軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

164:二つ目の塔

『《強化魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《死点撃ち》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《インファイト》のスキルレベルが上昇しました』

『《回復適性》のスキルレベルが上昇しました』

『《採掘》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

「相変わらず、塔の前を護ってるのはゴーレムなんだな」

すっかりボロボロに採掘されたゴーレムを前に、ピッケルを担ぎながら苦笑する。

アルトリウスから依頼された聖火の塔へと辿り着いた俺たちが目にしたのは、以前の塔と同じように扉を護っている黒いゴーレムだった。

レベルは上がっていたものの、性能については特に変わっている様子もなく、とりあえず手足を潰して再び採掘祭りとなった訳だ。

おかげでまたいくつか宝石が手に入った。俺の場合はサファイアとエメラルド、それにオニキスであるが――

「宝石は良く分からんな。またノエルの所に持って行けばいいのか?」

「まあ、今の所は細工師以外に宝石は扱えないですし、そのまま売る以外には細工師に持って行くしかないですね」

珍しいアイテムである宝石だが、果たしてこれによって作られた装飾品はどこまで効果を発揮しているのやら。

俺が買った装飾品は状態異常耐性を上げる装備であるため、あまり効果のほどを実感することはできていない。

まあ、これについては転ばぬ先の杖だ。用心しておくに越したことはない。

「さて、塔の中に入るが……任せてもいいんだな、アリス?」

「ええ、《看破》も育てておきたいしね。PK狩りの機会も減ったし、使える時に使っておかないと」

アリスは、隠されたものを発見するスキルである《看破》を有している。

基本的な能力は《識別》とあまり変わらないのだが、《看破》の場合は情報を表示するのに時間がかかる代わりに、秘匿された情報を発見することが可能なのだ。

このスキルはトラップの発見にも利用することが可能であり、聖火の塔では有用なスキルであると言える。

尤もアリスの場合、発見はできてもトラップの解除はできないため、回避していく他ないのだが。

「それじゃあ、私が先行するわ。一応、クオンも警戒をお願いできるかしら?」

「ま、念の為な。何かあったら伝えるさ」

アリスのトラップ察知能力については今の所未知数だ。まずは、お手並み拝見といこう。

両開きの扉を開ければ、内部の様相が目に入る。薄暗い室内は転々と配置された松明によって照らされ、辛うじて視界が確保されている状態にあった。

おおよそ、以前に入った聖火の塔と雰囲気に違いはない。

だが――

「……内部構造は結構違いますね、これ」

「そうだな。期待していたわけじゃないが、完全に以前と同じとはいかないか」

構造まで一緒であれば楽だったのだが、そう簡単に行くような話ではないか。

ともあれ、やるべきことは変わらない。この塔の最上階まで登り、聖火を塗り潰している悪魔を片付けるだけだ。

俺たちの前に出て塔の内部へと足を踏み入れたアリスは、その全景を目にして視線を細める。

「ふぅん、こうなってるのね」

「どうだ、何か分かるか?」

「ええ、中々意地が悪い所ね。要所要所にトラップが仕掛けられているわよ」

どうやら、アリスの目には既にトラップが映っているらしい。

ともあれ、《看破》が上手いこと働いているのであれば問題はない。

アリスの進んだ足元を辿るように、内部へと歩を進める。

薄暗くはあるが、視界はギリギリ確保されているようだ。だからこそトラップを見切り辛いということでもあるのだが、そこはアリスのスキルがあればなんとかなるだろう。

「前の時とは、結構構造が違いますね……小部屋が多い感じです」

「あのでかい階段は見当たらんな。部屋の中か?」

前の聖火の塔では、入った直後から巨大な螺旋階段が目に入った。

だが、今回の塔ではそれが無い。というより、以前のように広く見渡せるような構造ではなく、いくつもの壁で仕切られている様子だ。

入口からフロア全体を見渡せるような構造ではなく、部屋の中を巡らなければならないようである。

とりあえず、内部も何とかセイランが入れるだけの広さはある。流石に、自由に走り回らせることは難しいが、何とかなるだろう。

「扉には注意してね。ノブに毒針が仕掛けられているわよ。まあ、私なら毒は耐えられるけど」

「よくある罠だな……とりあえず、指でつまんでノブを回してみろ」

俺の伝えた言葉の通りに、アリスはゆっくりとドアノブを回す。

