軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

139:決闘による修行

決闘モードは元々、プレイヤー同士が戦闘を行うためのものだ。

決闘モードを使用しない戦闘は犯罪者として手配される可能性があり、プレイヤーキラーとかいう連中はこれに当たるらしい。

ともあれ、これを利用すれば街中でも戦闘を行うことができるわけだが、このモードには様々な機能が存在している。

その内の一つが、己のテイムモンスターや召喚モンスターと戦闘を行う機能だ。

決闘モードのウィンドウでパーティ編成を行い、ルミナとセイランを緋真のパーティに加える。

「よし、やるぞ。ただし飛ぶなよ?」

「はい、勿論です。それでは修行になりませんから」

流石に、ルミナとセイランに自由に飛び回られるのは難しい。

対処できないというわけではないのだが、本来の趣旨から外れてしまうだろう。

こちらは変わらず、《収奪の剣》と《斬魔の剣》のみの縛りの状態なのだ。

こいつらにもせめて地上で戦って欲しい所である。

「けど、ここまでします? 先生にとってもかなり厳しいんじゃないですか?」

「そう思うなら倒してみせろ。本気の戦いでなけりゃ、鍛錬にならんだろうが」

作業のように《斬魔の剣》を鍛えるだけならば、緋真やルミナが放ってくる魔法を斬るだけでいいだろう。

だが、そんなものは修行ではない。

ただレベルが上がっただけのスキルなど、己の血肉になっているとなど口が裂けても言えないだろう。

周囲のプレイヤーたちはぎょっとしたような視線でこちらを見ているが、いちいち気にするつもりも無い。

距離を空けて向かい合い、俺は緋真たちへと向けて決闘の申請を飛ばした。

「了解です。条件はさっきと同じで――行きますよ、先生」

「来い、馬鹿弟子共」

俺の返答と共に決闘モードが開始され――その瞬間、風を纏ったセイランがこちらへと向けて突撃を開始した。

好戦的なこいつらしい、真っすぐとした突進攻撃だ。

無論のこと、それをただで受ける筈もないのだが。

「《斬魔の剣》」

斬法――柔の型、筋裂。

ギリギリのタイミングで横へと回避しながら、その場に刃を置く。

自ら刃に突っ込む形となったセイランは、体の側面に一筋の傷を負いながら後方へと通り抜けることとなった。

その刹那、飛来した光の槍を首を傾けることで回避しながら体を回転、斬り込んできた緋真へと迎撃の刃を振るう。

「《闘気》、《術理装填》《スペルチャージ》【フレイムバースト】!」

「《斬魔の剣》」

斬法――柔の型、流水。

振り上げた一閃が緋真の一撃に絡み合い、纏う炎を消し去りながら横へと受け流す。

緋真の体勢が崩れたその瞬間、俺は身を沈み込ませながら後方のルミナへと向けて地を蹴った。

「くっ!」

斬法――剛の型、鐘楼。

篭手を蹴り上げることによって放つ神速の振り上げ。

その一閃をルミナは辛うじて受け止め、しかしその勢いを殺し切れずに腕を跳ね上げられてしまう。

その状態で更に一歩踏み出した俺は、鐘楼・失墜を放とうとし――体を反転させる。

「――《斬魔の剣》」

「がはっ!?」

後方から飛来した風の刃を蒼い輝きで斬り裂きながら、ルミナの胴へと回し蹴りを放った。

その一撃で横へと弾き飛ばされたルミナは地面に転がるが、それを追撃する余裕はない。

緋真とセイランがタイミングを合わせ、こちらへと突撃してきていたからだ。

その光景に、俺は思わず口角を笑みに歪めていた。

(そうでなくてはなぁ!)

全く、緋真もよく分かっているものだ。

俺が苦手とすることを、そして俺が楽しめることを!

