軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

153:装備の更新

『《強化魔法》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

王都グリングローへと到達し、騎獣から降りる。

フェーア牧場ではプレイヤーの数はかなり多かったが、こちらはそれほどでもない。

恐らく、ここが最前線から離れているからであろう。

とは言え、現状この国で最も施設が揃っているのはこの街であり、生産職にとっては最も活動しやすい場所であるようだが。

「そういえば、貴方はあの『エレノア商会』の会頭と組んでいるんだったわね」

「その話、随分流布されているんだな」

「当然でしょう。あの《聖剣騎士》と《商会長》、そして《剣鬼羅刹》。プレイヤーの中でも知名度トップクラスの三人が手を組んでいるんだから」

いつも通りの無表情の中に僅かな呆れの色を交え、アリスはそう指摘する。

彼女は最前線からは離れて活動していたプレイヤーであるが、それでもその話を耳にしているのだ。

随分と噂になっていることは間違いないだろう。

「他の所も手を組むように動いていたりするけど……貴方たちの所には比べるべくも無いわね。相手が悪いわ、相手が」

「ま、一般的なプレイヤーとアイツらを比較するのは流石に可哀想だろうさ」

「……その台詞、先生が言います?」

同じく視線の中に呆れを浮かべた緋真からは目を逸らし、さっさとエレノア商会の店舗へと向かう。

相変わらず行動が早いことに、エレノアは既にベーディンジアでも店舗を確保し、商売を開始していた。

と言っても、こちらでは現状、マーケットの規模はそこまで大きくはない。

アルファシアで本拠地を構えていたため、全機能をこちらに移すような真似はせず、あくまで支店として開店したのだ。

尤も、生産拠点としての機能がアルファシアの本店に劣るわけではないようだが。

「エレノアが本格的に動くのはまだ先か……全く、抜け目がないことだ」

彼女のことであるし、どうせ前線拠点である砦が完成したらそこで出店するつもりなのだろう。

と言うより、現状既に簡単な露店程度は準備していたとしてもおかしくはない。

何しろ、あそこは悪魔との戦闘における最前線。

物資はいくらあっても足りないぐらいであるし、そのようなタイミングをエレノアが逃すとは思えない。

ついでに言えば、あの砦を建造しているのは『キャメロット』と『エレノア商会』だ。

自分たちが商売を行うスペースは十分に確保しているだろう。

エレノア商会の店舗へ足を踏み入れれば、俺たちは顔パスで店の奥へと通された。

そういえば、一度も店頭での取引を行ったことがないような気がするが――まあ、便利であるしそれは良いか。

中に入れば、執務室のような場所で作業を行っているエレノアの元へと案内される。

大量のメールを捌いているらしい彼女は、画面から目を離しつつも手は止めぬままに声を上げる。

「おかえりなさい、クオン。スキルの強化は終わったのかしら?」

「ああ、完了している。中々のもんだったぞ」

予想通りと言うか、望み通りと言うか――三魔剣はどれも強力なスキルであった。

まず、基礎的な性能は全て向上している。

《練命剣》の攻撃力上昇、《蒐魂剣》の魔法破壊性能、《奪命剣》の体力吸収効率――それら全て、前提スキルよりも性能が増している。

更に、習得できたテクニックも強力だった。

《練命剣》のテクニック【命輝閃】は、一撃の威力を大きく向上させるだけの使い易いテクニックだ。

とはいえ、これには少々多めにHPを消費する必要があるのだが。

次に《蒐魂剣》のテクニック【奪魂斬】は、斬りつけた相手から強制的に魔力――MPを吸収するテクニックだった。

これによって、相手が魔法を使わずとも、直接MPを回復させられるようになったのだ。

そして、《奪命剣》のテクニック【命喰閃】は、【命輝閃】と同じく一撃の威力を高めた一撃である。

それによるHP吸収効率は高く、きちんとダメージを与えられれば大きくHPを回復させることが可能だった。

とはいえ、これだけでヴェルンリードに及ぶわけではない。

せめて、次のテクニックを習得するまで鍛えたい所ではあるが――それについては、状況次第だろう。

「貴方の強化が進んだのは喜ばしいわね。他のプレイヤーにとってどうなのかは知らないけど。それで……その子は誰かしら?」

「ああ、彼女はアリシェラ。俺たちのパーティに正式に入った、新しいメンバーだ」

「初めまして、 魔人族(ダークス) のアリシェラよ。お会いできて光栄だわ、《商会長》さん」

俺とアリスの言葉を耳にして、エレノアはしばし硬直する。

そして一度頭を抱えたのち、絞り出すように声を上げた。

「ええと……どういうこと? 貴方のパーティって、貴方と緋真さんのパーティに、その子が加わるの?」

「その通りだ。ちなみに、彼女の年齢は俺と同じぐらいだからな」

「……失礼したわ。けど、いきなりどういうことよ。貴方、相応の実力者でなければ臨時パーティだって認めないでしょう?」

「彼女は相応の実力者だったって話だ。一芸に特化しているが、その点に関しては誰にも負けていないと認めている」

俺の返答に、エレノアは視線を細めて黙考する。

俺が保証している以上、その実力は確かなものであると判断したのだろう。

軽く息を吐き出したエレノアは、アリシェラの姿を見つめながら声を上げる。

「……そういえば、聞いたことがあるわね。イベントの個人部門第10位。全くの無名だったのに突然現れて、しかもその後も姿を現さなかった謎の人物。そのプレイヤーの名前がアリシェラだったけれど――」