すると、本来であれば掌に刺さるような部分に鋭い針が現れる。

どの程度の毒なのかは知らないが、知らなければ引っかかっていた可能性の高いトラップだ。

うんざりとした様子のアリスは半眼のまま少しだけ扉を開き、その隙間から部屋の中を覗き見る。

そしてしばし観察し、目に入る範囲にトラップは無いと判断したのか、ゆっくりと扉を押し開いた。

「ちょっと待ってね……ええ、大丈夫そうね」

「何もない部屋ですね……」

光の玉を浮かべたルミナは、部屋の中の様子を探りつつそう口にする。

確かに、その言葉の通り部屋の中には特に特筆するような要素は無かった。

敵の姿があるわけでもなく、かと言ってトラップが起動するような様子もない。

果たして、ここは何のための部屋なのか。

「……ドアにあんなトラップを仕掛けたから、入り辛くて使っていないとかそんなオチじゃないでしょうね」

「確かに使いづらくはあるだろうが、そんなことがあるのか?」

「知らないわよ。とにかく、この部屋は使われた形跡が無いわ」

足元にしゃがみ込み、アリスはそう断言する。

よく見れば、地面には薄っすらと埃が積もっており、人が足を踏み入れた様子がないことは事実のようだ。

ふむ、であれば――

「ダミーかもしれないな。他の部屋を探索して、何も見つからなければここに戻ってくるぞ」

「了解、それじゃあ次に行くわよ」

「この広さだと、ここのフロアには部屋が四つって感じですかね」

最初に入った場所はかなり広めの廊下のような形状になっており、その左右に二つずつ部屋が並んでいるような形状のようだ。

四つのどれかに階段があるのだろう。それ以外は外れか、或いはトラップか。

何にせよ、調べないことには始まらない。とりあえずは、ここから向かい側にある扉を調べることとしよう。

「ここの扉にはトラップは無いわね。中を調べるわ」

先ほどと同じように少しだけ扉を開き、中の様子を確かめる。

どうやら、目に見える異常は無かったらしく、アリスは同じように扉を開いて中の様子を明らかにした。

こちらは、細かく瓦礫やら、椅子の残骸のようなものが転がっている部屋だ。

これは、戦闘の痕跡だろうか。血の跡は見当たらないが、これは経年劣化ではなく攻撃によって破壊されたものだ。

「塔にいた人間と悪魔が戦った痕跡か? 何にせよ、随分と時間が経っているようだが」

「って言うか先生、それよりもあれですよ、あれ」

ふと、緋真が俺の袖を引きつつ、部屋の片隅を指し示す。

瓦礫の陰に隠れるようにして置かれていたのは、黄土色に近い木製の宝箱だった。

聖火の塔で宝箱と言えば、やはり以前に発見した『聖火のランタン』だ。

緋真もそれを思い出したのだろう、どこか楽しげな様子で宝箱に近づこうとする。

だが、俺はその肩を掴んで足を止めさせた。

「っと、先生?」

「阿呆、不用心過ぎだ。だろう、アリス」

「ええ、そうね」

彼女の目には見えているのだろう、嘆息交じりに投擲用のナイフを取り出し、《ポイズンエッジ》を付与する。

そして投げつけられた刃は一直線に宝箱へと突き刺さり――突如として、宝箱の下から六本の足が生えた。

どこか光沢のある黄色の、正直なところ生理的な嫌悪感を感じさせる昆虫の足だ。

「キモッ!? 虫!?」

「ああいう魔物もいるって訳か……」

■ミミックインセクト

種別:蟲・魔物

レベル:38

状態:アクティブ

属性:なし

戦闘位置:地上

初めて見る魔物であるが、まさか宝箱に擬態するような存在がいようとは。

足が飛び出してきただけではなく、宝箱のふたが開き、中から本体と思われる虫が姿を現す。

それは、巨大な顎を有した芋虫のような姿の魔物だ。

その顔からはムカデを彷彿とさせるが、足が大量にあるわけではなく、芋虫のような長い胴体を晒しているだけだ。

気づかずに宝箱の蓋を開けると、あれが飛び出してきて噛みつかれるということだろう。

「ま、ネタが割れていればそれまでだな……『生奪』」

斬法――柔の型、零落。

キン、と――鯉口を切る音だけが響く。

空間に僅かな黄金の軌跡だけを残した神速の居合は、こちらへと伸びてきたミミックの頭を綺麗に斬り落としていた。

僅かに遅れて足の生えた宝箱が前倒しに崩れ落ち、その体は動かなくなる。

どうやら、体力そのものは大したことがないらしい。不意打ちに特化した魔物なのだろう。

「トラップのパターンも以前とは異なるようだな。退屈はせずに済みそうだ」

「退屈どころの話じゃないんですけど……アリスさん、お願いしますね」

「はいはい……まあ、私もランタンは欲しいしね」

アリスは小さく嘆息しつつ、探索を再開する。

以前よりもこちらの負担が減っているため、幾分か気は楽だ。

こういった戦いも、たまには悪くないだろう。小さく笑みを浮かべつつ、俺はゆっくりと歩むアリスの後ろへと続いた。