「【フレイムバースト】!」

「《斬魔の剣》」

こちらへと向けて駆けながら、緋真は爆発の魔法を発動させる。

魔力の動きで魔法を発動させることは読めていた。

だが、緋真もまた俺が反応することはとっくに読めていただろう。

今の一撃は、俺を移動させないようにするためのものだ。

「ケアアアアッ!」

「ッ……!」

斬法――柔の型、流水。

風を纏う爪の一撃を受け流し、しかしその体重までは受けきれずに体を横へとずらされる。

僅かに体勢の崩れた俺へと向けて、緋真は穿牙による刺突を放ってきた。

しかも、その刀身は既に炎を纏っている。刺突を狙うということは、恐らく【フレイムランス】を纏わせたものだ。

この体勢では回避は不可能、ならば――

「はああッ!」

「しッ!」

斬法――柔の型、流水。

刀身を絡めて刺突の攻撃を逸らし、突き出てきた炎の槍は甘んじて受け止める。

腕を焼き、貫かれる痛みに耐えながら前へ。

セイランとの間に緋真を挟むようにしながら、俺は左手を緋真の腹部へと押し当てる。

「いっ!?」

俺に一撃を通せたことで僅かな油断が生まれたか、緋真は反応が一瞬だけ遅れる。

無論のこと、それを見逃すはずもない。

打法――寸哮。

叩きつけられた衝撃により、緋真の体が硬直する。

内臓を叩き潰すつもりではあったが、どうやらきちんと威力を逸らして耐えてみせたようだ。

とは言え、それで耐えられるほど甘い攻撃でもない。

肺の空気を強制的に排出させられた緋真は、動きを止めてその場で硬直する。

「《収奪の剣》」

緋真を護るために動こうとしたのだろう、セイランがこちらへと突撃する。

だが、緋真が密着した状態であるためか、どのように攻撃するか迷いが生じているようだ。

俺は小さく笑いながら、更に緋真へと密着する形で肩を押し当てる。

「ッ――!」

俺が何をするつもりなのか理解できたのだろう、緋真は息を飲んで体を後方へと傾ける。

良い反応だが、それで対処しきれるほど甘い業ではない。

打法――破山。

床が破裂するような音と共に、衝撃が迸る。

それと共に後方へと弾き飛ばされた緋真と衝突しかけ、セイランは咄嗟にその体を受け止めていた。

歩法――烈震。

その刹那、俺は前方へと向けて飛び出す。

狙うはセイランの翼、そこへと向けて黒いオーラを纏わせた餓狼丸を放つ。

その一撃によって翼を傷つけられたセイランはバランスを崩し――

斬法――剛の型、輪旋。

大きく旋回させた一撃がその胴を斬り裂き、セイランのHPを半分以下まで削る。

それによって敗北判定となったセイランは、そのまま決闘エリアの外まで弾き出されていた。

一部のメンバーだけが敗北判定を受けた場合、このように処理されるようだ。

ともあれ――

「まだ、終わっちゃいないぞ」

「勿論です……!」

セイランを落としたが、緋真とルミナはいまだ健在。

ルミナに至ってはHPも回復しており、振り出しからといった状況だ。

とは言え、数が減った時点でかなり楽になったものだ。

「光よ!」

「《斬魔の剣》」

眼前に発生した光の爆裂。

その破壊力を真っ二つに斬り裂くが、輝きによって目が眩み、視界を奪われる。

だが、気配でどこから来るかは丸わかりだ。

横合いから斬り込んできた緋真の攻撃を後退して躱し、膨れ上がった魔力の気配へと向けて刃を振るう。

「《斬魔の剣》」

「なっ!?」

斬り裂いたのはルミナの放った光の槍だろう。

目を閉じたままで対応されたことにか、ルミナは驚愕の声を発する。

だが、それすらも予測していたであろう緋真は、動じることも無く追撃の攻撃を放ってくる。

斬法――柔の型、流水。

放たれた一閃を受け流し、目を開く。

目に入るのは、刀から左手を放し、こちらへと向けている緋真の姿。

――魔力の高まりは感じ取っていた。であれば、対処するのは容易い。

「【フレイムランス】!」

「《斬魔の剣》!」

凄まじい速度でこちらの顔面を射抜こうとした炎の槍を、一刀にて斬り伏せる。

緋真の狙いは、その一刀を振らせることだろう。

緋真は俺の餓狼丸の横へと滑り込むように接近し、こちらへと切っ先を向ける。密着状態からの刺突、穿牙零絶か。

ぎらつくような、殺意の篭った視線。己が師に対しても一切遠慮のないその姿に、思わず喜悦の笑みが浮かぶ。

だが――

「ッ……!」

「《収奪の剣》」

斬法――柔の型、流水・霧旋。

左手を脇の下へ、左手の肘で刀の峰を押さえながら、右向きに体を回転させる。

脇の下から肺と心臓を狙おうとしてきた刺突を横から押して逸らし、さらに肘で押さえた刀を体の回転を利用して振り抜く。

突きによって体が伸びきっていた緋真に対し、脇下から腕にかけてを斬りつけ――そのダメージで体勢の崩れたこいつを、翻した貫き胴にて斬り伏せる。

それによってHPが半分を割った――というより致命傷に近いダメージを受けた緋真はそのままエリアから弾き飛ばされた。

血振りと共に残心を行い、最後に残ったルミナへと視線を向ける。

「さて、どうする。まだやるか?」

「も、勿論です。例え敵わずとも、最後まで諦めません」

「くく、いい意気だ。さあ、来い」

俺の言葉に頷き、ルミナの背中に光の翼が輝く。

そのまま、ルミナは前傾に倒れ――凄まじい速度で、こちらへと飛び込んでくる。

《光翼》を使用した烈震。その速度は、俺のそれに匹敵するほどの速さである。

それと共に放たれる穿牙は不完全なれど、十分な威力を持った一撃であろう。

だが――生憎と、ジジイよりは遅い。

斬法――柔の型、流水。

「――見事だ」

受け流し、斬り返す。

その一撃で胴を斬られたルミナは体力を半分以下まで減らされ、決闘は決着となっていた。

『《収奪の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《斬魔の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

決闘が終了となり、決闘モードが解除される。

思ったよりもいい具合だ。流石に三人相手ならばそこそこ苦戦する。

師範代たちを相手にする時とは異なる感覚。

やはり、魔法の有無は大きいようだ。

「よし、あと三回ぐらいはやっておくぞ。そうしたら出発だ」

「……マジですか先生」

脇腹を押さえた緋真が、顔を引きつらせて問い返す。

それに対して笑みを返してやれば、諦めた表情で深々と嘆息する。

さて、今のうちに《収奪の剣》は30にしておきたいところだが――普通に、いい鍛錬になりそうだ。

笑みを浮かべながら、俺は再び決闘モードのウィンドウを操作していた。