「ええ、それが私ね。しばらく探されていたけど、私の《偽装》は抜けないような人たちばかりだったわ」

「あれを破るには《看破》を持っているプレイヤーじゃないと難しいでしょう。ここまで《偽装》無しで入ってこれているということは、別に悪用していたわけではないみたいだけど」

確か、PK等の犯罪を行ったプレイヤーは、通常の場合街の中に入ることができなくなる――正確には衛兵等に捕まるらしい。

しかし、その《偽装》というスキルでステータスを偽っている場合は、その監視を潜り抜けることができるそうだ。

尤も、レベルが低い内はバレることも多いらしいが。

「まあ、貴方のパーティだし、私が口出しすることではないけど……彼女はどんなスタイルなの?」

「簡単に言うと暗殺者だな。潜入も得意だろう」

「あら……成程、それは好都合ね」

「何? 何かやらせるつもりか?」

「私は別に何も。ただ、アルトリウスに話を聞いてみなさいな。恐らく歓迎されるわよ」

ふむ。ということは、次のベルゲンの攻略作戦に関連する話だろうか。

あの攻略に潜入と言うのは一つの手ではあるが……それだけで解決するような話ではない。

まあ、彼が作戦を考えているのであれば、下手な手を打つことは無いだろうが。

「新メンバーについては了解したわ。生憎、彼女の分の装備は用意できていないけど」

「それは仕方ないだろう、突然のことだった訳だしな」

「在り合わせのものでも購入させて貰えたら嬉しいわ」

「ええ、それ位なら構わないわ。今、フィノと伊織を呼んでいるから――と、噂をしたら到着ね」

その言葉と同時に、エレノアの執務室の扉が開かれる。

姿を現したのは、伊織の手を引いて走ってきたらしいフィノだった。

伊織の姿を見るとどうにも軍曹を思い出してしまって微妙な気分になるのだが、それはおくびにも出さずに声を掛ける。

「よう、装備の研究は終わったか?」

「ええ、何とか。中々苦労しましたわ。ここに来て素材が随分増えましたもの」

フィノに引っ張られたことで崩れた髪型を直しながら、伊織は胸を張ってそう返答する。

ベーディンジアは騎獣が有名ということもあってか、畜産に関する知識が多いらしい。

それによって、魔物の羊を飼い慣らして育成しているらしいのだ。

布系の職人にとっては、新しい素材は大きな刺激となったことだろう。

「この国で手に入る素材の内、重要なものは三つ。『紅毛羊の毛』と『魔法羊の毛』、そして『ミスリル』よ」

「え、ミスリルが手に入るんですか、この国?」

「正確にはこの国で産出されているのではなく、この国の北――アドミス聖王国からの輸入品よ。まあ、悪魔に攻められている現在は交流も断たれているから品薄だけど……貴方たちに提供する分程度は造作も無いわ」

エレノアの言葉に、感心して頷く。

軽く言ってはいるが、そう簡単に手に入るようなものではないだろう。

現地人との交渉にはかなり苦労することになったはずだ。

尤も、先立っての研究等も含め、それだけの価値があると判断したのだろうが。

「それじゃ、見て見て」

「自信作ですわ!」

そう言って、フィノと伊織は新たな装備を机に並べ始める。

どれもこれも、外見的には以前とそれほど変わりの無い品物だ。

尤も、最も目立つ羽織などの装備には若干のアレンジが加えられていたが。

■《武器:刀》ミスリルの打刀

攻撃力:34(+7)

重量:14

耐久度:140%

付与効果:攻撃力上昇(中) 耐久力上昇(中)

製作者:フィノ

■《武器:刀》ミスリルの小太刀

攻撃力:30(+6)

重量:10

耐久度:140%

付与効果:攻撃力上昇(中) 耐久力上昇(中)

製作者:フィノ

■《武器:刀》ミスリルの野太刀

攻撃力:42(+9)

重量:19

耐久度:140%

付与効果:攻撃力上昇(中) 耐久力上昇(中)

製作者:フィノ

「お? 付与効果の性能が上がってるのか」

「ん、中級付与が行えるようになった」

「おー、やっぱり結構変わりますね」

二振りの小太刀、そして野太刀の状態を確認する。

メインウェポンは相変わらず餓狼丸であるが、これらもそれに劣らぬ性能に仕上がってきているだろう。

持ち上げてみると少々軽く感じるが、振るう分には問題ない。

残りは防具の性能であるが――

■《防具:胴》混羊毛の着物・金属糸加工(黒)

