様に一体の首を落とし、反転しながら振るった刃にてその心臓を穿つ。

そして――

「《練命剣》――【命輝閃】」

斬法――剛の型、輪旋。

全力で振り回した刃にて、並んでいた残り二体を斬り伏せる。

そして刃を振るって付着した血を振り落とし――その瞬間、部屋を隔てていた鉄格子が開いた。

それと共に、慌ただしい足音を立てながら、セイランが階段を駆け上りこちらへと突撃してくる。

どうやら、向こうはとっくに仕事を終えていたようだ。

「ケェェエエエエッ!」

風を纏いながら突撃し、悪魔共を弾きつぶすセイラン。

それに続くように飛来したルミナは、光る刀にて体勢を崩した悪魔共を斬り伏せていた。

アリスの姿はすぐには目につかないが、どうせ隠れながら刃を突き刺しているのだろう。

既に窮地は脱してしまったが――まあいい、残りも仕留めておくとしよう。

歩法――烈震。

広い場所はセイランが暴れているから、狙うのは壁際だ。

離れた場所から魔法で狙い撃とうとしていた連中へ、その魔法を斬り払いながら接近し、斬り伏せる。

魔法使い共はどうにも貧弱だ、既に《剣鬼羅刹》の効果はそれほど高くはない状態だが、《練命剣》を使わずとも仕留めることができてしまう。

一体の首を断ち斬り、そして隣にいた悪魔の頭を鷲掴みにして壁へと叩き付けて潰しつつ、俺は周囲の状況を確認した。

中央付近にいた悪魔共は、セイランとルミナによって全滅させられている。

離れた位置にいる連中は緋真とアリスによって駆逐されかけており、全滅は時間の問題だ。

ということは――

「後はこいつ程度か――《蒐魂剣》」

刃に青い輝きを纏い、踏み込む。

残っていた悪魔はそれと共にこちらへと向けて魔法を放つ。飛来する黒い闇の弾丸に、俺は篭手を膝で蹴り上げた。

斬法――剛の型、鐘楼。

神速の斬り上げが魔法を真っ二つに斬り裂き、吸収する。

今の《蒐魂剣》を貫いて俺にダメージを与えるには、それなりに高い威力の魔法でなくては。

悪魔は次なる魔法を用意しようとしているが、もう遅い。

斬法――剛の型、鐘楼・失墜。

振り上げた一閃は方向を変え、最後の悪魔を袈裟懸けに斬り裂く。

魔法を詠唱していたため、成す術無くその一撃を受けた悪魔は、ぐらりと体を傾かせてその場に崩れ落ちていた。

とりあえず、これで目につく悪魔は全て片付けられただろう。

『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』

『《インファイト》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復適性》のスキルレベルが上昇しました』

どうやら、向こうも片付け終わったらしい。

数はそれなりだったが、やはり個体の性能は低かったな。

……しかし、《生命力操作》はレベル30になっても何も起こらないのか。

全てのスキルがレベル30で成長限界になるわけではないようだ。

「お疲れ様。悪いわね、救援が遅れて」

「構わんさ、俺たちだけでも削りきれただろうしな」

「確かに、様子を見た感じそうだったけどね」

申し訳なさそうなアリスにそう返せば、彼女は苦笑と共に呟く。

実際のところ、別に鉄格子が開かなくても倒し切れたとは思うのだが、別にゆっくり倒さなければならない理由も無いしな。

むしろさっさと終わらせて帰りたいという所でもあるし、そういう意味では良い救援だったと言える。

「さてと、この階はこれで終わりだが……そろそろ最上階に着かんもんかね」

「ここ三階ですよね? 流石にまだじゃないですか?」

「このダンジョンで広さなんて当てにならんとは思うが……まあいい、警戒は絶やさぬようにするとしようか」

この聖火の塔にあとどれぐらい階層があるのかは分からんが、恐らく半分は過ぎたことだろう。

今回のようなトラップであれば歓迎なのだが、流石に二度も同じ手は使わんだろうしな。

まあ、仕方あるまい。残りもさっさと終わらせるとしよう。

軽く嘆息を零しつつ、俺は仲間たちを連れて上層への階段へ向かった。