防御力:29(+6)

魔法防御力:21(+5)

重量:10

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(中) 魔法防御力上昇(中) 斬撃耐性

製作者:伊織

■《防具:腰》混羊毛の袴・金属糸加工(黒)

防御力:24(+5)

魔法防御力:18(+4)

重量:7

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(中) 魔法防御力上昇(中) 斬撃耐性

製作者:伊織

■《防具:装飾品》混羊毛の羽織・金属糸加工・装甲付与(白)

防御力:26(+6)

魔法防御力:22(+5)

重量:6

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(中) 魔法防御力上昇(中) 斬撃耐性 腐食耐性(全)

製作者:伊織

■《防具:頭》女王蟻の鉢金

防御力:16(+4)

魔法防御力:9(+2)

重量:3

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(中) 魔法防御力上昇(中) 腐食耐性(全)

製作者:伊織

■《防具:腕》ミスリルの篭手・装甲付与

防御力:22(+5)

魔法防御力:12(+3)

重量:5

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(中) 魔法防御力上昇(中) 腐食耐性(全)

製作者:フィノ

■《防具:足》ミスリルの脛当て・装甲付与

防御力:23(+5)

魔法防御力:14(+3)

重量:7

耐久度:100%

付与効果:防御力上昇(中) 魔法防御力上昇(中) 腐食耐性(全)

製作者:フィノ

「女王蟻素材は、以前の残っていたものを使いましたわ」

「未だに現役どころかトップクラスな素材なのが凄いよね」

装備を一通り確認し、感嘆の吐息を零す。

今までの装備から、大幅に強化されていると言っていい。

まあ、今の装備を購入したのがだいぶ前であるし、進歩しているのは当然と言えば当然なのだが――

「ふむ……流石だな、大したものだ」

「ジャンルが違う装備だけど、流石に羨ましいわね。トップ生産職というだけはあるわ」

「んー、どちら様?」

「彼女はアリシェラ。クオンのパーティの新メンバーよ。貴方たちよりだいぶ年上だから気を付けなさい」

「あら……よろしくお願いしますわね」

ぺこりと頭を下げる伊織であるが、作成する装備ジャンルからもアリスのそれとは噛み合わないだろう。

当人もそれが分かっているのか、若干苦笑しつつ一礼していた。

しかし、せっかくここまで来たというのに、何も装備を変えないというのも勿体ない。

「アリス、新しい装備は買っておかないか?」

「え? ああ……そうね、できれば武器を新調したいわ。スティレットか……無ければナイフはあるかしら。これぐらいなのだけど」

「スティレット? 変わった武器使うんだね」

アリスの愛用しているスティレットを受け取ったフィノは、しばしそれを確認した後、インベントリの中を漁り始める。

やがて取り出したのは、刃渡りが20cmほどもある大型のナイフだった。

「スティレットは無いけど、これでいい?」

「ええ、構わないけど……え、クオン達の武器と同じ素材?」

「ん、練習で作ったけど、付与とかもちゃんとしてるよ」

言いつつ、フィノは柄の部分をやすりで削り、布を巻きつけて調整している。

どうやら、アリスの小さい手に合わせて調整しているようだ。

一通り作業を完了し、全体を眺めたフィノは、あっさりとそのナイフをアリスへと渡していた。

■《武器:剣》ミスリルのナイフ

攻撃力:28(+6)

重量:9

耐久度:140%

付与効果:攻撃力上昇(中) 耐久力上昇(中)

製作者:フィノ

「これは……凄まじいわね」

「料金は先生さんたちと同じ割引でいいよー」

「助かるが……いいのか、エレノア?」

「ええ、貴方が固定パーティとして認めるほどの実力なのでしょう? 今後活躍してくれるなら、安い投資よ」

どうやら、アリスのことは認めてくれたようだ。

あまり表情は変わらないが、どこか嬉しそうな様子の彼女に笑みを零しつつ、全ての装備を身に着ける。

料金については格安と言っていい値段だ。ほぼ原価に近く、若干の利益分が入っている程度である。

時間のコストを考えれば赤字もいい所であろうが、そういう契約だ。ありがたく頂戴しておく。

「よし、それじゃあ……」

「あ、もう出発ですか?」

「一度アルトリウスの所に顔を出してからだがな。だが、その前に二つ、フィノに聞いておきたい」

「んー?」

頼んでおきたいことの一つは鉤縄の改造についてだが、これに関してはあまり問題は無いだろう。

話を振られ、フィノは首を傾げながらこちらを見上げる。

見た目の大きさではそれほどアリスと変わらないな、と胸中で呟きつつも、俺は目的の一つであった質問を口にした。

「餓狼丸の強化に必要な次の素材、今から確認はできるか?」